「電気工事の会社は外から見ても違いが分からない」。第二種電気工事士の免状を取ったばかりの方には、そう感じる人が少なくありません。事務所の構えも求人票の書きぶりも似ていて、比べる手がかりが見つからないというのです。
ただ、電気工事を仕事として行う会社には、他の業種にはない特徴があります。電気工事業を営むには登録・届出・通知のいずれかの手続が必要で、このうち登録を受けた会社の内容は、誰でも謄本の交付や閲覧を請求できる形で記録されています。加えて500万円以上の工事を請け負うには建設業許可が要り、こちらは国のサイトで社名から検索できます。2つの制度が重なっているため、比べる手がかりは実は多いのです。
この記事では、特定の会社名を挙げることはしません。国が公開している情報のどこを見ればよいのかをたどり、読んだ方が自分の手で見分けられるようになることを目指して、就活キャリア研究所の視点で順に整理します。
電気工事会社の中身が見えにくい3つの理由
会社ごとの違いを読み取る前に、電気工事という仕事の組み立てを押さえておくと、面接で何を尋ねればよいのかが見えてきます。
扱える電気工作物の範囲が資格で決まる
電気工事士法は、資格の種類ごとに従事できる工事の範囲を定めています。第一種電気工事士免状の交付を受けている人でなければ、自家用電気工作物に係る電気工事の作業に従事できません。ただし自家用電気工作物の工事のうち簡易電気工事は、第一種の免状がなくても認定電気工事従事者認定証の交付を受けている人が従事でき、ネオン工事と非常用予備発電装置工事(特殊電気工事)は特種電気工事資格者認定証の交付を受けている人でなければ従事できません。一般用電気工作物等に係る電気工事の作業は、第一種または第二種の免状を受けている人でなければ従事できません(e-Gov法令検索)。ここでいう自家用電気工作物は、最大電力500キロワット未満の需要設備などを指します(電気技術者試験センター)。
つまり会社が住宅の工事を中心にしているのか、工場やビルの受電設備まで手がけるのかによって、必要な資格も現場の進み方も変わります。求人票の「電気工事」という言葉だけでは、この違いは読み取れません。応募の段階で、担当する現場の種類を具体的に尋ねておきましょう。
元請と下請で一日の動き方が変わる
建設業法は、元請として入るか下請として入るか、また下請に出す金額がいくらかによって、現場に置くべき技術者を分けています。建設業者は請け負った工事ごとに主任技術者を置かなければならず、発注者から直接請け負った特定建設業者が政令で定める金額以上の下請契約を結ぶ場合には、監理技術者を置くことになります(e-Gov法令検索)。
元請として現場を仕切る会社と、決められた区画の配線を受け持つ会社では、工程の決め方も、遅れが出たときの調整のしかたも違います。どちらが良いということではなく、自分がどちらの働き方に向いているかを知らないまま入ると、入社後のずれが大きくなります。
2024年4月から残業の上限が適用された
建設業には長く時間外労働の上限規制が適用されていませんでしたが、5年間の猶予期間を経て2024年4月から適用されています。原則は月45時間、年360時間です。特別条項付きの36協定を結んだ場合でも、年720時間、休日労働を含めて単月100時間未満、複数月平均80時間以内とされ、限度時間を超えて延長できるのは年6か月までとされています(厚生労働省)。災害の復旧および復興の事業については、単月100時間未満と複数月平均80時間以内の部分が適用されません。
厚生労働省は建設業向けに専用のページを設け、一人親方を含む事業者向けの解説を出しています(厚生労働省)。この変化にどう対応したかを尋ねたときの答え方は、会社が労働時間をどう扱っているかを測る手がかりになります。工期の組み方を見直したのか、人を増やしたのか、それとも「うちは昔から変わらない」で済ませるのか。答えの具体性に差が出ます。
ホワイトな電気工事会社に共通する4つの特徴

求人票や面接だけでは判断しづらい会社の実態も、いくつかの共通した視点に注目すると見えてきます。ここでは、電気工事の仕事を選ぶときに確かめておきたい4つを整理します。
- 電気工事業の登録・届出・通知を確かめられる
- 一般用電気工事の営業所に主任電気工事士がいる
- 建設業許可の区分を説明できる
- 資格取得と定期講習の費用負担が決まっている
電気工事業の登録・届出・通知を確かめられる
電気工事業を営もうとする者は、2以上の都道府県に営業所を置くときは経済産業大臣の、1つの都道府県にのみ営業所を置くときはその都道府県知事の登録を受けなければなりません。登録の有効期間は5年で、続けるには更新の登録が必要です。ただし工場やビルの受電設備など自家用電気工作物の工事だけを行う会社は、登録ではなく、事業を開始しようとする日の10日前までに経済産業大臣または都道府県知事へ通知します。この会社は通知電気工事業者と呼ばれ、登録電気工事業者登録簿には載りません(e-Gov法令検索)。登録を受けずに電気工事業を営んだ場合は、1年以下の拘禁刑もしくは10万円以下の罰金、またはその併科と定められています。
この登録の内容は、登録電気工事業者登録簿として記録されています。同じ法律は「何人も、経済産業大臣又は都道府県知事に対し、その登録をした登録電気工事業者に関する登録電気工事業者登録簿の謄本の交付又は閲覧を請求することができる」と定めています(e-Gov法令検索)。誰でも請求できると法律に書かれている情報を、応募する側が使わない理由はありません。
もっと手軽な確かめ方もあります。電気工事業者は、営業所と電気工事の施工場所ごとに、見やすい場所に氏名または名称と登録番号などを記載した標識を掲げなければなりません(e-Gov法令検索)。会社見学や面接で事務所を訪れたときに、この標識が出ているかどうかを見ておきましょう。
一般用電気工事の営業所に主任電気工事士がいる
登録電気工事業者は、一般用電気工事の業務を行う営業所ごとに、作業を管理させるため主任電気工事士を置かなければなりません。主任電気工事士になれるのは、第一種電気工事士か、第二種電気工事士免状の交付を受けた後に電気工事に関し3年以上の実務の経験を有する第二種電気工事士です。主任電気工事士が欠けた場合には、そのことを知った日から2週間以内に選任しなければならず、選任しなかった者には3万円以下の罰金が定められています。ただし登録電気工事業者本人(法人の場合はいずれかの役員)がこの資格を満たし、その人が自らその営業所の業務に主として従事している場合は、別に主任電気工事士を選任する必要はありません(e-Gov法令検索)。この義務は一般用電気工事を行う営業所に限られるため、工場やビルの工事だけを行う会社には主任電気工事士はいません。
主任電気工事士は「一般用電気工事による危険及び障害が発生しないように一般用電気工事の作業の管理の職務を誠実に行わなければならない」とされ、作業に従事する者はその指示に従うことになっています(e-Gov法令検索)。配属される営業所の主任電気工事士が誰で、どのくらいの頻度で現場に来るのかを尋ねると、指導を受けられる環境かどうかが見えてきます。
建設業許可の区分を説明できる
建設業を営もうとする者は、2以上の都道府県に営業所を設けるときは国土交通大臣の、1つの都道府県にのみ設けるときはその都道府県知事の許可を受けなければなりません。許可は工事の種類ごとに与えられ、5年ごとに更新を受けなければ効力を失います。ただし政令で定める軽微な建設工事のみを請け負う場合は許可が要りません(e-Gov法令検索)。その軽微な建設工事とは、電気工事業の場合、工事一件の請負代金の額が500万円に満たない工事のことです(e-Gov法令検索)。
電気工事業は、建設業法施行令が特定建設業の技術者要件について別扱いを定める7業種の1つでもあります。土木工事業、建築工事業、管工事業、鋼構造物工事業、舗装工事業、造園工事業と並ぶ扱いです(e-Gov法令検索)。許可を持っているか、持っているとして一般建設業か特定建設業か。この2点を面接で尋ねて説明できない会社は、自社の立ち位置を社員に伝えていないということになります。
資格取得と定期講習の費用負担が決まっている
第一種電気工事士には、免状の交付を受けた日から5年以内に、その後は前回の定期講習を受けた日から5年以内ごとに、経済産業大臣の指定を受けた講習機関が実施する定期講習を受けることが義務づけられています(電気工事技術講習センター)。働き続ける限り定期的に発生する用事です。
この講習の費用と時間を会社が持つのか、社員が自分の休みを使って自費で受けるのか。取り決めがあるかどうかは、会社が資格をどう扱っているかをそのまま表します。あわせて、第二種から第一種へ進むときの受験費用や、技能試験の練習用材料の扱いも尋ねておくとよいでしょう。第二種電気工事士の人が自家用電気工作物の簡易電気工事に進むには認定電気工事従事者認定証が、ネオン工事や非常用予備発電装置工事に進むには特種電気工事資格者認定証が必要で、どちらにも認定講習があります。この講習の費用を会社が持つかどうかも確かめておきたい点です(電気工事技術講習センター)。第一種電気工事士免状の交付には、試験に合格したうえで一定の実務の経験が必要とされているため、経験を積ませる意思があるかどうかも判断材料になります(e-Gov法令検索)。
公開されている情報で電気工事会社を確かめる手順

気になる会社が見つかったら、応募する前に公開されている情報をたどっておくと判断材料が増えます。次の3つの手順で確認してみてください。
営業所のある都道府県知事(2以上の都道府県に営業所があるときは経済産業大臣)に、登録電気工事業者登録簿の謄本の交付または閲覧を請求します。誰でも請求できると法律に定められています(e-Gov法令検索)。
国土交通省の建設業者・宅建業者企業情報検索システムで社名を調べ、建設業許可の有無と、許可を受けた業種に電気工事業が含まれているかを確かめます(国土交通省)。
STEP2の検索システムでは、商号または名称、許可番号、所在地、そして許可を受けた業種で絞り込めます。業種の略号のうち「電」が電気工事業にあたり、一般建設業と特定建設業のどちらかを指定することもできます。掲載内容は許可等行政庁が登録した情報をもとにしており、建設業者と宅建業者については月2回の頻度で更新されています(国土交通省)。
ここで大切な使い分けがあります。建設業許可を受けた建設業者が電気工事業を営む場合は、登録ではなく届出で足りることになっており、みなし登録電気工事業者として扱われます。みなし登録電気工事業者には、主任電気工事士の設置、資格のない人を作業に従事させない義務、標識の掲示、帳簿の備付けといった業務上の決まりがそのまま適用されます。ただし自家用電気工作物の工事だけを営む建設業者は、届出ではなく通知を行い、みなし通知電気工事業者として扱われます(e-Gov法令検索)。登録簿に社名が見当たらない場合は、建設業許可を持つ会社か、自家用電気工作物の工事だけを行う通知電気工事業者である可能性があります。
免状と認定証の携帯という決まり
電気工事士、特種電気工事資格者、認定電気工事従事者は、電気工事の作業に従事するときに免状や認定証を携帯していなければなりません(e-Gov法令検索)。現場見学の機会があれば、作業に入る人が免状を持っているかどうかを確かめる場面に立ち会えるかもしれません。また、電気工事業者が資格のない人を作業に従事させた場合には、3月以下の拘禁刑もしくは3万円以下の罰金、またはその併科と定められています(e-Gov法令検索)。
面接で確かめたい待遇と育成の仕組み
制度の確認が済んだら、次は自分が受け取る条件と、経験の積ませ方です。書面や記録に残る形で確かめておきたい点を整理します。
現場までの移動時間をどう扱うか
電気工事の仕事では、事務所に集合してから現場へ向かう日と、現場に直行する日が混ざります。集合してから移動する時間を労働時間として数えるのか、直行直帰のときの起点をどこに置くのか。労働時間に当たるかどうかは、会社の取り決めではなく、その時間に使用者の指揮命令下に置かれていたかどうかで決まります。事務所に集合して現場へ向かうよう指示されている時間は、通常この指揮命令下にあたります(厚生労働省)。求人票の「8時から17時」という表記だけでは、一日の拘束がどこから始まるのかは分かりません。朝の集合時刻と、現場を出る目安の時刻を、代表的な現場の例で尋ねてみてください。
固定残業代の内訳を書面で確かめる
固定残業代が何時間分を含むのか、超えた分は別に支払われるのか、資格手当は免状の種類ごとにいくらなのか。この3点は入社前に書面で確かめておきたいところです。提示された金額が世の中の水準からどのあたりに位置するのかは、厚生労働省の賃金構造基本統計調査で確かめられます(厚生労働省)。時給に換算したときに地域別最低賃金を下回っていないかも見ておきましょう。地域別最低賃金は毎年見直されるため、応募する時点の一覧で都道府県の額を確かめてください(厚生労働省)。あわせて厚生労働省の職場情報総合サイトの職場情報検索で社名を調べ、男女の平均継続勤務年数、月平均所定外労働時間、年次有給休暇取得率といった数字が公表されていないかも見ておきましょう(厚生労働省)。
経験の記録を会社が残しているか
建設キャリアアップシステムは、技能者の資格や現場での就業履歴を登録・蓄積し、能力評価につなげる仕組みです(国土交通省)。会社がこの登録を行っているかどうかは、社員の経験を記録として残す考えがあるかの手がかりになります。
第一種電気工事士免状の交付には試験合格に加えて実務の経験が必要ですから、どの現場にどれだけ入ったかの記録は本人にとって資産になります。記録を残す仕組みがある会社は、社員が次の資格へ進むことを前提にしていると考えてよいでしょう。
同じ試験を受けた人がどれだけいるか
電気工事士試験を実施している電気技術者試験センターは、年度ごとの受験者数と合格者数を公開しています。令和7年度の第二種電気工事士試験は、学科試験の受験者が139,087人で合格者が78,711人、技能試験の受験者が99,610人で合格者が71,471人でした(電気技術者試験センター)。令和7年度の第一種電気工事士試験は、学科試験の受験者が36,154人で合格者が20,735人、技能試験の受験者が28,403人で合格者が16,509人でした(電気技術者試験センター)。
毎年これだけの人が新しく試験に合格しています。裏を返せば、資格を持っているだけでは他の応募者と差がつかないということです。だからこそ、どんな現場で何を任されたかを記録に残し、次の免状へ進める環境を選ぶことに意味があります。
電気工事会社選びでよくある質問
最後に、電気工事の会社を選ぶときによく寄せられる疑問を整理しておきます。
- 会社が登録されているかはどこで分かりますか
-
電気工事業の業務の適正化に関する法律は、誰でも経済産業大臣または都道府県知事に登録電気工事業者登録簿の謄本の交付または閲覧を請求できると定めています(e-Gov法令検索)。建設業許可を持つ会社は電気工事業の登録ではなく届出または通知になるため、この登録簿には載りません。その場合は国土交通省の建設業者・宅建業者企業情報検索システムで、許可を受けた業種に電気工事業が含まれているかを確かめます(国土交通省)。
- 建設業許可がない会社は避けるべきですか
-
そうとは限りません。工事一件の請負代金が500万円に満たない軽微な建設工事のみを請け負う場合、建設業許可は不要とされているためです(e-Gov法令検索)。電気工事業の登録・届出・通知のいずれかを行っているかとあわせて見てください。
- 第一種の免状に更新はありますか
-
免状そのものの更新はありませんが、第一種電気工事士は免状の交付を受けた日から5年以内、その後は前回の受講日から5年以内ごとに定期講習を受けることが義務づけられています(電気工事技術講習センター)。
- 免状はどこで交付されますか
-
電気工事士免状は都道府県知事が交付します(e-Gov法令検索)。都道府県庁の窓口の一覧は電気技術者試験センターがまとめています(電気技術者試験センター)。
資格の先にある、会社の届出を見よう
電気工事の会社は、電気工事業の登録・届出・通知と、建設業許可という2つの制度に同時に関わっています。登録を受けた会社の登録簿は誰でも謄本の交付や閲覧を請求でき、建設業許可は国のサイトで社名から検索できます。営業所と現場に標識を掲げることも法律で決まっています。外から見て違いが分からないように思えても、確かめる手がかりは制度として用意されているのです。
登録または許可の有無を調べ、監督処分の履歴と公表されている労働時間の数字に目を通し、そのうえで配属先の主任電気工事士、移動時間の扱い、定期講習の費用負担を面接で尋ねてみてください。免状の種類や手当の額だけで比べるのではなく、届出と体制を物差しにして、自分が続けられる会社を見極めていきましょう。

