BtoGということばは、IR資料や有価証券報告書、企業説明会の資料の中で、BtoBやBtoCほど頻繁ではないものの、たびたび登場します。企業研究や業界研究を進める中で「BtoGとは何か」がはっきりしないまま読み進めてしまうと、その企業がどんな相手にどんな価値を提供しているのかを見誤りかねません。
この記事では、BtoGの基本的な意味から、BtoB・BtoCとの違い、そして企業研究や就活の場面でBtoGをどう読み解けばいいのかまでを整理します。
BtoGとは、企業が行政を取引相手にするビジネスモデル
BtoGは、Business to Governmentの頭文字を取った略語で、読み方は「ビートゥジー」です。企業が取引を行う相手を、国や独立行政法人、都道府県や市区町村といった地方公共団体まで含めた「行政」に置いた事業活動全般を指します。
BtoGの取引対象と範囲
BtoGと聞くと、道路工事や公共施設の建設のような公共工事を思い浮かべる人が多いかもしれません。しかし実際の範囲はそれだけにとどまりません。行政のデジタル化を支援するITシステムの導入、業務効率化のためのコンサルティング、住民向け広報の制作、防災・福祉分野の実証実験など、民間企業が持つ専門性を行政に提供する取引全般がBtoGに含まれます。
近年は自治体のDX推進や人手不足を背景に、行政だけでは対応しきれない業務を民間企業が担う場面が増えており、BtoGという取引形態そのものへの注目度が高まっています。
BtoB・BtoCとの違いから理解するBtoGの位置づけ

BtoGを正確につかむには、隣接する取引形態であるBtoBやBtoCとの違いを押さえておくと理解が進みます。同じ「企業が誰かに価値を提供する」構図でも、相手が変われば意思決定のプロセスは大きく変わります。
BtoB(企業間取引)との違い
BtoB(Business to Business)は、企業が別の企業を相手に商品やサービスを提供する取引形態です。取引先企業の担当者や決裁者との関係構築が中心になり、契約条件も当事者同士の交渉で比較的柔軟に決まります。
一方でBtoGの取引相手は行政であるため、公平性と透明性の確保が強く求められます。特定の企業だけが有利にならないよう、多くの場合で入札やプロポーザルといった公募の手続きを経る点が、通常のBtoBとの大きな違いです。
BtoC(企業対消費者)との違い
BtoC(Business to Consumer)は、企業が一般消費者を相手に商品やサービスを提供する取引です。個人の好みや気分によって購買のタイミングが左右されやすく、比較的短いサイクルで意思決定が動きます。
対してBtoGは、行政の予算編成や議会の議決といった年度単位のサイクルに沿って動くため、提案から契約成立までに時間がかかりやすいという特徴があります。BtoCのようにすぐ成果が出るビジネスではなく、長期的な視点で取引先と向き合う姿勢が求められます。
その他の取引形態との違いを一覧で整理
BtoGの周辺には、取引相手の違いによっていくつかの分類があります。企業研究の中で見かけることが多い代表的な分類を整理すると、次のとおりです。
- BtoE、企業と従業員の取引(福利厚生サービスなど)
- CtoC、個人と個人の取引(フリマアプリなど)
- GtoC、行政と個人の取引(行政サービスの直接提供)
どの分類も「誰が誰に価値を提供するか」という軸で整理されているだけで、優劣があるわけではありません。BtoGはこの中でも、行政という公共性の高い相手を対象にしている点に特徴があります。
BtoG市場の規模とビジネスとしての特徴
BtoGがどれほどの規模の市場なのかを知っておくと、企業研究の中でその企業の立ち位置を測る手がかりになります。
契約総額は年間27兆円超、随意契約は約2割
入札情報サービスを提供するNJSSの分析によると、国や地方自治体を含めた官公庁全体の年間契約総額は27兆円を超えるとされています。そのうち、競争入札を経ない随意契約が全体の2割程度を占めるとの分析もあり、BtoG市場は民間企業にとって決して小さくない規模で存在しています。
入札・プロポーザル・随意契約という3つの契約方式
BtoGの契約方法は、大きく3つに分けられます。ひとつは、条件を満たす企業が価格などを競い合う一般競争入札です。もうひとつは、行政があらかじめ声をかけた企業の中から選定する指名競争入札です。そして、特別な事情がある場合に限り、競争の手続きを経ずに特定の企業と直接契約を結ぶ随意契約です。
どの方式を取るにしても、行政の意思決定は民間同士の商談よりも手続きが多く、時間がかかる傾向にあります。BtoGビジネスに参入する企業には、成果がすぐに出なくても粘り強く関係を築く姿勢が欠かせません。
企業研究でBtoGをどう見極めるか

BtoGということばは求人票や企業説明会で直接使われることは少なく、代わりに別の表現で言い換えられていることがほとんどです。企業研究の中でBtoGの要素を見抜くには、次の2つの視点が役立ちます。
有価証券報告書やIR資料の「セグメント情報」を確認する
上場企業の有価証券報告書や決算説明資料には、事業ごとの売上構成を示す「セグメント情報」が記載されています。この中に「官公庁向け」「自治体向け」「行政・公共分野」といった区分や記述があれば、その企業がBtoGの取引を事業の一部として持っている証拠です。
BtoCやBtoBの事業が中心に見える企業でも、決算資料を読み込むと官公庁向けの売上区分を別立てで持っているケースは少なくありません。企業の事業構造を立体的に理解するうえで、この視点は見落とされがちですが有効です。
求人票や企業説明会で使われる言葉のサイン
求人票や企業説明会の資料では、「官公庁営業」「自治体案件」「入札対応」「公共インフラ」といった言葉が、BtoGビジネスの存在を示すサインになります。これらの言葉が出てきた企業は、通常の法人営業とは異なる商習慣の中で働くことになると考えておくと、面接での質問の的が絞りやすくなります。
例えば、営業職の求人票に「提案書作成」「仕様書対応」という表現が並んでいれば、行政向けの公募案件に応募するための書類作成業務が日常的に発生する仕事だと推測できます。
BtoG企業で働くとはどういうことか
BtoGを事業の柱に持つ企業で働くことは、BtoBやBtoCが中心の企業で働くこととは異なる経験を積むことにつながります。
求められるスキルと働き方の特徴
BtoGの現場では、行政の課題や制度を正確に理解したうえで、それに沿った提案書や仕様書対応の書類を作成する力が重視されます。契約が成立するまでの意思決定サイクルが長いため、短期間で成果を出すことよりも、複数年にわたって関係を積み上げていく粘り強さが評価されやすい環境です。
また、行政という公共性の高い相手が取引先になるため、コンプライアンスや説明責任に対する意識も、通常の営業職以上に求められます。
向いている人・得られるキャリアの強み
逆算して計画的に動くことが得意な人や、目の前の成果よりも長期的な信頼関係を大切にできる人は、BtoGの現場に向いている傾向があります。
BtoGの現場で身につく提案書作成や折衝のスキルは、行政以外の大企業向け法人営業でも応用が利くため、キャリアの選択肢を狭めるものではなく、むしろ他の業界でも通用する基礎体力として蓄積されていきます。
BtoGビジネスを行う企業の例
実際にBtoGの取引を行っている企業を知っておくと、BtoGという言葉の解像度が上がります。ここでは、事業の一部としてBtoGに取り組んでいる企業を2社紹介します。
楽天グループは、自治体向けに「楽天ふるさと納税」のプラットフォームを提供しているほか、2025年12月には、寄付をしたい企業と全国の自治体をつなぐ「企業版楽天ふるさと納税」ポータルサイトを開設しました。マーケティングデータを活用した地域課題の分析や、地域再生計画の立案支援なども手がけており、消費者向けのふるさと納税事業とは別の形で、自治体という行政組織との取引を広げています(楽天グループ株式会社ニュースリリース)。
LINEヤフー株式会社も、BtoGの取引を持つ企業のひとつです。同社は自治体がLINE公式アカウントを通じて防災情報を発信したり、住民票の写しや納税証明書の申請といった行政手続きをオンラインで受け付けたりできる仕組みを提供しており、東京都渋谷区や富山県魚津市をはじめ複数の自治体で活用されています(LINEヤフー株式会社)。
どちらの企業も、BtoCやBtoBの事業が広く知られている一方で、行政という取引相手に向けたBtoGの取り組みも事業の一部として持っています。企業研究の際は、目立つ事業だけでなく、こうした行政向けの取り組みにも目を向けると、その企業の事業の幅を見誤らずに済みます。
よくある質問
BtoGについて、企業研究や就活の場面でよく聞かれる疑問を3つまとめました。
- BtoGは何の略で、どう読みますか
BtoGはBusiness to Governmentの略で、「ビートゥジー」と読みます。企業が国や地方公共団体といった行政を取引相手にするビジネスモデルを指すことばです。
- BtoGとBtoBの違いを一言で言うとどうなりますか
どちらも企業が主体となる取引ですが、BtoGの取引相手は公平性や透明性が強く求められる行政です。そのため、通常のBtoBよりも入札やプロポーザルといった公募の手続きを経ることが多くなります。
- BtoGに関わる仕事は、どの業界で多く見られますか
IT・建設・コンサルティングなど、行政のデジタル化やインフラ整備、政策立案に関わる業界でBtoGの取り組みが見られます。ただし業界を問わず官公庁向けの事業を一部門として持つ企業は幅広く存在するため、業界名だけで判断せず、個別の企業の事業内容を確認することが大切です。
まとめ
BtoGは、企業が国や地方公共団体といった行政を取引相手にするビジネスモデルを指すことばです。BtoBやBtoCと違い、公平性や透明性を重視した入札やプロポーザルという手続きを経ることが多く、意思決定のサイクルも長くなりがちです。
企業研究の場面では、有価証券報告書のセグメント情報や、求人票に登場する「官公庁営業」「入札対応」といった言葉に目を向けると、BtoGの要素を持つ企業かどうかを見抜く手がかりになります。ひとつの言葉の意味を正確に押さえておくことが、企業の事業構造を立体的に理解する近道になります。

