美容師のホワイトな美容室の見分け方|開設届と立入検査から確かめる

「美容師 ホワイト 美容室 見分け方」で検索すると、休みが取れる、給与が高い、研修が手厚いといった条件を並べた記事が表示されます。ところが、その条件に当てはまるかどうかを求人票の外から確かめる方法まで書かれていることは多くありません。結局は面接で聞くしかない、という話に落ち着いてしまいます。

ここで見落とされているのが、美容室には美容師法という専用の法律があり、店を開くときの届出や、都道府県による立入検査の仕組みが定められているという点です。美容室は、店を開く前に役所へ届け出て、設備の確認を受けなければ営業できない業種です。

この記事では、美容の仕事だけにある公の仕組みと、働く人の待遇に関わる公開情報を組み合わせて、就職先としての美容室を外から確かめる方法を、就活キャリア研究所の視点で整理しました。

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目次

美容室の働きやすさが外から見えにくい理由

条件を比べる前に、美容業という商売の形を押さえておくと、情報が手に入りにくい理由が見えてきます。

店の数が多く、一店あたりの人数が少ない

厚生労働省の衛生行政報告例によると、令和6年度末(2025年3月末)の美容所の数は277,752施設で、前年度に比べ3,682施設、率にして1.3パーセント増えています(厚生労働省)。同じ調査で理容所は107,995施設と、前年度から2.1パーセント減っており、美容所だけが増え続けている構図です。

厚生労働省が公開している美容業概要のページでは、その1年前にあたる2024年3月末時点の従業美容師数が57万9,768人、同じ時点の美容所数が27万4,070施設と示されています(厚生労働省)。この二つを割ると、一つの美容所あたりの美容師はおよそ2.1人です。働く人が数人という店が大多数を占めるため、社員の口から待遇の相場が広く伝わりにくい業種です。

経営の形が小さく、高齢化も進んでいる

厚生労働大臣が令和7年3月に決定した美容業の振興指針には、業界の状態が数字で書かれています(厚生労働省)。令和5年度の調査で従業者数5人未満の事業者は86.7パーセントを占め、平成27年度の78.2パーセントから上がっています。経営者の年齢は60歳から69歳が32.7パーセント、70歳以上が23.4パーセントで、経営者の高齢化が着実に進んでいると記されています。

同じ指針は、住宅地に立地し中高年の経営者による小規模個人経営の店と、商業地や交通至便の場所に立地する比較的新しい店や法人経営の中規模・大規模店が見られるとして、二層分化の傾向にも触れています。同じ美容室という言葉でも、個人経営の店と法人が運営する店では、社会保険の適用が変わります。この違いは後の章で具体的に見ていきます。

雇われるのか、場所を借りるのかで法律が変わる

美容の仕事では、店に雇われて給与を受け取る働き方のほかに、店の席を借りて自分の客を施術し、売上の一部を店に払う働き方があります。後者は契約書の上では業務の委託とされることが多く、その場合は労働基準法の労働時間や休日の決まり、有給休暇の仕組みは適用されません。ただし厚生労働省は、形式的には業務委託契約を締結している者であっても、実質的に労働基準法上の労働者と判断される場合には労働基準関係法令が適用されると示しています(厚生労働省)。契約書の題名ではなく、働き方の実態で判断される点が要になります。

委託の側にも法律による保護はあります。令和6年11月1日に施行された特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律、通称フリーランス・事業者間取引適正化等法では、業務を委託する側に、取引条件を明示すること、給付を受け取ってから原則60日以内に報酬を支払うこと、ハラスメント対策の体制を整えることなどが定められています(厚生労働省)。守られる中身が違うだけで、どちらかが必ず不利というわけではありません。問題になるのは、自分がどちらの立場で働くのかを入社前にはっきりさせないまま働き始めることです。

美容室だけにある公の仕組み

美容師法は昭和32年の法律で、美容師の資格と、美容所という施設の扱いを定めています。ここには、働く場所を確かめるときに使える手がかりがいくつも置かれています。

店を開くには都道府県や市区への届出が要る

美容師法第11条は、美容所を開設しようとする者は、厚生労働省令の定めるところにより、美容所の位置、構造設備、管理美容師その他の従業者の氏名その他必要な事項を、あらかじめ都道府県知事に届け出なければならないと定めています(e-Gov法令検索)。届け出た事項に変更が生じたとき、美容所を廃止したときにも、すみやかに届け出る義務があります。なお同法第20条は、地域保健法に基づく政令で定める市または特別区では、これらの条文の「都道府県知事」を「市長」または「区長」と読み替えると定めています。東京23区や政令指定都市、中核市にある店では、届出先も立入検査を行うのもその市や区になります。

続く第12条では、美容所の開設者は、その美容所の構造設備について都道府県知事の検査を受け、第13条の措置を講ずるに適する旨の確認を受けた後でなければ、当該美容所を使用してはならないとされています。従業者の氏名まで役所に届け出たうえで、設備の確認を受けてから初めて営業できる仕組みです。届出をしなかった場合や虚偽の届出をした場合には、第18条で30万円以下の罰金が定められています。

美容師が常時2人以上いる店には管理美容師

美容師法第12条の3は、美容師である従業者の数が常時2人以上である美容所の開設者は、当該美容所を衛生的に管理させるため、美容所ごとに管理者を置かなければならないと定めています。この管理者が管理美容師です。

管理美容師になれる人の条件も同じ条文にあります。美容師の免許を受けた後3年以上美容の業務に従事し、かつ厚生労働大臣の定める基準に従い都道府県知事が指定した講習会の課程を修了した者でなければならない、というものです。先ほどの数字で見たとおり、一つの美容所あたりの美容師はおよそ2.1人ですから、管理美容師を置いているかどうかは、その店が何人規模で回っているかを外から推し量る目印になります。

美容業の振興指針も、管理美容師資格認定講習会について、店舗の管理者にふさわしい衛生管理に係る知識や意識の点検を図り、その徹底を図るための重要な制度であると位置づけ、新規受講対象者を中心に資格取得を促していく必要があると述べています。

都道府県や市区は美容所に立ち入って検査できる

美容師法第14条は、都道府県知事は、必要があると認めるときは、当該職員に、美容所に立ち入り、第8条又は第13条の規定による措置の実施の状況を検査させることができると定めています。検査の対象になる第8条は、皮ふに接する布片及び皮ふに接する器具を清潔に保つこと、皮ふに接する布片を客一人ごとに取り替え、皮ふに接する器具を客一人ごとに消毒することなどの措置です。

第13条は施設の側の措置で、常に清潔に保つこと、消毒設備を設けること、採光、照明及び換気を充分にすることが挙げられています。これらに違反したときや、美容師でない者に美容の業を行わせたときには、第15条で都道府県知事が期間を定めて美容所の閉鎖を命じることができます。

ここで押さえておきたいのは、これらが接客の質ではなく、働く人の手元の衛生を守る決まりだという点です。器具の消毒や換気は、客だけでなく、そこで一日中働く人の環境にも直結します。店内を見学できる機会があれば、消毒設備が実際に使われているか、布片が客ごとに替えられているかを見ておく価値があります。

働く場所としての美容室を測る4つの目安

働く場所としての美容室を見極める4つの視点を示した図(開設の届出・管理美容師・社会保険・契約の形)

ここからは、公開されている情報のどこを見れば職場の形が分かるのかを整理します。次の四つを順に確かめると、求人票の言葉だけに頼らずに自分で判断できます。

  1. 美容所の開設の届出と設備の確認を受けているかを確かめる
  2. 管理美容師が置かれているかを確かめる
  3. 社会保険の適用事業所かどうかを確かめる
  4. 雇用契約か業務の委託かを書面で確かめる

開設の届出と設備の確認は保健所に確かめる

美容所の開設届そのものは都道府県や保健所が管理する書類で、店内に掲示する義務は美容師法にはありません。届出と確認を受けているかを確かめたい場合は、その美容所を所管する保健所に問い合わせる方法があります。見学や面接で店に入る機会があれば、消毒設備が形だけの置き方になっていないか、使った器具と消毒済みの器具の保管場所が分かれているかを見ておくと、第13条の措置がどの程度日々の動きに入っているかが分かります。

もう一つの手がかりが標準営業約款、通称Sマークです。公益財団法人全国生活衛生営業指導センターによると、Sマークの登録店は、衛生的なサービスを提供できるよう営業施設又は設備についての基準を定め、標準的なサービスを提供できるよう提供する役務の内容と基準を細かに定め、万一事故が発生した場合に事故賠償基準に基づいて賠償が行えるよう損害賠償責任保険に加入しています(全国生活衛生営業指導センター)。同センターが公開している登録店舗数の一覧では、令和8年3月末時点の登録が全業種で21,733店、うち美容業は6,546店です。全国の美容所の数と比べると一部にとどまるため、登録があること自体が店の姿勢を示す情報になります。

管理美容師の有無で店の規模が読める

管理美容師が必要になるのは、美容師である従業者が常時2人以上いる美容所です。逆に言えば、管理美容師を置いていない店は、美容師が常時1人という規模で運営されている可能性があります。開設者自身が条件を満たす場合は、自ら主として管理する一つの美容所について管理美容師となることができるという例外も、同じ条文に書かれています。

管理美容師の条件が免許取得後3年以上の実務と講習会の修了である点も、職場選びの材料になります。店に管理美容師がいるということは、少なくとも3年以上この仕事を続けた人が現場にいるということです。入ってから誰に教わるのかを考えるうえで、この一点は面接で必ず聞いておきたい項目です。

社会保険は店の形で扱いが変わる

ここが美容業でとりわけ重要な論点です。日本年金機構の説明によると、厚生年金保険は事業所単位で適用され、強制適用事業所となるのは株式会社などの法人の事業所です(日本年金機構)。個人の事業所については、従業員が常時5人以上いる場合に強制適用となりますが、農林漁業、サービス業などの場合は除かれます。

美容業はこの除かれるサービス業にあたります。つまり個人経営の美容室は、従業員が5人以上いても厚生年金保険の強制適用事業所にはなりません。この場合でも、従業員の半数以上が同意し、事業主が申請して厚生労働大臣の認可を受ければ、任意適用事業所として加入することはできます。なお2025年に成立した年金制度改正法により、2029年10月からは常時5人以上を使用する全業種の個人事業所が適用の対象になります。ただし2029年10月の施行時点ですでに存在している事業所は、当分の間、対象外とされています(厚生労働省)。

先ほど見たとおり、従業者数5人未満の事業者が86.7パーセントを占め、個人経営と法人経営が二層に分かれているのが美容業の姿です。求人票に社会保険の記載があるかどうかを見るだけでなく、その店が法人なのか個人事業なのかを合わせて確かめると、記載の意味がはっきりします。パートやアルバイトの場合は、1週間の所定労働時間と1か月の所定労働日数が通常の労働者の4分の3以上であれば被保険者となる、という基準も同じページに示されています。

契約の形は入社前に書面で確かめる

雇用なのか業務の委託なのかは、待遇の話の前提です。雇用であれば労働時間や休日や有給休暇の決まりが適用され、労災保険と雇用保険の対象になります。厚生年金保険と健康保険は、先に見たとおり店が法人か個人事業かで扱いが変わります。委託であれば、フリーランス・事業者間取引適正化等法が定める取引条件の明示や報酬の支払期日の決まりが適用され、報酬は自分の売上として扱われます。

美容業の振興指針は、働き方・休み方改革に向けた対応として、営業者に求められる役割に、時間外労働の上限規制及び月60時間超の時間外労働の割増賃金率の引上げへの対応による長時間労働の是正、年5日の年次有給休暇の確実な取得、雇用形態又は就業形態に関わらない公正な待遇の確保、従業員に対する待遇に関する説明、職場のハラスメント対策を挙げています。これらは国が業界に向けて示した目安であり、面接でそのまま質問して差し支えない項目です。

同じ指針は、従業員の福利の充実に関する事項として、労働条件の整備及び労働関係法令の遵守に関する助言、作業環境の改善及び定期健康診断の実施を含む健康管理充実のための支援、医療保険と年金保険と介護保険及び労働保険の加入等に係る啓発を、組合や指導センターの役割として挙げています。講習や練習の時間が労働時間として扱われるのかどうかも、雇用であれば当然に確かめてよい論点です。

公開されている情報で美容室を確かめる手順

美容師のホワイトな美容室の見分け方について公開されている情報を確かめている場面のイラスト

気になる店が見つかったら、次の三つの手順をたどると、面接に行く前に分かることが増えます。

STEP1

その店が法人か個人事業かを調べます。そのうえで日本年金機構の厚生年金保険・健康保険 適用事業所検索システムで、法人名や屋号を手がかりに適用事業所として登録されているかを確かめます(日本年金機構)。都道府県から順に絞り込む作りになっています。

STEP2

複数の店舗を持つ会社であれば、厚生労働省の職場情報総合サイトで、平均勤続年数や有給休暇の取得率、研修の実施状況といった項目が公表されていないかを確かめます(厚生労働省)。掲載がない場合でも、同じ項目を面接で聞く質問の形に使えます。

STEP3

美容師法の条文を読み、店に確かめる項目を書き出します(e-Gov法令検索)。管理美容師を置いているか、器具の消毒と布片の交換をどう回しているか、雇用契約か業務の委託かの三点は、条文に根拠があるため聞いても不自然になりません。

美容室の職場選びに関するよくある質問

個人経営の美容室は社会保険がないのですか

強制ではありませんが、加入している店もあります。日本年金機構の説明では、個人の事業所のうち従業員が常時5人以上いる事業所は強制適用となる一方、サービス業などは除かれています(日本年金機構)。従業員の半数以上の同意と事業主の申請、厚生労働大臣の認可があれば任意適用事業所になれます。

管理美容師がいない店は問題がありますか

美容師である従業者が常時1人であれば、置く義務はありません。美容師法第12条の3が管理美容師を求めているのは、美容師である従業者の数が常時2人以上である美容所です(e-Gov法令検索)。2人以上いるのに置いていない場合は、同法第15条の閉鎖命令の対象になり得ます。

面貸しと雇用はどちらを選ぶべきですか

守られる中身が違うため、一概には決められません。雇用は労働時間や有給休暇の決まりが適用され、業務の委託はフリーランス・事業者間取引適正化等法による取引条件の明示や報酬の支払期日の決まりが適用されます。ただし厚生労働省は、業務委託契約を結んでいても実質的に労働基準法上の労働者と判断される場合には労働基準関係法令が適用されるとしています(厚生労働省)。大事なのは、どちらで働くのかを書面で確かめ、実際の働き方が書面と合っているかを見ることです。

美容師の給与の水準はどこで調べられますか

厚生労働省の賃金構造基本統計調査が手がかりになります。この調査は職種ごとの集計も公表しており、令和7年の産業計・企業規模10人以上では、「理容・美容師」の所定内給与額が男女計で303.1千円、平均年齢30.0歳、平均勤続年数6.8年、年間賞与その他特別給与額が106.4千円です(政府統計の総合窓口)。産業のまとまりで見ると、美容業が含まれる生活関連サービス業,娯楽業は295.2千円、全産業の男女計は340.6千円です(厚生労働省)。ここでの数字は6月分として支払われた所定内給与額で、残業代と賞与は含みません。

制度の記録から職場の形を確かめよう

美容室は、届出をして設備の確認を受けてから営業を始め、都道府県や市区の立入検査を受ける業種です。働く人の氏名まで役所に届け出る仕組みがあり、美容師が2人以上いれば管理美容師を置く義務があります。こうした記録は、求人票の言葉とは別の場所に積み上がっています。

法人か個人事業か、社会保険の適用事業所か、管理美容師がいるか、雇用か業務の委託か。この四つは美容師法と日本年金機構の公開情報で確かめられ、誰が調べても同じ答えになります。店の雰囲気を見る前に、その店がどの制度の上に立っているかを確かめてみてください。

この記事の著者情報

株式会社ネット風評被害対策 代表取締役 内村淳

ネット風評被害対策の専門家として15年以上の実績を持つ。
風評被害誹謗中傷対策・サジェスト対策・逆SEO対策・SNS炎上対応など、企業のWebリスク解決を累計10,000社以上支援。
ネット誹謗中傷対策に特化した法律事務所に1年間従事し、法的観点からの対応知見を習得。IT技術と法的アプローチの双方に携わってきた経験を持つ。
あらゆるネット風評被害対策支援に加え、企業向けコンサルティングや同業他社へのサービス提供も行う。
現在、日々進化するAI検索エンジンのアルゴリズムを徹底解析し、AI検索時代に適応した次世代の風評対策に注力している。

著書: 『AI時代のネット風評被害対策』(Kindle出版) ↗

発信活動: ネット風評被害対策に関する情報をnoteでも発信しています。 note ↗

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