「JR東海の子会社なら、どこも東海道新幹線を走らせる仕事に関わっているはず」。JR東海のグループ会社を調べ始めた方は、こう考えて候補を並べがちです。連結の外部顧客への売上高のうち81.8%を、東海道新幹線を含む運輸業が占めているためです。
ところが、JR東海(東海旅客鉄道)の有価証券報告書で連結子会社27社の事業区分を数えると、運輸業に入るのは3社だけです(東海旅客鉄道)。運輸業で働く19,273人のうち18,402人はJR東海本体の社員で、子会社の多くは、駅ビルや百貨店の運営、鉄道車両の製造、線路や車両の保守を受け持つ会社です。
この記事では、JR東海の子会社を資本金や女性管理職比率などの公表された数字で並べ、平均年間給与が分かる範囲と、公開資料で自分で確かめる手順まで、就活キャリア研究所の視点で整理します。数字は特に断りがない限り、JR東海が2026年6月22日に提出した第39期(2025年4月1日から2026年3月31日まで)の有価証券報告書に記載されたものです。
JR東海の子会社ランキングが定まらない3つの理由
JR東海の子会社の順位がサイトごとに違うのは、数える範囲、年収の出どころ、社名の表記の3つが、記事によってそろっていないからです。
数える範囲で社数が変わるから
JR東海の子会社の数は、どこまでを数えるかで変わります。第39期の有価証券報告書で、決算に取り込まれる連結子会社は27社、持分法を適用する関連会社は新生テクノス㈱と鉄道情報システム㈱の2社です。このほかに名古屋熱供給㈱などの非連結子会社があり、いずれも小規模で連結財務諸表に重要な影響を及ぼさないとして、連結の範囲から外されています。持分法を適用していない関連会社には、㈱交通新聞社などがあります。
JR東海のグループ採用サイトの関係会社一覧には40社が載っています(東海旅客鉄道)。連結子会社27社のほかに、関連会社の新生テクノス㈱や、㈱ADDIX、新幹線メンテナンス東海㈱なども並んでいます。
連結子会社の数は期ごとに変わり、第39期には、中央リネンサプライ㈱が重要性の低下を理由に連結の範囲から外れています。どの範囲を数えたかで、順位表に載る会社の顔ぶれが変わります。
有価証券報告書で年収が分かる子会社は1社だけだから
子会社ごとの平均年間給与は、JR東海の有価証券報告書には載っていません。JR東海の「関係会社の状況」の注記によると、連結子会社27社のうち有価証券報告書を提出しているのは日本車輌製造㈱だけで、関連会社では新生テクノス㈱が提出しています。
JR東海の報告書の「従業員の状況」に載る平均年間給与も、提出会社であるJR東海本体の数字で、子会社で働く人は含まれません。日本車輌製造㈱以外の連結子会社26社については、有価証券報告書から平均年間給与を確かめる方法がありません。
社名の表記が資料ごとに違うから
JR東海の子会社の社名は、資料の時点によって表記が違います。ジェイアール東海不動産㈱は、2025年7月にJR東海不動産㈱へ社名を変えました(JR東海不動産)。第39期の有価証券報告書で㈱ジェイアール東海ホテルズと書かれている会社は、2026年10月1日時点のJR東海の連結子会社一覧では(株)JR東海ホテルズと表記されています(東海旅客鉄道)。
古い社名だけで検索すると、同じ会社の新しい情報を見落とします。順位表を見るときは、載っている社名が最新の一覧と合っているかも確かめておくと、記事がいつの情報で作られたのかの見当がつきます。
公表データで並べたJR東海の子会社ランキング
JR東海の子会社を公表された数字で並べると、資本金の1位はジェイアールセントラルビル㈱、女性管理職比率の1位は㈱ジェイアール東海ツアーズです。有価証券報告書で平均年間給与を比べられる連結子会社は日本車輌製造㈱の1社だけなので、JR東海本体と関連会社を加えた3社で並べます。
資本金で並べた上位5社
連結子会社27社を、第39期の「関係会社の状況」に書かれた資本金の大きい順に並べると、上位5社は次のとおりです。
- ジェイアールセントラルビル㈱:450億円、不動産業
- JR東海不動産㈱:165億円、不動産業
- 日本車輌製造㈱:118億1,000万円、その他
- ㈱ジェイアール東海髙島屋:100億円、流通業
- 新横浜ステーション開発㈱:93億400万円、不動産業
上位5社のうち3社が不動産業の会社で、6位の東京ステーション開発㈱は17億5,000万円と、5位から大きく離れます。資本金は会社の元手の大きさを示す数字で、従業員の数や給与の水準とは別のものです。
平均年間給与で並べた3社
有価証券報告書で平均年間給与を確かめられるのは、JR東海本体、関連会社の新生テクノス㈱、連結子会社の日本車輌製造㈱の3社です。いずれも2026年3月31日現在の各社単体の数字で、賞与と基準外賃金を含みます。
- JR東海(本体):8,605,695円、従業員18,518人、平均年齢37.0歳、平均勤続年数16.3年
- 新生テクノス㈱(関連会社):7,968,071円、従業員1,263人、平均年齢42.5歳、平均勤続年数15.1年
- 日本車輌製造㈱(連結子会社):7,026千円、従業員2,061人、平均年齢40.3歳、平均勤続年数16.1年
3社は平均年齢も事業も違うため、同じ年齢の社員どうしの給与を比べた数字ではありません。日本車輌製造㈱は、JR東海が2008年10月に連結子会社とした会社です。JR東海が議決権の51.2%を持ち、日本車輌製造㈱自身は東京証券取引所プライム市場と名古屋証券取引所プレミア市場に上場しています(日本車輌製造)。日本車輌製造㈱の社員2,061人のうち1,076人は鉄道車両事業に属し、残りは建設機械事業、輸送用機器・鉄構事業、エンジニアリング事業と全社共通の部門に分かれています。
新生テクノス㈱は、JR東海から電気設備の建設工事や保守修繕工事などを受託している会社で、JR東海が議決権の23.2%を持つ関連会社です。有価証券報告書を提出していますが、株式は非上場です(新生テクノス)。有価証券報告書を出している会社が、上場しているとは限りません。
女性管理職比率で並べた上位3社
JR東海の有価証券報告書には、連結子会社17社の管理職に占める女性の割合と、16社の男性の育児休業取得率が会社ごとに載っています。管理職に占める女性の割合が高い順に並べると、上位3社は次のとおりです。
- ㈱ジェイアール東海ツアーズ:34.4%
- ㈱JR東海リテイリング・プラス:22.0%
- ㈱ジェイアール東海髙島屋:17.1%
同じ割合は、JR東海本体では2.8%です。男性の育児休業取得率が100%の子会社は8社あり、ジェイアール東海バス㈱やJR東海不動産㈱などが含まれます。ただし取得率は、育児目的の休暇を含めて数える会社と含めない会社があり、JR東海不動産㈱など3社の数字には算出方法を示す注記の番号が付いていません。取得率を比べるときは、注記の番号で算出方法がそろっているかを見てください。
JR東海の子会社を見極める4つのポイント

JR東海の子会社1社を詳しく調べるときは、有価証券報告書の「関係会社の状況」と「従業員の状況」から次の4つを書き出すと、順位表がなくてもグループの中での位置づけが分かります。
- 議決権の所有割合
- 事業の区分
- 従業員の数
- 関係内容の欄
議決権の所有割合
連結子会社27社のうち18社は、JR東海が議決権の100.0%を持つ会社です。100%に届かない9社のうち、割合が低いのは日本車輌製造㈱の51.2%、豊橋ステーションビル㈱の57.5%、㈱ジェイアール東海髙島屋の61.2%です。残る6社は70.0%から99.0%の間にあり、JR東海のほかにも株主がいる会社です。
割合の欄に括弧が付く会社は、ほかのグループ会社を通じた間接所有を含みます。ジェイアール東海フードサービス㈱は100.0%のうち48.4%が間接所有で、公式サイトの連結子会社一覧では出資比率が51.6%と書かれています。有価証券報告書の割合から間接所有の分を引くと、公式サイトの出資比率と一致します。
事業の区分
JR東海の事業区分は運輸業、流通業、不動産業、その他の4つで、連結子会社27社は次のように分かれます。その他には、ホテル業、旅行業、広告業、鉄道車両等製造業、建設業などが含まれます。
- 運輸業の3社:ジェイアール東海物流㈱、ジェイアール東海バス㈱、㈱JR東海交通事業
- 流通業の4社:㈱ジェイアール東海髙島屋、㈱JR東海リテイリング・プラス、ジェイアール東海フードサービス㈱、ジェイアール東海商事㈱
- 不動産業の10社:ジェイアールセントラルビル㈱、JR東海不動産㈱、新横浜ステーション開発㈱、東京ステーション開発㈱、静岡ターミナル開発㈱、浜松ターミナル開発㈱、名古屋ステーション開発㈱、ジェイアール東海静岡開発㈱、豊橋ステーションビル㈱、ジェイアール東海関西開発㈱
- その他の10社:㈱ジェイアール東海ホテルズ、㈱ジェイアール東海ツアーズ、㈱JR東海エージェンシー、日本車輌製造㈱、ジェイアール東海建設㈱、ジェイアール東海情報システム㈱、日本機械保線㈱、JR東海財務マネジメント㈱、JR東海テクノクリエイト㈱、ジェイアール東海コンサルタンツ㈱
第39期の外部顧客への売上高は、運輸業が約1兆6,417億円、流通業が約1,745億円、その他が約1,345億円、不動産業が約555億円です。営業利益にあたるセグメント利益も、運輸業の約7,675億円に対して、不動産業は約253億円、その他は約245億円、流通業は約158億円です。子会社の数が10社と多い不動産業は、売上高では4つの区分のうち最も小さい区分です。
従業員の数
連結の従業員29,569人を区分ごとに分けると、運輸業19,273人、流通業2,937人、不動産業668人、その他6,691人です。このうちJR東海本体の社員は運輸業18,402人と不動産業116人で、流通業とその他で働く人はすべて子会社で働く人です。
流通業では、臨時従業員の年間平均雇用人員が5,713人と、就業人員2,937人の2倍近くにのぼります。流通業の会社に応募するなら、正社員と臨時従業員の役割の分け方を面接で尋ねておくと、配属後の仕事の姿をつかみやすくなります。
関係内容の欄
「関係内容」の欄には、子会社がJR東海とどんな取引をしているかが一文で書かれています。27社すべてで、JR東海との役員の兼任等が「有」とされています。27社のうち9社は、JR東海が業務を委託している会社です。日本機械保線㈱は軌道等の保守修繕工事等を、㈱JR東海交通事業は駅の出改札業務等を、ジェイアール東海情報システム㈱はシステム開発や改修業務等を、それぞれJR東海から委託されています。
反対に、日本車輌製造㈱はJR東海が鉄道車両等を買う相手で、ジェイアール東海商事㈱はJR東海が燃料や諸用品を買う相手です。不動産業のうち8社は、JR東海から駅構内用地等を借りて駅ビル業などを営んでいます。本体から仕事を受ける会社か、本体に物を売る会社か、本体の土地を借りて自ら商売をする会社かで、日々の仕事の相手は大きく変わります。
公開資料でJR東海の子会社を確かめる手順

JR東海の子会社を自分で確かめるには、有価証券報告書、公式サイトの一覧、各社の開示資料の3つを順にたどります。
STEP1の有価証券報告書は2026年3月31日現在を中心にした内容で、STEP2の公式サイトの一覧は2026年10月1日時点の内容です。報告書の提出後に変わった社名は、公式サイトの一覧で拾えます。STEP1の報告書の「従業員の状況」には、連結子会社17社の男女の賃金の差異も会社ごとに載っています。
JR東海の子会社に関するよくある質問
- JR東海の子会社は何社ありますか
-
第39期の有価証券報告書では、連結子会社が27社、持分法を適用する関連会社が2社です(東海旅客鉄道)。このほかに、小規模なため連結の範囲から外された名古屋熱供給㈱などの非連結子会社があります。
- 子会社ごとの年収は調べられますか
-
有価証券報告書で調べられる連結子会社は日本車輌製造㈱だけです。日本車輌製造㈱の第197期の有価証券報告書では、2026年3月31日現在の平均年間給与が7,026千円、従業員が2,061人です(日本車輌製造)。ほかの連結子会社26社は有価証券報告書を提出しておらず、JR東海の報告書にも子会社ごとの平均年間給与は載っていないため、有価証券報告書で確かめることはできません。
- 新生テクノスはJR東海の子会社ですか
-
子会社ではなく、持分法を適用する関連会社です。JR東海が議決権の23.2%を持ち、JR東海は新生テクノス㈱に電気設備の建設工事や保守修繕工事などを委託しています。新生テクノス㈱は有価証券報告書を提出していますが、株式は上場していません。
- 鉄道を運営する子会社はありますか
-
㈱JR東海交通事業は、JR東海の在来線の駅業務などを受託するほか、城北線(枇杷島駅から勝川駅の間)の鉄道運営を行っています(東海旅客鉄道)。東海道新幹線と東海地方の在来線の鉄道事業は、JR東海本体が営んでいます。
公表された数字で子会社を並べ直そう
JR東海の連結子会社27社のうち、運輸業に入るのは3社で、子会社の多くは駅ビルや百貨店、ホテル、車両の製造や設備の保守を受け持っています。平均年間給与を有価証券報告書で確かめられる連結子会社は日本車輌製造㈱だけですが、資本金なら27社を、女性管理職比率なら17社を、同じ物差しで並べられます。
子会社の順位表を見かけたら、その数字がどの書類の、どの範囲の数字なのかを確かめてください。そのうえで議決権、事業区分、従業員の数、関係内容を自分で書き出し、志望先がグループの中で何を受け持つ会社なのかをつかんでから、応募先を決めていきましょう。

