ES(エントリーシート)や履歴書の「特技」欄を前にして、手が止まってしまった経験がある人は少なくないでしょう。趣味ならすぐ思い浮かぶのに、いざ「特技」と言われると「これといって人に誇れるものがない」と感じてしまう就活生は多いものです。
就活キャリア研究所では、特技を「すごいことを書く欄」ではなく「自分の再現性を伝える欄」として捉え直す視点をお伝えします。定義の整理から、特技が思いつかないときの具体的な見つけ方、ジャンル別の例、ES・面接での伝え方まで、実際に使える形でまとめました。
特技とは|趣味との違いを整理する
特技という言葉は日常的に使われていますが、いざ自分の特技を言葉にしようとすると、趣味との境界があいまいになりがちです。まずは特技が指している範囲を、趣味との違いから整理しておきましょう。
特技が指しているもの
特技とは、練習や経験を積み重ねた結果、他人に説明できるレベルまで身についた得意なことを指します。単に「好き」というだけでなく、ある程度の水準まで到達している再現性のある行動である点が、特技を特技たらしめている条件です。
この水準は、資格やコンクールの入賞のように客観的に証明できるものだけを指すわけではありません。継続してきた習慣や、周囲から自然と頼られるようになった行動も、立派な特技になり得ます。
趣味との違い
趣味は、時間を使って楽しんでいること全般を指す言葉です。結果や上達を求めなくても、好きで続けていればそれは趣味と呼べます。一方で特技は、その活動を通じて身についた「できること」に焦点が当たっている点で、趣味とは重心が異なります。
読書が趣味だという人が、そこから速読や要約の力を身につけていれば、それは同時に特技にもなります。趣味と特技は対立する概念ではなく、同じ活動の「楽しんでいる側面」と「得意になった側面」を切り取ったものと考えると整理しやすくなるでしょう。
なぜ企業はES・面接で特技を聞くのか
特技という設問は、一見すると雑談のような質問に見えます。しかし採用担当者は、この短い設問からいくつかの情報を読み取ろうとしています。理由を知っておくと、何を書くべきかの判断がしやすくなるはずです。
人柄や価値観を知るため
職務経歴やガクチカだけでは見えにくい素の人柄が、特技には表れやすいものです。何にどれだけ時間を使ってきたかという選択そのものが、その人の価値観を映し出しているからでしょう。
継続力や再現性を確かめるため
ある程度の水準まで特技を磨くには、多くの場合、地道な継続が必要になります。特技の背景にある継続のプロセスは、入社後の業務にも通じる「続ける力」の証明として見られています。一つのことを長く続けられた経験があるかどうかは、面接官にとって参考になる材料になります。
場の空気を和らげるアイスブレイクとして
面接の冒頭やESの序盤に特技を尋ねる企業も少なくありません。緊張をほぐし、その後の質疑応答を素の状態で受けてもらうための導入として使われている面もあります。この場合、身構えすぎず話しやすい内容を選ぶ方が、結果的に好印象につながることがあります。
特技が思いつかない時の見つけ方|3段階で言語化するコツ

「特技がない」と感じる人の多くは、実際には特技がないのではなく、日常の行動を特技として言語化できていないだけというケースがほとんどです。ここでは、行動を特技に変換するための3つの段階を紹介します。
ステップ1|過去の行動を具体的に洗い出す
最初のステップは、「特技」というラベルを一旦外して、これまでの行動を具体的に思い出すことです。長く続けてきた習慣、人から「よくできるね」と言われたこと、アルバイトや部活で自然と任されていた役割などを、思いつく限り書き出してみましょう。
この段階では、地味に見える行動でも遠慮せずに書き出すことが重要です。特技として立派かどうかの判断は次の段階で行うため、最初は評価をせずに数を出すことに集中してください。
ステップ2|行動を「能力」の言葉に抽象化する
行動を洗い出したら、次はそれぞれの行動が「どんな能力の表れなのか」を一段階抽象化してみます。たとえば「毎朝同じ時間に走っている」という行動は、抽象化すると「継続力」や「自己管理力」という能力の言葉に置き換えられます。
この抽象化の作業こそが、単なる習慣を「特技」として言語化する鍵になります。行動そのものを羅列するのではなく、その行動が証明している能力に変換する視点を持つと、特技として書ける材料は一気に増えるはずです。
ステップ3|再現性を示すエピソードを添える
最後に、その能力が一度きりのものではなく、繰り返し発揮されてきたことを示すエピソードを添えます。期間や頻度、具体的な場面を一つ挙げるだけで、抽象的な能力の言葉に説得力が生まれます。
たとえば「継続力」という能力であれば、「3年間、週3回のペースで継続している」といった形で期間や頻度を添えると、読み手はその特技が一過性のものではないと判断しやすくなります。数字や期間を一つ入れるだけで、特技の伝わり方は大きく変わります。
特技一覧|ジャンル別に見る具体例

3段階の言語化を試しても、まだ特技のイメージがわきにくいという人のために、ジャンル別に具体例を挙げておきます。自分の行動と近いものがないか、照らし合わせながら読んでみてください。
体力・継続系の特技
ランニングや筋力トレーニング、水泳、ヨガといった、体を動かす習慣を長く続けている場合は、体力そのものに加えて継続力や自己管理力を示す特技になります。大会や記録への挑戦経験があれば、目標設定力の裏付けとしても使えるでしょう。
対人・コミュニケーション系の特技
初対面の人とすぐに打ち解けられる、人の話を丁寧に聞き出せる、場の空気を読んで話題を振れるといった特技は、営業職や接客業だけでなく、ほとんどの職種で評価されやすい特技です。アルバイトやサークルでの具体的な役割と結びつけて語ると説得力が増します。
知的・専門スキル系の特技
語学、プログラミング、資格取得のための学習、文章の要約や資料作成といった特技は、成果が比較的可視化しやすいジャンルです。学習を始めたきっかけや、実際に成果につながった場面まで語れると、単なる知識の羅列で終わらずに済みます。
生活力・几帳面系の特技
整理整頓、時間管理、料理、家計管理といった生活に根差した特技は、地味に見えても、業務における段取り力や丁寧さの証明として評価されることがあります。身近すぎて特技だと気づいていないだけのケースが多いジャンルでもあります。
特技の伝え方|ES・面接で好印象になる書き方
特技が見つかったら、次はそれをES・面接でどう伝えるかです。ここでは、限られた文字数や時間の中で伝わりやすい2つの型を紹介します。
結論から伝えるPREP型の文章
特技欄は文字数が限られていることが多いため、結論から先に伝える書き方が基本になります。「特技は〇〇です」という結論を最初に置き、その後に理由、具体例、再度結論という順番で構成するPREP法を使うと、短い文章でも要点が伝わりやすくなります。
たとえば「私の特技は継続力です。学生時代から3年間、週3回のペースでランニングを続け、フルマラソンを完走しました。目標を立てたら小さな行動に分解して積み重ねる姿勢を、貴社の業務でも活かしたいと考えています」というように、結論・根拠・展望の順で組み立てると読みやすくなります。
数字やエピソードで再現性を補強する
特技を伝える際に効果を発揮するのは、感想ではなく事実の提示です。「頑張りました」「得意です」だけで終わらせず、期間、頻度、達成した内容といった事実を添えると、読み手は特技の水準を具体的にイメージできるようになります。
面接で深掘りされた場合は、その特技を始めたきっかけや、うまくいかなかった時期にどう工夫したかまで話せるように準備しておきましょう。書類に書いた一文だけでなく、その背景まで一貫して語れることが、伝え方の完成度を左右します。
特技を選ぶ際に避けたいNG例
特技は基本的に自由に選べますが、選考の場である以上、避けたほうがよい内容もあります。以下のような特技は、たとえ事実であっても選考の場での記載は控えるのが無難です。
- ギャンブルに関すること(パチンコ、競馬など)
- 宗教・政治的な主張を含むもの
- 飲酒に関すること(お酒の強さなど)
- 法律や社会的なルールに触れる行為を連想させるもの
事実であっても、選考という公的な場にふさわしいかどうかという視点で選ぶことが大切です。迷った場合は、家族や友人など第三者に「この特技は面接で話しても違和感がないか」を聞いてみるのも一つの方法でしょう。
よくある質問
- 特技と趣味は両方書く必要がありますか
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両方の欄が設けられている場合は、それぞれ別の内容で埋めるのが基本です。同じ活動を書く場合でも、趣味欄では楽しんでいる理由を、特技欄では身についた能力や成果を中心に書き分けると、重複した印象を避けられます。
- 特技が本当に何も思いつかない場合はどうすればいいですか
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本文で紹介した3段階の言語化を試したうえで、それでも思いつかない場合は、家族や友人に「自分が得意そうに見えることは何か」を尋ねてみましょう。自分では当たり前だと思っている行動ほど、他人から見ると特技として映っていることが少なくありません。
- 履歴書とESで特技の内容が違っても問題ありませんか
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複数の特技を持っている場合、書類ごとに異なる特技を書いても問題ありません。ただし面接で両方について聞かれる可能性があるため、どちらの特技についても具体的なエピソードを答えられるように準備しておくと安心です。
まとめ
特技は、誰かと比較して優れているかどうかを示す欄ではなく、自分がどんな行動を積み重ねてきた人間なのかを伝える欄です。行動を洗い出し、能力へ抽象化し、再現性を示すエピソードを添えるという3段階を踏めば、「特技がない」と感じていた人でも、書ける材料は見つかるはずです。
見つけた特技は、結論から伝えるPREP型の文章に落とし込み、期間や頻度といった事実を添えて伝えましょう。書類に書いた一文と、面接で語れる背景がそろえば、特技欄は単なる形式的な設問ではなく、あなたらしさを伝える材料に変わっていきます。

