アパレル業界のホワイト企業の見分け方|平均勤続年数と休日の調べ方

「好きなブランドで働きたいけれど、長く続けられる仕事なのか自信がない」。アパレル業界の求人を前に、こうして迷う人は少なくありません。店舗に立つ人の入れ替わりが早いという話が広まっているぶん、判断の材料を持てないまま不安だけが残りやすいのだと考えられます。

アパレルの販売職は、商業施設の営業時間に勤務が合わせられるうえ、売上目標や自社商品の扱いといった、求人票の項目には現れない条件が働き方を左右します。同じ「アパレル」と名乗る会社でも、製造を担うのか、卸なのか、店舗販売が中心なのかで、統計上の位置も労働条件も変わってきます。

この記事では、長く働ける会社に共通して見られる数字と、それを国の統計や企業が出す書類、業界団体の公表資料でたどる手順を、就活キャリア研究所の視点で整理しました。ブランドの雰囲気ではなく、誰でも開ける資料から会社を選ぶための道筋です。

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目次

アパレル販売職の働き方が職種名から見えない事情

会社を比べ始める前に、この業界の条件がどう決まるのかを押さえておくと、求人票の読み方が変わります。アパレルには、他の販売職と比べても特徴のはっきりした三つの事情があります。

商業施設の営業時間に勤務が引っ張られる

路面店であれ商業施設の中の店舗であれ、販売職の勤務時間は店が開いている時間に合わせて組まれます。施設に入っている場合は、閉店後の片づけや朝の準備の時間も施設側の規則に沿うため、会社の就業規則だけを読んでも一日の長さは見えてきません。

ここで確かめておきたいのが、勤務の始まりと終わりがどこで線引きされるかです。開店前の準備と閉店後の締め作業が勤務時間に含まれているか、含まれているとして所定労働時間の中なのか時間外なのかは、応募の段階で書面で確かめておきたい点です。セール期や在庫を数える時期に勤務がどう変わるのかも、同じ場で尋ねておくと後の食い違いを防げます。

売上目標と自社商品の扱いが会社ごとに違う

販売職には店舗や個人の売上目標が置かれることが多く、その目標がどう決まり、届かなかったときにどう扱われるのかは会社によって差があります。給与に反映される仕組みがあるのか、評価の一要素にとどまるのか、目標そのものが誰の判断で動くのかを分けて聞くと、返答の具体性から会社の姿勢が見えてきます。

もう一つ、アパレル特有の論点が自社商品の購入です。店頭で自社の服を着ることを求める会社は少なくありませんが、その費用を会社が負担するのか、社員割引で本人が買うのか、買う量が事実上決められていないかは、生活に直接響きます。購入の扱いは求人票にほとんど書かれないため、応募者のほうから尋ねるしかありません。

統計上どの産業に入るかが会社ごとに分かれる

アパレル業界を調べるとき、つまずきやすいのが統計の探し方です。総務省の日本標準産業分類では、衣服を店舗で売る事業所は大分類「卸売業、小売業」の中分類57「織物・衣服・身の回り品小売業」に入ります(総務省)。分類は令和5年7月に告示された第14回改定が令和6年4月1日から適用されています。

一方で、縫製や生地の製造を自社で担う会社は「製造業」に、取引先へ卸す機能が中心の会社は「卸売業」に区分されます。つまり「アパレル業界」という言葉でひとくくりにされている会社は、統計上は少なくとも三つの産業に分かれて集計されています。公的な数字を当てるときは、応募先がどの機能を中心に据えているかを先に見定める必要があります。

販売職の給与をどの数字と比べるか

提示された給与が世の中のどのあたりなのかは、厚生労働省の賃金構造基本統計調査で確かめられます。ここでは令和7年調査の数字を使い、比べ方の順番を整理します。

まず産業ごとの水準に当てる

令和7年賃金構造基本統計調査によると、一般労働者の賃金は男女計で34万0600円、男性37万3400円、女性28万5900円となっています(厚生労働省)。産業別では、卸売業・小売業が34万9100円、生活関連サービス業・娯楽業が29万5200円です。最も高いのは電気・ガス・熱供給・水道業の44万4000円、最も低いのは宿泊業・飲食サービス業の27万7200円でした。

ここで注意したいのは、卸売業・小売業の34万9100円が平均年齢44.3歳、平均勤続年数14.5年の人たちの数字だという点です。年齢階級で切ると、20〜24歳は24万1000円、25〜29歳は27万2700円、30〜34歳は30万2200円となります。新卒の提示額を業界平均と比べても意味がないので、自分の年齢に近い階級の数字を当てるのが正しい読み方です。

短時間の働き方も同じ調査で確かめられる

アパレルの店舗は短時間勤務の人に支えられている面が大きく、そちらの水準も判断材料になります。同じ令和7年調査では、短時間労働者の1時間当たり賃金は男女計1,518円で、卸売業・小売業は1,268円、生活関連サービス業・娯楽業は1,330円となっています。

正社員として入る場合でも、この数字は無関係ではありません。店舗の人員の多くを短時間勤務でまかなう体制であれば、正社員は開店前後の業務や発注、教育を引き受けることになります。時間あたりの単価と、正社員1人あたりが見る売り場の広さは、つながった話として見ておくとよいでしょう。

求人の出方も公的な統計で分かる

採用する側の事情は、厚生労働省の一般職業紹介状況で読めます。令和8年7月分では、常用(パートを含む)の有効求人倍率は職業計で1.05倍、販売従事者が1.85倍、そのうち商品販売従事者が1.73倍となっています(厚生労働省)

倍率が高いということは、求職者1人に対する求人の数が多いということです。応募する側から見れば選択肢が増える局面ですが、裏を返せば、人を採りにくい会社ほど条件を良く見せる書き方に傾きやすいとも言えます。だからこそ、条件の表現ではなく数字で確かめる手順が要ります。

長く働ける会社かどうかを示す数字の見方

アパレルの会社を見極める4つの視点を示した図(勤続年数・賃金内訳・商品購入・取組公表)

ここからは、長く働けている会社に共通して現れる項目を挙げます。いずれも公開資料で確かめられるか、応募の場で数字として返ってくるはずのものです。

  1. 平均勤続年数を公表している
  2. 給与の内訳と目標の扱いを説明できる
  3. 自社商品の購入について書面で説明がある
  4. 人権や取引に関する取組を公表している
  5. 年間休日と有給休暇の取得状況を数字で示せる
  6. 臨時従業員の人数を外書きで開示している

平均勤続年数を公表している

長く働けるかどうかを一つの数字で見るなら、平均勤続年数が最も素直です。株式を公開している会社であれば、有価証券報告書の「従業員の状況」で確かめられます。企業内容等の開示に関する内閣府令の第二号様式では、記載上の注意として、提出会社の従業員数・平均年齢・平均勤続年数・平均年間給与を記載することが定められています(e-Gov法令検索)

読むときは、平均年齢とセットで見るのが要点です。平均年齢が低く勤続年数も短い会社は、若い人を多く採っている段階かもしれませんし、定着していないのかもしれません。この二つだけでは理由まで分からないため、同じ書類の「従業員数の著しい増減があった場合の事情」の記載と、採用人数の推移を合わせて読む必要があります。

目安として、令和7年賃金構造基本統計調査の卸売業・小売業の平均勤続年数は14.5年です。同じ調査の勤続年数階級別の賃金を見ると、企業規模計の男女計で勤続0年が27万4500円、5〜9年が31万2500円、10〜14年が33万3600円、30年以上が44万4200円と上がっていきます。勤続年数は働きやすさの手がかりであると同時に、収入の伸びにも直結します。

給与の内訳と目標の扱いを説明できる

提示された月給のうち、確実に受け取れる部分がどこまでなのかは、応募の段階で押さえておきたいところです。基本給、役職や資格に応じた手当、売上に連動する部分、みなし残業代のそれぞれがいくらなのかを分けて示せる会社は、説明の準備ができている会社です。

みなし残業代がある場合は、何時間分を含むのか、その時間を超えたぶんは別に支払われるのかまで確かめます。内訳を尋ねて具体的な数字が返ってこない場合は、その対応自体が判断材料になります。売上目標についても、達成できなかったときに給与が減る仕組みがあるのかどうかを、同じ場で書面に沿って聞いておくと安心です。

自社商品の購入について書面で説明がある

店頭で自社の商品を着て働く運用がある場合、その費用の扱いは就業規則や労働条件通知書で確かめます。会社が貸与するのか、社員割引で本人が購入するのか、購入した分を経費として扱うのかで、手元に残る金額が変わってきます。

とりわけ見落とされがちなのが、季節ごとの新作を買う運用が慣行になっている場合です。制度として決められていなくても、店舗ごとの雰囲気で買わざるを得なくなっていれば、実質的には給与が目減りします。書面での説明に加えて、店舗を見学する機会があれば売り場の人がどうしているかを尋ねておきたいところです。

人権や取引に関する取組を公表している

繊維・アパレルの分野では、働く人の扱いや取引の適正さについて、国と業界団体が公表の仕組みを整えてきました。日本繊維産業連盟は令和4年7月に国際労働機関と連携して「繊維産業における責任ある企業行動ガイドライン」を公表し、その趣旨に賛同する企業が「責任ある企業行動実施宣言」を自ら公表したうえで同連盟に登録すると、経済産業省と連盟のサイトに掲載される仕組みになっています(経済産業省)。連盟の団体会員でない企業も宣言できます。

さらに経済産業省は、2025年3月19日の産業構造審議会製造産業分科会繊維産業小委員会を経て、繊維産業の監査要求事項・評価基準「JASTI」を策定しました。国際労働機関の中核的労働基準を取り込み、中小企業などが最低限守るべき事項を並べたもので、第三者による監査の仕組みも合わせて整えられています。

取引の面では、同省が所管する繊維関連団体に対し、価格転嫁、歩引き、手形などの支払い期間の短縮、契約書などの書面化という四つの点について適切な措置を講じるよう促す通知文書の交付を、令和6年1月22日付で始めています。取引先への支払い条件を整えている会社かどうかは、そこで働く人の待遇とつながっています。

残る二つの項目も、同じように公開資料で確かめられます。休日については、令和7年就労条件総合調査の1企業平均年間休日総数112.4日が物差しになります(厚生労働省)。年間休日総数が120〜129日の企業は37.3%、100〜109日は27.9%で、求人票の日数がどのあたりに位置するかはこの分布に当てはめれば分かります。

臨時従業員の人数も見落とせません。企業内容等の開示に関する内閣府令の第二号様式では、臨時従業員が相当数以上ある場合、直近1年間の平均雇用人員を外書きで示すこととされ、臨時従業員の総数が従業員数の100分の10未満であれば記載を省略できます。従業員数の横に角かっこで添えられた数字が、その会社の店舗をどんな人員構成で回しているかを示しています。

応募前にアパレル企業を調べる3つの手順

アパレル業界のホワイト企業の見分け方について公開されている情報を確かめている場面のイラスト

気になる会社が絞れてきたら、応募する前に次の3つを済ませておくと、面接で尋ねる中身が具体的になります。いずれも無料で、会社に連絡を取らずに進められます。

STEP1

応募先が統計上どの産業に入るのかを見定めます。店舗販売が中心なら織物・衣服・身の回り品小売業、縫製を自社で担うなら製造業に区分されます(総務省)。ここが決まると、後で当てる統計が決まります。

STEP2

上場している会社なら、金融庁の開示書類閲覧サイトEDINETで有価証券報告書を開き、「従業員の状況」から従業員数、外書きの臨時従業員数、平均年齢、平均勤続年数、平均年間給与を書き写します(金融庁)。同じ書類には、公表している場合の女性管理職比率や男女間賃金格差も載ります。

STEP3

書き写した数字を、賃金構造基本統計調査(厚生労働省)と雇用動向調査(厚生労働省)の同じ産業の数字と比べます。令和7年雇用動向調査では、卸売業・小売業の入職率は12.6%、離職率は11.9%、生活関連サービス業・娯楽業は入職率21.3%、離職率20.1%です。

ここまでで残った疑問が、面接で尋ねるべき質問です。手元に数字を置いてから尋ねれば、返ってくる説明が具体的かどうかも判断できます。株式を公開していない会社の場合は、採用ページの数字と、労働条件通知書の記載が手がかりになります。

アパレル業界への就職でよくある質問

平均勤続年数は何年あれば長いほうですか

比べる相手を決めるのが先です。令和7年賃金構造基本統計調査では、卸売業・小売業の一般労働者の平均勤続年数は14.5年です(厚生労働省)。ただし平均年齢44.3歳の人たちの数字なので、若い社員が多い会社ではこれより短く出ます。

自社商品の購入を求められたら断れますか

制度の中身によります。会社が貸与する形なのか、社員割引で本人が買う形なのかを、就業規則や労働条件通知書で確かめてください。書面に定めがなく、店舗ごとの慣行で購入が続いている場合は、入社前にその点を質問しておくのが確実です。

有給休暇はアパレルでも取れますか

取れている会社もあります。令和7年就労条件総合調査では、卸売業・小売業の年次有給休暇の取得率は59.9%で、全体の66.9%を下回ります(厚生労働省)。業界の平均は低めなので、応募先が自社の取得率を数字で答えられるかを確かめるのが近道です。

人権に関する取組はどこで確かめられますか

経済産業省と日本繊維産業連盟のサイトで、「責任ある企業行動実施宣言」を登録した企業の一覧が公表されています(経済産業省)。宣言は任意なので、載っていないことが問題を意味するわけではありませんが、載っていれば取組を自ら示した会社だと分かります。

ブランドの印象ではなく続けられるかで選ぼう

アパレルの会社選びでは、扱う商品への好みや店舗の空気に気持ちが動きやすくなります。ただ、入社後の生活を決めるのは、勤務時間の線引き、給与の内訳、自社商品の扱い、そして人がどれだけ長く残っているかという、書類で確かめられる部分です。

この記事で挙げた統計も有価証券報告書も業界団体の公表資料も、誰でも同じ手順で開けるように公開されています。好きなブランドで長く働くために、条件の言い回しではなく数字を一つずつ確かめ、自分が続けられる働き方に近い会社を選んでいきましょう。

この記事の著者情報

株式会社ネット風評被害対策 代表取締役 内村淳

ネット風評被害対策の専門家として15年以上の実績を持つ。
風評被害誹謗中傷対策・サジェスト対策・逆SEO対策・SNS炎上対応など、企業のWebリスク解決を累計10,000社以上支援。
ネット誹謗中傷対策に特化した法律事務所に1年間従事し、法的観点からの対応知見を習得。IT技術と法的アプローチの双方に携わってきた経験を持つ。
あらゆるネット風評被害対策支援に加え、企業向けコンサルティングや同業他社へのサービス提供も行う。
現在、日々進化するAI検索エンジンのアルゴリズムを徹底解析し、AI検索時代に適応した次世代の風評対策に注力している。

著書: 『AI時代のネット風評被害対策』(Kindle出版) ↗

発信活動: ネット風評被害対策に関する情報をnoteでも発信しています。 note ↗

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