「東急の子会社には、東急不動産や東急リバブルも入るはず」。東急グループの会社を調べ始めた方は、こう考えて候補を並べがちです。東急グループの公式サイトの会社一覧に、東急不動産ホールディングス株式会社や東急リバブル株式会社の名前が並んでいるためです(東急グループ)。
ところが、東急株式会社の有価証券報告書では、東急不動産ホールディングス㈱は東急株式会社が議決権の16.1%を持つ持分法適用関連会社で、東急リバブル㈱も関連会社として載っています(東急)。グループ一覧の217社7法人と、有価証券報告書の子会社130社は、別の範囲を数えた数字です。
この記事では、東急株式会社の子会社と関連会社を営業収益や事業の区分、公表された給与などの数字で並べ、公開資料で自分で確かめる手順まで、就活キャリア研究所の視点で整理します。数字は特に断りがない限り、東急株式会社が2026年6月23日に提出した第157期(2025年4月1日から2026年3月31日まで)の有価証券報告書に記載されたものです。
東急の子会社ランキングが食い違う3つの理由
東急の子会社の順位がサイトごとに違うのは、グループと子会社の範囲、関連会社の扱い、再編による社名の変化の3つが、記事によってそろっていないからです。
グループと子会社で範囲が違うから
東急グループの社数と、東急株式会社の子会社の数は一致しません。東急グループの公式サイトは、2026年3月31日現在の東急グループを「東急株式会社(旧:東京急行電鉄株式会社)を中核企業とした217社7法人で構成する企業グループ」と説明しています(東急グループ)。一方、有価証券報告書の「事業の内容」は、東急株式会社の企業グループを、当社、子会社130社及び関連会社41社としています。
子会社130社のうち、決算に取り込まれる連結子会社は125社で、残る5社は小規模な非連結子会社です。関連会社41社のうち持分法を適用するのは、東急不動産ホールディングス㈱や東急建設㈱など37社です。「東急グループ」で数えるか「子会社」で数えるかで、順位表に入る会社が変わります。
東急不動産と東急建設は関連会社だから
東急の名が付く会社でも、東急株式会社の子会社とは限りません。東急株式会社が持つ議決権の割合は、東急不動産ホールディングス㈱が16.1%、東急建設㈱が15.1%、世紀東急工業㈱が4.4%です。3社とも20%未満ですが、実質的な影響力を持っているとして関連会社とされています。
東急不動産㈱、㈱東急コミュニティー、東急リバブル㈱の3社は、2013年10月1日に共同株式移転で完全親会社の東急不動産ホールディングス㈱を設立しました。東急株式会社の有価証券報告書は、東急不動産㈱など3社も持分法適用関連会社として載せています。東急不動産㈱や東急リバブル㈱は、東急の名が付いていても、東急株式会社から見れば子会社ではなく関連会社です。
再編で社名と会社が入れ替わるから
東急の子会社は、2019年から2026年にかけての再編で、社名や会社そのものが入れ替わっています。東急株式会社は、2019年9月2日に東京急行電鉄㈱から商号を変え、2019年10月1日に会社分割で鉄軌道事業を東急電鉄㈱へ移しました(東急)。東急線の電車を走らせているのは、東急電鉄㈱です。
2025年8月1日には、商業施設の運営事業が再編されました。東急百貨店の百貨店業は、東急株式会社が設立したTK百貨店準備㈱が会社分割で引き継ぎ、同じ日に㈱東急百貨店へ商号を変えました。分割後の元の東急百貨店は、東急株式会社に吸収合併されています(東急)。2026年4月1日には、㈱東急ホテルズも東急株式会社に吸収合併されました(東急)。同じ「東急百貨店」の名前でも、2025年8月1日の前と後では別の法人です。
上場していた子会社も、完全子会社になって上場をやめています。㈱ながの東急百貨店は2021年5月28日に、㈱東急レクリエーションは2022年12月29日に上場廃止となり、どちらも株式交換で東急株式会社の完全子会社になりました。2社とも、第157期の「関係会社の状況」では有価証券報告書を提出している会社の印が付いていません。
公表データで並べた東急の子会社ランキング
東急株式会社の子会社を公表された数字で並べると、営業収益が連結の1割を超える子会社は㈱東急ストアと東急電鉄㈱の2社です。事業の区分では、営業収益も従業員数も生活サービス事業が最も大きい区分です。連結子会社ごとの平均年間給与は、東急株式会社の有価証券報告書には載っていません。
営業収益が連結の1割を超える2社
有価証券報告書は、グループ内の取引を除いた営業収益が、連結の営業収益の10%を超える子会社について、主要な損益情報を載せています。第157期に該当したのは次の2社です。
- ㈱東急ストア:営業収益2,153億2,200万円、経常利益41億3,700万円
- 東急電鉄㈱:営業収益1,663億6,100万円、経常利益157億4,700万円
営業収益では㈱東急ストアが東急電鉄㈱を上回りますが、経常利益では東急電鉄㈱が㈱東急ストアの約3.8倍です。売上の大きさと利益の大きさで、順位は入れ替わります。ほかの連結子会社123社については、個別の営業収益は開示されていません。
事業区分で並べた4つの事業
東急の連結の事業区分は、交通事業、不動産事業、生活サービス事業、ホテル・リゾート事業の4つです。第157期の外部顧客への営業収益の大きい順に並べ、2026年3月31日現在の従業員数を添えると次のとおりです。
- 生活サービス事業:約5,115億円、8,838人
- 交通事業:約2,231億円、7,394人
- 不動産事業:約2,127億円、3,210人
- ホテル・リゾート事業:約1,388億円、3,935人
生活サービス事業には、百貨店業、チェーンストア業、ショッピングセンター業、ケーブルテレビ事業、広告業、映像事業が含まれ、臨時従業員も年間平均で18,579人います。東急の連結で働く人が最も多い区分は、鉄道を含む交通事業ではなく生活サービス事業です。
一方、営業利益にあたるセグメント利益では、不動産事業が約436億円で最も大きく、交通事業が約273億円、生活サービス事業が約219億円、ホテル・リゾート事業が約97億円と続きます。
区分ごとの主な子会社は、交通事業が東急電鉄㈱、伊豆急行㈱、東急バス㈱など、生活サービス事業が㈱東急百貨店、㈱東急ストア、東急カード㈱、イッツ・コミュニケーションズ㈱、㈱東急エージェンシーなど、ホテル・リゾート事業が東急ホテルズ&リゾーツ㈱などです。不動産事業では、東急株式会社自身が宅地の造成販売やオフィスビル等の賃貸を行い、子会社の東急プロパティマネジメント㈱がビル管理を担っています。
平均年間給与で並べた4社
東急株式会社の「関係会社の状況」で、有価証券報告書を提出している会社の印が付いているのは、東急不動産ホールディングス㈱、東急建設㈱、世紀東急工業㈱、東急リアル・エステート投資法人の4つで、どれも関連会社です。連結子会社には印が付いていません。投資法人を除く3社に東急株式会社を加えて平均年間給与を並べると、次のとおりです。いずれも各社単体の2026年3月31日現在の数字で、賞与と基準外賃金を含みます。
- 東急不動産ホールディングス㈱:13,199千円、従業員105人
- 東急建設㈱:10,277,668円、従業員2,562人
- 東急株式会社:9,034,606円、従業員1,551人
- 世紀東急工業㈱:8,193,176円、従業員1,011人
1位の東急不動産ホールディングス㈱は持株会社で、単体の従業員は105人です。東急不動産ホールディングス㈱の有価証券報告書は、従業員が東急不動産㈱などからの出向者だと説明しています(東急不動産ホールディングス)。持株会社単体の給与は、グループの事業会社で働く人の給与とは別の数字です。東急不動産ホールディングス㈱の報告書には、従業員の多い子会社として㈱東急コミュニティーや東急リバブル㈱の平均年間給与も載っています。
2位の東急建設㈱は、前の事業年度から15.6%の増加でした(東急建設)。東急株式会社の数字は、社外への出向者3,369名を含まない1,551人の平均で、年度の連結業績に応じた特別賞与が第157期の平均年間給与には含まれていません。世紀東急工業㈱の従業員1,011人には、嘱託96名と出向社員30名が含まれていません(世紀東急工業)。
東急の子会社を見極める4つのポイント

東急の子会社1社を詳しく調べるときは、有価証券報告書の「関係会社の状況」と「従業員の状況」などから次の4つを書き出すと、グループの中での位置づけが分かります。
- 議決権の所有割合
- 間接所有の割合
- 東急株式会社からの出向
- 女性活躍の公表値
議決権の所有割合
東急電鉄㈱や㈱東急ストアは、東急株式会社が議決権の100.0%を持つ子会社です。一方で、㈱じょうてつは71.7%、渋谷スクランブルスクエア㈱は64.1%と、東急株式会社のほかにも株主がいる子会社があります。
仙台国際空港㈱は議決権が43.0%ですが、実質的に支配しているとして子会社に含まれています。子会社かどうかは、議決権が50%を超えるかどうかだけでは決まりません。
間接所有の割合
議決権の割合の欄にある括弧内の数字は、ほかの子会社を通じた間接所有の割合です。㈱東急百貨店は100.0%のすべてが間接所有で、東急株式会社とのあいだに別の会社が入っています。2025年8月1日に、東急百貨店など商業施設の運営会社6社は、東急リテールマネジメント㈱の傘下に入りました(東急)。
伊豆急行㈱や上田電鉄㈱も、議決権の100.0%がすべて間接所有です。応募先の上に入っている会社がどこかは、面接で事業の方針を尋ねるときの手がかりになります。
東急株式会社からの出向
東急株式会社の単体の従業員1,551人には、社外への出向者3,369名が含まれていません。1,551人のうち交通事業に属するのは49人です。東急労働組合の組合員4,480人には、東急電鉄㈱の従業員872名と、東急株式会社から東急電鉄㈱への出向者2,743名が含まれています。
組合員で数えると、東急電鉄㈱で働く東急株式会社からの出向者は、東急電鉄㈱自身の従業員の3倍を超えます。鉄道の仕事を志望するなら、募集しているのが東急株式会社か東急電鉄㈱かを、募集要項の会社名で確かめておきましょう。
女性活躍の公表値
有価証券報告書には、常時雇用する労働者が101人以上の国内の連結子会社のうち37社について、管理職に占める女性の割合が会社ごとに載っています。主な16社は「従業員の状況」の表に東急株式会社自身と並んで載り、ほかの21社は「提出会社の参考情報」の章に載っています。37社を管理職に占める女性の割合が高い順に並べると、上位3社は次のとおりです。
- ㈱東急文化村:64.6%
- 東急ビジネスサポート㈱:50.0%
- ㈱東急キッズベースキャンプ:48.8%
「従業員の状況」に載る主な16社の中では、㈱東急百貨店の32.1%が最も高い割合です。同じ割合は、東急株式会社では14.8%です。男性の育児休業取得率が100%の子会社は、主な16社に5社、「提出会社の参考情報」に載る11社に7社あります。主な16社の取得率には育児目的の休暇を含めて数える会社と含めない会社があり、注記の印で見分けられますが、「提出会社の参考情報」の11社には算出方法の印がありません。取得率は、算出方法がそろっている会社どうしで比べてください。
公開資料で東急の子会社を確かめる手順

東急の子会社を自分で確かめるには、グループ一覧、東急株式会社の有価証券報告書、各社の開示資料の3つを順にたどります。
東急グループの公式サイトの会社・団体一覧で、志望先の社名と事業内容を確かめます(東急グループ)。東急グループの会社・団体一覧には、東急不動産ホールディングス㈱や東急建設㈱のような関連会社も載っています。
東急株式会社のIR資料室で有価証券報告書を開き、「関係会社の状況」で志望先を探します(東急)。連結子会社の欄か持分法適用関連会社の欄か、議決権の割合と括弧の数字、有価証券報告書を提出している会社の印を書き写します。
「関係会社の状況」の表に名前が出るのは、連結子会社125社のうち48社です。残る77社は「その他77社」とまとめて書かれているため、志望先の名前が表にないこともあります。持分法適用関連会社37社も、名前が出るのは15社で、残る22社は「その他22社」とまとめられています。
東急の子会社に関するよくある質問
- 東急の子会社は何社ありますか
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第157期の有価証券報告書では、子会社が130社で、このうち連結子会社が125社です。関連会社は41社あります(東急)。東急グループの公式サイトが示す217社7法人とは、数える範囲が違います。
- 東急不動産は東急の子会社ですか
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子会社ではありません。東急不動産㈱は東急不動産ホールディングス㈱の完全子会社で、東急株式会社の有価証券報告書では持分法適用関連会社として載っています。東急株式会社が持つ東急不動産ホールディングス㈱の議決権は16.1%です。
- 東急株式会社は持株会社ですか
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東急株式会社は、社史「東急100年史」で自社を「事業持株会社」と書き、同じ章で東急不動産ホールディングス㈱を「純粋持株会社」と書き分けています(東急)。第157期の有価証券報告書と公式サイトの年譜には、「持株会社」という語は出てきません。報告書の「事業の内容」には、不動産販売業では当社が宅地を造成販売し、不動産賃貸業では当社が沿線を中心にオフィスビル等の賃貸を行っていると書かれていて、2019年10月1日に鉄軌道事業を東急電鉄㈱へ移したあとも、東急株式会社は自ら事業を営んでいます。
- 子会社ごとの年収は調べられますか
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「関係会社の状況」で有価証券報告書を提出している会社の印が付いた連結子会社はなく、東急株式会社の報告書にも子会社ごとの平均年間給与は載っていないため、有価証券報告書では確かめられません。代わりに、東急株式会社の有価証券報告書に載る子会社37社の女性管理職比率や子会社ごとの男性の育児休業取得率、厚生労働省のしょくばらぼの公表情報が比べる材料になります(厚生労働省)。
子会社と関連会社を分けてから比べよう
東急の名が付く会社は多くても、東急株式会社の子会社は130社で、東急不動産ホールディングス㈱や東急建設㈱は関連会社です。連結子会社の中では㈱東急ストアと東急電鉄㈱の2社が営業収益で連結の1割を超え、事業の区分では営業収益と従業員数の両方で生活サービス事業が最も大きな区分です。
子会社の順位表を見かけたら、まず並んでいる会社が子会社か関連会社かを、有価証券報告書の「関係会社の状況」で確かめてください。そのうえで議決権の割合と間接所有の割合、出向の扱い、女性活躍の公表値を書き出し、2025年と2026年の再編で変わった社名に気をつけながら、志望先を決めていきましょう。

