保育士のホワイトな保育園の見分け方|配置基準と監査の調べ方

「保育園の働きやすさは、入ってみないと分からない」。就職活動中の保育士の方から、よく聞こえてくる言葉です。園の雰囲気や園長の人柄といった、数字にできない要素で決まると思われがちだからでしょう。

ところが保育の分野は、職員を何人置くかが法令で決まっていて、その守られ方が自治体の検査で確かめられ、賃金の引き上げにも国の加算が用意されている、という珍しい構造を持っています。つまり、外から数字で追える部分が思いのほか多いのです。

この記事では、働きやすい保育園に共通する着眼点と、それを国や自治体の公開情報でたどる方法を、就活キャリア研究所の視点で整理しました。制度の名前と参照先を示しますので、志望する園があれば同じ順番で確かめてみてください。

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目次

保育園の働きやすさが外から見えにくい事情

園選びに入る前に、この分野の求人情報が抱えている事情を押さえておくと、質問すべきことがはっきりします。

同じ「認可保育所」でも運営の主体が幅広い

認可保育所には、市区町村が運営する公立の園、社会福祉法人の園、学校法人や株式会社が運営する園などが含まれます。適用される基準は共通でも、給与の決まり方や異動の有無、研修に割く時間は主体によって差が出ます。求人票の「認可保育所」という表記だけでは、そこがどういう組織なのかまでは分かりません。

運営する法人がいくつの園を持っているかによっても働き方は変わります。複数園を運営している法人なら異動の可能性があり、単独園なら人間関係が固定されやすい。どちらが合うかは人によりますが、どちらなのかは先に知っておきたいところです。

職員の人数は書かれても年齢別の内訳が出ない

募集要項に職員数が書かれていることはありますが、どの年齢のクラスに何人を配置しているかまで示す園はまれです。保育士の負担は受け持つ子どもの年齢と人数で決まるため、総数だけを見ても日々の忙しさは読み取れません。年齢ごとの配置は法令で決まっているので、その数字を知っていれば逆算できます。

とりわけ見落とされがちなのが、常勤と非常勤の内訳です。人数が足りていても、短時間勤務の職員が多ければ、朝夕の時間帯や行事の準備が特定の職員に集まります。

手当の名前から支給の根拠が読み取れない

保育の分野では、国の加算を原資にした賃金の引き上げが長く続けられてきました。ところが園ごとに手当の名称が違うため、提示された給与のうちどこまでが加算によるもので、どんな条件で続くのかが、求人票の記載からは判断できません。加算には園が満たすべき要件があるので、それを知ったうえで尋ねるのが近道です。

こども家庭庁の資料では、保育士等の処遇改善は2013年度以降の累計で約39%、月額にして約13.4万円の改善が積み上げられてきたとされています。積み上がった分がどう配られているかは、園によって差が出る部分です。

働きやすい保育園を見分けるときの着眼点

保育園を見極める4つの視点を示した図(配置人数・監査結果・処遇改善・情報公開)

園の様子は見学だけでは限られた時間しか見られません。そこで、外から確かめられる項目に絞って整理します。ここでは代表的な着眼点を挙げ、そのうち公開情報でたどれる4つを詳しく取り上げます。

  1. 職員の配置が国の基準を上回っている
  2. 自治体の指導監査で指摘を受けていない
  3. 処遇改善の加算が職員に行き渡っている
  4. 運営や経営の情報を自ら公開している
  5. 年度途中の退職者が続いていない
  6. 行事や書類の負担を減らす見直しをしている

職員の配置が国の基準を上回っている

児童福祉施設の設備及び運営に関する基準の第33条第2項では、保育士の数を、乳児おおむね3人につき1人以上、満1歳以上満3歳に満たない幼児おおむね6人につき1人以上、満3歳以上満4歳に満たない幼児おおむね15人につき1人以上、満4歳以上の幼児おおむね25人につき1人以上と定めています(e-Gov法令検索)。保育所1つにつき2人を下ることはできないという定めもあります。この数字はあくまで下限であり、上回って配置している園も多くあります。

自治体の指導監査で指摘を受けていない

認可保育所には、児童福祉法や子ども・子育て支援法などに基づいて自治体が行う指導監査があります。運営基準を守れているかを定期的に外部の目で確かめる仕組みです。こども家庭庁は指導監査の実施要領や監査調書の標準様式を公開しており、何を見る検査なのかを誰でも確かめられます(こども家庭庁)。検査結果を自治体のサイトで公表している例もあるため、志望する園の所在地の自治体を調べてみる価値があります。

処遇改善の加算が職員に行き渡っている

2025年度から、それまで3つに分かれていた処遇改善等加算が一本化され、区分1(基礎分)、区分2(賃金改善分)、区分3(質の向上分)の3つに整理されました(こども家庭庁)。区分3の要件には、賃金改善の具体的な内容を職員に周知することや、職位や職責に応じた賃金体系を整備して職員に周知することが含まれています。加算の中身が職員へ説明されているかどうかは、要件に照らして尋ねられます。

加算率にも決まりがあります。区分1は職員の平均経験年数に応じて2%から12%の範囲で設定され、区分2は6%、職員の平均経験年数が11年以上であれば7%を基礎として設定されます。園の経験年数の平均が高いほど加算率も上がる仕組みです。

運営や経営の情報を自ら公開している

2025年度からは、保育所等が毎事業年度の経営情報として収支計算書や職員給与の状況などを都道府県に報告し、都道府県がモデル給与や人件費比率を施設・事業者ごとに公表する仕組みが動き始めました(こども家庭庁)。2026年度からは、報告を行っていない場合に加算が減額される扱いも設けられています。情報を出している園かどうかは、それ自体が姿勢の表れです。

職員配置の基準がどう決まっているか

配置基準は長らく変わらない数字でしたが、ここ数年で改正が進みました。どの年齢がいつ改善されたのかを知っておくと、園の説明を正しく受け取れます。

4歳児と5歳児は2024年度に25対1へ

こども家庭庁の資料によれば、2024年度に、制度創設以来76年ぶりとなる4歳児・5歳児の職員配置基準の改善が行われ、30対1から25対1に変わりました。3歳児についても、あわせて20対1から15対1へ改められています(こども家庭庁)。ただし、人材の確保に苦労している現場に混乱が生じないよう、当分の間は従前の基準で運営することも妨げないという経過措置が設けられました。3歳児の経過措置は2027年度末で終了する予定です。

1歳児は加算によって5対1を後押し

1歳児については、2025年4月から「1歳児配置改善加算」が設けられ、職員配置を5対1以上に改善した施設に加算される仕組みが始まりました(こども家庭庁)。対象となるのは、処遇改善等加算の区分1から区分3までをすべて取得していること、業務でのICTの活用を進めていること、職員の平均経験年数が10年以上であることのすべてを満たす事業所です。この加算を取っている園は、配置と職場環境の両方に手をつけていることになります。

改善の実施率は年齢によって差がある

こども家庭庁が全国の市区町村を通じて行った職員配置改善の実態調査では、2025年7月1日時点で、3歳児の15対1を満たしている施設の割合は全体で97.2%、4歳児・5歳児の25対1を満たしている割合は全体で93.9%でした(こども家庭庁)。施設の種別でみると、4歳児・5歳児では保育所が94.9%、認定こども園が91.8%です。ここで見落とされがちなのが、未実施の施設のうち6割から7割が今後の改善見込みを「未定」と答えている点です。

4歳児・5歳児の25対1を満たしていない2,137施設についてみると、改善の見込みを「未定」とした割合は71.8%にのぼります。改善が進まない背景には人材の確保という課題があると、こども家庭庁の資料では整理されています。

自治体の指導監査で確かめられること

保育園の運営を外から点検する仕組みとして、自治体の指導監査があります。求職者が直接受けるものではありませんが、結果が公表されていれば判断材料になります。

検査は法令への適合状況を見るもの

東京都の説明によれば、認可保育所の指導検査は、児童福祉法をはじめ労働基準法や消防法などの法令に照らして、設備および運営に関する基準への適合状況を確かめ、施設の適正な運営とサービスの質の確保を図ることを目的としています(東京都福祉局)。労働関係の法令も検査の対象に含まれている点は、働く側にとって見逃せない部分です。

東京都はまた、利用者が施設を選ぶときに安心して選択できるよう、そして事業運営の透明性を図るために、指導検査を実施した施設の情報を公表するとしています。公表は利用者のための仕組みですが、そこで見られる項目は働く側の関心とも重なります。

結果と改善状況が施設名で検索できる自治体がある

東京都では、一般指導検査等を実施した結果と改善の状況を、認可保育所、東京都認証保育所、認可外保育施設について直近3年分たどれるようにしています(東京都福祉局)。名称や所在地、種別で施設を検索する形です。同じような公表を行っている自治体は他にもあるため、「自治体名 保育所 指導検査 結果」で探してみてください。

ここで大切なのは、指摘があったという事実だけで園を判断しないことです。書類の整備に関する軽微な指摘と、職員配置や安全に関わる指摘では意味が違います。指摘の中身と、その後に改善報告が出されているかどうかをあわせて読むことが欠かせません。

公開情報から保育園をたどる調べ方

保育士のホワイトな保育園の見分け方について公開されている情報を確かめている場面のイラスト

志望する園が決まったら、応募の前に次の3つの段階で情報を集めておくと、面接で踏み込んだ質問ができます。

STEP1

子ども・子育て支援情報公表システム「ここdeサーチ」で園の基本情報を調べます(福祉医療機構)。ひとつのサイトで全国の教育・保育施設の情報が閲覧でき、施設の住所、教育・保育の内容、利用定員、実費徴収額といった項目を確かめられます(こども家庭庁)。定員と職員数を並べれば、配置がどのあたりかの見当がつきます。こども家庭庁は、このシステムを通じて保育所等の経営情報を継続的に見えるようにしていく方針を示しており、掲載される情報は段階的に増えていく見通しです。

STEP2

園の所在地の自治体のサイトで、指導監査や指導検査の結果が公表されていないかを探します。東京都のように施設名で検索できる仕組みを持つ自治体もあります(東京都福祉局)。公表がない自治体の場合でも、こども家庭庁が示している監査調書の標準様式を読めば、何が見られる検査なのかを把握できます(こども家庭庁)

STEP3

面接や見学の場で、クラスごとの子どもの人数と担当する保育士の人数、処遇改善等加算のどの区分を取得しているか、加算分がどの手当に反映されているかを尋ねます。あわせて厚生労働省の賃金構造基本統計調査で職種ごとの賃金の水準を押さえておくと(厚生労働省)、提示された額が世の中のどのあたりに位置するのかを自分で判断できます。加算の区分は園が申請して認定を受けるものなので、取得の有無は園の側が必ず把握しています。答えられない場合は、その事実自体が判断材料になります。

保育園選びでよくある質問

配置基準を満たしていれば安心できますか

基準は下限を定めたものです。児童福祉施設の設備及び運営に関する基準では、満4歳以上の幼児はおおむね25人につき保育士1人以上と定められていますが(e-Gov法令検索)、これを上回って配置している園も多くあります。基準ちょうどなのか、余裕を持たせているのかを確かめてください。なお、この年齢区分の基準は2024年度に30対1から25対1へ改められたもので、当分の間は従前の基準で運営することも妨げないという経過措置が置かれています。

保育士の給与は他の職種と比べてどうですか

こども家庭庁が賃金構造基本統計調査をもとに作成した資料では、役職者を除いた保育士の月収換算の平均は2025年で34.3万円、同じ条件の全産業平均は39.6万円と示されています(こども家庭庁)。ここでいう月収は、きまって支給する現金給与額に年間賞与その他特別給与額の12分の1を足した税込みの額です。差を縮めるために処遇改善の取り組みが続けられています。

処遇改善の加算は誰がもらえるのですか

区分によって対象が異なります。区分1と区分2は全職員が対象で、区分3は副主任保育士や職務分野別リーダーなど、一定の経験年数と研修修了を満たした職員が対象です(こども家庭庁)。区分3では、加算額の2分の1以上を基本給や毎月支払われる手当で改善することが要件とされています。

園の指導監査の結果はどこで見られますか

公表の仕方は自治体ごとに違います。東京都では認可保育所や認証保育所などの検査結果と改善状況を直近3年分たどれる形で公開しています(東京都福祉局)。公表していない自治体もあるため、見つからない場合は自治体の保育担当課に問い合わせる方法もあります。検査の視点そのものは、こども家庭庁が公開している監査調書の標準様式から読み取れます。

基準と公開情報を手がかりに選ぼう

保育園の見学では、子どもたちの表情や保育士同士のやりとりから多くのことが伝わってきます。それは判断材料として確かなものです。ただ、その空気を支えているのは、何人で何人の子どもを見ているのかという配置の現実であり、そこは法令と公開情報でたどれます。

配置人数、指導監査の結果、処遇改善の加算、情報公開の姿勢。この4つを一つずつ確かめてから園を選べば、入職してからの「思っていたのと違う」を減らせるはずです。いずれも特別な立場がなくてもたどれる情報ばかりです。

気になる園があれば、まずは定員と職員数を並べるところから始めてみましょう。そのうえで面接に臨めば、こちらの質問が具体的になり、園の側も具体的に答えざるをえなくなります。その往復のなかで、働き方の輪郭が見えてくるはずです。

この記事の著者情報

株式会社ネット風評被害対策 代表取締役 内村淳

ネット風評被害対策の専門家として15年以上の実績を持つ。
風評被害誹謗中傷対策・サジェスト対策・逆SEO対策・SNS炎上対応など、企業のWebリスク解決を累計10,000社以上支援。
ネット誹謗中傷対策に特化した法律事務所に1年間従事し、法的観点からの対応知見を習得。IT技術と法的アプローチの双方に携わってきた経験を持つ。
あらゆるネット風評被害対策支援に加え、企業向けコンサルティングや同業他社へのサービス提供も行う。
現在、日々進化するAI検索エンジンのアルゴリズムを徹底解析し、AI検索時代に適応した次世代の風評対策に注力している。

著書: 『AI時代のネット風評被害対策』(Kindle出版) ↗

発信活動: ネット風評被害対策に関する情報をnoteでも発信しています。 note ↗

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