博報堂と電通の違い|業績の明暗から読み解く志望動機の作り方

就活の企業研究で広告業界を調べ始めると、必ずといっていいほど電通と博報堂の名前が並びます。どちらも日本を代表する広告代理店であり、まとめて「電博」と呼ばれることもある存在です。ただ、社名を知っているだけでは、面接で「なぜこの会社なのか」を語ることはできません。

この記事では、2026年に入って公表された最新の決算情報も踏まえながら、電通と博報堂の違いを企業規模・業績・事業内容・年収・新卒採用という切り口で整理します。特に、電通グループが直面している経営局面は、就活生が見落としがちな重要な論点です。表面的な会社概要の比較にとどまらず、志望動機に説得力を持たせるための視点をお伝えします。

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目次

電通と博報堂、まず押さえておきたい基本の違い

電通と博報堂は、どちらも日本の広告業黎明期から続く老舗企業です。ただ、創業の経緯や現在の資本構造には、意外と知られていない違いがあります。

創業から資本構造までの沿革の違い

博報堂の公式沿革によると、博報堂は1895年10月、瀬木博尚が教育雑誌の広告取次店として創業しました。一方の電通は、電通の会社概要によれば1901年7月1日に「日本広告」として創業し、その後ニュース通信部門を切り離して広告代理店専業になった経緯を持ちます。つまり、創業年だけを見れば博報堂の方が6年ほど古く、日本の近代広告業がまだ形になっていない時期から両社は歩みを続けてきたことになります。

現在の資本構造も異なります。電通は持株会社である電通グループのもとに中核事業会社の株式会社電通や電通デジタルなどがぶら下がる体制です。博報堂は2003年10月、大広・読売広告社と経営統合したことで共同持株会社の博報堂DYホールディングスが設立され、2005年2月に東京証券取引所に上場しました。つまり博報堂単体は、博報堂DYホールディングスという持株会社の傘下にある一事業会社という位置づけになります。

グループ会社の規模と体制の違い

「電通」「博報堂」という単体の社名だけを見ていると気づきにくいのですが、両社とも実態は数百社規模のグループです。博報堂DYホールディングスの傘下には、広告事業を担う博報堂・大広・読売広告社に加え、3社のメディア機能を統合した博報堂DYメディアパートナーズなど、子会社385社・関連会社66社が名を連ねています。日本国内では第2位、世界でも第10位規模とされる広告グループです。

電通グループも同様に、国内事業を担う株式会社電通を中心に、電通デジタルやCARTA HOLDINGSなど多数の事業会社を抱えています。エントリーシートで「電通を志望する理由」を書くとき、実際にどの事業会社でどんな仕事に関わるのかまで具体的にイメージできているかどうかで、話の説得力は大きく変わってきます。

売上高と利益で見る規模の違い

電通グループと博報堂DYホールディングスの売上高・純損益・海外比率・自己資本比率・平均年齢・平均年収を対比した図解

企業規模を比較するとき、就活生が最初に見るのは売上高でしょう。ただ、2025年度の両社の決算を並べると、売上規模だけでは語れない大きな違いが浮かび上がってきます。

電通グループは売上規模で優位に立つが、赤字が続く

電通グループが2026年2月に発表した2025年12月期の決算によると、売上高は前期比1.7%増の1兆4352億円でした。海外事業の比率は57.6%と半分以上を占め、名実ともにグローバル企業といえる規模です。ところが、営業損益は2892億円の赤字、純損益にいたっては3276億円の赤字という、過去最大の最終赤字を計上しました。前期も1921億円の赤字だったことを踏まえると、これで3期連続の最終赤字となります。

博報堂DYホールディングスは増収基調を保つ

一方の博報堂DYホールディングスは、2025年3月期の売上高が前期比2.1%増の1兆6131億100万円、経常利益は前期比12.8%増と、増収増益の決算を発表しています。海外事業の比率は27.1%、自己資本比率は37.2%で、電通グループの11.7%と比べても財務基盤の厚みに差があります。2026年3月期についても、売上高2.3%増収の1兆6500億円という計画を掲げており、少なくとも足元では堅調な成長路線を歩んでいるのです。

単純な売上高だけを比べれば博報堂DYの方が電通グループを上回り、利益面では明暗がくっきり分かれている。この事実だけでも、両社を「どちらも大手広告代理店」とひとくくりにして企業研究を終えるのは危ういとわかります。

なぜ電通グループは過去最大の赤字に陥ったのか

就活情報サイトの多くは、両社の年収や社風の比較に重心を置きがちです。しかし2026年の企業研究で本当に押さえておくべきは、電通グループがなぜ過去最大の赤字を計上したのかという背景です。

最大の要因は、海外事業に関わるのれんの減損です。2025年10月から12月期だけで3101億円ののれん減損損失を計上し、米州・EMEA(欧州・中東・アフリカ)地域で先に計上していた860億円と合わせると、通期で3961億円ののれん減損となりました。電通グループは2012年前後から海外の広告会社を積極的に買収し、グローバル化を進めてきた歴史があります。その買収時に計上した「のれん」という無形資産が、海外事業の業績不振によって価値を大きく毀損したと判断されたわけです。

この結果、電通グループは2001年の上場以来、初めて年間配当をゼロにする無配へと転落しました。あわせて経営体制も一新され、中核会社である電通の佐野傑社長がグローバルCEOに昇格し、電通の後任社長には松本千里氏が就く人事が発表されています。佐野傑氏自身のメッセージでは、海外の不振ビジネスの見直しと経営基盤の再構築をスピード感を持って進め、競争力と収益性の回復を目指す方針が示されました。

では、なぜこの点が就活生にとって重要なのでしょうか。電通グループは今まさに大規模なリストラクチャリングの渦中にあり、今後数年は海外拠点の縮小や人員配置の見直しが続く可能性が高い局面にあります。志望動機で「グローバルに活躍したい」と語るのであれば、この再建プロセスがどう進むのかまで押さえておくことは、他の就活生と差がつくポイントになるはずです。

事業の中身で見る違い、電通の4領域と博報堂の生活者発想

業績の明暗だけでなく、両社が掲げる事業の考え方そのものにも違いがあります。ここを理解しておくと、面接で「どちらの仕事の進め方が自分に合っているか」を具体的に語れるようになります。

電通が掲げる企業変革支援というビジネスモデル

電通は近年、単なる広告制作にとどまらず、企業のブランド変革(BX)やカスタマー体験変革(CX)、デジタル変革(DX)といった複数の領域を組み合わせ、クライアントの事業そのものを支援する立場へと事業領域を広げてきました。営業出身者の力が強く、大型案件を横断的にまとめ上げる総合力が電通の強みとされてきましたが、海外M&Aで広げた領域の一部が今回の赤字要因になった点は見過ごせません。

博報堂DYグループを支える生活者発想という考え方

博報堂が一貫して掲げているのが「生活者発想」という考え方です。博報堂の公式解説によれば、人を単なる「消費者」の一面だけで捉えるのではなく、多様な価値観を持って主体的に生きる「生活者」として全方位から理解し、そこから新しい価値を創造していこうという哲学だと説明されています。この考え方が提唱され始めたのは1981年で、同じ年にフラッグシップ機関として博報堂生活総合研究所が発足しました。40年以上前から続く一貫した理念であり、博報堂DYグループはこの考え方をマーケティング・コンサルティング・テクノロジー・コンテンツ・インキュベーション・グローバルという6つの事業領域に広げながら、クリエイティビティを軸にした成長を志向しています。

ここで重要なのは、どちらが優れているかという話ではないという点です。大型案件を総合力でまとめ上げる電通の進め方と、生活者の深い洞察から企画を組み立てる博報堂の進め方は、そもそも仕事の起点が異なります。自分がどちらのアプローチにやりがいを感じるかを考えることが、志望動機の核になるはずです。

平均年収と社風から見る働き方の違い

就活生の関心が高いテーマの一つが年収です。ただし、この数字には見落としがちな注意点があります。

有価証券報告書に記載された持株会社単体の平均年収は、電通グループが約1596万円(平均年齢45.0歳)、博報堂DYホールディングスが約1091万円(平均年齢41.4歳)です。数字だけを見ると500万円ほどの差があるように映ります。ところが、この数字は持株会社の本社機能を担うごく少数の社員の平均であり、電通グループの単体従業員はわずか135人、博報堂DYホールディングスも174人にとどまります。実際に採用され、現場で働くことになるのは株式会社電通や株式会社博報堂といった中核事業会社であり、その給与水準は持株会社単体の数字とは別に、各社の有価証券報告書や採用ページで確認する必要があります。

社風についても対照的な語られ方をすることが多いテーマです。電通は成果主義を重視し、営業力を軸にした一体感のある組織づくりを志向するとされる一方、博報堂は個々の専門性を持つ社員が対等に議論しながら企画を練り上げる、個性重視の文化だと語られる傾向があります。ただし、社風の受け止め方は配属先や上司との相性によっても大きく変わるものです。OB・OG訪問や説明会で、実際に働く社員の生の声を複数集めておくことをおすすめします。

新卒採用の選考コースとスケジュールの違い

採用の仕組みにも違いがあります。どちらも本選考のエントリーは3月に解禁されますが、コースの分け方と内定が出る時期が異なります。

電通の新卒採用は、入社後に配属が決まる総合職を中心に、デジタルクリエイティブ職やアート職といった専門コースが用意されており、複数コースの併願も可能です。内定が出る時期はおおむね6月以降が中心とされています。

博報堂は、入社後に職種が決まる総合職に加えて、あらかじめ職種が確約されたコースを複数用意しているのが特徴です。主な職種は次の通りです。

  1. 総合職(入社後に職種が決定)
  2. ビジネスプロデュース職
  3. ストラテジックプランニング職
  4. クリエイティブ職
  5. PR職

博報堂の内定時期は5月下旬が中心とされ、電通より早いタイミングで結果が出る傾向にあります。志望する職種があらかじめ明確な人は、博報堂の職種確約コースのように、入社時点で希望の仕事に就ける可能性が高い採用形態を選ぶという考え方もできるでしょう。逆に、入社後にさまざまな部署を経験しながら適性を見極めたい人にとっては、両社の総合職コースが選択肢になります。

電通と博報堂、どちらを志望するか考えるときの視点

大学図書館で電通と博報堂の企業研究資料を見比べながら考え込む就活生のイラスト

ここまで見てきたように、電通と博報堂の違いは、単純な規模比較や年収比較だけでは捉えきれません。むしろ今の企業研究で意識すべきなのは、両社が置かれている経営フェーズの違いです。電通グループは過去最大の赤字と無配転落を経て、経営体制を一新しながら再建に取り組む局面にあります。博報堂DYホールディングスは、これまでの生活者発想を軸にしながら6つの事業領域へと拡張を続ける成長局面にあるといえます。

どちらが優れた会社かという二択で考えるのではなく、自分が再建局面の会社で変化に飛び込みたいのか、拡張局面の会社で新しい事業領域に携わりたいのかという軸で考えると、志望動機に一段深みが出るはずです。

電通と博報堂、年収が高いのはどちらですか?

有価証券報告書に記載された持株会社単体の平均年収では、電通グループが約1596万円、博報堂DYホールディングスが約1091万円と、電通グループの方が高い数字になっています。ただしこれは本社機能を担う少数社員の平均であり、実際に働く中核事業会社の給与水準とは別に確認する必要があります。

電通グループは赤字が続いていますが、就職先として大丈夫でしょうか?

2025年12月期まで3期連続で最終赤字となり、上場以来初の無配となったことは事実です。一方で国内事業は安定した収益を上げているとされ、赤字の主因は海外M&Aに伴うのれん減損です。経営体制を刷新して海外事業の再建に着手した段階にあるため、今後の決算発表やニュースリリースで再建の進み具合を継続的に確認しておくことをおすすめします。

選考スケジュールに違いはありますか?

本選考のエントリー解禁は両社とも3月が中心ですが、内定が出る時期は博報堂が5月下旬、電通が6月以降とされ、博報堂の方がやや早い傾向にあります。年度によって日程は変動するため、各社の採用サイトで最新のスケジュールを確認してください。

電通・博報堂の企業研究を次のアクションにつなげる

ここまでの内容を、実際の企業研究や志望動機づくりにどうつなげればよいのでしょうか。次の3ステップで情報を積み上げていくことをおすすめします。

STEP1

各社の公式サイトで最新の決算発表やニュースリリースを確認し、志望企業が今どんな経営局面にあるのかを自分の言葉で説明できるようにしておきます。

STEP2

電通の企業変革支援と博報堂の生活者発想という、事業の起点となる考え方の違いを整理し、自分がどちらの仕事の進め方に共感できるかを言語化します。

STEP3

OB・OG訪問や説明会で、社風や働き方について複数の社員から生の声を集め、記事や採用ページの情報と照らし合わせて自分なりの結論を持っておきます。

電通と博報堂という2つの社名は、就活の企業研究において避けて通れない存在です。ただ、社名や規模の比較だけで終わらせず、それぞれが今どんな経営フェーズにあり、どんな考え方で事業を組み立てているのかまで踏み込んで理解しておくと、志望動機の説得力は確実に変わってくるはずです。

この記事の監修者

株式会社ネット風評被害対策 代表取締役 内村淳

大学卒業後、サッカー選手を経て、大手風評対策会社に入社。
3年半にわたりナショナルクライアントを含む数々の炎上事案・ブランドイメージ毀損対策に従事。
その後、ネット誹謗中傷対策に特化した法律事務所に1年間従事し、法的観点からの対応知見を習得。
IT技術と法的アプローチの双方に携わってきた経験を持つ。
現在は15年以上の経験とノウハウをもとにネット風評被害対策専門会社を設立。あらゆるネット風評被害対策支援に加え、企業向けコンサルティングや同業他社へのサービス提供も行う。
日々進化するAI検索エンジンのアルゴリズムを徹底解析し、AI検索時代に適応した次世代の風評対策に注力している。

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