税理士事務所のホワイトな職場の見分け方|繁忙期と社会保険の確かめ方

「税理士事務所はどこも確定申告の時期に残業が続くので、入ってみないと違いは分からない」。税理士事務所への就職や転職を考えると、まずこの点が気になるのではないでしょうか。申告の期限は法律で決まっていて、どの事務所も同じ時期に忙しくなるのは確かです。ところが、忙しい時期の働かせ方には労働基準法の上限があり、事務所の登録や社会保険の加入状況は、応募する前に公開されている情報で調べられます。

税理士事務所には、ほかの業種にはない手がかりがあります。税理士は税理士名簿に登録しなければ名乗れず、登録された税理士と税理士法人は、原則として日本税理士会連合会のサイトで検索できます。財務大臣が行った懲戒処分は国税庁のサイトに載り、厚生年金と健康保険の加入状況は日本年金機構のサイトで確かめられます。2022年10月からは、従業員が常時5人以上いる個人の税理士事務所も、厚生年金と健康保険の強制適用事業所になりました。

公開されている情報のどこを見ればよいのか、求人票と面接で何を確かめればよいのかを、就活キャリア研究所の視点で順に整理します。

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目次

税理士事務所の働き方が外から見えにくい3つの理由

税理士事務所の働き方が外から見えにくいのは、忙しさの波、事務所の規模、雇い主の形の3つが事務所ごとに違うからです。

申告の期限が忙しい時期を決めるから

所得税の確定申告の期間は、原則として翌年の2月16日から3月15日までです(国税庁)。個人の顧問先が多い事務所では、この1か月に申告書の作成が集中します。

法人税の確定申告書は、各事業年度終了の日の翌日から2か月以内に提出することになっています。決算を承認する総会が2か月以内に開かれない法人などは、申請によって提出期限の延長を受けられます(e-Gov法令検索)。3月決算の顧問先が多い事務所なら、5月末に向けてもう一度忙しい時期が来ます。

年間の残業時間が同じでも、残業が集まる月とその量は、顧問先の顔ぶれによって事務所ごとに変わります。求人票の「月平均◯時間」という数字だけでは、確定申告の時期と決算が集まる月の働き方は読み取れません。

事務所の規模で義務になる書類が変わるから

労働基準法は、常時10人以上の労働者を使用する使用者に、就業規則を作成して届け出ることを義務づけています(e-Gov法令検索)。届出先は所轄の労働基準監督署長です(e-Gov法令検索)。従業員が常時10人に満たない事務所には、この作成と届出の義務がありません。

社会保険も規模で分かれます。個人の税理士事務所が厚生年金と健康保険の強制適用事業所になるのは、常時5人以上の従業員を雇用している場合です(日本年金機構)。

小さな事務所ほど、法律上作らなくてよい書類や、加入が義務にならない制度が増えます。常時10人未満の事務所に就業規則がないこと自体は違法ではないので、外からは違いが分かりにくくなります。ただし、労使で結ぶ36協定には人数の条件がありません。36協定を結んで届け出ていない事務所は、人数にかかわらず、原則として法定労働時間を超えて残業させることができません(e-Gov法令検索)。

雇い主が税理士個人か法人かで条件が分かれるから

税理士事務所の雇い主は、所長である税理士個人のこともあれば、税理士法人や、事務所に併設された会計法人のこともあります。税理士は税理士事務所を2つ以上設けてはならないと定められているため、個人で開業している税理士の事務所は1か所に限られます(e-Gov法令検索)。

税理士法人は、2名以上の税理士が共同して設立する法人です(日本税理士会連合会)。主たる事務所のほかに事務所を設けることができ、どの事務所にも、その地域の税理士会の会員である社員を常駐させなければなりません(e-Gov法令検索)。令和8年9月末日時点で、税理士の登録者は82,682人、税理士法人は主たる事務所が5,346、従たる事務所が3,177あります(日本税理士会連合会)。

会計法人を併設している事務所もあります。日本税理士会連合会の「税理士登録の手引」は、勤めている税理士事務所に会計法人が併設されている場合などに、申請者の所属や給与の支払い状況を確かめる書類の提出を求めています(日本税理士会連合会)。

応募するときは、雇用契約を結ぶ相手が税理士個人なのか、税理士法人なのか、会計法人なのかを確かめておきましょう。社会保険の扱い、転勤の有無、税理士登録に使う実務経験の証明の書類は、雇い主の形によって変わることがあります。

ホワイトな税理士事務所に共通する4つの特徴

税理士事務所を見極める4つの視点を示した図(名簿の登録・繁忙期の上限・社会保険・実務経験)

ホワイトな税理士事務所かどうかは、次の4つの特徴を公開されている情報や書面で確かめられるかで見分けられます。

  1. 所長の登録を税理士名簿で確かめられること
  2. 繁忙期の残業に上限と休みの決まりがあること
  3. 厚生年金と健康保険に加入していること
  4. 実務経験と受験の扱いを説明できること

所長の登録を税理士名簿で確かめられること

税理士となる資格を持つ人が税理士になるには、税理士名簿に氏名や事務所の名称・所在地などの登録を受けなければなりません。登録を受けると、事務所の所在地を含む区域の税理士会の会員になります。税理士または税理士法人でない者は、国税局長に通知した弁護士など税理士法に別段の定めがある場合を除き、税理士業務を行ってはならないと定められています(e-Gov法令検索)。

日本税理士会連合会の税理士情報検索サイトには、原則として、登録している税理士と税理士法人の氏名、登録年月日、事務所の名称・所在地・電話番号などが載っています。懲戒処分などで業務停止中の税理士には、業務停止中であることとその期間が表示されます(日本税理士会連合会)。

注意したいのは事務所の名前です。名簿に載る名称は、個人の事務所なら原則として「税理士の氏名+税理士事務所」などで、看板に使われている「○○会計」のような名前とは違うことがあります(日本税理士会連合会)。求人票の事務所名で見つからないときは、所長の氏名や所在地で探してください。

繁忙期の残業に上限と休みの決まりがあること

労働基準法では、労使で36協定を結んで届け出れば時間外労働をさせられますが、その限度時間は月45時間・年360時間です。1年単位の変形労働時間制で対象期間を3か月を超えて定めている場合は、月42時間・年320時間になります(e-Gov法令検索)。

臨時的に限度時間を超えて働かせる必要がある場合に備えて、36協定に特別条項を設けることもできます。その場合も、時間外労働は年720時間以内、時間外労働と休日労働の合計は単月100時間未満、2〜6か月の平均で80時間以内に収めなければなりません。月45時間を超えられるのは年6か月までです(e-Gov法令検索)。

休みにも決まりがあります。年10日以上の年次有給休暇が与えられる労働者には、基準日から1年以内に、5日について使用者が時季を定めて与えなければなりません。本人が請求して取った日数や、労使協定で計画的に与えた日数があれば、その分は5日から差し引かれます(e-Gov法令検索)。繁忙期が明けた後にこの5日をどう割り振っているかは、事務所が休みをどう扱っているかの手がかりになります。

36協定は、作業場の見やすい場所への掲示や書面の交付などの方法で、労働者に周知することが義務づけられています(e-Gov法令検索)。入社すれば従業員が見られる内容なので、応募の段階で尋ねても不自然ではありません。特別条項でどの月に何時間まで延ばせるのかと、繁忙期が明けた後に休みをどう取るのかを尋ねてみてください。

厚生年金と健康保険に加入していること

厚生年金と健康保険は、法人の事業所であれば、事業主のみの場合を含めて適用事業所になります(日本年金機構)。税理士法人と会計法人は、人数にかかわらずこちらに当たります。

個人の税理士事務所は、2022年10月1日以降、常時5人以上の従業員を雇用していれば強制適用事業所になりました。対象になったのは、税理士、公認会計士、弁護士、社会保険労務士など法律・会計に関わる12の士業の個人事業所です。ここでいう従業員には、正社員のほか、1週の所定労働時間と1月の所定労働日数が通常の労働者の4分の3以上あるパートやアルバイトも含まれます(日本年金機構)。

常時5人未満の個人事務所は強制適用ではありません。ただし、従業員の半数以上が同意し、事業主が申請して厚生労働大臣の認可を受ければ、任意適用事業所になれます(日本年金機構)。

健康保険には例外があります。国民健康保険組合に加入している人など一定の要件に当てはまる人は、健康保険の被保険者となる日から14日以内に申請して適用除外の承認を受ければ、健康保険ではなく国民健康保険組合に引き続き加入できます(日本年金機構)。適用除外は健康保険だけの扱いで、厚生年金の加入は変わりません。

求人票には、加入する保険を明示することになっています(厚生労働省)。加入保険の欄に、厚生年金と、健康保険か国民健康保険組合のどちらかが書かれているかを見て、書かれていなければ理由を尋ねましょう。

実務経験と受験の扱いを説明できること

税理士試験に合格しても、税理士となる資格を得るには、租税に関する事務または会計に関する事務に通算2年以上従事した実務経験が必要です(e-Gov法令検索)。会計に関する事務のうち、特別の判断を要しない機械的事務は実務経験に含まれません(e-Gov法令検索)。

「税理士登録の手引」は、機械的事務を簿記会計に関する知識がなくともできる単純な事務とし、電子計算機を使用して行う単純な入出力事務も含まれるとしています。仕事の中に実務経験に当たらない事務が含まれている場合は、当たる事務に従事した時間だけを抜き出して積み上げて計算します(日本税理士会連合会)。単純な入力作業が仕事の大半を占める働き方だと、2年勤めても実務経験が足りないことがあります。

税理士試験は科目合格制で、会計学に属する2科目と税法に属する3科目の合計5科目に合格すると合格者になります。合格した科目は生涯有効で、試験は例年8月上旬に行われます(日本税理士会連合会)。令和7年度(第75回)の試験では、受験者36,320人のうち5科目に達した人が527人、一部の科目に合格した人が7,320人でした(国税庁)。

働きながら何年かに分けて科目を重ねる場合、試験前の休暇と、試験の直前の時期の残業の扱いが毎年関わってきます。担当させる仕事が実務経験に当たるかどうかと、受験する職員への配慮を、具体的に説明できる事務所を選びましょう。

公開されている情報で税理士事務所を確かめる手順

税理士事務所のホワイトな職場の見分け方について公開されている情報を確かめている場面のイラスト

気になる税理士事務所が見つかったら、応募する前に3つのサイトで公開されている情報を確かめておくと、面接で尋ねることが絞れます。

STEP1

日本税理士会連合会の税理士情報検索サイトで、所長の氏名か税理士法人の名称を検索し、登録年月日と事務所の所在地、業務停止の表示がないかを確かめます(日本税理士会連合会)。公開情報は原則として毎月上旬に更新されます(日本税理士会連合会)。

STEP2

国税庁の「税理士等に対する懲戒処分等」のページで、所長や税理士法人の名前が載っていないかを確かめます。税理士業務の禁止と税理士法人の解散、業務の停止、戒告の区分ごとに、氏名、登録番号、事務所の所在地と、処分年月日または業務停止の期間が載っています(国税庁)。

STEP3

日本年金機構の厚生年金保険・健康保険適用事業所検索システムで、事務所の名称か所在地を入力し、適用事業所として載っているかを確かめます。検索結果には適用年月日と被保険者数が出るので、事務所のおおよその規模も分かります(日本年金機構)。

STEP3の検索システムで調べられるのは、現存する適用事業所と、直近2年以内に厚生年金と健康保険から脱退した事業所です。被保険者数は毎月20日頃時点の人数で、翌月の第2営業日に更新されます。日本年金機構は、このシステムを、個人が就職先や勤め先の加入状況を確かめるためのものと説明しています(日本年金機構)。

STEP2の懲戒処分は、税理士が税理士法や税に関する法令の規定に違反したときなどに財務大臣が行うものです(e-Gov法令検索)。処分の一覧は職員の労働時間や待遇を調べたものではないため、名前がないことは働きやすさの証明になりません。

働き方の数字は、厚生労働省の職場情報総合サイト「しょくばらぼ」で探せます。2026年10月1日時点で152,380件の企業などが載っています(厚生労働省)。前事業年度の正社員1人当たりの月平均所定外労働時間、年次有給休暇取得率、直近3事業年度に正社員として就職した新卒者等の数と離職した人の数といった項目があります(厚生労働省)。

月平均所定外労働時間は、年間の残業を月ごとにならした数字です。確定申告の時期にどれだけ残業が集まるのかは、この数字からは分かりません。事務所の名前が見つからない場合も含めて、繁忙期の月ごとの残業時間は面接で尋ねてください。

求人票と面接で確かめたい3つのポイント

公開されている情報で確かめられない労働条件は、求人票と面接で、書面に残る形で確かめます。

固定残業代の内訳

固定残業代とは、時間外労働の有無にかかわらず一定の手当を支給する制度です。厚生労働省は、固定残業代を採用する求人に記載が必要な内容として、次の3つを示しています(厚生労働省)。

  1. 手当を除いた基本給の額
  2. 手当に含む時間外労働の時間数と金額
  3. その時間を超えた分の割増賃金を追加で支給する旨

繁忙期には、固定残業代に含まれる時間を超える月が出ることがあります。たとえば給与の欄に「残業手当込み」とだけ書かれている場合は、何時間分が含まれているのかと、超えた分が別に支払われるのかを、面接で数字で尋ねてください。

業務と就業場所の変更の範囲

2024年4月1日から、募集のときに明示する労働条件に、従事すべき業務の変更の範囲と、就業場所の変更の範囲が加わりました(厚生労働省)。変更の範囲とは、雇入れ直後にとどまらず、将来の配置転換などの見込みも含めた範囲のことです(厚生労働省)。

主たる事務所のほかに事務所を持つ税理士法人では、就業場所の変更の範囲にほかの事務所が書かれていれば、異動の可能性があります。業務の変更の範囲からは、記帳の入力から申告書の作成まで、どこまで担当する見込みがあるのかを読み取れることがあります。業務の範囲は、実務経験として数えられる仕事に進めるかどうかにも関わります。

退職時に受け取る在職証明書

税理士試験の合格者や試験免除者が税理士の登録を申請するときは、実務経験を確かめる書類として、在職証明書や、在職証明書に押された印鑑の登録証明書などを出します(日本税理士会連合会)。在職証明書は勤務先の代表者から発行してもらうもので、税理士法人に勤めた場合は税理士法人の代表者が証明します(日本税理士会連合会)。

税理士事務所と、併設された会計法人に並行して勤めた期間を実務経験にするときは、給与が支払われていたかどうかにかかわらず、双方からの在職証明書が要ります(日本税理士会連合会)。在職証明書は、辞めた後に元の勤め先へ頼むことがある書類です。過去に退職した職員に在職証明書を出したことがあるかを面接で尋ねておくと、退職後の手続きで困らないかの見当がつきます。

税理士事務所選びでよくある質問

資格がなくても税理士事務所で働ける?

働けます。税理士業務は、国税局長に通知した弁護士などの例外を除き、税理士か税理士法人でなければ行えませんが、税理士は使用人などの従業者を使うときに、業務が適正に行われるよう監督しなければならないと定められています(e-Gov法令検索)。税理士試験の会計学に属する科目には受験資格がなく、税法に属する科目も、税理士・弁護士・公認会計士等の業務の補助事務に2年以上従事すれば受験資格を満たします(日本税理士会連合会)。

パートで働いた期間も実務経験になる?

税務や会計の事務に従事していれば、実務経験に数えられます。ただし、会計の事務のうち、単純な入力作業のような機械的事務は含まれません(e-Gov法令検索)。アルバイトなどの期間は、勤務日数や勤務時間に応じて従事した時間を積み上げて計算し、1日7時間、1か月154時間を限度に、3,696時間で2年相当とされます。1か所で足りない場合は、複数の勤め先の期間を合算できます(日本税理士会連合会)。

懲戒処分の一覧に名前がなければ安心?

それだけでは判断できません。国税庁の集計では、令和7会計年度の懲戒処分等は40件でした(国税庁)。令和8年9月末日時点の税理士登録者82,682人と比べるとごく一部で(日本税理士会連合会)、ほとんどの事務所は一覧に載りません。社会保険の加入状況や、36協定の内容とあわせて確かめてください。

確定申告の時期に有給休暇は取れる?

取れないとは決まっていません。年次有給休暇は、労働者が請求する時季に与えるのが原則です。ただし、請求された時季に与えると事業の正常な運営を妨げる場合は、使用者は他の時季に与えることができます(e-Gov法令検索)。繁忙期に休みを取りやすいかどうかは事務所の人数や仕事の割り振りで変わるため、繁忙期に休んだ職員がいるかを面接で尋ねてみてください。

繁忙期の決まりまで確かめて事務所を選ぼう

税理士事務所は、申告の期限に合わせて同じ時期に忙しくなります。それでも、所長の登録は税理士情報検索サイトで、懲戒処分は国税庁のサイトで、厚生年金と健康保険の加入は日本年金機構のサイトで、応募する前に確かめられます。事務所ごとに違いが出るのは、忙しい時期の残業の上限と休み方、雇い主の形、実務経験の扱いです。

求人票で固定残業代の内訳と変更の範囲を読み、面接で36協定の特別条項、繁忙期が明けた後の休み、退職後の在職証明書について尋ねてみてください。忙しいかどうかではなく、忙しい時期の決まりと、資格へ進む道筋を比べて、長く続けられる事務所を選んでいきましょう。

この記事の調査・執筆

就活キャリア研究所編集部

就活キャリア研究所編集部

就活キャリア研究所編集部は、就職・転職活動に役立つ企業情報やキャリアに関する情報を調査・発信する編集チームです。
企業の公式サイトや採用ページ、公開資料などをもとに、事業内容・年収・福利厚生・働く環境・口コミ・評判などを幅広く調査しています。
また、自己分析や面接対策、キャリア形成に関する情報も発信し、就活生や転職希望者が自分に合った企業・仕事を見つけられるよう、正確性と客観性を重視した記事制作に取り組んでいます。

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