就職活動や企業研究を進めていると、「上場企業」という言葉に何度も出会います。ただ、日本にある会社全体のうち、上場企業がどれくらいの割合を占めているのかを実際の数字で把握している人は多くありません。
この記事では、日本取引所グループ(JPX)と国税庁の統計データを突き合わせ、上場企業の割合を実数から確認します。あわせて市場区分ごとの内訳、上場企業で働く人の割合、平均年収や女性役員比率といった開示データまで、企業研究にそのまま使える形で整理しました。
上場企業の割合は全体のわずか0.1%という現実
結論から述べると、日本にある法人のうち上場企業が占める割合は0.1%程度です。1000社のうち1社あるかないかという水準になります。数字だけを見ると意外に少なく感じるかもしれませんが、この割合には裏付けとなる根拠があります。
東証の上場企業数は合計3730社前後
日本取引所グループが公表している上場会社数・上場株式数のデータによると、2026年7月時点で東証プライム市場が1574社、東証スタンダード市場が1560社、東証グロース市場が596社です。この3市場を合計すると3730社ほどになります。ここに、プロ投資家向けの特殊な市場であるTOKYO PRO Marketの169社を加えると、上場企業全体は約3900社という数え方になります。
就活情報で「日本の上場企業は約3900社」と書かれていたり、別の記事で「約3700社」となっていたりするのは、このTOKYO PRO Marketを含めるかどうかの違いによるものです。求人サイトや企業紹介で単に「上場企業」と書かれている場合、ほとんどはプライム・スタンダード・グロースの3市場を指しています。
国税庁の法人統計と比較して見えてくる割合
一方、国税庁の令和5年度分会社標本調査によれば、日本国内の法人数は295万6717社です。この調査は11年連続で法人数が増加し、過去最多を更新した結果でもあります。
3730社という上場企業数を295万6717社で割ると、割合はおよそ0.13%になります。四捨五入すれば0.1%です。就職先の候補として上場企業を検討する場合、対象となる会社はそもそも日本全体のごく一部に限られているという前提を押さえておくと、企業研究の視野を広げやすくなります。
ちなみに同じ会社標本調査では、赤字申告をした法人が180万3203社にのぼり、全体の約61%を占めることも示されています。上場企業の大半は継続的に黒字を確保できる経営基盤を持っていますが、裏を返せば日本の会社の6割は黒字ですらないという現実もあります。上場企業の割合の低さは、母数となる会社全体の裾野がそれだけ広いことの表れでもあります。
上場企業数の数字が資料によって食い違う理由
上場企業の割合を調べていると、資料によって「約3700社」「約3800社」「約3900社」など、微妙に異なる数字に出会うことがあります。理由を知っておくと、企業研究で目にする数字を鵜呑みにせずに済みます。
TOKYO PRO Marketを含むかどうかで数百社変わる
先述のとおり、東証にはプライム・スタンダード・グロースの3市場のほかに、プロ投資家向けの「TOKYO PRO Market」という区分があります。統計によってはこの169社を含めて集計するため、合計値が数百社単位でずれます。就活生が実際に応募先として目にする上場企業は、ほぼすべて3市場のいずれかに属していると考えて差し支えありません。
集計時点のズレも見落とせない
上場企業数は、新規上場と上場廃止によって毎月のように変動します。半年前に書かれた記事と最新のデータを比べれば、それだけで数十社の差が生じます。企業研究で正確な数字を使いたいときは、記事の公開日ではなく、JPXが公表している統計そのものの「時点」を確認する習慣をつけておくと安心です。
東証一部とは何だったのか?プライム市場との関係
企業研究をしていると、少し前の記事や口コミで「東証一部上場企業」という表現に出会うことがあります。現在この呼び方は使われていませんが、意味を知っておくと過去の情報も正しく読み解けます。
2022年の市場再編で東証一部は廃止された
freeeの解説記事によると、東証は2022年4月4日に市場区分を再編し、それまでの市場第一部・市場第二部・マザーズ・JASDAQという4つの区分を、プライム・スタンダード・グロースの3区分に統合しました。旧市場第一部(いわゆる東証一部)は2022年4月3日時点で2176社あり、そのうち1839社、割合にして約84.5%がプライム市場へ移行しています。
つまり「東証一部上場企業」という言葉で語られていた会社の多くは、今は「東証プライム上場企業」と呼び名を変えて存在しています。ただし、当時の東証一部企業がすべてプライム市場に移行したわけではなく、一部はスタンダード市場を選んだ企業もある点は押さえておきたいところです。
経過措置は2025年3月に終了している
プライム市場の上場維持基準を満たさない企業に対しては、緩和された基準で上場を続けられる経過措置が設けられていましたが、この経過措置は2025年3月1日以後に到来する基準日をもって終了しています。基準未達の企業には原則1年間の改善期間が設けられ、それでも基準を満たせない場合は監理銘柄・整理銘柄を経て上場廃止に至る仕組みです。企業研究で「プライム市場に上場している」という事実を見るときは、単に市場区分の名前だけでなく、その企業が本来の上場維持基準を満たしているかどうかまで確認すると、より確度の高い判断材料になります。
市場区分から見る上場企業の内訳とプライム市場の存在感

上場企業といっても、その中身は一様ではありません。東証は企業の規模や成長段階に応じて3つの市場に分けており、どの市場に上場しているかによって、企業に求められる基準や色合いが変わってきます。
プライム・スタンダード・グロースそれぞれの企業数
内訳を見ると、大企業を中心とするプライム市場が1574社、中堅企業が中心のスタンダード市場が1560社、成長途上のベンチャー企業が多いグロース市場が596社です。件数だけで比べると、プライムとスタンダードはほぼ同水準にあり、グロースはその半分にも満たない規模にとどまっています。
プライム市場が全上場企業に占める割合
プライム市場の1574社は、上場企業全体(3730社)の4割強を占めます。就活で「大企業」「上場企業」という言葉から連想されるような知名度の高い企業の多くはこのプライム市場に集中していますが、残り6割弱はスタンダードとグロースに分散している点も見落とせません。プライムという名称の響きだけで企業の実力を判断すると、優良なスタンダード企業を見逃すことにもなりかねません。スタンダード市場には、事業基盤が安定しているにもかかわらず、あえてプライムの上場維持基準を選ばずスタンダードにとどまっている企業も少なくないためです。
上場企業は港区・千代田区に集中している
上場企業の割合を考えるうえで見落とされがちなのが、地理的な偏りです。会社数としての上場企業は全体のごく一部にすぎませんが、その分布はさらに一部の地域に集中しています。
全上場企業の23%が港区・千代田区に本社を置く
日経リサーチのレポートによると、上場企業の本社所在地としてもっとも多いのは港区と千代田区で、この2区だけで全上場企業の23%を占めています。あわせて、上場企業全体では非製造業が6割以上を占めるとされており、製造拠点よりも本社機能や管理部門を都心に集約する企業が多い実態がうかがえます。
地方から上場企業を志望する場合に確認したいこと
上場企業を軸に就職活動を進める場合、本社機能や中枢部門の求人は都心、特に港区・千代田区周辺に集中しやすい傾向があります。地方在住のまま上場企業に入社できても、配属先は本社ではなく地方拠点や工場になるケースは珍しくありません。募集要項の勤務地欄を確認するだけでなく、可能であれば説明会や面接の場で配属の実態まで質問しておくと、入社後の勤務地イメージのズレを防げます。
上場企業で働く人はどれくらいいるのか
会社の数としての上場企業の割合を見てきましたが、そこで働く「人」の割合はどうでしょうか。
上場企業の就業者は雇用者全体の約6.3%
上場企業サーチJ-LiCの調査によると、上場企業で働いている人はおよそ364万人とされ、日本全体の雇用者数に占める割合は約6.3%です。会社の数では0.1%程度だった上場企業が、働く人の数で見ると6%を超える水準まで上がるのは、上場企業1社あたりの平均従業員数が、非上場企業に比べて格段に多いためです。
身の回りの実感と統計上の割合はズレやすい
大学の友人や先輩の就職先を思い浮かべると、「意外と上場企業に勤めている人が多い」と感じる人もいるでしょう。これは、就職活動という母集団自体が、そもそも一定規模以上の企業に応募が集まりやすい構造になっているためです。統計上の割合と身の回りの実感にズレが生じるのは自然なことであり、どちらか一方だけを鵜呑みにする必要はありません。
「大企業」「中小企業」の割合と上場企業は別の物差し
上場企業の割合を調べていると、「大企業の割合」や「中小企業の割合」という、似て非なる数字にも出会います。両者を混同しないよう、ここで整理しておきます。
大企業は全体の0.3%、中小企業は99.7%
中小企業庁が2021年6月時点でまとめた集計によると、日本にある企業約338万社のうち、中小企業は約337万社で全体の99.7%を占め、大企業は約1万社で0.3%にとどまります。先に確認した上場企業の割合0.1%と比べると、大企業の割合0.3%のほうがやや大きい数字であることが分かります。
大企業と上場企業は重ならない部分がある
この差が生まれる理由は単純です。大企業に分類される会社のすべてが上場しているわけではないからです。中小企業基本法における大企業の定義は、業種ごとの資本金や従業員数の基準で決まり、上場しているかどうかは条件に含まれていません。資本金や従業員数の基準で大企業に区分されながら、あえて上場を選んでいない会社も一定数存在します。求人票や企業紹介で「大企業」という表現を見たときは、それが「上場企業」を意味するとは限らない点に注意しておきたいところです。
従業員規模で見ても同じ構図が見られます。国税庁の民間給与実態統計調査(2023年分)によれば、従業員1000人以上の企業で働く人はおよそ1908万人、給与所得者全体の31.4%を占めます。上場企業の就業者(約364万人、6.3%)と比べるとかなり大きな割合ですが、これは「従業員1000人以上」という区分の中に、大企業ではあるものの非上場の会社が数多く含まれているためです。
就活生が上場企業の割合を知っておくべき理由

ここまでの数字を踏まえたうえで、就活生にとって上場企業の割合を知っておく実践的な意味を整理します。
上場は志望企業の絶対数を測る一つの物差しになる
上場企業は全体のわずか0.1%程度という前提を知っておくと、「上場企業だけを志望先にする」という選び方が、実はかなり狭い母集団に絞り込む戦略であると気づけます。志望先を絞り込むこと自体は悪いことではありませんが、母数の小ささを自覚したうえで選んでいるかどうかで、就職活動の進め方は変わってきます。
上場企業を軸に企業研究を進める場合は、単に「上場している」という事実だけでなく、次のような開示情報まで確認しておくと判断材料が増えます。
- 有価証券報告書やIR資料で経営の透明性を確認する
- 平均年収や勤続年数など、開示されている労働条件のデータを比較する
- 女性役員比率など、開示情報から企業の姿勢を読み取る
非上場の優良企業を割合だけで見落とさない
上場していないことが、必ずしも企業の実力不足を意味するわけではありません。財務情報を細かく公開する義務がない分、あえて上場を選ばない優良企業も存在します。資金調達の自由度や経営判断のスピードなど、上場・非上場それぞれに異なる考え方があるためです。上場企業の割合の低さは、それだけ非上場企業の中に埋もれた選択肢が多いことの裏返しでもあります。上場かどうかを唯一の基準にせず、事業内容や成長性まで含めて比較することが企業研究の基本になります。
上場企業で働くことの実利と気をつけたい点
上場企業の割合や内訳を確認したところで、実際に働く場としての特徴も具体的な数字で見ておきます。
平均年収は671万1000円、非上場との差
帝国データバンクの調査によると、2024年度決算を迎えた上場企業(有価証券報告書に平均年間給与の記載がある約3800社が対象)の平均年間給与は671万1000円でした。前年度から3.0%増加し、過去20年で最も高い水準です。市場別ではプライム市場の平均が763万3000円と、上場企業全体の平均をさらに上回っています。
4年連続の増加という点も、上場企業の給与水準を見るうえで押さえておきたいポイントです。ただし、これはあくまで上場企業に限定した平均値であり、日本全体の給与水準を代表する数字ではありません。上場企業が全体の平均を押し上げている側面がある点は差し引いて見る必要があります。
女性役員比率など開示情報から社風を読む
経団連が2024年7月時点でまとめた調査によると、東証プライム・スタンダード市場に上場する会員企業882社における女性役員の割合は15.6%で、前年から2.5ポイント上昇しています。プライム市場単独で見ると16.8%まで上がり、「2030年30%チャレンジ」に賛同する企業に限れば20.3%に達している一方で、女性役員が1人もいない企業も1.5%残っています。
こうした開示データは、有価証券報告書やコーポレートガバナンス報告書で確認できます。福利厚生や研修制度といった募集要項に書かれている情報だけでなく、こうした数値開示にも目を通しておくと、社風や経営方針をより立体的に把握できます。
規模の大きさゆえのデメリットも把握しておく
上場企業は組織の階層が多く、意思決定に複数の承認プロセスを経ることが一般的です。個人の裁量で動ける範囲が狭く、意思決定のスピード感を重視する人にはもどかしさを感じる場面があるかもしれません。コンプライアンスや情報開示に関する社内ルールも厳格であるため、自由度の高さよりも、整った仕組みの中で着実に経験を積みたい人に向いている環境だといえます。
企業研究で「上場かどうか」を確認する方法
志望企業が上場企業かどうかを確実に確認するには、口コミサイトの情報だけに頼らず、一次情報にあたる習慣をつけておくと安心です。
有価証券報告書やIR資料を確認する。上場企業には情報開示の義務があり、企業の公式サイトのIR(投資家情報)ページから最新の有価証券報告書や決算短信を確認すれば、市場区分や財務状況を一次情報で把握できます。
適時開示情報閲覧サービスや証券会社の銘柄検索で照合する。東証の適時開示情報閲覧サービスや、証券会社が提供する銘柄検索を使えば、企業名から上場の有無と市場区分をすぐに照合できます。求人票や企業紹介の文章だけで判断せず、一次情報と突き合わせておくと入社後の認識違いを防げます。
持株会社グループでは事業会社が非上場のケースもある
企業研究で意外と見落とされがちなのが、持株会社(ホールディングス)体制をとっているグループです。日本の大手企業グループでは、上場しているのはグループ全体を統括する持株会社のみで、実際に採用や事業運営を担う個別の事業会社は非上場という構造がよく見られます。ニュースで「上場企業のグループ」として紹介されている会社であっても、応募先の名義が持株会社そのものか、傘下の事業会社かによって、法律上の上場・非上場の扱いは変わってきます。求人票の会社名を、グループ名だけでなく法人名まで確認し、その名義でIR情報を検索してみることが、思い込みによる判断ミスを防ぐ確実な方法です。
よくある質問
- 上場企業と大企業は同じ意味ですか
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同じではありません。大企業は主に従業員数や資本金の規模で分類される言葉であり、上場しているかどうかとは別の基準です。資本金や従業員数が大きくても非上場の企業は多く存在し、逆に上場していても中堅規模にとどまる企業もあります。
- 上場企業と非上場企業、どちらを優先すべきですか
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一概にどちらが優れているとは言い切れません。上場企業は情報開示や経営の透明性という点で確認しやすい材料が多い一方、非上場企業には独自の強みを持つ企業も少なくありません。上場の有無だけでなく、事業内容や働き方、開示されている労働条件のデータを総合して比較することが企業研究の基本です。
- 上場企業かどうかは選考のどの段階で確認すればよいですか
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エントリーの前に確認しておくことをおすすめします。有価証券報告書やIR資料は選考が進んでからでも読み込めますが、市場区分や基本的な財務状況は、志望動機を固める段階で把握しておいたほうが、その後の企業研究や面接対策がスムーズに進みます。
まとめ
日本にある上場企業の割合は、法人全体で見ると0.1%程度、就業者数で見ても6%台にとどまります。数字自体は小さいものの、その中にはプライム・スタンダード・グロースという性格の異なる3つの市場が存在し、平均年収や女性役員比率など、企業を比較する材料も数多く開示されています。
上場かどうかという一点だけで企業を選ぶのではなく、有価証券報告書やIR資料といった一次情報を読み解きながら、自分の価値観に合った企業研究を進めてみてください。

