履歴書の一番下に置かれた「本人希望欄」。空欄のまま提出していいのか、それとも正直な希望を書くべきなのか、ペンを持ったまま手が止まった経験がある人は少なくないでしょう。新卒の就職活動でも、社会人になってからの転職活動でも、この欄の扱い方に迷いは共通しています。書き方ひとつで採用担当者に与える印象が変わる、意外と繊細な欄でもあります。基本ルールから新卒・若手転職者それぞれの記入例、書かないほうがいい内容まで、順番に整理していきます。
履歴書の本人希望欄とは何か
本人希望欄は、応募者が入社にあたって企業に伝えておきたい条件や事情を記入するための欄です。勤務地や勤務時間、健康面の配慮など、面接まで待たずに先に共有しておいたほうがよい内容を書く場所と考えるとわかりやすいでしょう。企業側では、配属先の検討や面接日程の調整、入社後の労働条件のすり合わせといった実務の材料として、この欄の記載内容を参照することがあります。
一方で、この欄に書かれた内容は、企業側からすると単なる参考メモではなく、応募者が譲れないと考えている絶対条件として受け取られる可能性があります。面接で軽い気持ちのつもりで話す条件と、書面に残る本人希望欄に書く条件とでは、企業側の受け止め方が違う点は、記入前に押さえておきたいポイントです。
本人希望欄がない履歴書もある理由
実は、すべての履歴書にこの欄があるわけではありません。2020年7月に日本規格協会が履歴書の様式例そのものを取り下げたことで、いわゆるJIS規格の履歴書は姿を消し、企業や販売元によって様式が少しずつ異なる状態になっています。厚生労働省はこれを受けて新たな参考様式を公開しており、性別欄が任意記載になるなど、旧来の様式からいくつかの項目が見直されました。
応募先指定の様式や市販の履歴書用紙によって本人希望欄の有無や大きさが変わるのは、こうした経緯があるためです。欄が用意されていない場合は、無理に余白へ追記する必要はなく、面接や職務経歴書の備考欄で伝えれば十分です。
紙の履歴書とWeb応募フォームでの扱いの違い
近年は求人サイトのマイページや企業のエントリーフォームから直接応募するケースも増えており、その場合「本人希望欄」という名称の項目が用意されていないことがあります。かわりに「その他・自由記述欄」といった名前で、同じ役割を持つ入力欄が置かれていることが一般的です。呼び方は違っても、書くべき内容の判断基準は紙の履歴書と変わりません。特に希望がなければ空欄のままで問題なく、伝えたい事情があるときだけ、これまでに紹介した基準で簡潔に記載すれば十分です。
履歴書の本人希望欄の書き方【基本の3ステップ】
本人希望欄の書き方に迷ったときは、次の3ステップで整理すると判断しやすくなります。
希望の有無を確認する
最初に立ち止まりたいのは、そもそも今、企業に先に伝えておくべき希望があるかという点です。特別な事情や条件がなければ、無理に何かを書く必要はありません。
譲れない条件を1つか2つに絞る
複数の希望が頭に浮かんでも、そのすべてが本当に譲れない条件とは限りません。優先順位をつけ、面接前に必ず伝えておきたい内容だけに絞り込みます。
簡潔な言葉でまとめる
絞り込んだ内容は、理由を添えつつも一文か二文で書き切ります。枠からはみ出すほど長く書くと、かえって要点が伝わりにくくなるので注意しましょう。
特に希望がない場合は、空欄のままにせず「貴社の規定に従います」と一文添えておくと、丁寧な印象を保てます。「特になし」とだけ書くよりも、相手への配慮が伝わる表現です。
【新卒・若手転職者向け】本人希望欄に書いていい内容と例文

本人希望欄に書いていい内容は、立場によって多少変わります。ここでは新卒の就職活動と、社会人になってからの転職活動、それぞれの記入例を紹介します。
新卒の場合の書き方例文
新卒の場合、基本的には「貴社の規定に従います」で十分なケースがほとんどです。ただし、家庭の事情などでどうしても勤務地を限定したい場合は、求人票に複数勤務地の記載があるかを確認したうえで、理由とあわせて簡潔に記載します。
記入例
「都合により、勤務地は〇〇エリアを希望いたします。何とぞご検討のほどよろしくお願いいたします」
持病や通院の予定がある場合も、詳細な病名までは書かず、業務に支障がない範囲で簡潔に伝えれば十分です。健康面の事情は、面接で口頭で補足できるよう、履歴書には要点だけを残しておくとよいでしょう。
若手転職者の場合の書き方例文
転職活動では、在職中に選考を進めるケースが多いため、連絡可能な時間帯を伝えておくと、企業側も日程調整がしやすくなります。
記入例
「現在在職中のため、平日の連絡は18時以降にいただけますと幸いです」
入社可能時期についても、退職の意思表示や引き継ぎに一定の期間がかかる場合は、目安の時期を伝えておくと、その後の条件交渉がスムーズに進みやすくなります。転職エージェント経由で応募している場合は、担当者を通じて詳細な条件交渉ができるため、履歴書の本人希望欄には要点のみを短く記載し、細かな調整は担当者とのやり取りに委ねるという分担も選択肢のひとつです。
パート・アルバイトの場合の書き方例文
パートやアルバイトの応募では、勤務できる曜日や時間帯が採用の可否に直結しやすいため、本人希望欄で具体的に伝えておくと双方の認識のずれを防げます。
記入例
「勤務可能日は月・水・金の週3日、時間帯は9時から15時を希望いたします」
学業や家庭の事情で稼働できない曜日がある場合も、同様に具体的な範囲で伝えておくと、面接時のすり合わせが早く進みます。
履歴書の本人希望欄で避けたい内容とNG例

本人希望欄には、書いてしまうと選考にマイナスの印象を与えかねない内容もあります。代表的なNG例を押さえておきましょう。
- 志望動機や自己PRの重複記載。本人希望欄は志望動機を書く場所ではありません。すでに他の欄で書いた内容を重ねて書いても、評価が上乗せされるわけではなく、単に読みにくくなるだけです。
- 給与や待遇に関する具体的な希望。給与や賞与、休日日数といった待遇面の希望は、面接や内定後の条件確認の場で伝えるのが基本です。書面にまで残すと、条件面を優先しているという印象を与えかねません。
- 募集条件と食い違う希望。求人票に記載された勤務条件と矛盾する内容を書くと、応募要件を読んでいないと受け取られる可能性があります。
- 細かすぎる条件の羅列。曜日や時間を分刻みで指定するなど、条件を並べすぎると、扱いにくい人物という印象につながることがあります。伝えたい内容は本当に重要な1つか2つに絞りましょう。
「特になし」とだけ書いて空欄同然にする対応も避けたい書き方のひとつです。何も考えずに提出した印象を与えやすく、前述の「貴社の規定に従います」という一文に置き換えるだけで、丁寧さの伝わり方が大きく変わります。
採用担当者は本人希望欄のどこを見ているのか
本人希望欄がここまで気を遣うべき欄になっている背景には、採用担当者側の事情もあります。厚生労働省は事業主に対して、応募者の適性・能力を基準とした公正な採用選考を行うよう求めており、本籍や家族状況といった本人の適性・能力に関係のない事項を採用基準に含めないことを原則としています。
このガイドラインは、企業側が本籍や家族状況などを尋ねることを想定したものですが、本人希望欄は応募者自身が任意に書き込む欄である点が異なります。つまり採用担当者にとって本人希望欄は、応募者が自発的に申告した数少ない条件情報であり、面接で口頭で話す内容よりも、配属先の検討や入社後の労働条件のすり合わせに直接使われやすい立場にあります。
だからこそ、本人希望欄に何を書くべきかを判断する材料になるのが、応募先企業の求人票や募集要項の読み込みです。勤務地が複数拠点にまたがる求人なのか、勤務時間に一定の幅がある求人なのかによって、書くべき希望の中身は変わります。本人希望欄は単独で考えるのではなく、企業研究で把握した募集条件と照らし合わせてから書くと、必要以上に強い希望を書いてしまうリスクを避けやすくなります。
履歴書の本人希望欄によくある疑問
最後に、本人希望欄についてよく寄せられる疑問をまとめました。
- 在職中の転職活動で、連絡可能な時間は必ず書くべきですか
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必須ではありませんが、日中の連絡が難しい事情がある場合は書いておくと、企業側との連絡がすれ違いにくくなります。書かなくても、面接の日程調整メールなどで伝えれば問題ありません。
- 職種を複数募集している求人で、希望職種を書いてもいいですか
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求人票に複数職種で募集と明記されている場合は、希望職種を簡潔に書いて問題ありません。ただし、応募要件に反する職種を希望すると選考上不利になる可能性があるため、求人内容と照らし合わせてから記入しましょう。
- 「貴社の規定に従います」と書くと、意欲がないと思われませんか
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そのようなことはありません。特別な希望がない旨を丁寧に伝える定型表現として広く使われており、むしろ「特になし」とだけ書くよりも、相手への配慮が伝わる書き方です。
- 通院や持病がある場合、本人希望欄にどこまで書けばいいですか
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診断名まで詳しく書く必要はありません。「月に一度通院のため、あらかじめご相談させてください」程度の簡潔な記載にとどめ、業務にどう配慮してほしいかは面接で直接説明する形にすると伝わりやすくなります。
本人希望欄は自分の言葉で簡潔に伝えよう
本人希望欄は、企業への配慮と自分の譲れない条件のバランスを取る欄です。特に希望がなければ「貴社の規定に従います」で十分ですし、伝えるべき事情があるなら、理由を添えて簡潔にまとめれば伝わります。新卒の就職活動でも転職活動でも、応募先の募集条件を確認したうえで、自分の言葉で書き切ることを意識してみてください。

