「ANAホールディングス 子会社 ランキング」で検索すると、グループ各社を年収や規模で序列化した一覧がいくつも出てきます。ところが並んでいる会社名も、子会社として数えられている範囲もサイトごとに違い、どれを基準にすればよいのか迷ってしまう方は少なくありません。
食い違いが生まれるのには理由があります。ANAホールディングス株式会社が提出している有価証券報告書と、ANA公式サイトのグループ企業一覧とでは、会社を数える目的も分け方もそもそも異なるからです。前者は決算をまとめるための区分、後者は仕事の分野ごとの案内であり、同じ「グループ会社」という言葉が別々の範囲を指しています。そして順位表を眺めているだけでは見落としやすい事実がもう一つあります。グループで働く人の数は、航空会社そのものよりも、整備や空港での支援を担う会社のほうが多いのです。
この記事では、就活キャリア研究所が有価証券報告書と公式のグループ企業一覧に記載された内容をもとに、ANAグループの会社を何を物差しに見分ければよいのかを整理しました。順位そのものではなく、資本関係と在籍者数という確かめられる材料から読み解いていきます。
ANAの子会社を順位で比べにくい理由
会社ごとの序列を考える前に、そもそもANAグループの会社数や待遇がどこまで公開されているのかを押さえておくと、検索結果の読み方が変わります。
社数の数え方が資料によって違う
ANAホールディングス株式会社の第76期有価証券報告書には、当社グループはANAホールディングス株式会社および子会社140社、関連会社37社により構成されていると記載されています(ANAホールディングス)。さらにその内訳として、連結子会社が全59社、持分法適用子会社および関連会社が全13社、非連結子会社が全80社、持分法非適用関連会社が全25社と示されています。つまり子会社140社のうち、決算のうえで連結の対象になっているのは59社だけです。
一方でANA公式サイトのグループ企業一覧は、航空運送や航空機整備事業、空港地上支援といった仕事の分野ごとに会社を並べる形になっています(ANAグループ)。分野は14に分かれ、そこに並ぶ社名は50社に届きません。就職先として名前が挙がるのは主にこちらに載っている会社です。数え方の目的が違う以上、ランキング記事が何社を対象にしているかは、読む前に確かめておきたいところです。
個々の子会社の給与は原則として公表されない
有価証券報告書を提出しているのは持株会社であるANAホールディングス株式会社です。同社の提出会社としての従業員数は286人、平均年齢46.2歳、平均勤続年数2.9年、平均年間給与7,709千円と記載されています(2026年3月31日現在)(ANAホールディングス)。この286人は特定の事業に属さない全社管理部門の従業員であり、しかも主として全日本空輸株式会社からの出向社員で構成されているため、平均勤続年数が短く出ています。持株会社の数字は、グループ全体の働き方を表したものではありません。
グループの顔ぶれが年によって入れ替わる
同じ有価証券報告書の沿革には、2025年8月に日本貨物航空株式会社を完全子会社化したことが記されています(ANAホールディングス)。従業員の状況の注記にも、日本貨物航空のグループ化や運航規模の拡大に伴う新規採用などにより、航空事業および航空関連事業の従業員数が前期末から増えたと説明されています。会社の顔ぶれが動けば人数も変わります。更新時期の古い順位表が実態と合わなくなるのは、こうした変化があるためです。
有価証券報告書が並べる4つの事業区分

ANAグループの会社は、有価証券報告書のなかで報告セグメントと呼ばれる区分に整理されています。報告セグメントは次の4つで、これに含まれないビル管理や人材派遣などが「その他」としてまとめられています。序列を考えるときは、この区分がそのまま物差しになります。
- 航空事業
- 航空関連事業
- 旅行事業
- 商社事業
航空事業
全日本空輸株式会社、ANAウイングス株式会社、株式会社エアージャパン、Peach Aviation株式会社、日本貨物航空株式会社の5社が航空事業を担っていると記載されています(ANAホールディングス)。この区分には子会社6社および関連会社1社が含まれ、そのうち子会社5社が連結されています。関係会社の状況を見ると、この5社に対するANAホールディングスの議決権所有割合はいずれも100.0%です。セグメント別売上高では、航空事業が売上高合計の78.6%を占めています。
航空関連事業
空港での各種サービスの提供、電話による予約案内、航空機への整備作業の役務提供などを行う区分です。ANA大阪空港株式会社、ANAエアポートサービス株式会社、ANAテレマート株式会社、ANAベースメンテナンステクニクス株式会社などが挙げられており、こうした役務はANAグループ以外の国内外の航空会社を顧客としても行われていると説明されています(ANAホールディングス)。子会社45社および関連会社5社が含まれ、そのうち子会社29社が連結、関連会社2社に持分法が適用されています。連結している会社の数では最も大きな区分です。売上高に占める割合は12.3%です。
旅行事業
ANA X株式会社が全日本空輸株式会社の航空券などを組み込んだパッケージ旅行商品の企画と販売を行い、海外ではANA Sales Americasなどが到着地でのサービス提供や航空券の販売を担うと記載されています(ANAホールディングス)。子会社6社および関連会社3社が含まれ、そのうち子会社5社が連結、関連会社1社に持分法が適用されています。売上高に占める割合は2.2%です。
商社事業
全日空商事株式会社を中心とする会社が、主に航空関連資材などの輸出入や店舗・通信販売を行う区分です(ANAホールディングス)。子会社71社および関連会社1社が含まれますが、連結されているのは子会社9社にとどまります。売上高に占める割合は5.2%です。海外の販売会社が多く含まれるため、社数の多さがそのまま国内の採用規模を表しているわけではない点には注意が必要です。
連結・持分法・非連結という3つの扱いの違い
事業の区分と並んでもう一つ物差しになるのが、その会社が決算のうえでどう扱われているかです。同じ「ANAの子会社」という言葉でも、扱いが変われば公開されている情報の量も変わります。
連結子会社として業績が合算される会社
全59社がこの扱いです(ANAホールディングス)。関係会社の状況に社名と住所、資本金、主要な事業の内容、議決権所有割合が一覧で載るため、外から見ても位置づけがはっきりします。全日本空輸株式会社については、売上高が連結売上高の10%を超えているため、主要な損益情報として売上高2,027,995百万円、経常利益155,350百万円、当期純利益112,673百万円という数字まで記載されています。
持分法が適用される会社
持分法適用子会社および関連会社は全13社です。関係会社の状況には、持分法適用子会社として長崎空港給油施設株式会社(議決権51.0%)が、持分法適用関連会社としてセントレアGSEサービス株式会社(25.5%)、株式会社エージーピー(20.0%)、楽天ANAトラベルオンライン株式会社(50.0%)、空港施設株式会社(20.9%)、IHG・ANA・ホテルズグループジャパン合同会社(25.0%)などが挙げられています(ANAホールディングス)。このうち空港施設株式会社には、自ら有価証券報告書を提出している会社である旨の注記が付いています。志望先として調べるなら、その会社自身の開示資料を直接読めるという利点があります。
連結にも持分法にも入らない会社
非連結子会社は全80社、持分法非適用関連会社は全25社と記載されています(ANAホールディングス)。社数だけで言えばこちらのほうが多いのですが、個々の社名は関係会社の状況に並んでいません。社数の多さを序列の根拠にできないのは、数の大半が名前すら公開されていない会社だからです。ランキング記事が「ANAの子会社は約180社」と書くとき、その大半はこの層を指しています。
人数で見ると本体以外の入口のほうが広い
ここで視点を売上高から人数に移してみます。同じ有価証券報告書には、セグメントごとの従業員数が載っています。順位表を眺めているだけでは気づきにくい差が、この表にはっきり出ています。
2026年3月31日現在の連結会社の従業員数は合計47,826人で、内訳は航空事業が20,608人、航空関連事業が21,736人、旅行事業が1,439人、商社事業が1,378人、その他が2,379人、全社(共通)が286人と記載されています(ANAホールディングス)。売上高では航空事業が8割近くを占めるのに対し、働いている人の数は航空関連事業のほうが多いのです。
とりわけ見落とされがちなのが、この航空関連事業に含まれる仕事の幅です。ANA公式のグループ企業一覧では、航空機整備事業、空港地上支援、車両整備、フライトケータリング、コンタクトセンター、貨物・物流、IT、不動産・ビルメンテナンス、人材・ビジネスサポート、調査研究・シンクタンク、航空機操縦士養成といった分野ごとに会社が掲載されています(ANAグループ)。空港地上支援の分野だけでもANA新千歳空港株式会社からANA沖縄空港株式会社まで11社が並び、航空機整備事業にはANAベースメンテナンステクニクス株式会社など5社が挙がっています。操縦士や客室乗務員という職種だけを思い浮かべて志望先を絞ってしまうと、この広がりが視界から抜け落ちます。
待遇についても、公開されている数字をたどれる範囲があります。有価証券報告書の提出会社の状況には、全日本空輸株式会社の従業員数14,983人、平均年齢41.3歳、平均勤続年数14.9年、平均年間給与11,721千円、ANAエアポートサービス株式会社の従業員数3,672人、平均年齢31.1歳、平均勤続年数7.1年、平均年間給与5,359千円が記載されています(いずれも2026年3月31日現在)(ANAホールディングス)。同じ資料の参考欄には、グループ連結の職種別平均年間給与として、地上職6,774千円、運航乗務職23,355千円、客室乗務職7,108千円という数字も示されています。ただし対象範囲が職種で異なり、地上職は連結会社41社、運航乗務職と客室乗務職は全日本空輸株式会社・ANAウイングス株式会社・株式会社エアージャパンの3社に限られます。グループのすべての操縦士や客室乗務員の平均ではない点に注意してください。
裏を返せば、公式に確かめられるのはここまでです。これ以外の子会社の平均年収を細かく並べた表を見かけたら、その数字がどこから来たのかを確かめてから判断材料に使いましょう。なお同じ資料には、平均年間給与は賞与および基準外賃金を含む金額であること、従業員数には他社から当社への出向社員を含むことも注記されています。数字を比べるときは、この前提もそろえて見る必要があります。
公開されている資料でグループ各社を確かめる方法

気になる会社が見つかったら、応募する前に公開されている資料をたどっておくと判断材料が増えます。次の3つのステップで確認してみてください。
ANA公式サイトのグループ企業一覧で、志望する会社がどの分野に置かれているかを確かめます(ANAグループ)。航空運送、航空機整備事業、空港地上支援、総合商社といった分野ごとに社名が並んでいるため、仕事の内容の見当がつきます。
有価証券報告書の関係会社の状況で、その会社の議決権所有割合を確かめます(ANAホールディングス)。ANA中部空港株式会社は57.4%、株式会社ANAエアサービス松山は81.0%、株式会社インフィニ トラベル インフォメーションは60.0%、avatarin株式会社は54.78%というように、100%ではない会社も並んでいます。資本関係の強さがそのまま読み取れます。
厚生労働省の職場情報総合サイト「しょくばらぼ」で、その会社の職場情報が掲載されているかを調べます(厚生労働省)。月平均所定外労働時間や平均継続勤務年数といった項目を、複数の会社で並べて比べられます。
ANAグループの子会社に関するよくある質問
- ANAの子会社は何社ありますか
-
第76期の有価証券報告書には、ANAホールディングス株式会社および子会社140社、関連会社37社で構成されると記載されています(ANAホールディングス)。このうち連結子会社は全59社で、残りは非連結子会社や持分法が適用される会社です。海外の販売会社なども含んだ数字であり、就職先として名前が挙がる国内の事業会社の数とは一致しません。
- Peach Aviationや日本貨物航空はANAの子会社ですか
-
いずれも連結子会社です。関係会社の状況では、Peach Aviation株式会社も日本貨物航空株式会社も議決権所有割合が100.0%と記載されています(ANAホールディングス)。日本貨物航空株式会社については、2025年8月に完全子会社化したことが沿革に記されています。
- 子会社ごとの平均年収は調べられますか
-
個別にはほとんど公表されていません。有価証券報告書に平均年間給与が載っているのは、提出会社のANAホールディングス株式会社と、全日本空輸株式会社、ANAエアポートサービス株式会社の3社です(ANAホールディングス)。あわせて参考として、グループ連結の職種別平均年間給与が地上職・運航乗務職・客室乗務職の3区分で示されています。
- 操縦士や客室乗務員以外の入口はどこにありますか
-
航空関連事業の会社に広く開かれています。2026年3月31日現在の従業員数は、航空関連事業が21,736人で、航空事業の20,608人を上回ります(ANAホールディングス)。整備、空港地上支援、貨物、IT、コンタクトセンターなど、公式のグループ企業一覧に並ぶ分野から探してみてください。
順位より資本関係と在籍者数で選ぼう
ANAグループの会社は、議決権所有割合が100.0%の会社もあれば、57.4%や54.78%といった会社もあります。決算上の扱いも、連結子会社、持分法が適用される会社、どちらにも入らない会社に分かれます。事業の区分も航空事業から商社事業まで幅があり、売上高の大きさと働く人の多さが一致しているわけでもありません。順位表は、こうした違いを平らにならしたうえで並べられています。
ランキングを見ること自体が悪いわけではありません。ただ、数字の出どころと時点を確かめないまま鵜呑みにすると、入社後に「思っていた会社と違った」となりかねません。有価証券報告書の関係会社の状況と従業員の状況、そして公式のグループ企業一覧という3つの資料は、誰でも同じ手順でたどれます。IRのページは一覧が後から表示される作りなので、報告書そのものを直接開きたいときは第76期有価証券報告書から確かめられます。資本関係と在籍者数を自分の目で確かめたうえで、続けられそうな働き方に近い会社を見極めていきましょう。

