「行政処分を受けた運送会社の名前を集めれば、大分で入ってはいけない会社の一覧になるはず」。九州運輸局は、トラックの事業者が受けた行政処分等を、事業者の名前と違反の中身を付けて月ごとに公開しているので、そう考えるのは自然なことです。
ところが、令和3年10月分から令和8年9月分までの資料で、営業所の所在地が大分県の75件を数えると、51件は1つの軽貨物の事業者が県内の51の営業所ごとに受けたものでした。一般貨物の23件では、16件で運転者への指導と監督の違反が挙がり、令和7年7月分以降の9件のうち5件は死亡事故をきっかけに監査が入っています。名前を探すより、応募先が運転者への指導と点呼をどう行っているかを確かめるほうが、見分ける近道になります。
処分の資料の読み方から、面接で尋ねたい指導・点呼・記録・勤務時間の中身、令和8年11月1日に改正される大分県最低賃金での賃金の確かめ方まで、九州運輸局と大分労働局などが公開している情報をもとに、就活キャリア研究所の視点で順にお伝えします。
大分の処分の資料で会社を見分けにくい3つの理由
大分の運送会社の違いが処分の資料から見えにくいのは、件数の多くが1つの事業者の分で、本社と営業所の県が別々に書かれ、監査が事故などをきっかけに入るためです。
件数の7割近くが1つの軽貨物の事業者の分だから
九州運輸局は、九州7県のトラックの事業者が受けた行政処分等を、過積載を除くもの、過積載に限るもの、軽貨物の3つの一覧に分けて月ごとに公開しています。軽貨物の一覧は令和7年度分からです。個別の事業者の処分等は5年間公表されます(九州運輸局)。
令和3年10月分から令和8年9月分までの資料で、営業所の所在地が大分県のものは、一般貨物が23件、過積載が1件、軽貨物が51件の計75件でした。軽貨物の51件は、同じ1つの事業者が県内の51の営業所ごとに受けたものです。どれも事業者自身からの報告をきっかけに監査が入り、点呼の実施か記録の違反が挙がっています(九州運輸局)。
令和7年度の集計表で、大分の「行政処分等を受けた事業者数」は56です(九州運輸局)。月ごとの資料と照らすと、このうち51は先の軽貨物の事業者の営業所の分でした。集計表の数字は、処分を受けた会社の数ではなく、営業所ごとの件数として読みましょう。
一般貨物自動車運送事業を始めるには国土交通大臣の許可が要り、三輪以上の軽自動車や二輪の自動車で運ぶ貨物軽自動車運送事業は届出で始められます(e-Gov法令検索)。求人票に「ドライバー」とだけ書かれていたら、応募先がどちらの区分の事業者かを先に確かめましょう。
本社と営業所の県が別々に書かれるから
処分の資料には、「事業者の所在地」と「営業所の所在地」が別々に書かれます。一般貨物の23件のうち5件は、本社が福岡県・佐賀県・群馬県にある事業者の、大分県内の営業所が受けたものでした。反対に、本社が大分県にある事業者が、鹿児島県や福岡県の営業所で処分を受けた記録もあります(九州運輸局)。
九州運輸局の運輸要覧では、令和7年3月末時点の大分県の一般貨物の事業者は744で、このうち県内に本社がある事業者は585です。軽貨物の事業者は1,441です(九州運輸局)。大分の営業所で働くなら、本社の所在地ではなく、配属される営業所の所在地で資料を探しましょう。
監査が事故や情報をきっかけに入るから
処分の資料の「違反行為の概要」の欄には、監査に入った日ときっかけが書かれています。一般貨物の23件のうち、令和7年7月分以降の9件のきっかけは次の4つでした(九州運輸局)。
- 死亡事故:5件
- 適正化事業実施機関からの情報:2件
- 健康に起因する事故:1件
- 車輪の脱落事故:1件
それより前の14件には「監査実施」とだけ書かれ、きっかけは載っていません。大分県トラック協会は、貨物自動車運送事業法に基づく地方貨物自動車運送適正化事業を行っています(大分県トラック協会)。処分は、事故や情報をきっかけに監査が入った結果なので、資料に名前がないことは違反がないことの証明にはなりません。
大分で避けたい運送会社に共通する4つの特徴

大分で避けたい運送会社に共通するのは、運転者への指導、点呼、記録、勤務時間という、法令で決められた仕事が抜けていることです。一般貨物の23件で違反に挙がった項目から、確かめたい4つを整理します。
- 運転者への指導を省いている
- 点呼を確実に行っていない
- 運転者等台帳と業務の記録が整っていない
- 勤務時間の基準を守らせていない
運転者への指導を省いている
事業者は、国が告示で定めるところにより運転者を指導・監督し、日時・場所・内容などを記録して営業所で3年間保存します(e-Gov法令検索)。一般貨物の23件のうち16件でこの指導と監督の違反が挙がり、4つの中で最も多い項目でした(九州運輸局)。
死者か重傷者が出た事故を起こした運転者、新たに雇い入れた運転者、65歳以上の運転者などには、特別な指導を行い、適性診断を受けさせます(e-Gov法令検索)(国土交通省)。23件のうち7件では、この特別な指導か適性診断の違反も挙がっています。
一般貨物などの事業者が新たに雇い入れた運転者への特別な指導は、法令や安全な運転に関する事項が15時間以上、安全運転の実技が20時間以上です。乗務する前の3年間に、他の一般貨物などの事業者で運転者として常時選任されていた人は対象外です(国土交通省)。面接では、入社後の指導の時間割と、添乗して教える人が誰かを尋ねてください。
点呼を確実に行っていない
事業者は、運転者が運行の業務を始める前と終えた後に、対面か、国が対面と同等の効果があると定めた方法で点呼を行います。運行上やむを得ない場合は、電話などの方法も認められています。業務前の点呼では、酒気帯びの有無や、疾病・疲労・睡眠不足などで安全に運転できないおそれの有無を確かめ、点呼の記録は1年間保存します(e-Gov法令検索)。
一般貨物の23件のうち14件で点呼の実施か記録の違反が挙がり、このうち10件は点呼を確実に実施していなかったという違反でした(九州運輸局)。軽貨物の51件も、すべて点呼の違反です。早朝や深夜に出発する便があるなら、その時間の点呼を誰がどの方法で行っているかを尋ねましょう。
運転者等台帳と業務の記録が整っていない
一般貨物などの事業者は、運転者ごとに、雇入れの年月日、運転免許、事故の概要、健康状態、特別な指導と適性診断の状況などを書いた運転者等台帳を作り、営業所に備えます。あわせて運転者に、業務の開始と終了の地点・日時や、休憩・睡眠の地点・日時などを記録させ、1年間保存します(e-Gov法令検索)。
一般貨物の23件のうち14件で運転者等台帳の違反が、7件で業務の記録の違反が挙がりました。1件では、乗務等の記録に事実と異なる記載があった不実記載と、運行記録計の記録の改ざんも違反に挙がっています(九州運輸局)。業務の記録が整っていない会社では、働いた時間を後から確かめる手がかりが乏しくなります。
勤務時間の基準を守らせていない
事業者は、休憩や睡眠、勤務後の休息の時間が十分に取れるように、国が告示で定める基準に従って運転者の勤務時間と乗務時間を定め、守らせなければなりません(e-Gov法令検索)。一般貨物の23件のうち12件で、この決まりの違反が挙がりました(九州運輸局)。
基準の中身は、厚生労働省の改善基準告示です。トラック運転者の1日の拘束時間は13時間以内が基本で、延長しても15時間が限度です。休息期間は勤務の終了後に継続11時間以上を与えるよう努めることを基本とし、継続9時間を下回ってはなりません。1週間の運行がすべて450km以上の長距離貨物運送で、休息期間を住所地以外の場所で取る場合などには例外があります(厚生労働省)。
1か月の拘束時間は284時間以内、1年は3,300時間以内が原則です。労使協定を結べば、年6か月まで1か月310時間、1年3,400時間まで延ばせますが、284時間を超える月は連続3か月までです(厚生労働省)。面接では「拘束時間がいちばん長い日は何時間ですか」と尋ねてみてください。
大分の事故と長時間労働に関する公的な数字
大分の運送会社を選ぶ前に知っておきたい公的な数字は、死亡事故のあとの監査で挙がった違反、県内の事業用トラックの重大事故、長時間労働の監督の結果の3つです。
死亡事故のあとの監査で挙がった違反
令和7年7月分以降に死亡事故をきっかけに監査が入った5件は、すべてで運転者への指導と監督か、特別な指導の違反が挙がっていました。5件のうち3件では運転者等台帳の違反が、2件では勤務時間の基準の違反が挙がっています。1件は、死亡事故に加えて、自動車事故報告書が出ていなかったことも監査のきっかけでした(九州運輸局)。
死者か重傷者を生じた事故を起こした運転者などには、再び乗務する前に、一般貨物などの事業者では合計6時間以上の特別な指導を行い、適性診断を受けさせます。やむを得ない事情があるときは、乗務を再び始めてから1か月以内に行います(国土交通省)。入社前に、事故が起きたときの社内の手順と、指導を誰が担当するかを確かめておきましょう。
県内の事業用トラックの重大事故
九州運輸局が管内の事業者からの報告をまとめた事故統計によると、令和7年の大分県の事業用トラックの重大事故は17件で、死者は6人、負傷者は5人でした。令和6年は23件です(九州運輸局)。
ここでいう重大事故は、自動車事故報告規則で事業者に報告が求められる事故です。死者や重傷者を生じた事故のほか、車輪の脱落や、運転者の病気で運転を続けられなくなった事故なども含みます(九州運輸局)。
長時間労働が疑われる事業場の監督結果
大分労働局が令和6年度に長時間労働が疑われる283の事業場を監督した結果では、運輸交通業の39事業場のうち30事業場で労働基準関係法令の違反が、14事業場で違法な時間外労働が見つかりました(大分労働局)。
この監督は、時間外・休日労働が月80時間を超えていると考えられる事業場や、過労死等の労災請求があった事業場を対象にしたものです(大分労働局)。運輸交通業は道路貨物運送業を含む区分で、トラックの事業場だけの数ではありません(大分労働局)。
九州運輸局と大分労働局の情報で確かめる手順

応募先の会社は、九州運輸局と大分労働局などが公開している情報を使って、次の3つの手順で確かめられます。
九州運輸局の「一般貨物自動車運送事業者一覧」(令和8年9月30日現在)で、応募先の営業所の名前と所在地、車両の数を確かめます(九州運輸局)。
令和8年7月末日に更新された大分労働局の公表事案の一覧には、8件が載っています(大分労働局)。一覧に載るのは、労働基準関係法令違反の疑いで送検して公表した事案などで、掲載期間は公表日からおおむね1年です(厚生労働省)。送検などに至らない違反は一覧に載らないので、載っていないことを安心の材料にはしないでください。
処分日車数と違反点数の読み方
輸送施設の使用停止の重さは「日車」で表され、10日車までごとに1点の違反点数が付きます。点数は事業者ごとに運輸局の管轄区域単位で累計され、累計の期間は原則3年間です(国土交通省)。
大分県内の営業所が受けた一般貨物の23件では、使用停止が11件、文書警告だけのものが12件でした。最も重い使用停止は190日車で、処分の時点の事業者の点数は最も高い件でも19点でした(九州運輸局)。
九州運輸局は、違反点数が21点以上の事業者を3か月ごとに公表しています(九州運輸局)。令和8年9月末時点の一覧には12の事業者が載り、所在地が大分県の事業者も1つありますが、その処分は鹿児島県内の営業所に対するものでした(九州運輸局)。一覧に載らない点数でも処分は受けているので、STEP1の月ごとの資料とあわせて読みましょう。
Gマークの認定の見方
処分の資料とは逆に、安全への取り組みが評価された事業所の一覧もあります。全日本トラック協会は、トラック運送事業者の取り組みを事業所単位で評価し、基準を満たした事業所を安全性優良事業所(Gマーク)に認定しています。2025年12月16日現在の認定は29,210事業所で、全事業所の34.4%にあたります(全日本トラック協会)。
同協会が公開している一覧(2026年10月1日更新)に載っている大分県の事業所は325で、このうち大分市が155、中津市が35です(全日本トラック協会)。認定は会社単位ではなく事業所単位なので、配属される営業所の名前で確かめてください。
大分県最低賃金1,096円で確かめる賃金
会社に雇われて働く場合、提示された賃金が法律の下限を満たしているかどうかは、大分県最低賃金と照らせば自分で確かめられます。最低賃金法の対象は、労働基準法第9条に定める労働者です(e-Gov法令検索)。業務委託の契約で運送を請け負う求人なら、まず雇用契約かどうかを確かめてください。
11月1日から1,096円になる大分県最低賃金
大分労働局は、大分地方最低賃金審議会の答申を受けて、大分県最低賃金を時間額1,035円から1,096円に改正すると決めました。効力が生じるのは令和8年11月1日で、61円の引上げです(大分労働局)。厚生労働省の令和8年度の全国一覧でも、大分は1,096円、発効日は令和8年11月1日です(厚生労働省)。
改正前の1,035円は、令和8年1月1日から適用されている額です(大分労働局)。大分県最低賃金は、県内の臨時・パート・アルバイトなどを含むすべての労働者に適用されます(大分労働局)。令和8年10月31日までの賃金は1,035円と、11月1日からの賃金は1,096円と比べます。
ただし、使用者が都道府県労働局長の許可を受けた場合に限り、試の使用期間中の人などには最低賃金の減額の特例があります(e-Gov法令検索)。試用期間の賃金が1,096円を下回る求人では、この許可を受けているかを尋ねてください。
最低賃金と比べる時間額の出し方
月給で比べるときは、実際に支払われる賃金から次の6つを除きます(厚生労働省)。
- 臨時に支払われる賃金(結婚手当など)
- 1か月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など)
- 所定労働時間を超える労働に対する賃金(時間外割増賃金など)
- 所定労働日以外の日の労働に対する賃金(休日割増賃金など)
- 午後10時から午前5時までの労働に対する賃金のうち、通常の賃金を超える部分
- 精皆勤手当、通勤手当、家族手当
残った額を1か月平均所定労働時間で割り、最低賃金と比べます(厚生労働省)。たとえば1か月平均所定労働時間が168時間の会社なら、11月1日からは、6つを除いた月給が1,096円×168時間で184,128円以上あることが必要です。求人票の固定残業代は時間外労働への支払いにあたるので、比べる額に含めません。
歩合給のように出来高払制で決まる賃金は、その総額を、その賃金計算期間に出来高払制で働いた総労働時間で割って時間額に直します(厚生労働省)。労働基準法は、出来高払制その他の請負制で使用する労働者について、労働時間に応じた一定額の賃金を保障するよう使用者に求めています(e-Gov法令検索)。歩合の割合が高い求人では、保障給の額を書面で確かめてください。
大分の運送会社選びでよくある質問
大分県で運送会社を選ぶときに出てくる4つの疑問に答えます。
- 大分の運送会社の処分歴はどこで調べられますか
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九州運輸局の「行政処分状況」のページで、大分県を含む九州7県の行政処分等を年度ごとの一覧で見られます。違反点数が20点を超える事業者の一覧も同じページにあります(九州運輸局)。全国分は、国土交通省のネガティブ情報等検索サイトで調べられます(国土交通省)。
- 九州運輸局の資料にはどんな処分が載りますか
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九州運輸局の公表の基準では、文書による勧告や警告、自動車などの使用停止、事業の停止、許可の取消しを受けた事業者などが公表の対象です。ホームページへの掲載は、掲載した月から5年間続きます(九州運輸局)。
- 大分県の最低賃金はいくらですか
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令和8年11月1日から時間額1,096円です。令和8年10月31日までは、令和8年1月1日から適用されている1,035円です(大分労働局)。
処分の名前より運転者への指導の中身で選ぼう
令和3年10月分から令和8年9月分までの処分の資料では、大分県の75件のうち51件が1つの軽貨物の事業者の営業所の分でした。一般貨物の23件では、16件で運転者への指導と監督の違反が、14件で点呼の違反が挙がり、令和7年7月分以降に死亡事故をきっかけに監査が入った5件は、すべてで指導の違反がありました。
処分の資料と点数の一覧、公表事案、Gマークの認定に目を通したら、面接では入社後の指導の時間と担当者、早朝や深夜の点呼の方法、拘束時間がいちばん長い日の時間を尋ねてみてください。名前の有無で決めるのではなく、運転者への指導を記録と一緒に説明できる会社を選んでいきましょう。

