「行政処分を受けた会社の名前を集めれば、和歌山で入ってはいけない運送会社の一覧ができるはず」。近畿運輸局は、トラックの事業者が受けた行政処分等を、事業者の名前と違反の中身を付けて月ごとに公開しているので、そう考えるのは自然なことです。
ところが、令和7年1月分から令和8年8月分までの一覧で和歌山県内の営業所が受けた処分や警告46件のうち、42件は同じ1つの事業者が県内の別々の営業所で受けたものでした。ほかに名前が載った事業者は4つだけで、県内に本社を置く一般貨物の事業者が616者あることを考えると、一覧に名前がないことは安心の材料になりません。一方で、46件のうち45件には点呼の違反が含まれ、和歌山労働局が令和6年に監督した道路貨物運送業の34事業場のうち19事業場で、改善基準告示の違反が見つかっています。名前を探すより、点呼や運行の記録を見せてもらえるかを確かめるほうが、見分ける近道になります。
この記事では、特定の会社名を挙げることはしません。処分の一覧の読み方から、面接で見せてもらいたい記録、墜落を防ぐ備え、和歌山県最低賃金での賃金の確かめ方まで、近畿運輸局と和歌山労働局が公開している情報をもとに、就活キャリア研究所の視点で順にお伝えします。
和歌山の運送会社が処分の一覧で見分けにくい3つの理由
和歌山の運送会社を処分の一覧だけで見分けにくい理由は、件数の偏り、一覧に載る条件、県内の事業者の顔ぶれの3つです。
一覧の9割が1つの事業者の営業所だから
和歌山県のトラック事業を受け持つのは近畿運輸局で、管轄は大阪府・京都府・兵庫県・奈良県・滋賀県・和歌山県の2府4県です(近畿運輸局)。
トラックの事業者が受けた行政処分等は、2府4県分が1つの表になって月ごとに公開され、事業者の所在地と営業所の所在地が別の欄に並びます(近畿運輸局)。令和7年1月分から令和8年8月分までの20か月分で、営業所の所在地が和歌山県の行は46件でした。そのうち42件は、同じ1つの事業者が県内の42の営業所でそれぞれ受けたもので、輸送施設の使用停止が30件、文書警告が12件です。42件とも、その事業者自身から点呼の実施と記録が不適切だったという報告があったことが、監査のきっかけでした。
残る4件は4つの事業者が1件ずつ受けたもので、輸送施設の使用停止が2件、文書警告が1件、許可の取消しが1件です。令和7年1月分から9月分までの一覧には、和歌山県内の営業所の行がありませんでした(近畿運輸局)。件数は会社の数ではなく営業所の数として読み、同じ事業者の行がどれだけを占めているかを先に確かめましょう。
監査などで違反が確認された会社しか載らないから
処分の一覧に載るのは、監査や調査で違反などが確認された事業者だけです。残る4件のきっかけは、法令違反の疑いが2件、公安委員会からの通報が1件、関係機関からの情報が1件でした。許可の取消しの1件は、調査の結果、長期にわたり事業者としての実態が確認できなかったことによるもので、違反の条項には、事業の休止と廃止の届出を定めた条文だけが挙がっています(近畿運輸局)(e-Gov法令検索)。
近畿運輸局の業務要覧によると、令和6年度にトラックの事業者に行った監査は570件、監査による処分は121件でした。管内に本社を置く一般貨物の事業者は、令和7年3月31日時点で霊柩を含めて1万者を超えるので、1年に監査を受けるのはそのごく一部です(近畿運輸局)。一覧に名前がないことは、違反がなかったことの証明にはなりません。
小さな会社と県外に本社がある会社が混ざるから
同じ業務要覧によると、令和7年3月31日時点で和歌山県内に本社を置く一般貨物の事業者は霊柩を含めて616者、特定貨物の事業者は3者でした。このほか、本社を県外に置いて和歌山県内に営業所を持つ一般貨物の事業者が86者あり、うち52者は近畿の他府県に、34者は近畿の外に本社があります(近畿運輸局)。
規模別の表では、県内に本社を置く一般貨物の事業者559者のうち、295者が従業員10人以下、343者が車両10両以下です。559者には特別積合せと霊柩の事業者を含みません(近畿運輸局)。応募する前に、本社の所在地と、配属される営業所の運転者の人数を確かめましょう。一般貨物の事業者は原則として営業所ごとに運行管理者を選任するので、配属先で誰が運行を管理しているかも尋ねておきます(e-Gov法令検索)。
和歌山で避けたい運送会社に共通する4つの特徴

和歌山で避けたい運送会社に共通するのは、法律で残すよう決められている点呼・運行・運転者の記録と、荷台での作業の安全が整っていないことです。
- 点呼の実施と記録が整っていない
- 運行指示書と拘束時間を記録で管理していない
- 運転者等台帳と入社後の指導の記録がない
- 荷台での作業に墜落を防ぐ備えがない
点呼の実施と記録が整っていない
運送会社は、運転者が業務を始める前と終えた後に、対面か国が定めた同等の方法で点呼を行います。業務前には、酒気帯びの有無、病気や疲労、睡眠不足で安全に運転できないおそれがないか、日常点検をしたかを確かめます。酒気帯びは目視などに加え、営業所に備えたアルコール検知器で確認し、点呼の記録は1年間保存します(e-Gov法令検索)。
電話などで点呼を済ませてよいのは、遠隔地で業務を始めたり終えたりする場合などに限られます。車庫と営業所が離れていることや、早朝や深夜に点呼を行う人が営業所にいないことは、理由になりません(国土交通省)。
和歌山県内の46件では、45件に点呼の違反が含まれていました。同じ事業者の42件は、いずれも点呼を定めた貨物自動車運送事業輸送安全規則第7条の違反で、うち24件では、実際と違う内容を点呼の記録に書いた「不実記載」も挙がっています。許可の取消しを除く残り3件でも、3件とも点呼の記録の違反が挙がりました(近畿運輸局)。
面接では「朝いちばんに出る便の点呼は、誰がどの方法で行っていますか」と尋ねてみてください。点呼をする人の名前と方法まで答えられる会社は、点呼を記録に残す前提で動いていると考えられます。
運行指示書と拘束時間を記録で管理していない
和歌山県内の処分や警告のうち、同じ事業者の42件と許可の取消しを除く3件では、2件で運転者の勤務時間と乗務時間の基準を守らせていない違反と、運行指示書の違反が挙がりました。業務の記録の違反も2件、運行記録計による記録の違反も1件あります(近畿運輸局)。
運行指示書が要るのは、業務の始まりと終わりの点呼をどちらも対面などで行えない日を含む運行です。一般貨物の事業者はそうした運行ごとに、経路、主な経過地の発着の日時、休憩の地点と時間などを書いた運行指示書を作って運転者に持たせ、業務の途中にも少なくとも1回点呼を行います(e-Gov法令検索)。1つの運行は、最初の勤務の開始から最後の勤務の終了まで、フェリーでの休息期間を除いて144時間を超えてはならないと、国土交通省の告示が定めています(国土交通省)。
運行の中身は、業務の記録と運行記録計にも残ります。業務の記録には、業務の開始と終了の地点と日時、休憩の地点と日時を書き、荷主の都合で待った場合は、待った地点と、到着、荷役作業、出発の日時も書きます。車両総重量7トン以上か最大積載量4トン以上のトラックでは、運行記録計で速度、距離、時間を記録します。どちらも1年間保存します(e-Gov法令検索)。
改善基準告示では、トラック運転者の1日の拘束時間は13時間以内が基本で、延長しても15時間が限度です。休息期間は、勤務の後に継続11時間以上を与えるよう努めることを基本とし、継続9時間を下回らないこととされています。連続運転は4時間までで、サービスエリアなどに止められずやむを得ない場合に限り30分まで延ばせます。1か月の拘束時間は284時間以内、1年は3,300時間以内が原則です。労使協定を結べば、1年3,400時間以内の範囲で年6か月まで1か月310時間に延ばせますが、284時間を超える月は連続3か月までです(厚生労働省)。
この基準には例外があります。1週間の運行がすべて1回の走行距離450km以上の長距離貨物運送で、休息期間を住所地以外の場所で取る場合は、週2回に限り、1日の拘束時間を16時間まで延ばし、休息期間を継続8時間以上にできます。休息期間が9時間を下回った運行の後には、継続12時間以上の休息期間が要ります。2人乗務、隔日勤務、休息期間を分けて取る場合にも、それぞれ別の決まりがあります(厚生労働省)。
和歌山労働局が令和6年に県内の道路貨物運送業の34事業場を監督した結果では、改善基準告示の違反が19事業場(55.9%)にありました。項目別では、最大拘束時間と休息期間がそれぞれ15事業場、連続運転時間が14事業場、総拘束時間が11事業場です(和歌山労働局)。監督に入った事業場の中での割合なので、県内のすべての事業場の違反の割合を表すものではありません。
面接では「泊まりがけの運行はありますか。直近3か月の運行記録計の記録と業務の記録を見せてもらえますか」と尋ねてみてください。
運転者等台帳と入社後の指導の記録がない
一般貨物の事業者は、運転者ごとに運転者等台帳を作って営業所に備えます。台帳には雇い入れた年月日、運転免許の内容、起こした事故の概要、健康状態、特別な指導と適性診断の受診の状況などを書き、写真を貼ります。運転者でなくなった後も3年間保存します(e-Gov法令検索)。県内の処分や警告で、同じ事業者の42件と許可の取消しを除く3件では、3件とも台帳の記載の不備が挙がり、1件では運転者への指導と監督の違反も挙がりました(近畿運輸局)。
運送会社は、運転者への指導と監督を毎年行い、日時、場所、内容などを記録して営業所に3年間保存します。新たに雇い入れた運転者への特別な指導は中身と時間が決まっていて、一般貨物の事業者では、法令や安全な運転に関する事項を15時間以上、実際にトラックを運転させる安全運転の実技を20時間以上行います。時期はその会社で初めて乗務する前で、やむを得ない事情があれば乗務を始めてから1か月以内です。指導した年月日と中身は、運転者等台帳に書くか、台帳に添付します(国土交通省)。
その会社で初めて乗務する前の3年間に、他の一般貨物の事業者などで運転者として常時選任されたことがある人は、一般貨物の事業者の特別な指導の対象外です。四輪以上の軽自動車を使う軽貨物の事業者には、法令などの事項を5時間以上とする別の定めがあり、対象外になる人の条件も別に決まっています(国土交通省)。
未経験で入る人は「独り立ちするまでに、座学と同乗での実技をそれぞれ何時間受けられますか」と尋ねてください。時間数と台帳への残し方を答えられない会社では、入社後の指導が後回しにされるおそれがあります。
荷台での作業に墜落を防ぐ備えがない
和歌山労働局の令和7年の確定値では、県内の道路貨物運送業で労働災害により休業4日以上となった死傷者は101人で、令和6年より8人増えました。事故の型では墜落・転落が30人で最も多く、転倒が22人、無理な動作が18人と続きます(和歌山労働局)。令和8年は9月末までの速報で59人で、前年同期の72人より13人少なくなっています(和歌山労働局)。和歌山労働局は、運輸交通業の休業4日以上の死傷災害の約7割を、墜落・転落、転倒、動作の反動等が占めるとしています(和歌山労働局)。
労働安全衛生規則は、最大積載量2トン以上のトラックで荷を積み降ろすとき、ロープ掛けやシート掛けも含めて、床面と荷台や荷の上面との間を安全に上り下りするための設備を会社が設け、作業する人がその設備を使うよう定めています。1つの荷が100kg以上の積み降ろしでは、会社が作業を指揮する人を定めます(e-Gov法令検索)。
保護帽は、最大積載量5トン以上のトラックと、2トン以上5トン未満で荷台の側面が開いているか開け閉めできるトラックで、積み降ろしをするときに着用します。2トン以上5トン未満でテールゲートリフターが付いたトラックでは、リフターを使うときに着用します(e-Gov法令検索)。面接では「荷台に上がる作業はありますか。昇降用の設備と保護帽は用意されていますか」と尋ねましょう。
近畿運輸局と和歌山労働局の情報で確かめる手順

応募先の会社は、近畿運輸局、国土交通省、和歌山労働局が公開している情報を使って、次の3つの手順で確かめられます。
近畿運輸局の「貨物自動車運送事業者に対する行政処分の状況について」で月ごとの一覧を開き、「営業所の所在地」の欄で和歌山県の行に目を通します。令和8年9月30日の更新で、令和8年8月分まで載っています(近畿運輸局)。
国土交通省の事業者の行政処分情報検索で、事業の種類(一般貨物か軽貨物か)と都道府県の「和歌山県」を選び、社名で調べます。過去5年間の処分が載り、都道府県は営業所の所在地で選ぶ仕組みです(国土交通省)。
STEP1とSTEP2で応募先の名前を見つけたら、処分を受けた理由と、その後に改めた点呼や運行の管理の中身を尋ねてください。名前が見つからなかった場合も、点呼、運行指示書、運転者等台帳、墜落を防ぐ備えの4つを面接で確かめます。
和歌山県内のGマーク認定事業所
全日本トラック協会は、トラック運送事業者の交通安全対策などへの取り組みを事業所単位で評価し、基準を満たした事業所を安全性優良事業所(Gマーク)に認定しています。2025年12月16日時点の認定は全国で29,210事業所で、全事業所数の34.4%にあたります(全日本トラック協会)。和歌山県は219事業所で、県内の事業所数に対する割合は31.3%でした(全日本トラック協会)。
全日本トラック協会のGマークのページからは、申請した年度ごとの都道府県別の認定一覧を開けます。認定は会社単位ではなく事業所単位なので、本社ではなく配属される営業所の名前で探してください。
和歌山県最低賃金で確かめる賃金の計算
提示された賃金が法律の下限を満たしているかどうかは、和歌山県最低賃金と照らせば自分で確かめられます。
令和8年10月3日からの和歌山県最低賃金
和歌山県最低賃金は、令和8年10月3日から時間額1,101円で、改定前の1,045円から56円の引上げです(和歌山労働局)。和歌山県内の事業場で働くすべての労働者が対象で、臨時、パート、アルバイト、派遣の人も含みます(和歌山労働局)。
最低賃金と比べるときは、支払われた賃金から次の4つを除きます(和歌山労働局)。
- 臨時に支払われる賃金
- 1か月を超える期間ごとに支払われる賃金
- 時間外・休日・深夜労働の割増賃金
- 精皆勤手当、通勤手当、家族手当
月給制なら、除いた後の額を1か月の平均所定労働時間で割り、最低賃金と比べます(厚生労働省)。たとえば1か月の平均所定労働時間が168時間の会社なら、除いた後の月給が1,101円×168時間で184,968円以上あることが必要です。求人票の固定残業代は時間外労働への割増賃金にあたるので、比べる額に含めません。
和歌山労働局の令和6年の監督でも、道路貨物運送業の34事業場のうち1事業場で最低賃金の違反が、7事業場で割増賃金の違反が見つかっています(和歌山労働局)。
歩合給の計算と保障給
歩合給のように出来高払制で決まる賃金は、その総額を、その賃金計算期間に出来高払制で働いた総労働時間で割って時間額に直し、最低賃金と比べます。基本給が日給で手当が月給のように組み合わさっている場合は、それぞれを時間額に直して合計します(厚生労働省)。
出来高払制その他の請負制で使用する労働者には、労働時間に応じた一定額の賃金を保障するよう、労働基準法が使用者に求めています(e-Gov法令検索)。歩合の割合が高い求人では、保障給がいくらか、歩合を運賃と走行距離のどちらで計算するかを、書面で確かめてください。
和歌山の運送会社選びでよくある質問
- 和歌山で処分を受けた運送会社はどこで調べられますか
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近畿運輸局が、和歌山県を含む2府4県分の行政処分等を月ごとの一覧で公開しています(近畿運輸局)。過去5年間の分は、国土交通省の事業者の行政処分情報検索で、営業所の所在地の都道府県と社名から調べられます(国土交通省)。
- 荷待ちの時間は労働時間になりますか
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指示があればすぐに作業に入ることを求められ、労働から離れることが保障されていない待機の時間は、手待時間として労働時間に当たります(厚生労働省)。改善基準告示の拘束時間は始業から終業までの時間なので、荷待ちの時間も拘束時間に含まれます(厚生労働省)。
- 1日の拘束時間が15時間を超えることはありますか
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決まった条件を満たす運行ではあります。1週間の運行がすべて1回の走行距離450km以上の長距離貨物運送で、休息期間を住所地以外の場所で取る場合は、週2回に限り16時間まで延ばせます。2人乗務、隔日勤務、フェリーに乗る場合にも別の決まりがあります(厚生労働省)。15時間を超える日がある求人では、どの決まりに沿った勤務なのかを尋ねましょう。
- 和歌山県の最低賃金はいくらですか
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令和8年10月3日から時間額1,101円です。改定前の1,045円から56円の引上げで、和歌山県内の事業場で働くすべての労働者が対象です(和歌山労働局)。
処分の一覧より運行の記録を見せてもらおう
和歌山の運送会社を見分ける材料は、近畿運輸局と和歌山労働局がすでに公開しています。県内の処分や警告46件のうち42件は同じ1つの事業者の営業所のもので、45件に点呼の違反が含まれていました。和歌山労働局が監督した事業場の半数を超える19事業場で改善基準告示の違反が見つかり、道路貨物運送業の労働災害では墜落・転落が最も多くなっています。
処分の一覧と公表事案に目を通したうえで、点呼を誰がどう行うか、運行指示書と運行記録計の記録、自分の運転者等台帳に残る指導の記録、荷台に上がるときの設備を尋ねてみてください。一覧に名前がないことを安心の材料にするのではなく、記録を見せながら説明できる会社を選んでいきましょう。

