「処分を受けた会社の名前を並べれば、鳥取で入ってはいけない運送会社の一覧になるはず」。中国運輸局は、トラックの事業者が受けた行政処分を、事業者の名前、違反の中身、監査に入ったきっかけを付けて月ごとに公開しているので、そう考えるのは自然なことです。
ところが、令和7年4月分から令和8年9月分までの一覧で、営業所の所在地が鳥取県の一般貨物の処分等は13件でした。そのうち11件で点呼の実施か記録の違反が挙がり、5件は車輪の脱落事故をきっかけに監査が入ったものです。名前を探すより、応募先が出発前の点呼とタイヤを付け外しした後の点検をどう行っているかを確かめるほうが、見分ける近道になります。
この記事では、処分の一覧の読み方から、面接での点呼・車輪の点検・指導・勤務時間の尋ね方、鳥取県最低賃金での賃金の確かめ方まで、就活キャリア研究所の視点で順にお伝えします。使うのは、中国運輸局と鳥取労働局などが公開している情報です。
鳥取の運送会社が外から見分けにくい3つの理由
鳥取の運送会社が外から見分けにくいのは、処分の一覧の作り方、件数の数え方、監査に入るきっかけという3つの事情が、求人票にはほとんど現れないからです。
処分の一覧に中国地方5県の分が並ぶから
鳥取県は、広島県・島根県・岡山県・山口県とともに中国運輸局の管内にあり、全体を統括する本局は広島市にあります(中国運輸局)。県内を受け持つのは、鳥取市丸山町にある鳥取運輸支局です(中国運輸局)。一般貨物自動車運送事業の許可の申請書は、営業所を置く県の運輸支局に出します(中国運輸局)。
トラック事業者の行政処分等は、5県の分が1つの表になって月ごとに公開され、掲載期間は掲載した月から5年間です(中国運輸局)。表には「事業者の所在地」と「営業所の所在地」が別の欄で並ぶので、鳥取の行は「営業所の所在地」の欄で拾います。県外に本社がある事業者が県内の営業所で受けた処分も、同じ表に載るためです。
件数が営業所ごとに数えられるから
処分の一覧は、事業者ごとではなく、処分を受けた営業所ごとに1行ずつ並びます。令和7年4月分から令和8年9月分までで、営業所の所在地が鳥取県の行は29件ありました(中国運輸局)。
29件のうち13件は一般貨物の事業者の分で、12の事業者が受けたものです。12件が輸送施設の使用停止と文書警告、1件が文書警告のみでした。残る16件は軽貨物の事業者の分で、16件とも同じ1つの事業者が県内の16の営業所ごとに受けたものでした。
年度ごとの集計表にも同じ数え方が表れます。令和7年度の集計表で、鳥取支局の「行政処分等を受けた事業者数」は一般貨物が5、軽貨物が16です(中国運輸局)。このうち軽貨物の16は、1つの事業者の16の営業所の分です。集計表の数字も、処分を受けた会社の数ではなく、営業所ごとの件数として読みましょう。
一般貨物自動車運送事業は国土交通大臣の許可が必要で、三輪以上の軽自動車や二輪の自動車を使う貨物軽自動車運送事業は届出で始められます(e-Gov法令検索)。求人票に「ドライバー」とだけ書かれていたら、応募先がどちらの区分の事業者で、どの営業所に配属されるのかを先に確かめましょう。
監査に入るきっかけが事故と情報提供だから
中国運輸局は、処分の一覧に監査に入ったきっかけも載せています(中国運輸局)。鳥取県内の一般貨物の13件のきっかけは、次の3つに分かれます(中国運輸局)。
- 車輪の脱落事故:5件
- 死亡事故・重傷事故・酒気帯び運転の事故:4件
- 情報提供:4件
13件はどれも、事故か情報提供をきっかけに監査が入り、違反が見つかったものです。一覧に名前がないことは、違反がなかったことの証明にはなりません。応募先の名前が見当たらないときも、次に挙げる4つの点は面接で確かめておきましょう。
鳥取で避けたい運送会社に共通する4つの特徴

鳥取で避けたい運送会社に共通するのは、点呼、車両の点検、運転者への指導、勤務時間の管理という法律で決められた仕事が抜けていることです。県内の営業所が受けた一般貨物の13件で違反に挙がった項目をもとに、確かめたい4つを整理します。
- 点呼の実施と記録が欠けている
- 車輪の点検と整備が行き届いていない
- 運転者への指導と監督が足りない
- 勤務時間の基準を守らせていない
点呼の実施と記録が欠けている
事業者は、運転者が運行の業務を始める前と終えた後に、対面か、国が対面と同等と定めた方法で点呼を行います。運行上やむを得ない場合は、電話などの方法も認められています。業務の前の点呼で確かめるのは、酒気帯びの有無、疾病や疲労、睡眠不足などで安全に運転できないおそれの有無、日常点検の実施です。点呼の記録は1年間保存します(e-Gov法令検索)。
鳥取県内の一般貨物の13件のうち11件で、点呼の実施か記録の違反が挙がりました。このうち7件は、点呼の実施義務の違反です。軽貨物の16件も、すべて点呼の実施か記録の違反でした(中国運輸局)。
面接では「朝の出発前の点呼は、誰が、どこで、どの方法で行いますか」と尋ねてみてください。点呼をする人と場所を具体的に答えられるかどうかで、点呼が形だけになっていないかの見当がつきます。
車輪の点検と整備が行き届いていない
道路運送車両法は、運送事業に使う自動車の使用者に、3か月ごとの定期点検と、運行を始める前の1日1回の日常点検を求めています(e-Gov法令検索)。運送事業者は、車両の使い方を考えて定期点検の基準を作り、点検と必要な整備をして、その内容を記録簿に記載して保存します(e-Gov法令検索)。
鳥取県内の13件のうち5件は、ホイール・ナットの脱落による車輪の脱落事故がきっかけでした。5件とも、この事故を起こしたこと自体が点検整備の決まりの違反として挙がり、うち2件では定期点検整備の実施か記録の違反も挙がっています(中国運輸局)。
国土交通省の集計では、令和7年度に全国で起きた大型車の車輪脱落事故は128件でした。約50%が令和7年11月から令和8年1月に起き、約54%は車輪を付け外しする作業から1か月以内、約95%は左後輪からの脱落です。約56%は、大型車の使用者が自らタイヤを付け外しした後に起きています。ここでいう大型車は、車両総重量8トン以上の自動車などを指します(国土交通省)。
面接では「冬用タイヤへの交換は誰が行い、交換後の増し締めはいつ、誰が行いますか」と尋ねてみましょう。国土交通省の事故車両の調査では、タイヤを付け外しした後に増し締めをしていなかった車両が見つかっています(国土交通省)。作業の担当と時期をすぐに答えられるかどうかが、点検が日々の仕事に組み込まれているかの手がかりになります。
運転者への指導と監督が足りない
運送事業者は、国の指針に沿って運転者への指導と監督を毎年行い、その日時、場所、内容と、指導した人・受けた人を記録して、営業所で3年間保存します(国土交通省)。鳥取県内の13件のうち9件で、運転者への指導と監督か、その記録の違反が挙がりました。事故を起こした運転者、新たに雇い入れた運転者、65歳以上の運転者に行う特別な指導か適性診断の違反を含むものは3件です(中国運輸局)。
一般貨物の事業者が新たに雇い入れた運転者には、その会社で初めて乗務する前に、法令や安全な運転に関する事項を15時間以上、実際に運転させる安全運転の実技を20時間以上指導します。やむを得ない事情がある場合は、乗務を始めてから1か月以内に行います。その会社で初めて乗務する前の3年間に、他の一般貨物の事業者などで運転者として常時選任されていた人は、この指導の対象外です(国土交通省)。
一般貨物の事業者では、初任診断と呼ばれる適性診断も、乗務を始める前の3年間に受けたことがない人が、その会社で初めて乗務する前に受けます。やむを得ない事情がある場合は、乗務を始めてから1か月以内です(国土交通省)。四輪以上の軽自動車を使う軽貨物の事業者で初めて乗務する人への指導と適性診断には別の定めがあり、届出の時期によっては、その義務を令和10年3月31日まで適用しない経過措置もあります(e-Gov法令検索)。
未経験で入る人は「一人で乗務するまでに、誰が何時間付き添って教えてくれますか」と尋ねてください。指導の担当と時間を答えられない会社では、入社後の指導が後回しにされるおそれがあります。
勤務時間の基準を守らせていない
貨物自動車運送事業輸送安全規則は、国土交通大臣が告示で定める基準に従って運転者の勤務時間と乗務時間を定め、守らせることを事業者に求めています(e-Gov法令検索)。その基準は、厚生労働省の改善基準告示です(国土交通省)。鳥取県内の13件のうち5件でこの基準を守らせていない違反が、3件で病気や疲労、睡眠不足などで安全に運転できないおそれのある運転者を乗務させた違反が挙がりました(中国運輸局)。
改善基準告示では、トラック運転者の1日の拘束時間は13時間以内が基本で、延長しても15時間が限度です。休息期間は、勤務の終了後に継続11時間以上を与えるよう努めることを基本とし、継続9時間を下回ってはなりません(厚生労働省)。
ただし、1週間の運行がすべて1回の走行距離450km以上の長距離貨物運送で、休息期間を住所地以外の場所で取る場合は、週2回に限り、1日の拘束時間を16時間まで延ばし、休息期間を継続8時間以上にできます。休息期間のいずれかが9時間を下回るときは、1回の運行が終わった後に継続12時間以上の休息期間が必要です。2人で乗務する場合、隔日勤務の場合、休息期間を分けて取る場合にも、それぞれ別の決まりがあります(厚生労働省)。
1か月の拘束時間は284時間以内、1年は3,300時間以内が原則です。労使協定を結べば、年6か月まで1か月310時間、1年3,400時間まで延ばせますが、284時間を超える月は連続3か月までです。時間外労働の上限は、臨時的な特別の事情がある場合でも年960時間です(厚生労働省)。
鳥取労働局が令和6年度に長時間労働が疑われる事業場を監督した結果では、運輸交通業の30事業場のうち18事業場で違法な時間外労働が見つかりました。対象は、月80時間を超える時間外・休日労働が疑われる事業場などです(鳥取労働局)。運輸交通業は、同じ労働局の統計で道路貨物運送業とその他の運輸交通業を合わせた区分として扱われており、トラックの事業場だけの数ではありません(鳥取労働局)。面接では「直近3か月で拘束時間が最も長かった日は何時間でしたか」と、記録をもとに答えてもらいましょう。
中国運輸局と鳥取労働局の情報で確かめる手順

応募先の会社は、中国運輸局と鳥取労働局が公開している情報を使って、次の3つの手順で確かめられます。
同じページにある「累積違反点数が20点を超える貨物自動車運送事業者」の一覧で、応募先の名前と点数を確かめます(中国運輸局)。
累積点数の一覧の見方
中国運輸局の処分の基準では、車両の使用停止の処分日車数10日車までごとに1点の違反点数が付き、点数は事業者ごとに中国運輸局の管轄区域単位で累計されます。累計期間は原則3年です。累積点数が51点以上80点以下になると管轄区域内の全ての営業所が事業停止の対象になり、81点以上になると原則として許可の取消しの対象になります(中国運輸局)。
累積点数の一覧は3か月ごとに公表されます。令和8年9月30日時点の一覧に、鳥取県に所在地がある事業者は載っていません(中国運輸局)。ただし、この一覧に載るのは点数が20点を超えた事業者だけで、鳥取県内の一般貨物の13件は、処分等を受けた時点の事業者の点数がどれも14点以下でした(中国運輸局)。応募先に処分歴があれば、処分を受けた理由と、その後に改めた点呼や点検の中身を尋ねてください。
Gマークの認定の見方
処分の一覧とは逆に、安全への取り組みが評価された事業所の一覧もあります。全日本トラック協会は、トラック運送事業者の安全への取り組みを事業所単位で評価し、基準を満たした事業所を安全性優良事業所(Gマーク)に認定しています(全日本トラック協会)。
令和7年12月18日時点の認定は、全国で29,210事業所(全事業所の34.4%)、中国運輸局の管内で2,063事業所(管内事業所の35.0%)です(中国運輸局)。全日本トラック協会のページには、申請した年度ごとに、都道府県別の認定事業所の一覧が載っています(全日本トラック協会)。認定は会社単位ではなく事業所単位なので、配属される営業所の名前で確かめてください。
鳥取県最低賃金1,090円で確かめる賃金
提示された賃金が法律の下限を満たしているかどうかは、鳥取県最低賃金と照らせば自分で確かめられます。
令和8年10月3日改定の鳥取県最低賃金
鳥取県最低賃金は、令和8年10月3日から時間額1,090円です(鳥取労働局)。改定前の1,030円から60円の引上げです(厚生労働省)。地域別最低賃金は、産業や職種にかかわりなく、県内の事業場で働くすべての労働者とその使用者に適用されます(鳥取労働局)。
月給と歩合給の時間額の出し方
月給で比べるときは、実際に支払われる賃金から次の6つを除きます(厚生労働省)。
- 臨時に支払われる賃金(結婚手当など)
- 1か月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など)
- 所定労働時間を超える労働に対する賃金(時間外割増賃金など)
- 所定労働日以外の日の労働に対する賃金(休日割増賃金など)
- 午後10時から午前5時までの労働に対する賃金のうち、通常の賃金を超える部分
- 精皆勤手当、通勤手当、家族手当
除いた後の額を1か月平均所定労働時間で割り、最低賃金と比べます(厚生労働省)。たとえば1か月平均所定労働時間が168時間の会社なら、除いた後の月給は1,090円×168時間で183,120円以上あることが必要です。求人票の固定残業代は時間外労働への支払いにあたるので、比べる額に含めません。
歩合給のように出来高払制で決まる賃金は、その総額を、その賃金計算期間に出来高払制で働いた総労働時間で割って時間額に直します(厚生労働省)。労働基準法は、出来高払制その他の請負制で使用する労働者について、労働時間に応じた一定額の賃金を保障するよう使用者に求めています(e-Gov法令検索)。歩合の割合が高い求人では、保障給の額と、歩合を何の数字から計算するのかを書面で確かめてください。
鳥取の運送会社選びでよくある質問
鳥取県で運送会社を選ぶときに出てくる4つの疑問に答えます。
- 処分を受けた運送会社はどこで調べられますか
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中国運輸局が、鳥取県を含む5県の行政処分等を月ごとの個表で公開しています。累積違反点数が20点を超える事業者の一覧も同じページにあります(中国運輸局)。全国分は、国土交通省のネガティブ情報等検索サイトで調べられます(国土交通省)。
- 軽貨物の仕事でも出発前の点呼はありますか
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あります。貨物自動車運送事業法でいう貨物自動車運送事業者には、一般貨物と特定貨物の事業者に加えて、貨物軽自動車運送事業者も含まれます(e-Gov法令検索)。点呼を定めた輸送安全規則の決まりは、この貨物自動車運送事業者に課されています(e-Gov法令検索)。令和7年度に県内の軽貨物の営業所が受けた16件も、すべて点呼の実施か記録の違反でした(中国運輸局)。
- 鳥取の運送業で労働災害はどのくらい起きていますか
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鳥取労働局の集計では、令和7年に県内で休業4日以上の労働災害に遭った道路貨物運送業の労働者は65人で、令和6年の48人から17人増えました(鳥取労働局)。道路貨物運送業で最も多い事故の型は墜落・転落で、トラックの荷台からのものが多く起きています(鳥取労働局)。令和5年10月からは、荷を積み卸す作業で昇降設備の設置と保護帽の着用が義務づけられる貨物自動車に、最大積載量2トン以上5トン未満のものが加わりました。2トン以上5トン未満の車で保護帽が要るのは、平ボディ車やウイング車のように荷台の側面が開く車と、テールゲートリフターが付いた車です。リフターを使わずに積み卸す場合などは除かれます(厚生労働省)。
処分の一覧を読んだら点呼と増し締めを尋ねよう
鳥取の運送会社を見分ける材料は、中国運輸局と鳥取労働局、全日本トラック協会がすでに公開しています。処分の一覧は5県分が月ごとにまとまり、件数は営業所ごとに並びます。令和7年4月分から令和8年9月分までの県内の一般貨物の13件では、11件で点呼の違反が挙がり、5件は車輪の脱落事故がきっかけでした。
処分の一覧と累積点数、Gマークの認定、公表事案に目を通したうえで、点呼の担当と方法、タイヤ交換後の増し締め、入社後の指導の時間、拘束時間の実績を尋ねてみてください。一覧に名前がないことを安心の材料にするのではなく、点呼と点検の記録を見せながら説明できる会社を選んでいきましょう。

