「非鉄金属の大手といえば、銅やアルミそのものを作る会社」。業種の名前が鉄以外の金属を指しているので、業界研究を始めたばかりなら、そう考えるのが自然です。ところが、非鉄金属業界で売上高が最も大きいのは、電線や自動車用のワイヤーハーネスを作る住友電気工業です。
東証の33業種区分で「非鉄金属」に分類される上場企業を、2026年10月27日時点で最新の有価証券報告書の売上高で並べると、1位は住友電気工業の5兆1,101億円です。2位は三菱マテリアルの1兆8,440億円、3位は住友金属鉱山の1兆7,415億円で、どれも2026年3月期の数字です。上位10社は、鉱石から金属を取り出す製錬の事業を持つ会社、電線の会社、アルミの会社の3つに分かれます。
本記事では、上位10社の売上高・従業員数・平均年間給与を有価証券報告書の原文から並べ、売上高が金属の値段で動く理由、年収の数字の読み方、自分で確かめる手順までお伝えします。
非鉄金属業界の大手企業ランキング上位10社
非鉄金属業界の大手企業を売上高の大きい順に並べると、上位10社は次のとおりです。数字は各社の2026年3月期の有価証券報告書にある「主要な経営指標等の推移」の連結の数字から取り、億円未満を切り捨てています。
- 住友電気工業:5兆1,101億円
- 三菱マテリアル:1兆8,440億円
- 住友金属鉱山:1兆7,415億円
- 古河電気工業:1兆3,075億円
- フジクラ:1兆1,823億円
- UACJ:1兆1,817億円
- JX金属:8,846億円
- 三井金属:7,585億円
- DOWAホールディングス:7,454億円
- 日本軽金属ホールディングス:5,854億円
このうちUACJは、表の行の名前が「売上高」ではなく「売上収益」です。以下では、売上収益も含めて売上高と呼びます。
対象にしたのは、日本取引所グループが公開している東証上場銘柄一覧の2026年9月末の版で、33業種区分が「非鉄金属」とされている32社です(日本取引所グループ)。11位以下は、AREホールディングスの5,699億円、大紀アルミニウム工業所の3,311億円、2025年12月期のリョービの3,091億円と続きます(金融庁)。
電線を手がける3社
1位の住友電気工業、4位の古河電気工業、5位のフジクラの3社は、光ファイバや電力ケーブルを作り、自動車用のワイヤーハーネスも手がける会社です。
住友電気工業は、環境エネルギー、情報通信、自動車、エレクトロニクス、産業素材の5つの部門で事業を行っています。2026年3月期の外部顧客への売上高5兆1,101億円のうち、自動車関連事業が2兆9,353億円で6割近くを占めます。製品別では、ワイヤーハーネスと自動車電装部品で2兆2,817億円です(住友電気工業有価証券報告書)。
古河電気工業の主な事業は、光ファイバケーブルや電力ケーブルを扱うインフラ、ワイヤハーネスなどの自動車部品を扱う電装エレクトロニクス、機能製品の3つです。連結の従業員数は49,112人です(古河電気工業有価証券報告書)。
フジクラは、情報通信、エレクトロニクス、自動車、エネルギー、不動産の5つの部門を持ちます。光ファイバや光ケーブルを扱う情報通信事業部門の外部顧客への売上高は6,529億円で、連結の売上高の半分を超えます(フジクラ有価証券報告書)。
製錬を手がける5社
2位の三菱マテリアル、3位の住友金属鉱山、7位のJX金属、8位の三井金属、9位のDOWAホールディングスの5社は、鉱石などから金属を取り出す製錬の事業を持つ会社です。
三菱マテリアルは、銅・金・銀・鉛・錫・パラジウムなどの製錬と販売のほか、銅加工品や電子材料、超硬製品、地熱などの再生可能エネルギーの事業を持ちます。外部顧客への売上高のうち、製錬を中心とする金属事業が9,378億円で約半分です。連結の従業員数は17,591人です(三菱マテリアル有価証券報告書)。
住友金属鉱山は、鉱山の探査・開発・生産を行う資源、銅やニッケル、金などを製錬する製錬、電池材料などの材料の3つの報告セグメントを持ちます。連結の従業員数は7,507人です(住友金属鉱山有価証券報告書)。
JX金属は、半導体用スパッタリングターゲットや圧延銅箔を主力製品とし、銅やレアメタルの資源開発と製錬・リサイクルも手がけています。連結の従業員数は10,450人です(JX金属有価証券報告書)。
三井金属は、銅箔などの機能材料、亜鉛・鉛・銅・金・銀の製造販売と資源リサイクルを行う金属などの部門を持ち、連結の従業員数は8,188人です(三井金属有価証券報告書)。DOWAホールディングスは、環境・リサイクル、製錬、電子材料、金属加工、熱処理の5つの部門を持つグループの持株会社で、連結の従業員数は8,355人です(DOWAホールディングス有価証券報告書)。
アルミを手がける2社
6位のUACJと10位の日本軽金属ホールディングスは、アルミニウムの製品を作る会社です。
UACJは、2013年10月に古河スカイと住友軽金属工業が経営統合して発足しました。アルミニウムなどの圧延製品、鋳物製品、鍛造製品と加工品を作るアルミ製品事業の単一セグメントで、連結の従業員数は10,183人です(UACJ有価証券報告書)。
日本軽金属ホールディングスは、アルミナ・化成品と地金、板・押出製品、加工製品・関連事業、箔・粉末製品の4つの部門を持つ純粋持株会社です。連結の従業員数は12,123人です(日本軽金属ホールディングス有価証券報告書)。
非鉄金属業界のランキングが分かりにくい3つの理由
非鉄金属業界のランキングが一覧ごとに違って見えるのは、売上高が金属の値段で動き、年収がどの会社の数字かがそろっておらず、社名や顔ぶれも変わったからです。
売上高が金属の値段と生産量で動くから
製錬の会社の売上高は、作った量だけでなく、金属の値段でも大きく動きます。住友金属鉱山の2026年3月期は、電気銅の生産量が442,960トンから412,591トンに、金の生産量が18,709キログラムから14,261キログラムに減りました。電気銅が減ったのは、東予工場で定期炉修を行ったためです。
それでも連結の売上高は9.3%増えて1兆7,415億円になりました。有価証券報告書は、銅や金などの平均価格が前の期を上回ったことや、期の半ば以降の円安などを理由に挙げています。金の年間平均海外相場は、1トロイオンスあたり2,584.7ドルから3,939.1ドルに上がりました(住友金属鉱山有価証券報告書)。
三菱マテリアルは逆の動きでした。金属事業の売上高は、金の生産量が減ったことなどから13.8%減り、連結の売上高は6.0%減の1兆8,440億円でした(三菱マテリアル有価証券報告書)。2位と3位の差は、前の期の3,687億円から1,024億円に縮まっています。
電線でも同じことが起きます。日本電線工業会の統計では、2026年8月の銅電線の出荷は、量が前年同月比99.9%だったのに対し、金額は126.0%でした(日本電線工業会)。古河電気工業は、売上が増えた理由の1つに銅地金価格の高騰を挙げています(古河電気工業有価証券報告書)。
売上高の伸びは、作った量の伸びとは限りません。5位のフジクラと6位のUACJの差は6億円ほどで、金属の値段が動けば入れ替わりうる差です。UACJも、販売数量の増加に加えてアルミ地金価格の上昇などで、売上収益が18.3%増えたと説明しています(UACJ有価証券報告書)。
平均年収が持株会社の数十人の数字だから
有価証券報告書の「平均年間給与」は、報告書を出した会社自身の従業員の平均で、グループ全体の平均ではありません。上位10社のうち、DOWAホールディングスと日本軽金属ホールディングスは持株会社で、平均年間給与の対象は数十人です。
日本軽金属ホールディングスの平均年間給与は956万3,554円ですが、対象は同社の従業員61人で、平均年齢は50.55歳です。同じ報告書の「最大人員会社の状況」には、外国の会社を除く連結子会社で従業員数が最も多い日本軽金属株式会社の数字が載っています。2,215人で、平均年間給与は662万2,234円です(日本軽金属ホールディングス有価証券報告書)。
DOWAホールディングスの平均年間給与は831万3,000円で、対象は就業している98人です。グループ会社などへの出向者を含めた在籍従業員数は1,058人と注記されています。「最大人員会社の状況」に載っている秋田製錬は、395人の平均年間給与が542万8,000円です(DOWAホールディングス有価証券報告書)。持株会社の数字と事業会社の数字を、同じ欄に並べて比べないようにしましょう。
社名の変更と新しい上場で顔ぶれが変わったから
非鉄金属の上場企業の顔ぶれと社名は、2023年から2025年にかけて変わりました。JX金属は2025年3月19日に東京証券取引所プライム市場に上場した会社で、それより前に作られた一覧には載っていません(JX金属有価証券報告書)。
三井金属は、2025年10月に三井金属鉱業株式会社から商号を変えました。同社は2025年11月に自動車用ドアロックを作る三井金属アクトの全株式を譲渡し、連結の従業員数は前の期末より3,909人減っています(三井金属有価証券報告書)。
SWCCは2023年4月に昭和電線ホールディングスから(SWCC有価証券報告書)、AREホールディングスは2023年7月にアサヒホールディングスから商号を変えています(AREホールディングス有価証券報告書)。古い一覧で見た社名が見当たらないときは、その会社の報告書の「沿革」で、社名を変えたのか、上場をやめたのかを確かめてください。
非鉄金属の大手を見比べる4つの視点

非鉄金属の大手の違いは、売上高の順位よりも、次の4つを見比べると見えてきます。
- 鉱山と製錬所:原料の鉱石をどこから得て、どこで製錬するかを見る
- 人が多く働く事業:連結の従業員がどの事業にいるかを見る
- 伸びている製品:売上高が増えた製品とその理由を見る
- 平均年間給与と勤続年数:給与を平均年齢・平均勤続年数と並べて見る
鉱山と製錬所
日本鉱業協会によると、日本は銅や亜鉛、金などの原料となる鉱物資源のほとんどを海外鉱山から調達し(日本鉱業協会)、国内の製錬所で製錬しています(日本鉱業協会)。
住友金属鉱山は、米国のモレンシー銅鉱山とチリのケブラダ・ブランカ銅鉱山で、非支配持分を除く同社の権益が25.0%です。カナダのコテ金鉱山では30.0%です(住友金属鉱山有価証券報告書)。
鉱石を買う条件も、製錬の利益を左右します。JX金属は、銅精鉱の買鉱条件が著しく悪化していることから、グループの製錬所で減産措置を行う方向で検討を進めていると書いています(JX金属有価証券報告書)。三菱マテリアルも、買鉱条件の悪化による影響があったと説明しています。製錬の仕事を志望するなら、どの国の鉱山と関わり、国内のどの製錬所で働くのかを説明会で尋ねておきましょう。
人が多く働く事業
連結の従業員数をセグメントごとに見ると、グループの人がどの事業で働いているかが分かります。住友電気工業では、連結の従業員302,972人のうち244,192人、およそ8割が自動車関連事業に属しています(住友電気工業有価証券報告書)。
古河電気工業でも、連結の従業員49,112人のうち34,934人が電装エレクトロニクスに属しています(古河電気工業有価証券報告書)。フジクラは連結の従業員50,586人のうち、自動車事業部門が21,993人、情報通信事業部門が15,199人です(フジクラ有価証券報告書)。
報告書を出した会社自身の従業員は、グループのごく一部です。住友電気工業の提出会社の従業員は7,209人で、連結の2%余りにあたります。応募する会社そのものの人数と、グループ全体で働く人の数は、別の数字として読みましょう。
伸びている製品
電線の会社では、データセンター向けの光ファイバなどの製品が売上高を押し上げています。フジクラの情報通信事業部門は、生成AIの普及・拡大を背景にデータセンター向けの需要が伸び、売上高が前年度より44.7%増えました(フジクラ有価証券報告書)。
住友電気工業の情報通信関連事業も、データセンター向けの光配線製品、光ケーブル、光デバイスの需要が増え、売上高が46.3%増えています(住友電気工業有価証券報告書)。古河電気工業のインフラセグメントの連結売上高も、20.0%増えました(古河電気工業有価証券報告書)。
日本電線工業会の統計にも、同じ動きが出ています。2025年度の光製品の出荷量は前年度より31.9%増えた一方、銅電線の出荷量は58万3,300トンで2.0%減りました(日本電線工業会)。製錬の会社では、JX金属の半導体材料セグメントの売上高が、AI関連の需要拡大が続くなかで20%増え、1,772億円になりました(JX金属有価証券報告書)。
平均年間給与と勤続年数
持株会社の2社を除く上位8社では、提出会社の平均年間給与が732万9,000円から934万8,000円の幅に並びます。2026年3月31日時点の数字を高い順に並べ、平均年齢と平均勤続年数を添えると次のとおりです。
- フジクラ:934万8,000円(43.4歳・15.4年)
- 三井金属:896万1,728円(42.88歳・13.90年)
- 住友電気工業:896万円(43.2歳・18.0年)
- JX金属:830万8,817円(41.5歳・12.9年)
- 住友金属鉱山:805万4,000円(40.8歳・16.8年)
- UACJ:778万1,000円(41.4歳・15.5年)
- 古河電気工業:749万4,597円(43.4歳・18.4年)
- 三菱マテリアル:732万9,000円(43.0歳・19.0年)
JX金属の平均勤続年数12.9年は、社外からの出向者について、同社が出向を受け入れた日から数えた数字です(JX金属有価証券報告書)。8社とも平均年間給与は前の事業年度より増えており、増加率は住友金属鉱山の1.9%からUACJの9.3%までです。1年分の金額だけで比べず、同じ表にある増減率と注記もあわせて読んでください。
有価証券報告書で非鉄金属の大手を確かめる手順

上位10社の売上高と従業員の数字は、日本取引所グループと金融庁が公開している資料で確かめられます。次の3つの手順でたどってください。
日本取引所グループの東証上場銘柄一覧のExcelファイルを開き、33業種区分が「非鉄金属」の会社を確かめます(日本取引所グループ)。一覧は毎月第3営業日の午前9時以降に前月末のデータが掲載されるため、開いた月によって顔ぶれが変わることがあります。
金融庁のEDINETで会社名を入れて書類を検索し、事業年度が最も新しい有価証券報告書を開きます(金融庁)。「主要な経営指標等の推移」で、連結の売上高か売上収益と、従業員数を前の期と並べて確かめます。
「従業員の状況」で、提出会社の従業員数、平均年齢、平均勤続年数、平均年間給与を確かめます。子会社の経営管理を主な業務とする持株会社は、2026年3月31日以後に終わる事業年度から、外国の会社を除く連結子会社で従業員数が最も多い会社などの同じ数字も、「最大人員会社の状況」に載せる必要があります(金融庁)。
同じ「従業員の状況」には、管理職に占める女性の割合、男性の育児休業取得率、男女の賃金の差異も載っています。UACJの提出会社では、管理職に占める女性従業員の割合が6.1%、男性従業員の育児休業取得率が84.2%でした(UACJ有価証券報告書)。
電線の出荷の動きは、日本電線工業会の統計資料のページで確かめられます。メタル電線と光製品の出荷データをまとめたプレス資料が載っており、2026年8月分は2026年10月20日に公表されました(日本電線工業会)。
非鉄金属業界の大手企業でよくある質問
- 非鉄金属業界で売上高が一番大きい会社は?
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住友電気工業です。2026年3月期の連結の売上高は5兆1,101億円で、2位の三菱マテリアルの1兆8,440億円の2.7倍を超えています。このうち自動車関連事業が6割近くを占めます(住友電気工業有価証券報告書)。
- 非鉄金属業界で平均年収が高い会社は?
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売上高上位10社の提出会社では、日本軽金属ホールディングスの956万3,554円が最も高い数字です。ただし対象は持株会社の従業員61人で、平均年齢は50.55歳です。事業会社どうしで比べると、フジクラの934万8,000円が最も高く、対象は2,333人です(フジクラ有価証券報告書)。
- アルミの会社も非鉄金属に入る?
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入ります。UACJは、自社の業務を「アルミニウム等の非鉄金属及びその合金」の圧延製品などの製造・販売と説明しています(UACJ有価証券報告書)。東証の33業種区分でも、UACJ、日本軽金属ホールディングス、大紀アルミニウム工業所が「非鉄金属」に入っています(日本取引所グループ)。
- 日本で金属を掘っている鉱山はある?
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あります。日本鉱業協会は、かつて国内に数多くあった金属鉱山のほとんどが閉山したと説明しています(日本鉱業協会)。住友金属鉱山が鹿児島県で操業する菱刈鉱山の2026年3月期の販売金量は、3.5トンでした(住友金属鉱山有価証券報告書)。JX金属のグループ会社である春日鉱山株式会社(鹿児島県)も、金を含む珪酸鉱を生産し、銅製錬の副原料として製錬所に供給しています(JX金属有価証券報告書)。
製錬か電線かアルミかを見てから年収を比べよう
非鉄金属業界の大手企業は、売上高で見ると住友電気工業が5兆円を超えて1位で、三菱マテリアルからUACJまでの5社が1兆円台に並びます。上位10社は、製錬を手がける5社、電線を手がける3社、アルミを手がける2社に分かれ、同じ業種でも仕事の中身が違います。
順位の次に見たいのは、その年の売上高が金属の値段と生産量のどちらで動いたのか、グループの人がどの事業で働いているのかです。年収を比べるときは、持株会社の数十人の数字ではないかを確かめてください。気になる会社の有価証券報告書で、セグメントごとの売上高と従業員数を自分の目で確かめてみましょう。

