「ホンダの子会社には決まった序列があって、上から順に並べた一覧がどこかにあるはずだ」。就職活動でグループ企業を調べ始めると、そう考える方は少なくありません。検索すると順位表の体裁をとったページがいくつも並ぶので、公式の格付けが存在するように見えてしまうためです。
ところが、本田技研工業が金融庁の開示システムに提出している有価証券報告書には、子会社を順番に並べた表はありません。そこに載っているのは、どの会社をいくら持っているかという議決権の所有割合、資本金、どの事業に属するか、そして有価証券報告書を自分でも出しているかどうかという事実です。順位ではなく、会社どうしの関係そのものが書かれています。
この記事では、ホンダのグループ会社を見比べるときに使える4つの物差しと、その物差しを公開資料で確かめる手順を、就活キャリア研究所の視点で整理しました。数字はすべて第102期(2025年4月1日から2026年3月31日まで)の有価証券報告書に記載されているものです。
ホンダの子会社ランキングが一つに定まらない理由
個々の会社を比べる前に、なぜ順位表が一つに定まらないのかを押さえておくと、検索結果の読み方が変わってきます。理由は3つあります。
関係会社346社のうち社名が載るのは34社
第102期の有価証券報告書では、ホンダグループは本田技研工業と国内外346社の関係会社で構成され、その内訳は連結子会社282社、持分法適用会社64社と記載されています(本田技研工業)。ところが「関係会社の状況」の表で社名まで挙げられているのは、連結子会社が24社、持分法適用会社が10社の合計34社にとどまります。残りは「その他258社」「その他54社」とまとめて書かれているだけです。
つまり、全社を並べた表をつくろうとしても、公開されている資料から会社ごとの規模を拾えるのは、346社のうち34社、1割弱にすぎません。網羅した順位表は、公開情報だけでは作りようがないのです。まとめページに並ぶ「全◯社ランキング」の多くは、社名だけを集めて並べたものだと考えておいたほうが安全です。
子会社と部品メーカーでは資本関係が違う
ホンダの名前とともに語られる会社には、資本関係のうえで性格の異なるものが混ざっています。議決権の過半を握られている連結子会社と、2割から5割の出資にとどまる持分法適用会社では、経営の独立性も採用の仕組みも同じではありません。
たとえば株式会社本田技術研究所は議決権の所有割合が100.0%の連結子会社です。一方、テイ・エス テック株式会社は22.0%、株式会社エフ・シー・シーは22.5%、株式会社エイチワンは21.5%、武蔵精密工業株式会社は25.0%、株式会社ジーテクトは21.1%で、いずれも持分法適用会社に区分されています。同じ「ホンダ系」と呼ばれていても、資本のつながり方はまるで違います。
個別の会社の年収はほとんど開示されない
順位表でよく見かける平均年収の比較にも注意が必要です。有価証券報告書で平均年間給与を開示する義務があるのは、報告書を提出している会社自身についてであり、提出していない子会社の数字は載りません。本田技研工業の第102期の報告書に記載されている平均年間給与9,326千円、平均年齢43.9歳、平均勤続年数21.0年は、いずれも提出会社である本田技研工業単体の数字です。
この単体の数字が、子会社の給与水準としてそのまま紹介されている例が見られます。誰の数字なのかを確かめずに比べると、判断を誤ります。
ホンダグループの会社を序列づける4つの物差し

順位表が手に入らないとしても、会社どうしを比べる手がかりは公開資料の中にそろっています。有価証券報告書の「関係会社の状況」から読み取れる項目を整理すると、次の4つになります。
- 連結子会社か持分法適用会社かという資本関係
- その会社自身が上場して開示しているかどうか
- 二輪・四輪・金融サービス・パワープロダクツのどの事業区分に属するか
- 資本金と従業員数から見える会社の規模
連結子会社か持分法適用会社か
連結子会社は、多くが議決権の過半を持たれ、親会社の連結の決算にそのまま取り込まれる会社です。持分法適用会社は、出資割合に応じて損益だけが反映される関係で、経営判断は各社が自前で行います。第102期の報告書では、連結子会社282社に対して持分法適用会社は64社と記載されています。
採用の面から見ると、この違いは人事制度や配属の考え方に表れやすい部分です。100.0%の出資を受けている会社は本田技研工業の方針が届きやすく、2割台の出資であれば独自色が残ります。持分法適用会社のなかでも、社名が挙げられている10社の議決権の所有割合は21.1%から50.0%まで開きがあり、5割に近い会社ほど親会社の関与は強くなります。まず資本関係を確かめることが、会社選びの出発点になります。
上場して自ら開示しているか
意外に見落とされがちなのが、グループ会社のうち誰が自分で情報を出しているかという点です。有価証券報告書の「関係会社の状況」には摘要欄があり、その会社自身が有価証券報告書を提出している場合に明記されます。
ホンダの場合、連結子会社では株式会社ホンダファイナンス(資本金11,090百万円、議決権の所有割合100.0%)が提出会社として記載されています。持分法適用会社では、テイ・エス テック株式会社、株式会社エフ・シー・シー、株式会社エイチワン、武蔵精密工業株式会社、株式会社ジーテクトの5社が提出会社です。出資割合が2割台の会社のほうが、売上や従業員数や給与の数字を自分の名前で公開しています。
裏を返せば、ホンダの名を冠した会社ほど個社の数字が出てこない場合があるということです。調べやすさで志望先を決める必要はありませんが、比較したいなら開示のある会社から着手したほうが早く進みます。
どの事業セグメントに属するか
ホンダの事業は、二輪事業、四輪事業、金融サービス事業、パワープロダクツ事業及びその他の事業の4つに区分されています。関係会社の表では会社ごとにこの区分が示されているため、社名だけでは分からない仕事の中身をつかむ手がかりになります。
たとえば株式会社ホンダファイナンスは金融サービス事業で、関係内容の欄には「当社製品に関わる販売金融をしている」と書かれています。自動車メーカーの子会社でありながら、日々の仕事は与信や債権の管理に近いものになります。同じグループでも、事業区分が変われば必要とされる専門性も変わります。
資本金と従業員数でつかむ規模
資本金は関係会社の表に、従業員数はセグメント別の合計が「従業員の状況」に記載されています。2026年3月31日現在の連結の従業員数は、二輪事業52,013名、四輪事業131,856名、金融サービス事業2,542名、パワープロダクツ事業及びその他の事業8,698名で、合計195,109名です。
このうち提出会社である本田技研工業単体は32,547名ですから、グループで働く人の8割以上は関係会社に所属している計算になります。ホンダで働くという言葉が指す範囲は、本体だけではないということです。
資本金の欄は通貨がそろっていない点にも気をつけたいところです。国内の会社は百万円、北米の会社は千米ドル、インドの会社は千インド・ルピーというように、その会社が置かれた国の通貨で書かれています。株式会社本田技術研究所の7,400百万円と、アメリカンホンダモーターカンパニー・インコーポレーテッドの299,000千米ドルを、そのまま数字の大小で比べることはできません。
もう一つ、摘要欄に書かれる「特定子会社」という表示も規模の手がかりになります。その会社自身の資本金または出資の額が親会社の資本金の10分の1以上、親会社との売上高または仕入高が10分の1以上、純資産額が親会社の30分の10以上、のいずれかに当たる子会社に付く表示で、ホンダの表ではアメリカンホンダモーターカンパニー・インコーポレーテッドやホンダカーズインディア・リミテッドなど多くの海外会社に付いています。この表示は開示のうえで規模が一定以上であることを示すもので、業績の良し悪しを示すものではありません。実際、ホンダの注記では特定子会社に当たる会社のなかに債務超過の会社も挙げられています。規模の目安として読み、業績は別の欄で確かめてください。
二輪から金融まで広がる事業区分
4つの物差しのうち、ホンダらしさがもっとも表れるのが事業区分です。自動車メーカーとして語られることが多い会社ですが、関係会社の顔ぶれを事業ごとに見ていくと、まったく違う地図が浮かび上がります。
販売台数で四輪を大きく上回る二輪事業
第102期のHondaグループ販売台数は、二輪事業が22,101千台、四輪事業が3,387千台です。台数では二輪が四輪の6倍を超えています。地域別に見ると二輪の18,738千台がアジアで、その他の地域が2,213千台と続きます。
この規模を支えているのが、ホンダモーターサイクルアンドスクーターインディアプライベート・リミテッド、タイホンダカンパニー・リミテッド、ホンダベトナムカンパニー・リミテッドといった現地の生産販売会社です。いずれも関係会社の表に社名が載っています。二輪の台数の大半はアジアで生まれており、その現場を担っているのは現地の会社です。
売上収益の6割超を占める四輪事業
一方、金額で見ると景色が変わります。第102期の外部顧客への売上収益は、連結全体で21兆7,966億円、うち四輪事業が13兆8,633億円で、二輪事業は4兆188億円です。台数では二輪が上回っていても、売上収益では四輪が6割を超えます。
四輪事業には、株式会社本田技術研究所のような開発会社に加えて、Astemo株式会社(議決権の所有割合40.0%)や株式会社ジーテクトのような部品会社が持分法適用会社として並びます。なおAstemo株式会社は、第102期に日立Astemo株式会社から商号変更したものだと注記されています。
金融サービス事業という第3の柱
就職先としてあまり知られていないのが金融サービス事業です。第102期の外部顧客への売上収益は3兆5,294億円で、二輪事業に迫る規模があります。それにもかかわらず従業員数は2,542名と、四輪事業の131,856名に比べればごくわずかです。
この事業を担うのは、株式会社ホンダファイナンス、アメリカンホンダファイナンス・コーポレーション、ホンダカナダファイナンス・インコーポレーテッド、ホンダファイナンスヨーロッパ・パブリックリミテッドカンパニー、バンコホンダ・エス・エーといった会社です。少ない人数で大きな金額を扱う事業であり、製造業のイメージとは仕事の性質が異なります。
航空機まで含むパワープロダクツ事業
4つ目の区分は、パワープロダクツ事業及びその他の事業です。第102期の外部顧客への売上収益は3,849億円、従業員数は8,698名で、4区分のなかではもっとも小さい規模です。ただし中身は幅広く、有価証券報告書では、この区分に含まれる航空機および航空機エンジンの営業損失が372億円だったことが個別に説明されています。
関係会社の表でも、注記のなかにホンダエアロ・インコーポレーテッドとホンダエアクラフトカンパニー・エル・エル・シーという社名が出てきます。いずれも「その他258社」に含まれる連結子会社ですが、特定子会社として個別に名前が示されています。一覧の表に載っていない会社でも、注記まで読めば名前と位置づけが分かる場合があります。
地域別に見ると北米が最大の売上
事業区分と並んで、有価証券報告書には所在地別の区分も載っています。日本、北米、欧州、アジア、その他の地域という5つの分け方で、第102期の売上収益は日本5兆4,492億円、北米12兆8,819億円、欧州1兆155億円、アジア4兆8,804億円、その他の地域1兆4,323億円でした。これらは地域をまたぐ取引を差し引く前の金額で、単純に足すと25兆6,594億円になります。ここから地域間の取引3兆8,628億円を消去した21兆7,966億円が連結の売上収益です。
北米が最大である一方、二輪の販売台数ではアジアが圧倒的です。事業区分と所在地区分を組み合わせると、その会社がグループのどこに位置しているかが立体的に見えてきます。関係会社の表には住所の欄もあるので、志望先がどの地域の会社なのかは一目で確かめられます。
公開されている資料でグループ会社を確かめる手順

気になる会社が見つかったら、次の3つのステップで公開資料をたどると、順位表に頼らずに自分で位置づけを確かめられます。
社名が表になかった場合は、ホンダ公式サイトのグループ会社の一覧で、主な事業所と連結子会社、関連会社の区分を確かめます(本田技研工業)。摘要欄に有価証券報告書の提出会社と書かれていた会社なら、その会社自身の報告書をEDINETで開けば、平均年間給与や従業員数まで確認できます。
厚生労働省の職場情報総合サイト「しょくばらぼ」で、その会社の新卒者等の採用・定着状況や月平均所定外労働時間を調べます(厚生労働省)。掲載されている会社であれば、資本関係とは別の角度から働き方の情報を押さえられます。
3つのステップを終えると、手元には「資本関係」「上場の有無」「事業区分」「規模」の4項目がそろいます。会社ごとにこの4項目を並べれば、順位表よりも判断に使える比較表ができあがります。
ホンダの子会社に関するよくある質問
- ホンダの子会社は何社ありますか
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第102期の有価証券報告書では、関係会社346社のうち連結子会社が282社、持分法適用会社が64社と記載されています(本田技研工業)。ただし社名まで表に載っているのは34社で、残りはまとめて記載されています。
- 子会社ごとの平均年収は調べられますか
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その会社自身が有価証券報告書を提出している場合に限って調べられます。ホンダの関係会社では、株式会社ホンダファイナンス、テイ・エス テック株式会社、株式会社エフ・シー・シー、株式会社エイチワン、武蔵精密工業株式会社、株式会社ジーテクトが提出会社として記載されています。それ以外の会社の平均年収は開示されていません。
- 部品メーカーはホンダの子会社ですか
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会社によって異なります。テイ・エス テック株式会社や株式会社エフ・シー・シーなどは議決権の所有割合が2割台の持分法適用会社で、連結子会社ではありません。自前の経営と採用を続けている会社であり、ホンダの完全子会社と同じ扱いにはなりません。
- 二輪と四輪ではどちらの規模が大きいですか
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見る指標によって逆になります。第102期のHondaグループ販売台数は二輪22,101千台に対し四輪3,387千台ですが、外部顧客への売上収益は四輪13兆8,633億円に対し二輪4兆188億円です。従業員数も四輪事業が131,856名、二輪事業が52,013名と四輪のほうが多くなっています。
順位表ではなく資本関係と事業で選ぼう
ホンダのグループ会社を並べた順位表は、公開されている資料からは作れません。社名が表に載っているのは関係会社346社のうち34社だけで、それ以外の会社の規模も給与も開示されていないからです。
その代わりに使えるのが、資本関係、上場の有無、事業区分、規模という4つの物差しです。どれも有価証券報告書と公式サイトをたどれば誰でも同じ手順で確かめられます。順位の高さではなく、自分が働きたい事業と、その会社が置かれている資本の位置を見比べて、志望先を選んでいきましょう。

