タクシー運転手のホワイトな会社の見分け方|拘束時間と職場認証の調べ方

「タクシーは歩合給だから、稼げるかどうかは自分次第。会社はどこも同じ」。求人票には月収の例や「未経験歓迎」「二種免許取得支援」といった言葉が並び、会社ごとの違いが見えにくいため、そう考える人は少なくありません。ところが、タクシー運転者の拘束時間には国の告示で上限があり、会社が受けた行政処分や、国の認証制度の結果も公開されています。外から確かめられる手がかりは、思っているより多いのです。

この記事では、タクシー運転者に当てはまる労働時間と賃金の決まりを押さえたうえで、ホワイトなタクシー会社に共通する4つの特徴と、公開されている情報で確かめる手順を、就活キャリア研究所の視点で整理します。

見分けるときの軸は、歩合の率の高さより先に、拘束時間が記録で管理されているかどうかです。賃金の決め方も免許取得の支援も、この軸の上に並べて比べると、会社ごとの違いが読み取れるようになります。

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目次

タクシー会社の働き方を入社前に確かめたい3つの理由

タクシー会社の働き方を入社前に確かめたいのは、賃金と働く時間の決まり方がほかの仕事と違い、違反も見つかっているからです。

賃金が運賃収入に応じて変わるから

タクシー運転者の賃金には、基本給に運賃収入に応じた歩合給を組み合わせる形があります。厚生労働省が公表した監督指導の事例でも、毎月の賃金が基本給と運賃収入に応じた歩合給で構成されていたタクシー事業者が取り上げられています(厚生労働省)。求人票の月収の例が、どれだけの運賃収入を前提にした数字なのかを確かめないと、自分の場合の額は見積もれません。

労働基準法は、出来高払制その他の請負制で使用する労働者について、労働時間に応じた一定額の賃金の保障を会社に求めています(第27条)(e-Gov法令検索)。賃金の決定、計算、支払の方法は、労働契約を結ぶときに書面の交付などで示すことが会社に義務づけられています(e-Gov法令検索)。運賃収入が少なかった月にいくらが保障されるのかも、この書面の賃金の欄で確かめておきましょう。

勤務の形で時間の上限が違うから

タクシー運転者の拘束時間と休息期間は、厚生労働大臣の告示「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」(改善基準告示)で決められています。拘束時間は労働時間と休憩時間を合わせた会社に拘束されている時間で、休息期間は勤務が終わってから次の勤務が始まるまでの時間です。告示は、始業と終業が同じ日に収まる日勤と、日をまたぐ隔日勤務とで、別の基準を置いています(厚生労働省)。

2024年4月1日以降、日勤の拘束時間は1か月288時間以内、1日13時間以内で、延長する場合も1日15時間が上限です。1日の拘束時間が14時間を超える回数は、週3回までが目安とされています。休息期間は継続11時間以上を与えるよう努めることを基本とし、9時間を下回ってはいけません。

隔日勤務の拘束時間は1か月262時間以内で、2暦日では22時間以内、かつ2回の隔日勤務を平均して1回21時間以内です。休息期間は継続24時間以上を与えるよう努めることを基本とし、22時間を下回ってはいけません。同じ1か月の拘束時間でも、日勤と隔日勤務では上限が26時間違います。求人票に勤務の形が書かれていたら、どちらの基準が当てはまるかを先に確かめましょう。

監督指導で違反が多く見つかっているから

厚生労働省によると、令和7年に全国の労働基準監督署などが監督指導を行ったハイヤー・タクシーの事業場は303で、その90.4%にあたる274事業場で労働基準関係法令の違反が見つかりました。主な違反は、労働時間に関するものが135事業場、割増賃金の支払に関するものが82事業場です(厚生労働省)。

改善基準告示の違反は126事業場で見つかり、多い順に最大拘束時間が88事業場、総拘束時間が72事業場、休息期間が39事業場でした。この監督指導は法令違反が疑われる事業場を対象にしたものなので、90.4%を業界全体の違反率と読むことはできません。それでも、違反の中身が時間の管理に集まっている点は、会社を選ぶときの手がかりになります。

ホワイトなタクシー会社に共通する4つの特徴

タクシー会社を見極める4つの視点を示した図(拘束時間・歩合の率・免許の支援・職場認証)

ホワイトなタクシー会社には、時間、賃金、免許、認証の4つの面で共通する特徴があります。

  1. 拘束時間と休息期間を記録で管理していること
  2. 歩合の率が売上に応じて段階的に上がらないこと
  3. 二種免許の取得費用の扱いが書面で決まっていること
  4. 国の働きやすい職場認証を受けていること

拘束時間と休息期間を記録で管理していること

改善基準告示の上限を守るには、運転者ごとに始業と終業の時刻を記録し、拘束時間と休息期間を数える仕組みが要ります。厚生労働省のポータルサイトでは、始業・終業の時刻や運転時間を入力して告示の守られ方を確かめられるソフトも配布されています(厚生労働省)。

記録は例外の扱いにも関わります。事故や故障、災害などで運行が遅れたときの対応時間は、客観的な記録で確かめられる場合に限り、1日や2暦日の拘束時間から除くことができます。この対応時間を含めて日勤の1日の拘束時間が15時間を、隔日勤務の1回の拘束時間が22時間を超えた場合は、勤務の後に、日勤なら継続11時間以上、隔日勤務なら継続24時間以上の休息期間が要ります(厚生労働省)。

休日に働かせるのは2週間に1回までで、その労働で拘束時間の上限を超えてはいけません(厚生労働省)。勤務表の組み方と、拘束時間の記録を誰がどう確かめているかを、具体的に説明できる会社を選びましょう。

歩合の率が売上に応じて段階的に上がらないこと

運賃収入などに応じて歩合給の額が非連続的に増減する仕組みを「累進歩合制度」といいます。厚生労働省は累進歩合制度について、長時間労働やスピード違反を極端に誘発するおそれがあり、交通事故の発生も懸念されるとして、採用することは望ましくないとし、その廃止を指導しています。令和7年の監督指導をまとめた公表資料では、累進歩合制度を採っていたタクシー事業者が指導を受け、歩合給の支給割合を一律にした事例も紹介されています(厚生労働省)。

歩合給を含めた賃金が最低賃金を下回っていないかも見ておきます。歩合給は、賃金の締切期間ごとに歩合給の総額を、歩合給で働いた総労働時間数で割って時間あたりの額に直します(e-Gov法令検索)。基本給と歩合給を組み合わせた賃金では、月給の基本給などの固定給も1か月平均の所定労働時間数で割って時間あたりの額に直し、2つを足した額を最低賃金と比べます(厚生労働省)。賞与、所定労働時間を超えた労働や所定の労働日以外の労働に対する賃金、深夜の割増分、精皆勤手当、通勤手当、家族手当などは含めません(厚生労働省)。地域別最低賃金の額は都道府県ごとに違います(厚生労働省)。

二種免許の取得費用の扱いが書面で決まっていること

普通自動車のタクシーで乗客を運ぶには、普通第二種免許が要ります(道路交通法第86条)(e-Gov法令検索)。受験できるのは、原則として21歳以上で、普通免許などを受けていた期間が通算3年以上の人です。政令で定める経験がある人は通算2年以上で受験できます。受験資格特例教習を修了すれば、19歳以上で通算1年以上でも受験できます(警察庁)。

未経験で入社する場合は、免許の取得費用を会社が負担するのか、貸し付けて一定期間勤めれば返済を免除するのか、一定期間内に辞めたら返済を求めるのかを確かめます。労働基準法第16条は、労働契約の不履行について違約金を定めたり、損害賠償額を予定したりする契約を禁じています(e-Gov法令検索)。費用の扱いと、免許を取るまでの期間の給与を、入社前に書面で確かめておきましょう。

国の働きやすい職場認証を受けていること

国土交通省の働きやすい職場認証制度は、トラック・バス・タクシー事業者の職場環境改善の取組みを「見える化」し、求職者の運転者への就職を促す目的で、令和2年度に創設されました。正式名称は運転者職場環境良好度認証制度です。審査では、次の6分野の取組みを見ます(国土交通省)。

  1. 法令遵守等
  2. 労働時間・休日
  3. 心身の健康
  4. 安心・安定
  5. 多様な人材の確保・育成
  6. 自主性・先進性等

自主性・先進性等は「二つ星」と「三つ星」の要件で、「一つ星」では参考点として点数化されます。二つ星は令和4年度、三つ星は令和5年度に加わりました。受付と審査は国土交通省の指定を受けた一般財団法人日本海事協会が行い、ハローワークの求人票に認証マークを表示する取組みも行われています。認証は会社が申請して受けるものなので、認証がないことだけで働きにくい会社とは言えませんが、受けている会社は労働時間や健康の取組みについて外部の審査を通っています。

公開されている情報でタクシー会社を確かめる手順

タクシー運転手のホワイトな会社の見分け方について公開されている情報を確かめている場面のイラスト

タクシー事業(一般乗用旅客自動車運送事業)を営むには、道路運送法にもとづく国土交通大臣の許可が要り、許可を受けた事業者が法令に違反すると行政処分の対象になります(e-Gov法令検索)。気になる会社が見つかったら、応募する前に次の3つの手順で公開されている情報をたどっておくと、面接で尋ねることがはっきりします。

STEP1

国土交通省の自動車運送事業者の行政処分情報の検索で、事業の種類に「タクシー」を選び、営業所のある都道府県や事業者名で調べます(国土交通省)。処分の年月日を指定して絞り込むこともできます。地方運輸局長などが行った行政処分が、処分の翌月末をめどに掲載されます。

STEP2

働きやすい職場認証制度の認証事業者の検索サイトで社名を調べ、認証を受けているかを確かめます(働きやすい職場認証制度)。制度の説明や認証の種類は、制度の公式サイトにまとめられています(働きやすい職場認証制度)。

STEP3

厚生労働省の職場情報総合サイトで社名を調べ、月平均の所定外労働時間や年次有給休暇の取得率などが公表されていないかを見ます(厚生労働省)。

STEP1の検索で社名が出てこなくても、掲載の対象から外れた古い処分や、まだ掲載されていない直近の処分はあり得ます。処分が載っていた場合は、処分の種類と違反点数も見ておきましょう。検索画面では、事業改善命令や事業停止処分、文書警告といった処分の種類と、20点未満か20点以上かという違反点数でも絞り込めます。

タクシー運転者の労働時間に関わる3つの例外

タクシー運転者の労働時間には、一般の会社員と違う決まりと、告示の中の例外があります。応募先の働き方がどれに当たるかで、上限の数字が変わります。

年960時間の時間外労働の上限

自動車運転の業務には2024年4月から時間外労働の上限規制が適用され、時間外労働は原則として月45時間・年360時間以内、特別条項付きの36協定(時間外労働と休日労働についての労使協定)を結ぶ場合でも年960時間が上限です。一般の労働者と違い、時間外労働と休日労働の合計を月100時間未満、2〜6か月平均80時間以内とする規制と、月45時間を超えられるのは年6か月までとする規制は適用されません(厚生労働省)。労働基準法は、この特例の対象に一般乗用旅客自動車運送事業の業務を明記しています(第140条)(e-Gov法令検索)。

車庫待ち等の拘束時間の延長

顧客の需要に応じるため常態として車庫などで待機する「車庫待ち等」の運転者は、日勤なら労使協定で1か月の拘束時間を300時間まで延ばせます。勤務終了後に継続20時間以上の休息期間を与え、1回の勤務の拘束時間を24時間以内にするなどの要件を満たせば、1日の最大拘束時間15時間を超えて勤務を組むこともできます(厚生労働省)。

隔日勤務の車庫待ち等では、労使協定で1か月270時間まで延ばせます。夜間4時間以上の仮眠を与えるなどの要件を満たせば、2暦日の拘束時間を24時間まで、1か月の拘束時間をさらに10時間延ばせます。車庫待ち等でない隔日勤務でも、地域的事情その他の特別の事情があれば、労使協定で年6か月まで1か月270時間に延ばせます。勤務の形が車庫待ち等にあたるなら、延長の労使協定があるかと、仮眠の取り方を確かめましょう。

ハイヤー運転者への適用除外

営業所だけで運送の引受けをするハイヤーの運転者には、告示のうちタクシー運転者向けの拘束時間、休息期間、休日労働の規定が適用されません。かわりに、36協定で延長できる時間を月45時間・年360時間の限度時間以内とし、臨時的な特別の事情があっても年960時間以内とすることが求められます。会社は、必要な睡眠時間を確保できるよう、勤務終了後に一定の休息期間を与えなければなりません(厚生労働省)。

タクシー会社選びでよくある質問

タクシー会社を選ぶときによく出る疑問を4つ取り上げます。

二種免許がなくても応募できる?

応募の条件は会社の募集要項で確かめます。普通自動車のタクシーで乗客を運ぶには普通第二種免許が要るため、持っていない場合は、乗務を始める前に取得することになります(e-Gov法令検索)。取得までの期間の給与と、取得費用の扱いを応募の段階で確かめておきましょう。

日勤と隔日勤務はどう選べばいい?

1回の勤務の長さと、勤務の後の休みの長さで選びます。日勤は1日の拘束時間が原則13時間以内で、休息期間は9時間を下回ってはいけません。隔日勤務は2暦日の拘束時間が原則22時間以内で、勤務の後の休息期間は22時間を下回ってはいけません(厚生労働省)。生活の時間帯を毎日そろえたいか、まとまった休みを続けて取りたいかで考えてみてください。

行政処分を受けた会社は避けたほうがいい?

処分の種類と違反点数、処分を受けた時期で重さが違うため、まず中身を確かめます。国土交通省の検索では、処分の種類や違反点数を事業者ごとに見られます(国土交通省)。処分が載っていた会社には、面接でその後に何を改めたのかを尋ね、答えの具体性で判断しましょう。

36協定の中身は入社前に分かる?

入社前に知りたいときは、面接で時間外労働を月何時間、年何時間で協定しているかを尋ねます。年960時間の上限に対して、どこまで余裕を持たせているかが分かります。入社後は、就業規則や36協定が作業場への掲示や書面の交付などの方法で周知されることが、労働基準法で会社に義務づけられています(第106条)(e-Gov法令検索)。

歩合の率より先に拘束時間の管理を確かめよう

タクシー運転者の拘束時間と休息期間は、改善基準告示で日勤と隔日勤務ごとに決まっており、時間外労働の上限も一般の会社員と違います。会社が受けた行政処分と国の職場認証は誰でも検索でき、賃金の計算方法は、労働契約を結ぶときに書面の交付などで示すことが会社に義務づけられています。

行政処分と認証の有無を調べたら、面接では勤務の形、拘束時間の記録のとり方、歩合の率の決め方、二種免許の費用の扱いを尋ねてみてください。「稼げるかどうかは自分次第」と考える前に、会社が時間と賃金の決まりをどう守っているかを確かめて、長く続けられる会社を選んでいきましょう。

この記事の著者情報

株式会社ネット風評被害対策 代表取締役 内村淳

ネット風評被害対策の専門家として15年以上の実績を持つ。
風評被害誹謗中傷対策・サジェスト対策・逆SEO対策・SNS炎上対応など、企業のWebリスク解決を累計10,000社以上支援。
ネット誹謗中傷対策に特化した法律事務所に1年間従事し、法的観点からの対応知見を習得。IT技術と法的アプローチの双方に携わってきた経験を持つ。
あらゆるネット風評被害対策支援に加え、企業向けコンサルティングや同業他社へのサービス提供も行う。
現在、日々進化するAI検索エンジンのアルゴリズムを徹底解析し、AI検索時代に適応した次世代の風評対策に注力している。

著書: 『AI時代のネット風評被害対策』(Kindle出版) ↗

発信活動: ネット風評被害対策に関する情報をnoteでも発信しています。 note ↗

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