「電通グループは国内の電通と海外の会社に分かれていて、その下に子会社がぶら下がっている」。広告業界を志望する方から、こうした説明をよく聞きます。グループの成り立ちを解説した記事の多くが、国内と海外の二本立てという枠組みで書かれてきたためです。
ところが、電通グループが公式サイトで示している体制はそれとは違います。国内を束ねていた電通ジャパンネットワークと、海外を束ねていた電通インターナショナルという2事業体制は、2022年12月末で解消されたと明記されています(電通グループ)。古い枠組みのまま子会社の序列を考えると、位置関係を取り違えます。
この記事では、電通グループの会社を見比べるときに使える4つの手がかりと、それを公開資料で確かめる手順を、就活キャリア研究所の視点で整理しました。数字は第177期(2025年1月1日から2025年12月31日まで)の有価証券報告書と公式サイトに記載されているものです。
電通グループの子会社数が資料ごとにずれる訳
検索して出てくる子会社の数は、資料によってばらつきます。数え方の前提が違うためで、理由は大きく3つあります。
連結子会社のうち社名が載るのは55社
第177期の有価証券報告書の「関係会社の状況」には、連結子会社として55社の社名が挙げられ、その後ろに「その他629社」とまとめて記載されています(電通グループ)。持分法適用関連会社は、株式会社ビデオリサーチ(議決権の所有割合34.2%)と株式会社D2C(同46.0%)の2社に「その他65社」が続きます。
公式サイトでは、グループ総体は国内に約140社、海外に約540社で、あわせて約680社と説明されています。社名まで追えるのは全体の1割に満たないため、全社を並べた順位表は公開資料からは作れません。
連結子会社と持分法適用関連会社の違いも、数え方のずれを生みます。連結子会社は議決権の過半を持たれて親会社の決算にそのまま取り込まれる会社、持分法適用関連会社は出資割合に応じて損益だけが反映される会社です。株式会社ビデオリサーチや株式会社D2Cは後者で、経営は各社が自前で行っています。まとめサイトが両方を区別せずに数えていると、社数は一気に膨らみます。
持株会社と事業会社は別の会社
もう一つ混同されやすいのが、株式会社電通グループと株式会社電通の関係です。前者は有価証券報告書を提出している持株会社、後者はその連結子会社で、議決権の所有割合は100.0%、資本金は10,000百万円と記載されています。
この違いは従業員数にはっきり表れます。提出会社である株式会社電通グループの従業員数は135名、平均年齢45.0歳、平均勤続年数14.3年、平均年間給与15,959,402円です。一方、連結全体の従業員数は67,454名(2025年12月31日現在)です。持株会社単体の平均年収が、グループ各社の給与として紹介されている例には注意が必要です。
国内と海外の二本立ては解消済み
電通ジャパンネットワークと電通インターナショナルという名前は、いまも解説記事の図でよく使われています。ただし公式サイトには、2事業体制を2022年12月末で解消し、2023年度から新経営体制のもとでJapan、Americas、EMEA、APACの4つの事業地域を直接統括していると書かれています。
有価証券報告書のセグメント区分も、日本、Americas、EMEA、APAC、全社の5つです。国内と海外を2つに割る枠組みは、公式の資料には残っていません。順位表の更新が止まっているかどうかを見分ける目印にもなります。
日本・米州・欧州・アジアという4つの区分
では、いまの区分では会社がどう分かれているのか。第177期のセグメント別の数字をたどると、グループの重心が見えてきます。
収益の4割強を占める日本
第177期のセグメント別の収益は、日本6,052億円、Americas 3,699億円、EMEA 3,389億円、APAC 1,116億円、全社94億円で、合計1兆4,352億円でした。日本が全体の4割強を占め、単一の区分としては最大です。
日本の区分に置かれているのは、株式会社電通のほか、株式会社電通東日本、株式会社電通西日本、株式会社電通九州といった地域会社、株式会社電通デジタル、株式会社電通ライブ、株式会社電通総研、株式会社セプテーニ・ホールディングスなどです。株式会社電通は連結の売上高に占める割合が10%を超える会社として、営業収益2,237億円という個別の数字まで注記に示されています。
地域会社の資本金を並べると、株式会社電通東日本が450百万円、株式会社電通九州が400百万円、株式会社電通西日本が300百万円です。いずれも議決権の所有割合は100.0%で、株式会社電通の10,000百万円とは桁が違います。同じ日本の区分にあっても、担う範囲と会社の大きさは分かれています。
人数では海外が全体の6割弱
収益と人数では重みが変わります。2025年12月31日現在の従業員数は、日本23,874名、Americas 12,819名、EMEA 14,095名、APAC 11,289名、全社5,377名で、合計67,454名です。日本以外の3地域を足すと38,203名となり、全体の6割近くを占めます。
ここで見落とされがちなのが、収益の順番と人数の順番が一致しないという点です。EMEAはAmericasより収益が少ないものの、従業員数では上回っています。地域ごとに一人あたりの生み出す金額が違うため、規模を語るときはどの指標の話かをそろえる必要があります。
全社の区分に置かれた英国の統括会社
4つの事業地域のほかに、全社という区分があります。ここに並ぶのは、Dentsu International Limitedをはじめとする英国ロンドンの会社です。有価証券報告書の本文では、Dentsu International Limitedは海外事業の持株会社だと説明されています。
つまり、海外を束ねる会社そのものは残っていて、なくなったのは国内と海外を2つに割る経営の枠組みのほうです。会社の存在と、体制の名前は別の話として押さえておくと混乱しません。
グループ会社の位置を測る4つの手がかり

順位表が手に入らないとしても、会社どうしを比べる材料は公開資料にそろっています。「関係会社の状況」から読み取れる項目を整理すると、次の4つになります。
- 議決権をどれだけ持たれているかという出資割合
- その会社自身が有価証券報告書を出しているか
- 日本・Americas・EMEA・APACのどの地域に属するか
- 資本金と従業員数から見える会社の規模
議決権をどれだけ持たれているか
出資割合は会社ごとに幅があります。株式会社電通や株式会社電通東日本のように100.0%の会社がある一方で、株式会社電通名鉄コミュニケーションズは50.0%、株式会社セプテーニ・ホールディングスは52.5%、株式会社電通アドギアは66.7%、株式会社電通総研は61.8%です。
この数字は固定ではありません。株式会社CARTA HOLDINGSは第177期末時点で54.6%の連結子会社でしたが、2026年1月15日付の株式の一部譲渡によって出資比率が48.4%に下がり、持分法適用関連会社になったと注記されています。数年前の一覧をそのまま信じると、資本関係を読み違えます。
所有割合の欄に括弧書きが添えられている行にも意味があります。括弧の中は間接所有の割合を内数で示したもので、たとえば株式会社電通デジタルは100.0%のうち25.0%が間接所有です。持株会社が直接株を持っている部分と、ほかのグループ会社を通じて持っている部分が分かれているということです。誰の下にぶら下がっているのかは、この括弧を見ると見当がつきます。
自分で有価証券報告書を出しているか
関係会社の表には注記が付いており、その会社自身が有価証券報告書を提出している場合に示されます。電通グループの連結子会社では、株式会社セプテーニ・ホールディングスと株式会社電通総研がこれに当たります。
提出会社であれば、その会社の従業員数、平均年齢、平均勤続年数、平均年間給与が自社の報告書に載ります。働く条件を数字で確かめたいなら、まずこの2社のように自ら開示している会社から調べるのが近道です。逆に、それ以外の会社の年収を具体的な数字で示している記事は、どこから取った数字なのかを確かめたほうがよいでしょう。
どの事業地域に属するか
関係会社の表の「主要な事業の内容」欄には、セグメントの名称が入ります。日本、Americas、EMEA、APAC、全社のいずれかで、社名を見ただけでは分からない所属が判別できます。
たとえばMerkle Group, Inc.はAmericas、Merkle Switzerland AGはEMEA、Dentsu Asia Pte. Ltd.はAPACです。同じブランド名を冠していても、属する地域が違えば管轄も採用の窓口も変わります。志望先が国内採用なのか現地採用なのかは、この欄でおおよそ見当がつきます。
資本金と従業員数でみる規模
資本金は関係会社の表に、従業員数はセグメント別の合計が「従業員の状況」に載ります。国内の会社は百万円、海外の会社は英ポンドで表記されているため、数字をそのまま並べて比べることはできません。
国内で見ると、株式会社セプテーニ・ホールディングスの18,430百万円、株式会社電通の10,000百万円、株式会社電通総研の8,180百万円、株式会社電通ライブの2,650百万円といった開きがあります。資本金は事業の元手の大きさを表すもので、働く人の数や待遇と一対一で対応するわけではない点には気をつけてください。
なお、社名の変更も頻繁に起きています。株式会社電通プロモーションプラスは、2026年1月1日付で株式会社電通プロモーションエグゼ、株式会社電通リテールマーケティング、株式会社電通tempoを吸収合併し、商号を株式会社電通プロモーションに変更したと記載されています。
同じ変化は沿革の欄からも読み取れます。有価証券報告書には、2017年1月にプロモーション領域を再編して株式会社電通テックを株式会社電通ライブに改めたこと、2020年9月にDentsu Aegis Network Ltd.をDentsu International Limitedへ商号変更したこと、2022年1月に株式会社セプテーニ・ホールディングスを株式の追加取得で連結子会社にしたこと、2024年1月に株式会社電通国際情報サービスを株式会社電通総研へ商号変更したことが並んでいます。
就職活動の準備で会社名を調べるときは、この沿革の欄を先に開いておくと手間が減ります。検索で出てきた社名が古い呼び方かどうかを、その場で判断できるからです。
公開資料でグループ会社をたどる手順

志望先の候補が挙がったら、次の3つのステップで公開資料をたどると、自分の手で位置づけを確かめられます。
公式サイトのグループ紹介で、いまの体制図と会社の並びを確かめます(電通グループ)。ここには国内約140社、海外約540社という規模と、4つの事業地域を直接統括する体制が書かれています。手元の一覧が古い枠組みのままかどうかは、この画面と見比べれば分かります。
厚生労働省の職場情報総合サイト「しょくばらぼ」で、その会社の新卒者等の採用・定着状況や月平均所定外労働時間を調べます(厚生労働省)。掲載されている会社なら、資本関係とは別の角度から働き方の数字を押さえられます。
3つを終えると、手元には「出資割合」「開示の有無」「所属地域」「規模」の4項目が並びます。会社ごとにこの4項目を書き出せば、順位表よりも志望動機に使える比較ができあがります。
電通グループの子会社に関するよくある質問
- 電通グループの子会社は何社ありますか
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公式サイトでは、グループ総体は国内に約140社、海外に約540社、あわせて約680社と説明されています(電通グループ)。第177期の有価証券報告書では、連結子会社として55社の社名が挙げられ、残りは「その他629社」とまとめて記載されています。
- 電通グループと電通はどう違うのですか
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株式会社電通グループが有価証券報告書を提出している持株会社で、株式会社電通はその連結子会社です。議決権の所有割合は100.0%、資本金は10,000百万円と記載されています。提出会社である株式会社電通グループの従業員数は135名で、連結全体の67,454名とは規模がまったく異なります。
- 電通ジャパンネットワークはまだありますか
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公式サイトには、電通ジャパンネットワークと電通インターナショナルの2事業体制を2022年12月末で解消したと明記されています(電通グループ)。2023年度からはJapan、Americas、EMEA、APACの4つの事業地域を直接統括する体制になっています。
- 子会社ごとの年収は調べられますか
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その会社自身が有価証券報告書を提出している場合に限られます。電通グループの連結子会社では、株式会社セプテーニ・ホールディングスと株式会社電通総研が提出会社として記載されています。それ以外の会社については、平均年間給与は開示されていません。
順位より資本と地域で会社を見よう
電通グループの子会社を一列に並べた順位表は、公開されている資料からは作れません。社名まで追えるのは約680社のうち一部にすぎず、個々の会社の給与も開示されていないからです。
代わりに使えるのが、出資割合、開示の有無、所属する事業地域、規模という4つの手がかりです。どれも有価証券報告書と公式サイトをたどれば同じ手順で確かめられます。国内と海外という古い二本立ての図ではなく、いまの4つの事業地域の並びを見て、自分が働きたい場所を選んでいきましょう。

