「岐阜で入ってはいけない運送会社を、一覧で知りたい」。ドライバーの求人を見比べていると、そう考える方は多いはずです。掲示板や口コミには社名入りの評判が並んでいて、集めれば避けるべき会社が分かりそうに見えるからです。
ところが、会社を見分ける手がかりとして確かなのは、噂を集めた一覧ではなく国の機関が公表している記録です。岐阜労働局によると、令和7年に県内の労働基準監督署が監督指導を行ったトラックの事業場63のうち、40の事業場で労働基準関係法令の違反が、41の事業場で改善基準告示の違反が見つかりました(岐阜労働局)。改善基準告示は、トラックなどの運転者の拘束時間の上限と、勤務と勤務の間に空ける休息期間の下限を定めた国の基準です。応募先で最初に確かめたいのは、評判よりも1日の拘束時間と休息の取り方です。
この記事では、特定の会社名を挙げることはしません。岐阜労働局の監督結果から違反の傾向を読み取り、中部運輸局と国土交通省が公表している処分の記録で応募先を確かめる方法を、就活キャリア研究所の視点で順に整理します。
岐阜の運送会社が外から見分けにくい3つの理由
岐阜の運送会社が外から見分けにくいのは、運輸局の処分の資料が管内5県分をまとめた形で作られ、労働局の監督結果は社名を伏せた集計で、求人票からは拘束時間が読み取れないからです。
処分の記録は中部運輸局の5県分でまとまっている
岐阜県の運輸行政を担っているのは、名古屋市中区三の丸に庁舎を置く中部運輸局です。管内には愛知・静岡・岐阜・三重・福井の各県に運輸支局が置かれています(中部運輸局)。岐阜運輸支局は岐阜市日置江にあり、運送事業の許認可と監査は輸送・監査担当が受け持っています(中部運輸局)。
ここで知っておきたいのは、許可を受けた事業者の一覧や行政処分の公表資料が、県ごとではなく中部運輸局の管内5県分をまとめた形で作られていることです。岐阜県の会社を調べるときは、5県分の資料の中から岐阜県内の営業所を探すことになります。
労働局の監督結果は社名を出さない集計
労働時間や賃金の決まりが守られているかを調べるのは、厚生労働省の岐阜労働局と、県内7か所の労働基準監督署です。岐阜労働局は、令和7年に運転者を使う事業場へ行った監督指導の結果を取りまとめて公表しましたが、数字はトラック、バス、ハイヤー・タクシー、その他という業種ごとの集計で、社名は載っていません(岐阜労働局)。
社名が分かる形で公表されているのは、労働基準関係法令に違反した疑いで送検された事案です。岐阜労働局は、こうした事案を企業・事業場の名称や所在地、違反した法条とともに「労働基準関係法令違反に係る公表事案」として掲載しています(岐阜労働局)。監督結果は県内の傾向をつかむ資料、公表事案は個別の会社を調べる資料として使い分けます。
求人票の勤務時間だけでは拘束時間が分からない
改善基準告示でいう拘束時間は、労働時間と休憩時間を合わせた、使用者に拘束されている時間のことです。会社へ出社して始業してから、仕事を終えて退社するまでの時間を指します(厚生労働省)。求人票に書かれるのは所定の勤務時間ですが、運送の仕事は運行の組み方によって始業と終業の時刻が日ごとに動きます。
求人票の「8時から17時」という表記だけでは、自分の1日の拘束時間がどれだけになるかは読み取れません。代表的な運行の出社時刻と帰社時刻を、具体的な例で尋ねる必要があります。
岐阜労働局の監督結果に見る違反の傾向
岐阜労働局の令和7年の監督結果では、監督指導を受けたトラックの事業場の6割を超える事業場で違反が見つかり、違反の中身は拘束時間と休息期間に集まっていました。
トラックの事業場63のうち40で法令違反
岐阜労働局は2026年9月25日付で、県下の7つの労働基準監督署が令和7年にトラック、バス、タクシーなどの運転者を使う事業場に行った監督指導の結果を発表しました。監督指導を行った事業場は83で、このうちトラックは63事業場です。トラックでは40事業場(63.5%)で労働基準関係法令の違反が、41事業場(65.1%)で改善基準告示の違反が見つかりました。主な違反事項は、労働時間が19事業場、割増賃金の支払いが4事業場、労働時間の把握が4事業場です(岐阜労働局)。
この割合は、監督指導を受けた事業場の中での割合で、県内の運送会社全体の割合ではありません。岐阜労働局は、法令違反の疑いがある事業場に監督指導を行うとしています(岐阜労働局)。全国では令和7年に4,123事業場が監督指導を受け、81.2%にあたる3,346事業場で労働基準関係法令の違反が、53.1%にあたる2,188事業場で改善基準告示の違反が見つかっています。全国の数字はバスやタクシーなども含めた合計です(厚生労働省)。
なお、改善基準告示のトラック運転者には、運送会社の運転者だけでなく、工場などの配達部門で運転を主な業務とする人も含まれ、拘束時間と休息期間の決まりは同じです(厚生労働省)。ただし、運送事業の許可が要るのは、他人の需要に応じて有償で貨物を運ぶ事業です(e-Gov法令検索)。自社の製品を自社のトラックで運ぶだけの会社は、運輸局の事業者一覧や処分の記録には載りません。岐阜労働局の集計でも、こうした製造業の事業場は「トラック」ではなく「その他」に数えられています(岐阜労働局)。応募先がこうした会社なら、後で紹介する手順のうち使えるのはSTEP3の岐阜労働局の公表事案です。
多い違反は1日の拘束時間と休息期間
トラックの事業場で見つかった改善基準告示の違反は、次の5項目に分けて集計されています(岐阜労働局)。1つの事業場で2つ以上の違反があれば、それぞれに数えられています。
- 1日の最大拘束時間:33事業場(52.4%)
- 休息期間:27事業場(42.9%)
- 連続運転時間:19事業場(30.2%)
- 最大運転時間:17事業場(27.0%)
- 1か月の総拘束時間:11事業場(17.5%)
同じ資料には、トラックの事業場への指導事例も載っています。36協定を結ばないまま時間外労働をさせ、1か月の拘束時間が352時間に達し、1日の拘束時間が15時間を超え、勤務の後の休息期間も9時間に満たない運転者がいた事業場です。指導の後、この事業場は36協定を結んで労働基準監督署に届け出ました。運行管理者が運転者の業務量を平準化し、1か月の総拘束時間を284時間以内に収めるなどして違反を是正しています(岐阜労働局)。
この事例で拘束時間の違反を解消したのは、運転者一人の努力ではなく、運行の組み方の見直しでした。応募の段階で、誰がどのように運行を組んでいるのかを尋ねる意味はここにあります。
監督を受けたトラック事業場の3年の推移
同じ資料には、令和5年から令和7年までのトラックの事業場の推移も載っています。監督指導を行った事業場は令和5年が151、令和6年が126、令和7年が63で、労働基準関係法令の違反が見つかった割合はそれぞれ74.8%、80.2%、63.5%でした(岐阜労働局)。
監督を行った事業場の数が年によって大きく違うため、違反の割合が下がったことだけで、県内の運送会社の状況が良くなったと読むことはできません。3年続けて、監督を受けたトラックの事業場の6割以上で違反が見つかっているという事実のほうが、応募先を選ぶうえでは参考になります。
入ってはいけない運送会社に共通する4つの特徴

入ってはいけない運送会社を見分けるときに確かめたいのは、監督結果で違反が多かった項目と、国が公表する処分の記録に関わる次の4つです。
- 1日の拘束時間を時刻で説明できない
- 休息期間が9時間を切る勤務がある
- 割増賃金の内訳を書面で示さない
- 行政処分の履歴を説明できない
1日の拘束時間を時刻で説明できない
トラック運転者の1日の拘束時間は、始業時刻から24時間のうちで13時間を超えないことが基本で、延長する場合も最大15時間までです。1週間の運行がすべて走行距離450キロメートル以上の長距離貨物運送で、休息期間を住所地以外の場所でとる場合に限り、週2回まで16時間にできます。1か月の拘束時間は原則284時間以内です。労使協定を結べば年6か月まで310時間まで延ばせますが、284時間を超える月は連続3か月までとされています(厚生労働省)。
時間外労働の上限も、2024年4月から原則月45時間・年360時間、臨時的な特別の事情がある場合でも年960時間になりました(厚生労働省)。運行を組むのは、営業所ごとに選任される運行管理者です(国土交通省)。
面接では、何時に出社して何時に帰ってくる運行が多いかを、代表的な例で尋ねてみてください。時刻で答えられない会社は、運転者の拘束時間を把握していない可能性があります。
休息期間が9時間を切る勤務がある
休息期間は、勤務を終えてから次の勤務を始めるまでの、使用者に拘束されない時間です。トラック運転者には、継続11時間以上を与えるよう努めることを基本とし、継続9時間を下回らないことが定められています。長距離貨物運送で休息期間を住所地以外でとる場合は、週2回まで継続8時間以上にできます。その場合は、運行が終わった後に継続12時間以上の休息期間を与えます(厚生労働省)。
運転の続け方にも決まりがあり、連続運転時間は4時間を超えないこととされています。運転の中断は1回おおむね10分以上で、合計30分以上が必要です。サービスエリアなどに駐車できずやむを得ない場合に限り、4時間30分まで延ばせます。このほか、休息期間の分割、2人乗務、隔日勤務、フェリーに乗る場合の特例があります(厚生労働省)。
岐阜労働局の監督結果では、休息期間の違反がトラックの27事業場で見つかっています。夜の運行が続く週の勤務表を見せてもらえるかどうかは、確かめる価値のある質問です。
割増賃金の内訳を書面で示さない
岐阜労働局の監督結果では、トラックの4事業場で割増賃金の支払いに関する違反が見つかっています(岐阜労働局)。固定残業代が何時間分を含むのか、超えた分は別に支払われるのか、歩合は何を基準に計算されるのか。この3点は、入社前に書面で確かめておきたいところです。
下限の確認も欠かせません。岐阜県最低賃金は令和8年10月1日から時間額1,121円で、それまでの1,065円から引き上げられました。岐阜県最低賃金は県内で働くすべての労働者に適用され、特定の産業別最低賃金が定められた産業で働く人には、どちらか高いほうが適用されます。月給の場合は、所定内賃金から精皆勤手当・通勤手当・家族手当の3つを差し引いた額を1時間あたりに換算し、最低賃金と比べます(岐阜労働局)。
行政処分の履歴を説明できない
国土交通省と地方運輸局は運送事業者に監査を行い、法令違反が見つかれば、文書警告、自動車の使用停止、事業停止、許可取消といった行政処分を行います。違反点数は営業所に付き、運輸局の単位で累計され、累積期間は原則3年です。ただし、処分日以前の2年間に点数が付いていない営業所と安全性優良事業所は、点数が付いた後に2年間無事故・無違反であれば点数が消えます(国土交通省)。
中部運輸局は、貨物運送事業者の行政処分等の状況を月ごとの資料で公表しており、2026年10月時点では令和3年度の9月分から令和8年度の8月分までが並んでいます(中部運輸局)。各月の資料には、処分の年月日、事業者と営業所の名称・所在地、処分の内容、主な違反の条項、違反行為の概要、点数が載っています。トラックのページには、管内の累積違反点数が21点以上になった事業者の一覧もあります。2026年10月時点では令和8年6月30日時点の内容で、事業者名、主たる事務所の所在地、管内の累積点数、主な違反項目が並んでいます(中部運輸局)。
岐阜労働局と中部運輸局は、改善基準告示違反などの監督の結果を互いに通報しています。岐阜労働局から中部運輸局への通報は令和5年が19件、令和6年が16件、令和7年が1件、中部運輸局から岐阜労働局への通報は同じ順に13件、7件、15件でした。合同での監督・監査も令和6年に4件、令和7年に1件行われています(岐阜労働局)。拘束時間の違反は労働局だけで完結せず、運輸局にも伝わる仕組みになっています。
岐阜の公開情報で運送会社を確かめる手順

応募先の候補が決まったら、次の3つの手順で公開されている記録を確かめます。どれも社名が分かれば誰でも調べられます。
中部運輸局の事業者一覧で、応募先の営業所が一般貨物自動車運送事業の許可を受けた事業者として載っているかを確かめます。営業所一覧は作られた時点の内容で、その後に許可を受けた会社は載っていません。一覧に無い場合は、同じページの新規許可事業者の月別一覧を、新しい月からさかのぼって確かめます(中部運輸局)。
岐阜労働局の公表事案のページで、労働基準関係法令違反の疑いで送検された事案に応募先が含まれていないかを確かめます(岐阜労働局)。
一つ注意があります。緑ナンバーのトラックで営む一般貨物自動車運送事業は貨物自動車運送事業法第3条で許可が必要ですが、軽自動車で営む貨物軽自動車運送事業は同法第36条にもとづき届出で始める仕組みです(e-Gov法令検索)。軽貨物の会社は許可を受けた事業者の一覧には載らないので、一覧に無いことだけで判断しないでください。
処分を受けた記録があるからといって、直ちに候補から外す必要はありません。いつ、どの営業所が、どんな違反で処分を受け、その後どう改めたのかを面接で尋ねられる状態にしておくことが大切です。
荷待ちや無理な依頼を相談できる窓口
長い荷待ちのように、運送会社が拘束時間を守れなくなる原因が荷主の側にあることもあります。岐阜労働局は、発着荷主などに長時間の荷待ちの改善などを求める要請を、令和7年に205件、令和8年1月から8月までに131件行いました(岐阜労働局)。厚生労働省も、荷主や元請運送事業者の都合による長時間の荷待ちについて、情報をメールで受け付けています。寄せた情報は、荷主や元請運送事業者に伝えられる場合があります(厚生労働省)。
国土交通省のトラック・物流Gメンも、荷主や元請事業者の監視にあたっています。岐阜運輸支局が2026年10月1日に出した発表資料には、Gメンが荷主などに対応する際、情報を提供した人を特定する情報(会社名など)は伝えないと書かれています(中部運輸局)。
岐阜県トラック協会の会員かどうか
岐阜県トラック協会は、岐阜県内で常時営業を営む貨物自動車運送事業者などを会員とする団体で、令和8年4月1日時点の会員企業数は977社です(岐阜県トラック協会)。協会は県警との連名で標章を贈る優良ドライバー認定制度を平成26年度から設けており、制度のページの見出しには認定者が155事業所・1,363名と示されています。認定の有効期限は1年です(岐阜県トラック協会)。
協会の会員かどうか、そして運転者をこの認定に推薦しているかを尋ねると、会社が安全運転をどう評価しているかが見えてきます。推薦の対象は会員事業所に所属する運転者なので、会員でない会社では使えない制度です。
岐阜の運送会社選びでよくある質問
最後に、岐阜県で運送会社を選ぶときによく寄せられる4つの疑問に答えます。
- 岐阜で入ってはいけない運送会社の一覧はありますか?
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国や県が、入ってはいけない会社として社名を並べた一覧を出しているわけではありません。行政処分を受けた事業者の名前は、中部運輸局の月別の資料(中部運輸局)と、国土交通省の行政処分情報検索(国土交通省)で公表されています。
- 監督結果の違反の割合は県全体の数字ですか?
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違います。令和7年のトラックの違反の割合63.5%は、監督指導を受けた63事業場の中での割合です。岐阜労働局は、法令違反の疑いがある事業場に監督指導を行うとしています(岐阜労働局)。
- 岐阜県の最低賃金はいくらですか?
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令和8年10月1日から時間額1,121円で、県内で働くすべての労働者に適用されます(岐阜労働局)。全国の令和8年度の一覧は厚生労働省のページで確かめられます(厚生労働省)。
- 労働時間のことはどこに相談できますか?
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労働基準監督署が、労働時間や賃金などの労働条件の相談を受け付けています。岐阜県には岐阜、大垣、高山、多治見、関、恵那、岐阜八幡の7署があり、岐阜労働局のページで各署の管轄区域と電話番号を確かめられます(岐阜労働局)。
噂の一覧より拘束時間の記録で選ぼう
岐阜県の運送会社を見分ける手がかりは、口コミの社名一覧ではなく、国の機関が公表している記録にあります。岐阜労働局の監督結果は、監督を受けたトラックの事業場の6割を超える事業場で違反が見つかり、その中身が1日の拘束時間と休息期間に集まっていることを示しています。
応募の前に、中部運輸局の事業者一覧と処分の記録、岐阜労働局の公表事案で会社の外形を確かめましょう。面接では、代表的な運行の出社と帰社の時刻、休息の取り方、割増賃金の内訳を尋ねてみてください。会社の評判ではなく拘束時間の記録を物差しにして、自分が長く続けられる会社を選んでいきましょう。

