「化学業界の大手は、社名に化学やケミカルが付く素材メーカー」。三菱ケミカルグループや住友化学、信越化学工業のように、社名を見れば業種が分かる会社が多いため、そう考える人もいるでしょう。ところが、東証の33業種で「化学」に分類される203社を最新の有価証券報告書の連結売上高で並べると、2位は複合機や医療機器、カメラも手がける富士フイルムホールディングスです。塗料の日本ペイントホールディングスと、日用品の花王も上位10社に入ります。
1位は三菱ケミカルグループで、2026年3月期の売上収益は3兆7,039億円です。上位10社のうち5社は持株会社で、有価証券報告書の平均年間給与は、その持株会社で働く社員だけの数字です。三菱ケミカルグループの場合、平均の対象は27人です。
本記事では、上位10社の売上高を有価証券報告書の原文から並べ、ランキングが分かりにくい理由、会社を見比べる視点、自分で確かめる手順まで、就活キャリア研究所の視点で順を追ってお伝えします。
化学業界の大手企業ランキングと上位10社の売上高
化学業界の上場企業を連結売上高の大きい順に並べると、上位10社は次のとおりです。億円未満は切り捨てています。
- 三菱ケミカルグループ:3兆7,039億円
- 富士フイルムホールディングス:3兆3,569億円
- 旭化成:3兆745億円
- 信越化学工業:2兆5,739億円
- 住友化学:2兆3,285億円
- 日本ペイントホールディングス:1兆7,742億円
- 花王:1兆6,886億円
- 三井化学:1兆6,687億円
- 日本酸素ホールディングス:1兆3,596億円
- レゾナック・ホールディングス:1兆3,471億円
対象は、日本取引所グループが公表する2026年9月末の東証上場銘柄一覧で、33業種区分が「化学」の203社です。決算期は、日本ペイントホールディングス、花王、レゾナック・ホールディングスが2025年12月期、ほかの7社が2026年3月期です。国際会計基準で売上収益を載せている会社は、その額を並べています。プロ投資家向けのTOKYO PRO Marketに上場するand USだけは有価証券報告書を出していないため、日本取引所グループのサイトに載る発行者情報の売上高で並べています。
11位は積水化学工業の1兆3,092億円(2026年3月期)で、10位のレゾナック・ホールディングスとの差は378億円あまりです。決算期が違う2社なので、次の決算で順位が入れ替わることもあります。
売上高が3兆円を超える3社
三菱ケミカルグループは、スペシャリティマテリアルズ、MMA&デリバティブズ、ベーシックマテリアルズ&ポリマーズ、産業ガスの4つのセグメントを持ちます。売上収益が最も大きいのは産業ガスの1兆3,525億円で、連結の従業員は56,678人です。
富士フイルムホールディングスの売上高で最も大きいのは、デジタル複合機などのビジネスイノベーション部門の1兆1,748億円です。医療機器や医薬品のヘルスケア部門が1兆989億円で続き、連結の従業員73,526人は10社の中で最も多い人数です。
旭化成は、マテリアル、住宅、ヘルスケアの3つの事業を持ちます。マテリアルの売上高は1兆3,062億円で、住宅も1兆773億円と1兆円を超えています。連結の従業員は47,895人です。
売上高が2兆円台の2社
信越化学工業の柱は、シリコンウエハーやフォトレジストなどの半導体材料を含む電子材料事業で、売上高は1兆157億円です。塩化ビニルやか性ソーダの生活環境基盤材料事業が9,813億円で続き、連結の従業員は27,342人です。
住友化学は、エッセンシャル&グリーンマテリアルズの6,788億円、ICT&モビリティソリューションの5,741億円、アグロ&ライフソリューションの5,192億円と、規模の近い事業が並びます。医薬品の住友ファーマも4,519億円を占め、連結の従業員は27,491人です。
売上高が1兆円台の5社
日本ペイントホールディングスで最も大きいのは、中国やシンガポール、インドなどで塗料事業を行うNIPSEAの8,874億円で、日本セグメントは2,053億円です。花王は、日用品や化粧品などのグローバルコンシューマーケア事業が1兆2,830億円、ケミカル事業が4,515億円です。
三井化学は、ベーシック&グリーン・マテリアルズの5,999億円が売上収益の36%を占めます。主な販売先の三井物産への売上収益は3,002億円で、全体の18.0%に当たります。
日本酸素ホールディングスは産業ガスの会社で、セグメントを地域で分けています。日本が4,062億円、米国が3,605億円、欧州が3,509億円、アジア・オセアニアが2,084億円で、家庭用品のサーモスも332億円あります。レゾナック・ホールディングスは、半導体・電子材料の5,063億円が最も大きい事業です。
化学大手のランキングが分かりにくい3つの理由
化学業界のランキングが分かりにくいのは、東証の「化学」に日用品や塗料の会社も入ること、親会社と子会社が別々に順位に入ること、事業の売却や切り離しで売上高の範囲が変わることが重なるからです。
「化学」に日用品や塗料の会社も入るから
東証の33業種区分で「化学」に分類される203社には、素材メーカーのほか、日用品や化粧品の花王・資生堂・ユニ・チャーム、塗料の日本ペイントホールディングス、産業ガスの日本酸素ホールディングスも入っています。上位10社の中で、社名に「化学」か「ケミカル」が付く会社は4社です。
「化学業界」という言葉が指す範囲は、使う人や資料によって変わります。ランキングを見るときは、どの区分の会社を並べたものかを最初に確かめましょう。
親会社と子会社が別々に順位に入るから
9位の日本酸素ホールディングスは、1位の三菱ケミカルグループが議決権の50.7%を持つ子会社です。三菱ケミカルグループの産業ガスセグメントには、日本酸素ホールディングスの子会社の大陽日酸(2026年4月1日に日本酸素に社名を変更)などが入っています。
産業ガスの売上収益1兆3,525億円は、三菱ケミカルグループの売上収益の3分の1あまりに当たります。日本酸素ホールディングスは上場を続けているため、東証の一覧には別の会社として載ります。上位10社の売上高をそのまま足すと、日本酸素ホールディングスの売上高を二重に数えることになります。
事業の売却や切り離しで売上高の範囲が変わるから
三菱ケミカルグループは、2026年3月期に田辺三菱製薬(現 田辺ファーマ)の全株式などを譲渡しました。田辺三菱製薬などの事業は非継続事業に分けられ、2025年3月期と2026年3月期の売上収益は、続けている事業だけの金額です。
レゾナック・ホールディングスは、2025年1月に石油化学事業を子会社のクラサスケミカルに引き継ぎました。2025年12月期の売上収益には、クラサスケミカルセグメントの3,003億円が入っています。そのクラサスケミカルは、2026年9月末の東証上場銘柄一覧に、スタンダード市場の化学の会社として載っています。
化学大手を見比べる4つの視点

化学大手の違いは、売上高の順位よりも、次の4つを見比べると見えてきます。
- 海外の売上:売上のうち海外の割合を見る
- 連結の人数:グループ全体と報告書を出した会社の人数を比べる
- 持株会社:平均年間給与の対象が誰かを見る
- 年齢と勤続:平均年間給与と並べて見る
海外の売上
海外の売上の割合は、会社ごとに大きく違います。有価証券報告書に割合が書かれている会社を並べると、次のとおりです。
- 日本ペイントホールディングス:約90%(2025年度)
- 信越化学工業:79%(2026年3月期)
- 住友化学:7割程度(2026年3月期の報告書)
- 富士フイルムホールディングス:約65%(2026年3月期)
- 三井化学:51.8%(2026年3月期)
- 花王:42.9%(2025年12月期)
海外の子会社の業績は円に換算して連結するため、海外の割合が高い会社ほど、為替の動きで売上高が増えたり減ったりします。
連結の人数
報告書を出した会社で働く人が、グループ全体の4分の1に満たないことがあります。富士フイルムホールディングスは連結の従業員73,526人に対して提出会社は1,198人、花王は連結31,514人に対して提出会社7,761人です。
日本ペイントホールディングスは、連結の従業員38,481人のうち、日本セグメントが3,343人、NIPSEAが23,218人です。国内の会社に入りたい人は、セグメントごとの人数で、日本で働く人がどれだけいるかを確かめましょう。
持株会社
上位10社のうち、三菱ケミカルグループ、富士フイルムホールディングス、日本ペイントホールディングス、日本酸素ホールディングス、レゾナック・ホールディングスの5社は持株会社です。5社の平均年間給与は、持株会社で働く人だけの平均です。
- 三菱ケミカルグループ:1,188万9,000円(27人)
- レゾナック・ホールディングス:1,131万9,076円(346人)
- 富士フイルムホールディングス:1,085万5,077円(1,198人)
- 日本酸素ホールディングス:1,064万1,000円(108人)
- 日本ペイントホールディングス:1,044万5,000円(49人)
このうち3社は、グループの中で人数の多い事業会社の数字も載せています。三菱ケミカルグループの27人はすべて子会社からの出向者で、最も人数の多い三菱ケミカルの15,002人の平均年間給与は884万6,000円です。日本酸素ホールディングスでは、大陽日酸の2,164人が908万2,000円です。
富士フイルムホールディングスは3社の数字を載せていて、富士フイルムの4,338人は1,039万6,228円、富士フイルムビジネスイノベーションジャパンの9,591人は789万3,833円です。同じグループでも、富士フイルムと富士フイルムビジネスイノベーションジャパンでは、平均年間給与に250万円ほどの差があります。
持株会社の平均年間給与は、事業会社に入る人の給与の目安にはなりません。志望する事業会社の数字が報告書にあるかを、「従業員の状況」の後ろの欄で確かめましょう。
年齢と勤続
報告書を出した会社が自ら事業を営む5社は、平均年間給与が848万円から958万円の間に並びます。平均年齢と平均勤続年数を添えると、次のとおりです。
- 住友化学:958万5,195円(42.4歳・16.7年)
- 信越化学工業:898万8,000円(40.8歳・18.8年)
- 三井化学:871万7,118円(40歳0か月・15年1か月)
- 花王:865万4,000円(40.6歳・16.7年)
- 旭化成:848万3,519円(41.9歳・17.1年)
花王は2025年12月31日時点、ほかの4社は2026年3月31日時点の数字で、いずれも賞与と基準外賃金を含みます。前の事業年度からの増減率は、住友化学がプラス17.1%、旭化成がプラス6.0%、信越化学工業がプラス2.6%、三井化学がプラス2.4%でした。
有価証券報告書で化学大手を確かめる手順

この記事の数字は、日本取引所グループと金融庁の公開資料で、次の3つの手順で確かめられます。
日本取引所グループの東証上場銘柄一覧のExcelを開き、33業種区分の列で「化学」の会社を絞り込みます。気になる会社がどの市場に上場しているかも、同じ一覧で分かります。
金融庁のEDINETで会社名を入れて書類を検索し、事業年度が最も新しい有価証券報告書を開きます。「主要な経営指標等の推移」で連結の売上高か売上収益を確かめ、表の下の注で会計基準と、数字の範囲が変わった事情を読みます。
同じ報告書の「従業員の状況」で、提出会社の人数と平均年間給与、最大人員会社の欄があるかを見ます。続けて「関係会社の状況」で、親会社や主な子会社と、その議決権の割合を確かめます。
「従業員の状況」が載る場所は、決算期で違います。上位10社では、2026年3月期の7社の報告書は「第4 提出会社の状況」の中に、2025年12月期の3社の報告書は「第1 企業の概況」の中に載せています。
上場していない事業会社の働き方は、厚生労働省の職場情報総合サイト「しょくばらぼ」で社名を検索すると分かる場合があります。掲載されていない会社もあります。
化学業界の大手企業でよくある質問
化学業界の大手企業について、売上高と年収の順位や業界の範囲など、4つの疑問に答えます。
- 化学業界で売上高が一番大きい会社は?
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東証で化学に分類される203社では、三菱ケミカルグループです。2026年3月期の売上収益は3兆7,039億円で、2位の富士フイルムホールディングスの3兆3,569億円を上回ります。前の期の3兆9,475億円も、譲渡した田辺三菱製薬などを除いて、続けている事業だけの金額に組み替えた数字です。
- 化学大手で平均年収が一番高い会社は?
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上位10社の提出会社では、三菱ケミカルグループの1,188万9,000円が最も高い数字です。ただし対象は持株会社の27人で、上位5社はすべて持株会社です。事業を営む会社で最も高いのは、住友化学の958万5,195円です。
- 資生堂やユニ・チャームは何位?
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資生堂は16位、ユニ・チャームは17位です。2025年12月期の売上高は、資生堂が9,699億円、ユニ・チャームが9,452億円でした。12位から15位には、エア・ウォーター、DIC、日東電工、東ソーが並び、いずれも1兆円を超えています。
- 東レや帝人がランキングにないのはなぜ?
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東証の33業種区分で、東レと帝人は「化学」ではなく「繊維製品」に分類されているからです。医薬品の武田薬品工業も「医薬品」に分類されます。この記事の順位は「化学」の203社だけで並べたものです。
順位の次は持株会社かどうかを確かめよう
東証で化学に分類される203社を連結売上高で並べると、三菱ケミカルグループ、富士フイルムホールディングス、旭化成の3社が3兆円を超えます。ただし上位10社には日用品や塗料の会社も入り、9位の日本酸素ホールディングスは1位の三菱ケミカルグループの子会社です。
年収を比べるときは、その数字が持株会社で働く人だけの平均か、事業会社の数千人の平均かで意味が変わります。気になる会社の有価証券報告書を開き、「従業員の状況」の対象の人数を自分の目で確かめてから比べてください。

