「富士フイルムといえば、富士フイルムという1つの会社」。カメラやチェキから医療機器、複合機まで同じ「富士フイルム」の名前で売られているため、そう考えるのも無理はありません。ところが、東京証券取引所に上場しているのは持株会社の富士フイルムホールディングス株式会社で、その下に富士フイルム株式会社や富士フイルムビジネスイノベーション株式会社など258社の子会社があります。
有価証券報告書に平均年間給与が載っている子会社3社を年収で並べると、1位は旧富士ゼロックスの富士フイルムビジネスイノベーション株式会社です。2位が富士フイルム株式会社、3位が富士フイルムビジネスイノベーションジャパン株式会社で、1位と3位の差は約270万円あります。
本記事では、3社の年収の順位から、社名が変わってきた経緯、4つの事業の規模、自分で確かめる手順まで、富士フイルムホールディングスの第130期有価証券報告書と公式のグループ会社の情報をもとに、就活キャリア研究所の視点で順に整理します。
富士フイルムの子会社が分かりにくい3つの理由
富士フイルムの子会社が分かりにくいのは、名前の似た持株会社と事業会社が並び、主要な子会社の社名が2021年に変わり、社名の載る子会社の多くが海外の会社だからです。
持株会社と事業会社の社名が似ているから
上場している会社の正式な社名は、富士フイルムホールディングス株式会社です。この会社は2006年10月1日付で富士写真フイルム株式会社から社名を変え、富士写真フイルム株式会社の事業は、事業会社の富士フイルム株式会社が引き継ぎました(富士フイルムホールディングス)。創立は1934年1月20日です。「富士フイルム株式会社」は上場している親会社ではなく、2006年に事業を引き継いだ子会社です。
富士ゼロックスが社名を変えたから
富士フイルムビジネスイノベーション株式会社は、1962年2月に英国ランクゼロックス社との合弁で設立された富士ゼロックス株式会社です。2001年3月に株式の25%を追加で取得して出資比率を75%とし、連結子会社にしました(富士フイルムホールディングス)。2019年11月にさらに25%を追加で取得し、完全子会社にしています。
2021年4月、富士ゼロックス株式会社は社名を富士フイルムビジネスイノベーション株式会社に変えました。同じ月に、富士ゼロックスの国内営業部門と国内の全販売会社を統合して、富士フイルムビジネスイノベーションジャパン株式会社が設立されています。求人や会社の情報は、富士ゼロックスではなく富士フイルムビジネスイノベーションの名前で探します。
社名の載る子会社の多くが海外の会社だから
2026年3月31日時点の子会社は258社、関連会社は27社です。有価証券報告書の関係会社の状況に社名が載る連結子会社は50社で、残りの208社は「その他」とまとめられています。
社名が載る50社のうち、所在地が日本の会社は13社で、37社は米国、欧州、アジア、オセアニアなどの会社です。バイオ医薬品の受託製造を担うFUJIFILM Diosynth Biotechnologiesの各社のように、日本の就職活動ではあまり名前を見ない会社も並びます。社名の載る子会社の7割以上が、海外の会社です。
年収で並べた富士フイルムの子会社ランキング
有価証券報告書に平均年間給与が載る子会社の中で、最も高いのは富士フイルムビジネスイノベーション株式会社です。報告書は「最大人員会社等の状況」として子会社3社の数字を載せており、2026年3月31日時点の平均年間給与で並べると次の順になります。平均年間給与には賞与と基準外賃金が含まれます。
- 富士フイルムビジネスイノベーション株式会社 10,590,463円:従業員3,875人、平均年齢44.2歳、平均勤続年数18.9年
- 富士フイルム株式会社 10,396,228円:従業員4,338人、平均年齢42.9歳、平均勤続年数17.3年
- 富士フイルムビジネスイノベーションジャパン株式会社 7,893,833円:従業員9,591人、平均年齢43.2歳、平均勤続年数20.2年
持株会社の富士フイルムホールディングスの平均年間給与は10,855,077円(1,198人)です。ただし、この会社の従業員は富士フイルム株式会社や富士フイルムビジネスイノベーション株式会社などからの出向者です。グループ会社からの機能移管と制度統合の影響を除くと11,649,362円になると注記されています。
子会社3社については、管理職に占める女性労働者の割合と、男性労働者の育児休業取得率も載っています。富士フイルムビジネスイノベーション株式会社は9.6%と85.0%、富士フイルム株式会社は7.6%と84.4%、富士フイルムビジネスイノベーションジャパン株式会社は8.2%と75.6%です。
富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
富士フイルムビジネスイノベーション株式会社は、ビジネスイノベーション部門の事業戦略を統括し、関連する製品・サービスの製造と販売を行う会社です。富士フイルムホールディングスが議決権の100.0%を直接持ち、資本金は200億円です。平均年間給与は前の年から5.32%増えました。
この会社の会社概要は、単独正社員数を5,946名(2026年3月31日時点)としています(富士フイルムビジネスイノベーション)。有価証券報告書の3,875人は就業人員で数えた人数で、会社概要の正社員数とは数え方が違います。
富士フイルム株式会社
富士フイルム株式会社は、ヘルスケア、エレクトロニクス、イメージングの3部門の事業戦略を統括し、関連する製品・サービスの製造と販売を行う会社です。富士フイルムホールディングスが議決権の100.0%を直接持ち、資本金は400億円です。平均年間給与は前の年から3.76%増えました。
2021年3月に買収した日立製作所の画像診断関連事業も、この会社に統合されています。富士フイルム株式会社の事業は、医療機器から半導体材料、カメラまでにまたがります。
富士フイルムビジネスイノベーションジャパン株式会社
富士フイルムビジネスイノベーションジャパン株式会社は、2021年4月1日に設立された会社で、オフィス用複合機・プリンターやソリューション・サービスなどを国内で販売しています(富士フイルムビジネスイノベーション)。従業員9,591人は3社の中で最も多く、平均勤続年数20.2年も3社の中で最も長い数字です。設立は2021年ですが、有価証券報告書は平均勤続年数に各当該会社での勤続年数を通算していると注記しています。
この会社の売上高は約4,972億円で、連結売上高の10%を超えるため、主要な損益情報が開示されています。議決権の所有割合は100.0%で、すべてグループの別の会社を通じた間接所有です。平均年間給与は前の年から6.16%増え、3社の中で最も大きな伸びでした。
富士フイルムの子会社の位置づけを測る4つの目安

年収が公表されていない子会社の位置づけは、次の4つの目安を有価証券報告書で確かめると見えてきます。
- 4つの事業セグメント
- 売上高と営業利益
- 従業員数
- 議決権の所有割合
4つの事業セグメント
富士フイルムホールディングスは、事業をヘルスケア、エレクトロニクス、ビジネスイノベーション、イメージングの4つに分けています。有価証券報告書が挙げる国内の主要会社は次のとおりです。
- ヘルスケア:富士フイルム、富士フイルム富山化学、富士フイルムヘルスケアマニュファクチャリング、富士フイルムメディカル、富士フイルム和光純薬
- エレクトロニクス:富士フイルム、富士フイルム和光純薬、富士フイルムエレクトロニクスマテリアルズ
- ビジネスイノベーション:富士フイルムビジネスイノベーション、富士フイルムビジネスイノベーションジャパン、富士フイルムシステムサービス、富士フイルムマニュファクチャリング、富士フイルムグラフィックソリューションズ、富士フイルムサービスクリエイティブ
- イメージング:富士フイルム、富士フイルムイメージングシステムズ
社名はいずれも株式会社を省いています。富士フイルム株式会社は、ビジネスイノベーション以外の3つの事業すべてに主要会社として載っています。富士フイルム和光純薬株式会社も、ヘルスケアとエレクトロニクスの2つに載っています。
売上高と営業利益
第130期(2025年4月1日から2026年3月31日まで)のセグメント別の連結売上高は、ビジネスイノベーションが1兆1,748億円で最も大きくなっています。続いてヘルスケアが約1兆989億円、イメージングが約6,271億円、エレクトロニクスが約4,562億円です。
営業利益で並べると、順位が大きく変わります。イメージングが約1,600億円で最も大きく、エレクトロニクスが約1,009億円、ビジネスイノベーションが約637億円、ヘルスケアが約636億円です。売上高で3位のイメージングが、営業利益では1位に入ります。セグメントの営業利益には、持株会社のコーポレート部門の費用などの全社費用が含まれていません。
前の期からの動きも事業ごとに違います。エレクトロニクスは生成AI向け半導体材料の増収などで営業利益が34.4%増え、イメージングはコンシューマーイメージング事業とプロフェッショナルイメージング事業の伸びで売上高が15.7%増えました。一方、ビジネスイノベーションは市況の低迷や低採算機種の販売の絞り込みなどで、売上高が2.0%減っています。
従業員数
2026年3月31日時点の連結の従業員数は73,526人です。セグメント別の人数は次のとおりで、このほかに特定の事業に分けられない全社(共通)の従業員が4,110人います。
- ビジネスイノベーション:33,916人
- ヘルスケア:22,772人
- イメージング:6,780人
- エレクトロニクス:5,948人
ビジネスイノベーションは連結の従業員のおよそ46%を占めます。売上高はヘルスケアと同じ1兆円台でも、人数はヘルスケアの約1.5倍です。反対にエレクトロニクスは、人数が最も少ないものの、営業利益は2番目に大きい事業です。
議決権の所有割合
関係会社の状況に社名が載る連結子会社は、議決権の所有割合がいずれも100.0%です。このうち富士フイルムホールディングスが直接持つのは、富士フイルム株式会社と富士フイルムビジネスイノベーション株式会社の2社だけです。富士フイルム富山化学株式会社や富士フイルム和光純薬株式会社などは、グループの別の会社を通じた間接所有の100.0%です。
子会社ではない関連会社としては、協和キリン富士フイルムバイオロジクス株式会社(50.0%)と株式会社スタジオアリス(20.3%)の社名が載っています。関連会社27社のうち、残りの25社は「その他」とまとめられています。
公開資料で富士フイルムの子会社を確かめる手順

志望先の子会社がグループのどこにいるのかは、次の3つの手順で確かめられます。
富士フイルムホールディングスのグループ会社のページで、志望先が富士フイルム株式会社と富士フイルムビジネスイノベーション株式会社のどちらの関係会社か、またはグループ共通の業務を担う会社かを確かめます(富士フイルムホールディングス)。富士フイルム株式会社の国内と海外の関係会社は、同社の関係会社一覧に事業内容つきで載っています(富士フイルム)。
富士フイルムホールディングスの有価証券報告書を開き、「関係会社の状況」で議決権の所有割合と主要な事業の内容を、「従業員の状況」でセグメント別の人数と3社の平均年間給与を確かめます(富士フイルムホールディングス)。過去の期の報告書は、金融庁のEDINETで会社名から探せます(金融庁)。
志望先の会社概要を開き、人数の時点と数え方を有価証券報告書と見比べます。たとえば富士フイルムビジネスイノベーションジャパン株式会社の会社概要は、社員数を9,849名(2026年3月)としています(富士フイルムビジネスイノベーション)。
働き方の数字は、厚生労働省の職場情報総合サイトで社名から調べられます(厚生労働省)。月平均所定外労働時間や年次有給休暇の取得率など、企業が公表した項目が会社ごとに載っています。
富士フイルムの子会社に関するよくある質問
富士フイルムグループの子会社について、企業研究でよく出てくる疑問を4つ取り上げます。
- 上場している富士フイルムの正式な社名は?
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富士フイルムホールディングス株式会社です。英語表記はFUJIFILM Holdings Corporationです(富士フイルムホールディングス)。富士フイルム株式会社は、この持株会社が議決権の100.0%を持つ事業会社です。
- 富士ゼロックスはどの会社になった?
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富士ゼロックス株式会社は、2021年4月に社名を富士フイルムビジネスイノベーション株式会社に変えました。同じ月に、国内営業部門と国内の全販売会社は富士フイルムビジネスイノベーションジャパン株式会社に統合されています。
- 富士フイルムの子会社は何社ある?
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2026年3月31日時点で子会社は258社、関連会社は27社です。
- 富士フイルム和光純薬も子会社?
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子会社です。2017年4月に和光純薬工業株式会社の株式を公開買付けで取得して連結子会社にした会社で、議決権の所有割合はグループの別の会社を通じた間接所有の100.0%です。試薬、化成品、臨床検査薬の製造と販売を行い、ヘルスケアとエレクトロニクスの両方の主要会社に挙げられています。
持株会社と事業会社を分けて調べよう
富士フイルムグループは、上場している持株会社の富士フイルムホールディングスの下に、3つの事業を担う富士フイルム株式会社と、旧富士ゼロックスの富士フイルムビジネスイノベーション株式会社が並ぶ形です。有価証券報告書に年収が載る3社の中では、年収で富士フイルムビジネスイノベーションが1位、人数で富士フイルムビジネスイノベーションジャパンが1位です。事業ごとの営業利益では、イメージングが最も大きくなっています。
社名に「富士フイルム」が付くかどうかではなく、その会社がどの事業に属し、持株会社が直接持つ会社なのか、有価証券報告書に年収や人数が載っているのかを確かめてみてください。志望先の社名を、まず有価証券報告書の関係会社の状況と事業の内容の表で探してみよう。

