理系大学生の就活は自由応募が主流|学校推薦は一割弱にとどまる理由

大学受験の情報サイトで「理系大学」と検索すると、偏差値ランキングや学部一覧はすぐに見つかります。一方で、理系大学に通う学生や理系学部への進学を考えている人が本当に知りたいのは、卒業後の就職活動でどのような違いが出るのかという点ではないでしょうか。

この記事では、就活キャリア研究所が各種調査データをもとに、理系大学生の就職活動の実態を整理します。学校推薦の利用率、大学院進学と就職の分かれ道、専攻分野ごとの就職先の傾向まで、数字に基づいて確認していきましょう。

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目次

理系大学とは何を指すのか

理系大学という言葉に法律上の定義があるわけではありません。一般的には、理学部・工学部・農学部・薬学部・情報学部といった、自然科学や工学の専門知識を扱う学部を中心に置く大学、またはそうした学部を含む総合大学を指す呼び方として使われています。

理系大学に含まれる主な学部

理系大学という括りに含まれる学部は幅広く、物理学や化学などを扱う理学部、機械・電気・情報系の技術を学ぶ工学部、生命科学や食料生産を扱う農学部、医療や創薬に関わる薬学部などが代表的です。近年は情報学部やデータサイエンス学部のように、従来の理学部・工学部の枠組みに収まりきらない新しい学部も増えています。

「理系大学」という呼び方と文系大学との違い

文系大学という言葉が文学部・法学部・経済学部などを指すのと同じように、理系大学という呼び方も、実験や数式を用いた専門教育が中心になる学部群を便宜的にまとめたものにすぎません。同じ大学の中に理系学部と文系学部の両方が設置されているケースも多く、大学単位よりも学部・学科単位で理系か文系かを判断したほうが、就職活動を考えるうえでは実態に近いでしょう。

理系大学生の就活は「自由応募」が主流という実態

理系の専攻分野ごとの学校推薦利用率を比較した図解。理系全体9%、機電系20%、情報系7%、土木系2%、化学系8%

理系の就職活動というと、教授の紹介で決まる学校推薦を思い浮かべる方も少なくないはずです。ですが、実際のデータを見ると、理系学生の就職活動の大部分は、自分で探して応募する自由応募によって進んでいます。

キャリタスリサーチが2025年3月卒業予定の理系大学生・大学院生を対象に実施した調査によると、就職を決めた企業への応募ルートは、理系全体で「完全な自由応募」が82.2パーセントを占め、「学校・教授推薦」は8.9パーセント、選考の途中から推薦扱いになる「後付推薦」も8.9パーセントにとどまりました。キャリタスリサーチ「2025年卒 理系学生の就職先企業(専攻分野別)」

専攻分野で大きく変わる学校推薦の利用率

学校推薦の利用率は、専攻分野によってかなりの差があります。同調査では、機械・電気系の学生で学校・教授推薦を利用した割合が20.3パーセントと比較的高かった一方、土木・建築系では自由応募が97.7パーセントを占め、推薦を使わずに内定を決めた学生がほとんどでした。情報系は6.7パーセント、化学・農学・薬学系は7.9パーセントと、いずれも1割に届いていません。

理系だから学校推薦を使うのが当たり前というイメージだけで進路を狭めてしまうと、実際には多数派である自由応募での就職活動の準備が手薄になりかねません。専攻分野ごとの傾向を踏まえたうえで、自分がどちらの活動スタイルに近いかを早めに見極めておくとよいでしょう。

学校推薦にもメリットとリスクがある

学校推薦は、大学や研究室と企業との間に築かれた信頼関係のうえに成り立つ仕組みで、選考が短期間で進みやすく、内定までたどり着きやすいという特徴があります。一方で、学校推薦を利用して得た内定は、大学の看板を背負って紹介してもらった経緯があるため、正当な理由なく辞退することは基本的に想定されていません。

推薦を受ける前に、その企業が本当に自分の志望と合っているのかを十分に確認しておかないと、辞退しづらい状況のまま入社先を決めることになりかねません。自由応募と並行して情報を集め、比較したうえで推薦を利用するかどうかを判断する姿勢が大切です。

理系大学院への進学が就活の分かれ道になる

大学の研究室でノートパソコンを見ながら考え込む白衣姿の理系学生のイラスト

理系大学生の就職活動を考えるうえで欠かせないのが、学部を卒業した時点で就職するか、大学院に進学してから就職するかという選択です。この選択の分かれ方は、文系学部とは大きく異なります。

文部科学省の令和7年度学校基本調査によると、学部卒業者のうち大学院に進学した割合は、理学系で47.5パーセント、工学系で40.4パーセント、農学系で28.1パーセントにのぼります。理学系の内訳を見ると、化学は61.8パーセント、物理学は59.6パーセントと、専攻によっては半数を大きく超える学生が大学院に進んでいます。一方、人文科学系は4.6パーセント、社会科学系は2.8パーセントにとどまり、理系と文系とでは進学の位置づけそのものが違うことがうかがえます。文部科学省「学校基本調査-令和7年度 結果の概要-」

理学部・工学部・農学部で異なる進学率

同じ理系でも、理学系と農学系とでは大学院進学率に20ポイント近い差があります。実験や研究の専門性を突き詰めるほど評価されやすい分野ほど大学院進学率が高くなる傾向があり、理系大学の中でどの学部・学科を選ぶかによって、卒業後は学部卒で就職する人が多数派なのか、大学院進学が当たり前の環境なのかが変わってくると考えられます。

大学院卒と学部卒で初任給にも差がある

厚生労働省の令和6年賃金構造基本統計調査によると、新規学卒者の初任給は大学卒で24万8,300円、大学院修士課程修了者で28万7,400円と、その差はおよそ3万9,000円でした(文系・理系を合わせた全体の平均値)。厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査 結果の概況」

この差が生涯にわたって続くとは限りませんが、専門性を高めた分だけ初任給に反映されやすいことを示す数字ではあります。大学院進学は就職を先延ばしにする選択ではなく、専門性を深めたうえで研究職や技術職を目指すための、もう一つの就職ルートと捉えたほうが実態に近いでしょう。

専攻分野によって就職先の傾向は大きく変わる

理系大学生の就職先は、専攻分野ごとにかなりはっきりとした傾向が見られます。同じ理系でも、機械・電気系と情報系、土木・建築系とでは、就職先の業種も職種もまったく異なる顔ぶれになるのです。

機械・電気系、情報系、土木・建築系それぞれの就職先

キャリタスリサーチの調査によると、就職を決めた業界は専攻分野ごとに次のように分かれています。

  1. 機械・電気系:1位「自動車・輸送用機器」28.9パーセント、2位「電子・電機」15.8パーセント、3位「機械・プラントエンジニアリング」14.5パーセント
  2. 情報系:1位「情報処理・ソフトウエア・ゲームソフト」44.6パーセント
  3. 土木・建築系:1位「建設・住宅・不動産」77.8パーセント
  4. 理系全体:1位「情報処理・ソフトウエア・ゲームソフト」13.6パーセント、2位「建設・住宅・不動産」11.6パーセント、3位「自動車・輸送用機器」10.5パーセント

就職を決めた職種を見ても、理系全体では「研究・開発・設計系」が38.5パーセントでもっとも多く、次いで「IT系」が24.3パーセントと続きます。キャリタスリサーチ「2025年卒 理系学生の就職先企業(専攻分野別)」「IT系」は情報系の学生に限らず、機械・電気系や化学・農学・薬学系でも上位に入っており、専攻を問わず幅広い理系学生の進路として選ばれていることがわかります。

専攻を活かした「理系就職」は6割程度にとどまる

専攻分野との関連を見ると、理系全体では60.5パーセントが専攻を活かした理系就職を選ぶ一方、30.0パーセントは専攻とは関係のない理系就職、9.5パーセントは文系職への就職を選んでいます。土木・建築系は86.4パーセントが専攻を活かした就職である一方、化学・農学・薬学系では50.8パーセントにとどまり、専攻分野によって専攻と就職先の結びつきの強さが異なります。

理系大学で学んだ内容と直接関係のない業界や職種を選んでも、専攻とは関係のない理系就職や文系就職という形で就職活動を進めている学生が一定数いることは、進路の選択肢を狭く考えすぎないための材料になるはずです。

理系人材は「売り手市場」なのに就活が長期化しやすい理由

理系人材は企業から引く手あまたと言われることがありますが、理系大学生自身の就職活動が短期間で終わるとは限りません。この一見矛盾するような状況には、企業側と学生側それぞれの事情が関係しています。

企業側は理系人材の採用計画を満たせていない

中部経済連合会が中部圏の会員企業680社を対象に実施したアンケート調査(2025年1月21日から2月19日、回答196社)によると、2025年春入社の大卒人材の採用充足率(採用計画数に対する採用実績数の割合)が90パーセント以上だったと回答した企業は、文系で61パーセントだったのに対し、理系ではわずか42パーセントにとどまりました。充足率70パーセント未満と回答した企業も、理系では38パーセントにのぼっています。中部経済連合会「特集 中部圏における大卒理系人材の採用難を巡る背景と対応の方向性」

この調査は中部圏の企業を対象にしたものですが、製造業を中心に理系人材の採用計画が計画どおり進んでいない企業が一定数存在する状況は、他の地域でも共通して語られやすい課題です。企業側から見れば理系学生は不足気味の存在であり、選考の間口自体は決して狭くないと考えられます。

志望業界が集中しやすいという理系側の事情

一方で、ワンキャリアが2026年卒業予定の大学生418人を対象に実施した調査によると、志望業界の1位「メーカー」を選んだ割合は理系で45.2パーセントと、文系の19.8パーセントの倍以上にのぼりました。2位の「IT・通信」も理系22.6パーセント、文系13.7パーセントとなっており、理系学生の志望が特定の業界に偏りやすい傾向がうかがえます。ONE CAREER「2026年卒 就活実態調査」

同じ調査では、理系学生の47.6パーセントが志望企業を2社から7社に絞り込んでおり、この割合は文系の38.7パーセントより高くなっています。企業全体としては理系人材が不足していても、専攻を活かせる範囲の業界に志望が集まりやすいため、人気の高い企業では理系同士の競争が激しくなりやすいという構図が見えてきます。

実際、キャリタスリサーチの調査では、就職を決めた企業が第一志望だったと回答した割合は理系全体で47.7パーセント、機械・電気系では56.6パーセントにのぼり、文系の37.0パーセントを上回っていました。志望を絞り込んで動く分、第一志望に近い企業から内定を得やすいという側面もあるようです。

理系大学生が就活を進めるうえで押さえておきたいポイント

ここまで見てきたデータを踏まえると、理系大学生が就職活動を進めるうえで意識しておきたいポイントが見えてきます。

STEP

研究や実験のスケジュールを早めに可視化しておきます。学会発表や実験の追い込み時期と、説明会やエントリーシートの提出時期が重なると、どちらも中途半端になりかねません。研究室の年間スケジュールを早い段階で把握し、忙しくなる時期の前後に就職活動の重点を置くように調整しておくと安心です。

STEP

研究内容を専門外の人にも伝わる言葉に置き換えておきます。面接官が必ずしも同じ専門分野の出身者とは限りません。専門用語をそのまま並べるのではなく、何を明らかにしようとして、どんな工夫をしたのかを、専門外の人にも伝わる平易な言葉で説明できるように準備しておくと、研究内容の価値が正しく伝わりやすくなります。

STEP

自由応募・学校推薦・インターン経由の情報を並行して集めておきます。前述のとおり理系学生の就職活動は自由応募が主流ですが、学校推薦やインターンシップ経由のルートも並行して情報を集めておくと、選択肢を狭めずに比較検討できます。1つのルートに絞り込む前に、複数の情報源を確認しておく姿勢が欠かせません。

よくある質問

理系大学生でも文系職に就職できますか

可能です。キャリタスリサーチの調査では、理系全体の9.5パーセントが専攻とは直接関係のない文系職に就職していると回答しています。専攻分野と就職先の結びつきは分野によって差があり、理系だからといって技術職や研究職に限定されるわけではありません。

理系は必ず大学院に進学したほうがよいのですか

必須ではありません。専攻分野によっては学部卒業時点で就職する学生のほうが多数派です。キャリタスリサーチのモニター構成を見ても、情報系や土木・建築系では学部生の割合が6割を超えており、大学院進学は分野ごとの傾向や自分のキャリアの方向性に応じて判断すべき選択といえます。

学校推薦を利用すると内定を辞退できませんか

学校推薦は大学と企業の信頼関係を前提にした仕組みのため、正当な理由なく辞退することは基本的に想定されていません。前述のとおり理系学生全体では自由応募が8割を超えているため、推薦を利用するかどうかは、他の応募ルートとも比較したうえで慎重に判断することをおすすめします。

データを踏まえて計画的に理系大学からの就活を進めよう

理系大学生の就職活動は、学校推薦だけで決まるものではなく、実際には8割以上が自由応募によって進んでいます。専攻分野によって推薦の利用率も就職先の業種も大きく異なり、大学院進学の位置づけも学部・学科ごとに変わってきます。

企業側の採用充足率が低く理系人材が不足している一方、理系学生自身の志望も特定の業界に集まりやすいため、売り手市場という言葉だけを鵜呑みにせず、専攻分野ごとの実態に基づいて準備を進めることが大切です。研究との両立を図りながら、自分の専攻や興味に合った複数のルートを比較し、納得のいく就職先を見つけていきましょう。

この記事の著者情報

株式会社ネット風評被害対策 代表取締役 内村淳

ネット風評被害対策の専門家として15年以上の実績を持つ。
風評被害誹謗中傷対策・サジェスト対策・逆SEO対策・SNS炎上対応など、企業のWebリスク解決を累計10,000社以上支援。
ネット誹謗中傷対策に特化した法律事務所に1年間従事し、法的観点からの対応知見を習得。IT技術と法的アプローチの双方に携わってきた経験を持つ。
あらゆるネット風評被害対策支援に加え、企業向けコンサルティングや同業他社へのサービス提供も行う。
現在、日々進化するAI検索エンジンのアルゴリズムを徹底解析し、AI検索時代に適応した次世代の風評対策に注力している。

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