「味の素の子会社なら、年収も味の素と同じくらいだろう」。グループの多くの会社の社名に「味の素」が付くため、そう考える人もいるかもしれません。ところが、味の素株式会社の2026年3月期の有価証券報告書で平均年間給与が分かるのは、味の素自身だけです。子会社の年収は、どの会社の分も載っていません。
同じ報告書で子会社どうしを比べられる数字の1つが、資本金です。報告書に社名が載る国内の連結子会社16社を資本金で並べると、味の素冷凍食品が95億3,700万円で最も大きく、味の素食品の40億円、味の素AGFの38億6,200万円が続きます。
本記事では、資本金で並べた国内の子会社ランキングから、年収が分かる会社の範囲、子会社を比べる4つのポイント、公開資料で自分で確かめる手順まで、就活キャリア研究所の視点で順にお伝えします。
味の素の国内子会社の資本金ランキング
味の素の国内の連結子会社を資本金で並べると、味の素冷凍食品、味の素食品、味の素AGFの3社が上位に入り、4位以下の会社とは10倍以上の差があります。資本金は、2026年3月期の有価証券報告書の「関係会社の状況」に載っている値です。
この報告書によると、味の素グループは味の素と連結子会社105社、持分法適用会社15社で構成されています。「関係会社の状況」に社名が載る連結子会社は国内16社と海外30社で、残りの59社は「その他」とまとめて書かれています(EDINET)。国内16社のうち、資本金の上位6社は次のとおりです。
- 味の素冷凍食品 95億3,700万円 冷凍食品の事業を担う会社です。
- 味の素食品 40億円 調味料、栄養・加工食品、ソリューション&イングリディエンツの事業を担う会社です。
- 味の素AGF 38億6,200万円 栄養・加工食品の事業を担う会社です。
- 味の素ヘルシーサプライ 3億8,000万円 医薬用・食品用アミノ酸の事業を担う会社です。
- 味の素エンジニアリング 3億2,400万円 味の素の業務を請け負う会社です。
- 味の素ファインテクノ 3億1,500万円 電子材料などのファンクショナルマテリアルズの事業を担う会社です。
7位は、資本金2億円の味の素トレーディングとデリカエースです。上位6社は、どれも味の素が議決権の100%を直接持っています。上位3社と味の素の間には、子会社の製品を味の素が購入して販売し、子会社の原材料を味の素が共同購入して供給する取引があります。
味の素冷凍食品
味の素冷凍食品は、国内16社の中で資本金が最も大きい会社です。1970年12月に味の素レストラン食品として設立され、味の素は2000年10月に冷凍食品事業を分社化して、この会社に統合しました。
有価証券報告書には、冷凍食品セグメントの主要製品として「ギョーザ」や「やわらか若鶏から揚げ」が挙がっています。連結で冷凍食品セグメントに数えられる従業員は5,348人です。5,348人のうち味の素単体の従業員は51人で、冷凍食品の事業で働く人の大半は、味の素冷凍食品や海外の子会社にいます。
味の素食品
味の素食品は、本店を神奈川県川崎市に置き、調味料など3つの製品区分にまたがる会社です。ソリューション&イングリディエンツは、外食や食品加工の会社に向けた調味料などを扱う区分です。
前身は、1963年3月に米国のコーンプロダクツ社との合弁で発足したクノール食品です。味の素は1987年6月にクノール食品を子会社にしました。2019年4月には、川崎工場と東海事業所の一部、味の素パッケージングの生産体制をクノール食品に集めて再編し、社名を味の素食品に変えています。
味の素AGF
味の素AGFは、本店を東京都渋谷区に置く会社で、1973年8月に味の素が米国のゼネラルフーヅ社と提携して発足させた合弁会社が始まりです。
味の素は2015年4月に、当時の味の素ゼネラルフーヅを子会社にしました。栄養・加工食品の主要製品として、報告書には「Blendy」や「MAXIM」のブランド品、オフィス飲料などが挙がっています。
味の素グループで年収が分かる範囲
味の素グループで、有価証券報告書から平均年間給与が分かるのは、味の素と、関連会社のJ-オイルミルズの2社です。連結子会社105社の年収は、どの有価証券報告書にも載っていません。
味の素単体の平均年間給与
味の素の平均年間給与は、2026年3月31日時点で1,061万3,479円です。単体の従業員3,705人の平均で、平均年齢は43.5歳、平均勤続年数は18.9年です。賞与と基準外賃金を含みます。
平均年間給与の前の事業年度からの増減率は、プラス2.4%です。報告書によると、味の素は2025年度に一律16,000円の賃上げを行いました。
連結の従業員は34,787人で、この平均に入るのは味の素単体の3,705人だけです(味の素)。1,061万3,479円は味の素株式会社の社員の平均で、子会社の社員の年収を示す数字ではありません。
子会社の年収が載らない理由
子会社の年収が載らないのは、子会社が自社の有価証券報告書を出しておらず、味の素の報告書にも子会社の給与が載っていないためです。味の素の「関係会社の状況」で、有価証券報告書を出していると書かれている会社は、持分法適用会社のJ-オイルミルズだけです。
金融庁が2026年2月20日に公表した改正で、2026年3月31日以後に終わる事業年度の報告書から、「従業員の状況」に書く内容が変わりました(金融庁)。子会社の経営管理を主な業務とする会社は、自社に加えて、最大人員会社の平均年間給与なども載せます。
最大人員会社とは、外国の会社を除く連結子会社のうち、従業員数が最も多い会社のことです。その会社の従業員数が連結の従業員数の過半数を超えないときは、次に従業員数が多い会社も含みます。
味の素の報告書には、最大人員会社の数字は載っていません。味の素は川崎・東海・九州の事業所で調味料やアミノ酸を自らつくる会社で、2026年3月期の単体の売上高は3,177億円です。単体の従業員3,705人のうち、1,144人が川崎事業所、443人が東海事業所、200人が九州事業所で働いています。報告書の年収は、味の素自身の事業で働く社員の数字です。
関連会社のJ-オイルミルズ
J-オイルミルズは、味の素が議決権の27.2%を持つ持分法適用の関連会社で、子会社ではありません。東証プライム市場に上場し、自社の有価証券報告書を出しています。
同社の2026年3月期の有価証券報告書によると、平均年間給与は2026年3月31日時点で840万1,533円です(EDINET)。単体の従業員975人の数字で、平均年齢は44歳7か月、平均勤続年数は18年8か月です。平均年齢、平均勤続年数、平均年間給与は、出向者を除いて計算されています。
味の素の子会社を比べる4つのポイント

年収で比べられない味の素の子会社は、有価証券報告書と公式の会社一覧で確かめられる次の4つのポイントで比べます。
- 議決権の所有割合
- 子会社か関連会社か
- 事業の区分
- 女性管理職と男性の育休
議決権の所有割合
議決権の所有割合を見ると、味の素がその会社を直接持っているのか、ほかの子会社を通じて持っているのかが分かります。「関係会社の状況」の議決権の所有割合のうち、括弧の中の数字は子会社を通じた間接所有の割合で、合計の内数です。
国内の16社のうち、デリカエースの90.0%を除く15社は100.0%です。このうち、三重県鈴鹿市のAGF鈴鹿と群馬県太田市のAGF関東は、100.0%のすべてが子会社を通じた間接所有です。
海外には、議決権が半分以下でも子会社になっている会社があります。タイ味の素ベタグロ冷凍食品社は50.0%、味の素ビジネスセンター(タイランド)社は49.0%です。報告書は、2社を実質的に支配しているため子会社としていると説明しています。
子会社か関連会社か
味の素の公式サイトの「国内関係会社一覧」には、子会社と持分法適用会社が同じページに並んでいます(味の素)。一覧の油脂の区分に載るJ-オイルミルズと、医薬・健康の区分に載るEAファーマは、有価証券報告書では持分法適用の関連会社です。
EAファーマは、医薬事業を行っていた味の素製薬が、2016年4月にエーザイの消化器疾患領域に関する事業の一部を吸収分割で受け継ぎ、社名を変えた会社です。このときから味の素の持分法適用会社になり、2026年3月期の議決権の所有割合は40.0%です。
一覧に載るヤマキ、F-LINE、NRIシステムテクノも、報告書の「事業の内容」では持分法適用会社として載っています。公式の一覧に社名があっても、その会社が味の素の子会社とは限りません。
事業の区分
味の素グループの事業は、調味料・食品、冷凍食品、ヘルスケア等の3つの報告セグメントと、その他に分かれています。3つの報告セグメントの2025年度の外部顧客への売上高と事業利益、2026年3月31日時点の連結の従業員数は次のとおりです。
- 調味料・食品:売上高9,369億円、事業利益1,430億円、従業員22,316人
- 冷凍食品:売上高2,903億円、事業利益84億円、従業員5,348人
- ヘルスケア等:売上高3,415億円、事業利益662億円、従業員5,219人
セグメントごとの事業利益には、親会社の管理部門の費用などの全社共通費425億円を含めていません。ヘルスケア等の売上高は調味料・食品の4割に満たない一方、事業利益は5割近くあります。ヘルスケア等には、アミノ酸のほか、半導体パッケージ用の層間絶縁材料「ABF」などの電子材料も入っています。
子会社で個別の売上高が報告書に載っているのは、売上高が連結売上高の10%を超える米国の味の素フーズ・ノースアメリカ社だけです。
女性管理職と男性の育休
味の素の有価証券報告書には、国内の連結子会社12社について、管理職に占める女性の割合と男性の育児休業取得率が載っています。味の素単体と、資本金の上位3社の数字は次のとおりです。
- 味の素:女性管理職16.0%、男性の育児休業取得率89.6%
- 味の素冷凍食品:女性管理職10.1%、男性の育児休業取得率66.7%
- 味の素食品:女性管理職8.9%、男性の育児休業取得率100.0%
- 味の素AGF:女性管理職14.8%、男性の育児休業取得率90.0%
男性の育児休業取得率は、正規雇用の労働者を対象に、育児・介護休業法の施行規則に定める方法で計算した値です。12社のうち女性管理職の割合が最も高いのは味の素デジタルビジネスパートナーの53.2%で、AGF鈴鹿、味の素構内サービス、味の素ベーカリーの3社は女性管理職が0名です。
グループ全体の女性管理職の割合は28%で、日本は15%です。同じ味の素グループでも、女性管理職と男性の育休の数字は会社ごとに違います。
公開資料で味の素の子会社を確かめる手順

味の素の子会社を自分で調べるときは、有価証券報告書、味の素の会社一覧、厚生労働省のサイトを次の順に開きます。
金融庁のEDINETで「味の素」の有価証券報告書を開きます(EDINET)。「関係会社の状況」で議決権の所有割合と主要な事業の内容を、「従業員の状況等」で味の素単体の平均年間給与と国内の子会社12社の女性管理職の割合を確かめます。
味の素の「国内関係会社一覧」で志望する会社を探し、STEP1の報告書の表と見比べます(味の素)。持分法適用会社として載っていれば、その会社は子会社ではありません。
厚生労働省の職場情報総合サイト「しょくばらぼ」で子会社の社名を検索し、働き方や採用状況の情報が載っているかを見ます(厚生労働省)。掲載されていない会社もあります。
STEP2で報告書の表に社名が見つからない会社は、連結子会社の「その他」59社か、持分法適用会社の「その他」12社にまとめられている可能性があります。報告書だけではどちらに入るかを確かめられないため、会社説明会などで味の素との資本関係を尋ねてください。
この記事の数字は、味の素が2026年6月12日に、J-オイルミルズが2026年6月22日に提出した2026年3月期の有価証券報告書によるものです。翌年の報告書が出たら、同じ欄を開いて数字を見比べてください。
味の素の子会社に関するよくある質問
- 味の素の子会社は何社ありますか
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2026年3月期の有価証券報告書では、連結子会社が105社、持分法適用会社が15社です(EDINET)。連結子会社のうち「関係会社の状況」に社名が載るのは国内16社と海外30社で、残りの59社は「その他」とまとめて書かれています。
- 味の素冷凍食品の平均年収は分かりますか
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有価証券報告書では分かりません。味の素冷凍食品は自社の有価証券報告書を出しておらず、味の素の報告書にも子会社の平均年間給与は載っていません。味の素の1,061万3,479円は、味の素単体の従業員3,705人の平均です。給与の水準は、会社説明会や面接で給与の決め方とあわせて尋ねてください。
- 味の素グループの従業員は何人ですか
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2026年3月31日時点で、連結の従業員は34,787人です。地域別では日本の従業員が8,494人で、全体の約4分の3は日本以外の地域の従業員です。味の素単体の従業員は3,705人です(EDINET)。
- 味の素の子会社で国内に上場している会社はありますか
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ありません。味の素の有価証券報告書は、提出日の2026年6月12日時点で国内の証券市場に上場しているグループの会社として、東証プライム市場のJ-オイルミルズだけを挙げています。J-オイルミルズは味の素が議決権の27.2%を持つ関連会社で、子会社ではありません。
年収より先に資本関係を確かめよう
味の素グループで有価証券報告書から平均年間給与が分かるのは、味の素単体の1,061万3,479円と、関連会社のJ-オイルミルズの840万1,533円だけです。報告書に社名が載る国内の連結子会社を資本金で並べると、味の素冷凍食品、味の素食品、味の素AGFの3社が上位に入ります。
公式の会社一覧に社名があっても、その会社が子会社とは限りません。志望する会社が連結子会社か持分法適用会社か、どの事業の区分に入るのか、女性管理職や男性の育休の数字はどうかを、有価証券報告書で確かめてみてください。年収が載らない子会社は、資本関係・事業・人事の数字を並べると比べられます。

