企業を比較して見極める視点|フレームワークで見える適性差

就活の企業研究を進めていると「企業分析」という言葉に必ず行き当たります。しかし、1社の企業研究をどれだけ深掘りしても、それだけでは選考でうまく使える武器にならないケースが少なくありません。情報を集めるだけで終わる企業研究と、集めた情報を比べて判断材料に変える企業分析は、似ているようで求められる作業がまったく違います。

就活キャリア研究所では、企業分析を「情報を並べて眺める作業」ではなく「複数の企業を横並びで比べ、自分に合う一社を選ぶための道具」として扱う視点をお伝えします。比較の軸の作り方から実務でも使われるフレームワーク、比較表への落とし込み方まで、実際に手を動かせる形でまとめました。

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目次

企業分析とは|企業研究との違いは「集める」か「比べる」か

企業分析という言葉は、企業研究とほぼ同じ意味で使われる場面も多いのですが、突き詰めて考えると担っている役割が異なります。まずはこの違いから整理しておきましょう。

企業研究は「1社を深く知る」作業

企業研究は、気になる1社について会社概要や事業内容、社風などを調べ、その企業の輪郭をつかんでいく作業です。採用サイトを読み込み、説明会に参加し、OB・OG訪問で生の声を聞くといった、情報を集める行為そのものが中心になります。

この段階では、知っている情報の量が評価軸になりがちです。詳しく調べれば調べるほどその企業への理解は深まりますが、それだけでは志望する複数の企業のうちどれを選ぶべきかという判断には、まだたどり着けません。

企業分析は「複数社を比べて選ぶ」作業

企業分析は、企業研究で集めた情報を複数の企業のあいだで横並びに比較し、優劣や自分との相性を判断するための作業です。1社だけを見ていても比較は成立しないため、志望する業界の中で少なくとも数社をまとめて扱う前提で進める必要があります。

たとえば同じ業界のA社とB社を見比べたとき、A社は売上高こそ大きいものの海外事業の比率が低く、B社は規模で劣るものの新規事業への投資額が大きい、といった違いが見えてくることがあります。この違いに気づいて初めて、自分はどちらの成長の仕方に魅力を感じるかという、自分の価値観に基づいた判断ができるようになるでしょう。

なぜこの違いを意識する必要があるのか

面接で「なぜ同業他社ではなく当社なのか」と聞かれたとき、企業研究で集めた情報をそのまま並べるだけでは、他社にも当てはまる説明になりがちです。比較の作業を挟まずに書いた志望動機は、社名を入れ替えても成立してしまう文章になりやすいという弱点を抱えています。

企業分析という一手間を挟むことで、他社にはない特徴や、自分の価値観と重なる部分がどこにあるのかを、具体的な根拠とともに語れるようになります。この後の章では、比較を成立させるための準備から、実際に使えるフレームワークまで順番に見ていきましょう。

企業分析の前に「比較軸」を言語化しておく

フレームワークを使う前に、済ませておきたい作業があります。それが、自分が何を基準に企業を比較するのかという「比較軸」を先に言葉にしておくことです。

比較軸を先に決めないとフレームワークが機能しない

3C分析やSWOT分析といった手法は、あくまで情報を整理するための型にすぎません。型を埋めること自体が目的化してしまうと、埋め終えた後に「結局どの企業が自分に合っているのか分からない」という状態に陥りやすくなります。

比較軸とは、たとえば「若手のうちから裁量権を持てるか」「勤務地を自分で選べるか」「専門性を積み上げられる働き方か」といった、自分の価値観や希望を反映した判断基準のことです。この軸が先にあることで、フレームワークで集めた情報のどこに注目すればよいかが明確になります。

比較軸は自己分析から逆算して作る

比較軸を作る材料になるのは、自己分析で見えてきた自分の価値観や、これまでの経験から得た働き方の希望です。たとえば学生時代のアルバイトやゼミ活動で「裁量を持って進めたときに成果を出せた」という経験があれば、それは「裁量権の大きさ」という軸として言語化できます。

比較軸は3つから5つ程度に絞り込んでおくことをおすすめします。軸が多すぎると、すべての企業がどこかしらの軸で優れて見えてしまい、結局は比較にならなくなってしまうためです。

企業分析に使える4つのフレームワーク

3C分析・SWOT・ファイブフォース・財務分析という企業分析の4つのフレームワークを図解したインフォグラフィック

比較軸が決まったら、実際に情報を整理していきます。ここではビジネスの現場でも使われている4つのフレームワークを、就活生が使いやすい形に落とし込んで紹介します。

3C分析で「市場・競合・自社」を整理する

3C分析は、Customer(市場・顧客)、Competitor(競合)、Company(自社)という3つの視点から企業を捉える手法です。就活生の立場では、志望する企業がどんな顧客を相手に、どんな競合と向き合っているのかを整理する枠組みとして使えます。

具体的には、企業の採用サイトや決算説明資料に出てくる主要な顧客層や市場規模の記述から市場を、後述する競合比較から競合を、事業内容や強みの説明から自社を、それぞれ書き出していきます。3つを並べて見ると、その企業が市場のどこを狙い、競合とどう差別化しているのかという構図が浮かび上がってくるはずです。

SWOTで自分との適合度を可視化する

SWOT分析は、企業のStrength(強み)、Weakness(弱み)、Opportunity(機会)、Threat(脅威)を整理する手法です。就活生が使う場合は、この4象限を埋めたうえで、自分の比較軸とどこが重なるかを見る使い方が実践的です。

たとえば強みの欄に技術力の高さが挙がった企業であれば、その強みを支えているのはどんな人材なのか、若手にも技術を磨く機会があるのかまで踏み込んで確認してみましょう。強みや弱みを企業側の言葉のまま受け取るのではなく、自分の比較軸に照らして意味づけ直す作業が、SWOT分析を志望動機につなげる鍵になります。

ファイブフォースで業界の力学を掴む

ファイブフォース分析は、業界の競争構造を、既存の競合同士の競争、新規参入の脅威、代替品の脅威、売り手の交渉力、買い手の交渉力という5つの力で捉える手法です。企業単体ではなく業界全体の構造を見る枠組みのため難易度は少し上がりますが、その分だけ他の就活生と差がつく視点になるでしょう。

たとえば新規参入の障壁が低い業界であれば、次々と新しい競合が現れる前提で事業戦略を立てている企業が多く、逆に参入障壁が高い業界であれば、既存企業同士の差別化がより重要になります。志望企業がどの力に最も神経を使っているかを見極めておくと、面接で聞かれる事業戦略の質問にも筋の通った受け答えができるようになります。

財務分析の基本指標を読む

財務分析と聞くと難しく感じるかもしれませんが、就活生が押さえておきたい指標はそれほど多くありません。売上高の推移、営業利益率、そして事業ごとの売上構成が分かるセグメント情報の3点を見るだけでも、企業の状態はかなり具体的につかめます。

上場企業であれば、有価証券報告書や決算説明資料に必要な数字がまとまっています。有価証券報告書は金融庁が運営するEDINETで誰でも無料で閲覧できるため、志望企業が上場している場合はぜひ一度目を通しておきましょう。

なお2023年3月期以降の有価証券報告書からは、女性管理職比率や男性の育児休業取得率、男女間の賃金差異といった人的資本に関する指標の開示も広がっています(株式会社ワークス・ジャパン「有価証券報告書から読み解く男性育休の取得状況」)。働き方や制度の実態を数字で確認したいときは、この項目も比較材料に加えてみるとよいでしょう。

集めた情報を「比較表」に変える実践ステップ

就活生が自室の机で複数企業の資料を並べて見比べながらノートに比較表を書き込んでいる様子

フレームワークで整理した情報は、最終的に1枚の比較表にまとめておくと、複数社を横並びで見比べる作業が格段にやりやすくなります。ここでは比較表を作るまでの流れをステップで確認しましょう。

STEP1

比較する企業を3〜5社に絞る
業界研究で興味を持った企業の中から、比較の対象を3社から5社程度に絞ります。多すぎると1社ずつの検討が浅くなり、少なすぎると比較の効果が薄れます。

STEP2

比較軸を表の縦軸に置く
前の章で決めた3〜5個の比較軸を、表の縦軸として書き出します。

STEP3

フレームワークで集めた情報を軸ごとに埋める
3C分析・SWOT・ファイブフォース・財務分析で調べた内容を、対応する軸のマスに書き込んでいきます。

STEP4

数値化できない項目にはスコアをつける
社風など数値で表せない項目は、自分にとっての相性の高さを3段階程度で評価し、判断の根拠も一言添えておきます。

STEP5

比較表を俯瞰して仮の優先順位をつける
表全体を眺め、現時点での志望順位を仮に決めます。この順位は選考が進むにつれて変わっても構いません。

比較表は一度作って終わりではありません。説明会やOB・OG訪問で新しい情報を得るたびに書き足していくことで、選考が進むほど精度の高い判断材料に育っていきます。

比較表の作り方

表計算ソフトやノートアプリなど、使い慣れたツールで構いません。縦軸に比較軸、横軸に企業名を並べる形式にしておくと、後から見返したときにも視認性が高くなります。

数値化できない項目のスコアリング法

社風や求める人物像といった定性的な項目は、無理に点数化しようとすると実態から離れた評価になりがちです。「非常に近い」「近い」「やや遠い」といった3段階程度の言葉でスコアをつけ、判断の根拠になったエピソードを一言添えておく方法であれば、後から見返したときにも当時の実感を思い出しやすいでしょう。

企業分析で見落としやすい3つの落とし穴

フレームワークや比較表という道具を手に入れると、それだけで満足してしまう学生が少なくありません。ここでは特に見落としやすい3つの落とし穴を挙げます。

フレームワークを埋めるだけで終わる

3C分析やSWOT分析の枠を埋めること自体が目的になってしまうと、情報は整理されていても、そこから何を判断すればよいのかという結論が抜け落ちてしまいます。枠を埋めた後には必ず、この情報から自分にとって何が言えるのかを一文でまとめる習慣をつけましょう。

一社ずつ個別に見て、横比較をしない

企業ごとにフレームワークのシートを作って満足し、複数社を並べて見比べる作業を省いてしまうケースもよく見られます。企業分析の価値は個々のシートそのものではなく、並べたときに初めて見えてくる違いにあるという点を忘れないようにしましょう。

好意的な情報だけを拾ってしまう

志望度が高い企業ほど、強みや魅力ばかりに目が向き、弱みや懸念点を意図的に避けてしまう傾向があります。面接では企業の弱みや業界の逆風について問われる場面もあるため、あえて厳しい情報にも目を通しておくと、想定外の質問にも落ち着いて対応できるようになります。

企業分析の結果を面接の深掘り質問にどう活かすか

比較表が完成したら、その内容を面接での受け答えにつなげていきます。企業研究で集めた情報をそのまま話すのと、企業分析の結果を踏まえて話すのとでは、深掘り質問への強さが大きく変わってきます。

「なぜ他社ではないのか」への答え方

この質問には、比較表で扱った他社の名前を出しながら、自分の比較軸に照らしてどちらが近いかを説明する形が有効です。たとえば「他社も同じ業界で魅力的でしたが、若手のうちから裁量を持てる度合いという軸で見たとき、貴社のほうが近いと感じました」というように、比較した事実を根拠にすると説得力のある回答になります。

弱みや懸念点を聞かれたときの答え方

SWOT分析で洗い出した企業の弱みについて聞かれた場合は、弱みの存在を否定せず、その弱みが自分にとってどの程度許容できるものかを正直に語る姿勢が評価されやすくなります。弱みを認めたうえで、それでも志望する理由を語れる学生は、企業研究の段階で止まっている学生よりも一段深い受け答えができるはずです。

企業分析に関するよくある質問

企業分析はいつ、何社くらいを目安に行えばよいですか

明確な決まりはありませんが、エントリーする企業を絞り込み始める時期に、志望度の高い3社から5社程度をまとめて比較する形が取り組みやすいでしょう。選考が進むにつれて対象企業や比較軸が変わることも多いため、一度で完成させようとせず、必要に応じて更新していく前提で進めてみてください。

フレームワークはすべて使う必要がありますか

すべてを使う必要はありません。時間が限られている場合は、まず自社と競合を整理できる3C分析と、自分との相性を確認できるSWOT分析の2つから始めるとよいでしょう。業界の構造まで踏み込みたい場合や財務面をしっかり比較したい場合に、ファイブフォースや財務分析を追加していく進め方でも十分に効果があります。

情報が少ない非上場企業はどう分析すればよいですか

非上場企業には有価証券報告書のような開示資料がないため、採用サイトや説明会、OB・OG訪問で得られる情報の比重が高くなります。数字による裏付けが取りにくい分、社員の話す内容に一貫性があるか、複数の情報源で語られる内容に食い違いがないかを確認する作業が、より重要な比較材料になります。

まとめ|企業分析は「比べて選ぶ」ための道具

企業分析は、企業研究で集めた情報を横並びに比べ、自分に合う一社を選ぶための道具です。まずは自己分析から比較軸を言語化し、3C分析やSWOT分析、ファイブフォース、財務分析といったフレームワークで情報を整理してみましょう。

整理した情報は比較表にまとめ、数値化できない項目もスコアと根拠をセットで書き残しておくことで、選考が進むほど判断材料としての精度が上がっていきます。企業分析という一手間を惜しまないことが、他の就活生とは違う、自分自身の言葉で語れる志望動機につながっていくはずです。

この記事の監修者

株式会社ネット風評被害対策 代表取締役 内村淳

大学卒業後、サッカー選手を経て、大手風評対策会社に入社。
3年半にわたりナショナルクライアントを含む数々の炎上事案・ブランドイメージ毀損対策に従事。
その後、ネット誹謗中傷対策に特化した法律事務所に1年間従事し、法的観点からの対応知見を習得。
IT技術と法的アプローチの双方に携わってきた経験を持つ。
現在は15年以上の経験とノウハウをもとにネット風評被害対策専門会社を設立。あらゆるネット風評被害対策支援に加え、企業向けコンサルティングや同業他社へのサービス提供も行う。
日々進化するAI検索エンジンのアルゴリズムを徹底解析し、AI検索時代に適応した次世代の風評対策に注力している。

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