非上場企業とは|有名企業が選ぶ理由と働くメリット・見分け方

就職活動で企業を調べていると、「上場」「非上場」という言葉によく出会います。求人サイトの検索条件にも上場の有無で絞り込める機能があり、非上場企業と聞くと何となく規模の小さい会社をイメージしてしまう人も少なくありません。ただ実際には、サントリーホールディングスや竹中工務店のように、日本を代表する大企業の中にもあえて上場していない会社が数多く存在します。この記事では、非上場企業の定義や上場企業との違いから、有名企業が非上場を選ぶ理由、働くうえでのメリットと注意点、そして志望企業が上場しているかどうかを自分で調べる方法まで、企業研究に役立つ形で整理していきます。

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目次

非上場企業とは何か

上場企業と非上場企業の違いを資金調達力・株主構成・情報開示・意思決定・社会的信用・買収リスクの6項目で比較したインフォグラフィック

非上場企業とは、証券取引所に株式を上場していない会社のことです。株式会社という組織形態そのものは上場企業と変わりませんが、株式を証券市場で自由に売買できる状態にしているかどうかという点で区別されます。まずは「上場」という言葉の意味から確認しておきましょう。

「上場」の意味を確認する

上場とは、証券取引所が定める審査基準を満たした企業の株式を、投資家が自由に売買できる状態にすることを指します。東京証券取引所の場合、プライム・スタンダード・グロースという3つの市場区分があり、それぞれ求められる時価総額や利益水準、ガバナンス体制の基準が異なります。この審査をクリアして初めて、企業は証券取引所で株式を公開できるのです。

非上場企業は「小さい会社」という誤解

非上場と聞くと、規模の小さい会社や創業間もないベンチャー企業をイメージする人がいますが、これは正確ではありません。日本取引所グループの公表によると、東京証券取引所全体の上場会社数は3,985社(2026年7月時点)にとどまります。一方で中小企業庁の統計では、日本国内の企業数は約360万社にのぼるとされており、単純に比較すれば99%以上の企業が非上場ということになります。売上高が数千億円から数兆円規模に達する大企業であっても、非上場を選んでいるケースは珍しくありません。

なぜ有名企業でもあえて非上場を選ぶのか

サントリーホールディングス、YKK、竹中工務店、JTB、講談社、DMM.comなど、名前を聞けば誰もが知っている企業の中にも、非上場を貫いている会社が数多くあります。日経ビジネスなどでも繰り返し取り上げられてきたテーマですが、その理由は一様ではなく、企業ごとの事業特性や創業の思想が色濃く反映されています。代表的な例を見ていきましょう。

  1. サントリーホールディングス
  2. YKK
  3. 竹中工務店
  4. JTB
  5. 講談社
  6. DMM.com

サントリーホールディングス 時間をかけた商品づくりを守るため

ウイスキーづくりには、原酒の熟成だけで十年から数十年という長い時間がかかります。もし株式を上場していれば、株主から短期的な利益を求める圧力を受け、腰を据えた商品開発が難しくなる可能性があるでしょう。非上場を維持することで、創業家の理念に基づいた長期的な投資判断を続けられる、というのがサントリーの立場です。

YKK 「社員が株主」という創業の思想

ファスナーや建材で知られるYKKは、創業者の吉田忠雄氏が株式を「事業への参加証」と位置づけたことで知られています。現在も筆頭株主は従業員持株会であり、給与の多寡にかかわらず社員が平等に株式を保有し配当を受け取る仕組みが続いているのです。社内預金や持株制度を通じて資金を社内で循環させ、実質無借金に近い経営を維持していることも、上場による資金調達を必要としない理由のひとつと言えます。

竹中工務店 100年先を見据えた経営判断

創業から400年以上の歴史を持つ竹中工務店は、建築を一過性の事業ではなく、50年先、100年先まで残る社会的な資産づくりと捉えています。短期の業績変動に経営判断が左右されないよう、非上場という形態を選んでいるのです。職人文化や技術の継承を重視する姿勢とも重なる考え方でしょう。

新聞社は法律によって上場できない

朝日新聞社、読売新聞グループ本社、毎日新聞社といった全国紙は、いずれも非上場です。背景には企業ごとの経営判断だけでなく、日刊新聞紙の発行を目的とする株式会社の株式の譲渡の制限等に関する法律(通称・日刊新聞紙法)という法律の存在があります。この法律により、新聞社は株式の譲渡先を事業に関係する者に限定でき、外部資本の影響を受けにくい体制を保っているのです。報道機関としての独立性を守るための、業界特有の仕組みといえるでしょう。

非上場企業で働くメリット

明るいオフィスで複数の若手ビジネスパーソンがノートパソコンや資料を囲んで企業研究をしている様子のイラスト

非上場企業への就職や転職を検討するとき、気になるのはやはり働く側から見たメリットとデメリットです。まずは非上場企業ならではの利点から確認していきます。

意思決定のスピードが速い

上場企業では、重要な経営判断を行う際に株主総会や取締役会での説明責任、投資家向けの情報開示など、多くの手続きを踏む必要があります。非上場企業はこうした制約が比較的少なく、経営者や現場の判断で新しい取り組みをすぐに実行に移せる場面が多くあるのです。

裁量権の大きさや意思決定の速さは、非上場企業で働く大きな魅力のひとつです。

短期の業績変動に振り回されにくい

上場企業は四半期ごとの決算で株主から成果を求められるため、短期的な数字を優先した経営判断に傾きやすい面があります。非上場企業は株主構成がオーナー一族や関係者に限定されていることが多く、中長期的な視点で事業に投資しやすい環境が整っているといえます。新規事業への挑戦や、時間のかかる人材育成に力を入れやすいのも、この構造ゆえの特徴でしょう。

オーナー経営ならではの一体感

創業家やオーナー経営者の考え方が組織の隅々まで浸透しやすいことも、非上場企業の特徴です。経営理念が明確で、社員全員が同じ方向を向いて働きやすいという声もよく聞かれます。もちろん経営者の資質によって組織文化は大きく変わるため、企業研究の段階で代表者のメッセージや社風をよく確認しておく必要があるでしょう。

非上場企業で働く際に知っておきたい注意点

メリットがある一方で、非上場企業ならではの注意点も存在します。志望企業を選ぶ際には、良い面だけでなくこうした側面も踏まえて判断することが大切です。

情報開示の量が上場企業より少ない

上場企業は金融商品取引法にもとづき、有価証券報告書や決算短信などで財務状況を定期的に開示する義務があります。非上場企業にはこうした開示義務が原則としてなく、業績や経営状況を外部から把握しづらい場合があるのです。採用ページや説明会で得られる情報が中心になるため、企業研究には上場企業以上に丁寧な情報収集が求められます。

待遇や社風の幅が大きい

上場企業はガバナンス体制や労務管理の整備が進んでいる会社が多い一方、非上場企業は経営者の方針によって待遇や制度に幅が出やすい傾向があります。福利厚生や評価制度が手厚い会社もあれば、整備がこれからという会社もあり、一括りに「非上場だから」で判断するのは早計です。個別の企業ごとに実態を確認する姿勢が欠かせません。

知名度や採用ブランドで見劣りする場面がある

非上場企業の中には、事業規模が大きくても一般消費者向けの知名度が低い会社が少なくありません。周囲から見た会社の印象や、転職時の履歴書での見え方を気にする人にとっては、知名度の低さがデメリットに感じられる場面もあるでしょう。

知名度だけで企業の実力を判断すると、優良企業を見逃してしまう恐れがあります。実際、取引先や業界内の専門家の間では高く評価されている非上場企業も数多く存在します。

「非上場企業はやめとけ」と言われる背景を考える

非上場企業について調べていると、「やめとけ」という否定的な意見を目にすることがあります。就活生向けの相談サイトなどでもたびたび取り上げられる話題ですが、その背景を整理しておくと企業選びの判断材料になります。

指摘されがちな不安の中身

「やめとけ」と言われる理由として多いのは、情報開示の少なさから会社の実態が見えにくいこと、待遇や経営の安定性が企業ごとにばらつくこと、そして知名度の低さから転職市場での評価に不安を感じることの3点です。事業基盤が弱く将来性に不安が残る非上場企業が存在するのも事実であり、こうした指摘には一定の根拠があります。

上場・非上場より見るべきポイント

ただし、サントリーやYKK、竹中工務店のように、盤石な経営基盤を持ちながらあえて非上場を選んでいる大企業が数多くあることも、ここまで見てきたとおりです。上場か非上場かという区分だけで企業の良し悪しを判断するのではなく、事業の安定性、財務状況、経営者の考え方、実際に働く社員の声といった要素を個別に確認することが、後悔のない企業選びにつながります。

志望企業が上場か非上場かを調べる方法

志望企業が上場しているかどうかは、就活生でも自分で確認できます。ここでは代表的な3つの調べ方を紹介します。

STEP1

東京証券取引所の上場会社検索を使う
日本取引所グループの公式サイトには、会社名や証券コードから上場会社を検索できるページが用意されています。志望企業名を入力して該当がなければ、その会社は東京証券取引所には上場していないと判断できます。

STEP2

EDINETで開示書類の有無を確認する
金融庁が運営するEDINETという電子開示システムでは、有価証券報告書などの開示書類を検索できます。ただし、非上場企業でも一定の条件を満たす会社にはEDINETコードが付与され、有価証券報告書の提出義務が生じる場合があります。書類が見つかったからといって、その会社が必ず上場しているとは限らない点は押さえておきましょう。

STEP3

採用ページや会社説明会でIR情報を確認する
多くの企業は、コーポレートサイトに「株主・投資家の皆さまへ」といったIR情報のページを設けています。上場企業であれば決算情報や株価情報が掲載されているのが一般的です。こうした情報の有無や、会社説明会での質疑応答を通じて確認するのも実践的な方法といえます。

よくある質問

非上場企業について、就活生や転職者からよく寄せられる質問をまとめました。

非上場企業と未上場企業は同じ意味ですか

一般的にはほぼ同じ意味で使われる言葉です。厳密には「未上場」がまだ上場していない状態全般を指すのに対し、「非上場」はあえて上場しない方針を含めて使われる場面もありますが、明確に使い分けられているわけではなく、文脈に応じて同義語として理解して差し支えありません。

非上場企業が将来的に上場することはありますか

あります。非上場のまま経営してきた企業が、事業拡大や資金調達のニーズを背景に上場を選択するケースは珍しくありません。反対に、上場していた企業がMBOなどの手法を用いて非上場化する例も見られます。上場・非上場は固定された属性ではなく、経営戦略によって変化し得るものと捉えておくとよいでしょう。

非上場企業はすべて中小企業ですか

いいえ、そうとは限りません。ここまで紹介してきたサントリーホールディングスや竹中工務店、JTBのように、売上高が数千億円から数兆円規模に達する非上場の大企業も数多く存在します。企業規模と上場の有無は、別の軸で捉える必要があります。

非上場企業だからといって規模が小さい、待遇が劣るといった見方で決めつけるのではなく、なぜその会社が非上場という形態を選んでいるのか、その背景まで踏み込んで調べることが、納得のいく企業選びにつながります。上場・非上場という切り口を、企業研究の入り口のひとつとして活用してみてください。

この記事の監修者

株式会社ネット風評被害対策 代表取締役 内村淳

大学卒業後、サッカー選手を経て、大手風評対策会社に入社。
3年半にわたりナショナルクライアントを含む数々の炎上事案・ブランドイメージ毀損対策に従事。
その後、ネット誹謗中傷対策に特化した法律事務所に1年間従事し、法的観点からの対応知見を習得。
IT技術と法的アプローチの双方に携わってきた経験を持つ。
現在は15年以上の経験とノウハウをもとにネット風評被害対策専門会社を設立。あらゆるネット風評被害対策支援に加え、企業向けコンサルティングや同業他社へのサービス提供も行う。
日々進化するAI検索エンジンのアルゴリズムを徹底解析し、AI検索時代に適応した次世代の風評対策に注力している。

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