「東武鉄道の子会社で、規模が大きいのはどこか」。東武グループには百貨店やスーパー、バス、旅行会社まで並ぶため、比べてから応募先を決めたいと考える人もいるでしょう。ところが、東武鉄道の有価証券報告書で営業収益が分かる子会社は、東武トップツアーズと東武ストアの2社だけです。子会社の平均年収は、どの会社も報告書に載っていません。
報告書の「関係会社の状況」に社名が載る連結子会社20社を資本金で並べると、1位は東京スカイツリーのスカイツリー業を営む東武タワースカイツリーの172億2,500万円で、東武トップツアーズの30億円、東武建設の10億9,145万円が続きます。営業収益では、東武トップツアーズの1,240億円が東武ストアの750億円を上回ります。
本記事では、資本金の上位9社の顔ぶれから、子会社の年収が分かりにくい理由、子会社を比べる4つのポイント、公開資料で確かめる手順まで、東武鉄道の2026年3月期の有価証券報告書をもとに、就活キャリア研究所の視点でお伝えします。
東武鉄道の子会社を資本金で並べた上位9社
東武鉄道の連結子会社68社のうち、2026年3月期の有価証券報告書の「関係会社の状況」に社名が載る20社を資本金で並べると、上位9社は次のとおりです。事業は、同じ表の主要な事業内容です。
- 東武タワースカイツリー:172億2,500万円、スカイツリー業
- 東武トップツアーズ:30億円、旅行業
- 東武建設:10億9,145万円、建設業
- 東武運輸:2億9,450万円、貨物運送業
- 東武バス・東武興業・東武不動産・東武ストア・東武シェアードサービス:各1億円
残る48社は表の中で「その他48社」とまとめられ、資本金は載っていません。資本金の順位は、事業の大きさの順位ではありません。
(参考:第206期有価証券報告書(東武鉄道))
東武トップツアーズと東武ストアは、グループの会社どうしの取引を除いた営業収益が、東武鉄道の2026年3月期の連結営業収益6,554億円の10%を超えるため、報告書に主要な損益情報が載っています。東武トップツアーズは営業収益が1,240億3,400万円で経常利益が25億9,200万円、東武ストアは営業収益が750億2,500万円で経常利益が11億円です。営業収益が分かる子会社は、この2社だけです。
東武タワースカイツリー
東武タワースカイツリーは、東京都墨田区に本店を置き、東武鉄道が議決権の100%を持つ特定子会社です。
2026年3月期のスカイツリー業の営業収益は165億3,600万円で、前の期より0.4%減りました。東京スカイツリーでは、営業時間の拡大や1階のイベントスペースでの催し、海外での宣伝で、入場者を増やす取り組みをしました。
東武トップツアーズ
東武トップツアーズは、東武鉄道が議決権の100%を持つ旅行会社です。2026年3月期には、大阪・関西万博でパーク&ライドなどの交通運営の受託と入場券の販売を行い、クルーズ事業も展開しました。
東武トップツアーズの2025年度の旅行取扱額は1,421億円で、観光庁が集計する主要旅行業者44の会社・グループの中で6位です。前の年度の118.3%に増え、取扱額の約4分の3を国内旅行が占めます。取扱額は営業収益と同じ数字ではありません。東武グループは、他社が主催する旅行商品の販売などで代理人にあたる取引を、顧客から受け取る額から仕入先に支払う額を差し引いた純額で収益にしています。
(参考:旅行業者取扱額 令和7年度(2025年度)(観光庁))
東武建設
東武建設は、栃木県日光市に本店を置き、東武鉄道が議決権の99.3%を持つ会社です。1946年3月に東武林業として設立され、木材製造業から始めて、後に土木・建築の請負に広げました。東武鉄道とは、鉄道関係の建設工事の発注でつながっています。2026年3月期には、東京都立川市で教習所の新築工事を終えました。
東武運輸
東武運輸は、埼玉県宮代町に本店を置き、東武鉄道が議決権の95.2%を持つ会社です。1943年1月に東武通運として設立され、貨物運送事業を始めました。2026年3月期の貨物運送業の営業収益は221億6,300万円で、前の期より3.7%減りました。
東武運輸は、埼玉県三郷市のGLP三郷Ⅲ、越谷市のLOGIFRONT越谷Ⅱ、愛知県一宮市のMJロジパーク一宮1などの物流施設を、グループ外から借りて使っています。
資本金1億円の5社
資本金1億円の5社は、事業がそれぞれ違います。東武バスは2002年1月に設立されたバス・タクシー業の会社でしたが、2026年10月1日に東武バスセントラルに吸収合併されました。東武バスセントラルは同じ日に東武バスウエストも合併し、社名を東武バスに変えています。合併後の東武バスは、2002年4月4日に設立された資本金1億5,000万円の会社です。東武バスグループは2026年4月から2027年2月までに55両の新しいバス車両を買う計画です。
東武興業はスポーツ業、東武不動産は不動産賃貸業を営みます。東武シェアードサービスは、グループ全体の資金をまとめて管理し、グループ各社の資金の需要に応じて資金を供給しています。
東武ストアは、1960年12月に東武会館として設立され、後にチェーンストアの営業を始めた会社です。1988年8月に東京証券取引所市場第一部に上場しましたが、2018年10月に公開買付けなどで東武鉄道の完全子会社となり、上場を廃止しました。2026年3月期には、西川口店と朝霞店を改装して営業を再開しています。
東武鉄道の子会社の年収が分かりにくい3つの理由
東武鉄道の子会社の年収が外から分かりにくいのは、報告書に載る平均年収が東武鉄道本体の社員の数字で、グループで働く人の8割は子会社にいて、店や施設では臨時従業員が多く働いているからです。
平均年収が東武鉄道本体の数字だから
有価証券報告書の「従業員の状況」に載る平均年間給与は、報告書を出した会社自身の従業員の平均です。東武鉄道本体の平均年間給与は、2026年3月31日時点で744万6,807円で、前の期より4.9%増えました。従業員は3,214人、平均年齢は47.7歳、平均勤続年数は26.5年です。
この平均年間給与は、2025年度の基準賃金と基準外賃金の合計で、臨時給与を含みます。出向者や休職者、組合専従者など1,557人は、従業員数に入っていません。子会社ごとの平均年間給与は、東武鉄道の報告書には載っていません。
グループで働く人の8割が子会社にいるから
2026年3月31日時点の連結の従業員は18,148人で、東武鉄道本体の3,214人を除いた14,934人、約8割は子会社で働いています。セグメント別に本体の人数を除くと、運輸事業で6,167人、レジャー事業で3,567人、不動産事業で223人、流通事業で2,072人、その他事業で2,905人です。この人数は、2026年4月1日に東武ステーションサービス、東武エンジニアリング、東武インターテックの3社が東武鉄道に合併される前のものです。
レジャー事業、流通事業、その他事業には、東武鉄道本体の従業員はいません。ホテルや旅行、百貨店、スーパー、建設の仕事で働く人は、報告書の上ではすべて子会社の従業員です。
店や施設で働く臨時従業員が多いから
臨時従業員の人数は、従業員数には入れず、年間の平均人員で別に数えます。流通事業では、従業員2,072人に対して臨時従業員が7,382人いて、臨時従業員のほうが3倍以上多くなっています。その他事業は2,428人、レジャー事業は1,302人で、連結の合計は11,499人です。
店や施設の仕事では、従業員より臨時従業員の人数のほうが多い職場があります。応募するときは、求人票の雇用形態の欄で、正社員の募集か有期・パートの募集かを確かめましょう。
東武鉄道の子会社を比べる4つのポイント

東武鉄道の子会社は、年収の代わりに、東武鉄道の有価証券報告書で確かめられる次の4つのポイントで比べられます。
- 業種別の営業収益
- 議決権の所有割合
- 女性管理職の割合
- 男性の育児休業取得率
業種別の営業収益
東武鉄道の営業収益は、セグメントの中をさらに業種に分けて見ることができます。2026年3月期の業種を営業収益の大きい順に並べると、上位8つは次のとおりです。「その他業」と名付けられた業種は除き、億円未満は切り捨てています。
- 鉄道業:1,642億円
- 旅行業:1,240億円
- ストア業:750億円
- 百貨店業:634億円
- 建設業:554億円
- ホテル業:374億円
- 不動産賃貸業:366億円
- バス・タクシー業:326億円
業種の数字は会社ごとの数字ではありません。百貨店業の主な会社は東武百貨店と東武宇都宮百貨店、建設業は東武建設と東武谷内田建設、バス・タクシー業は東武バスと朝日自動車です。鉄道業、ホテル業、不動産賃貸業には、東武鉄道本体の事業も入ります。
議決権の所有割合
議決権の所有割合を見ると、東武鉄道がその会社をどこまで持っているかが分かります。「関係会社の状況」に社名が載る20社のうち、割合が100%に満たないのは、東武建設の99.3%、東武運輸の95.2%、東武谷内田建設の60.0%、上毛電気鉄道の43.3%の4社です。東武谷内田建設の60.0%には、子会社を通じた間接所有の10.0%が入っています。
群馬県前橋市の上毛電気鉄道は、議決権の割合が半分以下ですが、東武鉄道が実質的に支配しているため、東武鉄道の子会社です。営業キロ25.4kmの路線に23の駅を持ち、19両の車両で鉄道業を営んでいます。
女性管理職の割合
管理職に占める女性の割合は、東武鉄道本体が2.8%です。女性管理職の割合などを載せた表の連結子会社20社(「関係会社の状況」の20社とは顔ぶれが違います)では、東武宇都宮百貨店の28.6%が最も高く、東武百貨店の25.7%、金谷ホテルの16.0%、トップ・スタッフの15.4%、東武ホテルマネジメントの14.8%、東武トップツアーズの13.1%が続きます。
朝日自動車、東武バス、東武バスウエスト、東武バスセントラル、東武ビルマネジメントの5社は0.0%で、このうち4社はバスの会社です。東武バス、東武バスウエスト、東武バスセントラルの3社は、2026年10月1日の合併で今の東武バスの1社になっています。
男性の育児休業取得率
男性労働者の育児休業取得率は、東武鉄道本体が98.0%です。数字が載る子会社では、東武ステーションサービス、東武バス、東武バスウエスト、東武不動産、東武百貨店、東武商事の6社が100.0%で、東武ストアの33.3%と東武トップツアーズの51.9%が低い側にあります。駅の業務などを担っていた東武ステーションサービスは、2026年4月1日に東武鉄道と合併しています。
朝日自動車や金谷ホテルなど7社は「−」で、対象となる従業員が在籍していないことを示します。「−」の会社は、取得率が低いのではなく、数字がない会社です。
公開資料で東武鉄道の子会社を確かめる手順

東武鉄道の子会社を自分で調べるときは、東武鉄道の有価証券報告書、東武鉄道のグループ会社一覧と各社の公式サイト、東武鉄道のIR情報の順に開きます。
金融庁のEDINETで「東武鉄道」の有価証券報告書を開きます。「関係会社の状況」で資本金と議決権の所有割合を、「事業の内容」で業種ごとの会社名を、「従業員の状況等」で本体の平均年間給与と連結子会社の女性管理職の割合などを確かめます。
東武鉄道のIR情報で、報告書の提出後に、子会社の合併や株式の取得などのお知らせが出ていないかを確かめます。
グループ会社一覧の63社と子会社の数
東武鉄道のグループ会社一覧に載る会社は、2026年10月1日時点で63社です。分類ごとには、住宅産業が17社、流通産業が9社、レジャー産業が16社、旅客の交通産業が14社、貨物の交通産業が7社です。一方、2026年3月期の東武鉄道のグループは子会社73社と関連会社11社で、このうち連結子会社は68社です。
一覧の分類と、報告書のセグメントは一致しません。東武建設は一覧では住宅産業に入り、報告書ではその他事業の建設業に入ります。レジャー産業の一覧に載る蔵王ロープウェイは、東武鉄道が議決権の49.5%を持つ持分法適用関連会社で、子会社ではありません。志望する会社が子会社かどうかは、STEP1の「関係会社の状況」で確かめましょう。
東武鉄道の子会社に関するよくある質問
東武鉄道の子会社について、会社の数や上場の有無など、4つの疑問に答えます。
- 東武鉄道の子会社は何社ありますか
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2026年3月期の東武鉄道のグループは、子会社が73社、関連会社が11社です。子会社のうち連結子会社は68社で、2026年3月期には東武ビルマネジメントが株式を取得した玉紘工業が新たに加わりました。持分法を適用する関連会社は、蔵王ロープウェイ、野岩鉄道、日光自然博物館の3社です。連結に入らない子会社は小規模な会社で、主なものは東武キャリアサービスです。その後、2026年4月1日に東武ステーションサービスなど3社が東武鉄道と、10月1日に東武バスと東武バスウエストが東武バスセントラルと合併しています。
- 上場している子会社はありますか
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「関係会社の状況」に社名が載る20社は、2026年9月末時点の東証の上場銘柄一覧に1社も載っていません。以前は東武ストアが上場していましたが、2018年10月に上場を廃止しています。
- 東武百貨店は東武鉄道の子会社ですか
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子会社です。東武鉄道が議決権の100.0%を持ち、東武百貨店は1960年9月に設立されました。1962年5月に池袋西口で池袋店を開いています。宇都宮市の東武宇都宮百貨店は、東武鉄道が議決権の100.0%を持つ別の子会社です。
- 東武グループに労働組合はありますか
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あります。東武鉄道と連結子会社には合わせて36の労働組合があり、組合員数の合計は10,244人です。東武鉄道本体の東武鉄道労働組合の組合員は、2026年3月31日時点で2,945人です。東武鉄道労働組合の上部団体として東武交通労働組合があり、日本私鉄労働組合総連合会に加盟しています。
東武鉄道の子会社は業種と働く人の数で見比べよう
東武鉄道の子会社を資本金で並べると、東武タワースカイツリーの172億2,500万円、東武トップツアーズの30億円、東武建設の10億9,145万円が上位に並びます。営業収益が分かるのは東武トップツアーズと東武ストアの2社で、子会社の平均年収は報告書に載っていません。2026年3月31日時点では、グループで働く人の約8割が子会社にいて、流通事業では臨時従業員が従業員の3倍以上います。
年収の代わりに比べられるのが、業種別の営業収益、議決権の所有割合、子会社ごとの女性管理職の割合と男性の育児休業取得率です。志望する子会社が決まったら、東武鉄道の報告書とその会社の公式サイトを開き、同じ時点・同じ数え方の数字どうしを並べてみてください。

