「製紙業界の大手といえば王子と日本製紙」。業界研究を始めると、まずこの2社の名前を覚えるという人は多いはずです。ところが製紙業界の大手企業ランキングを調べると、紙の卸売会社が上位に入る一覧や、王子製紙と王子マテリアを別々に数える一覧があり、顔ぶれがそろっていません。どの会社を製紙会社として数えるか、グループ全体と子会社のどちらの数字を使うかが、一覧ごとに違うためです。
各社が金融庁のEDINETに提出した、2026年10月27日時点で最新の有価証券報告書で連結売上高を比べると、1位は王子ホールディングスの1兆8,617億円、2位は日本製紙の1兆1,926億円、3位はレンゴーの1兆83億円です。いずれも2026年3月期の数字です。上位3社が1兆円を超え、4位の大王製紙は6,667億円です。ただし売上高の中身は、新聞・印刷用の紙、段ボール原紙、家庭紙のどれが中心かで、会社ごとに大きく違います。
本記事では、紙・板紙・パルプの製造を主な事業とする上場企業8社の売上高・従業員数・平均年間給与を有価証券報告書の原文から並べ、どの紙で稼いでいるか、どこに工場があるかといった違いと、自分で確かめる手順までお伝えします。
製紙業界の大手企業ランキング上位8社
製紙業界の大手企業を連結売上高の大きい順に並べると、上位8社は次のとおりです。数字は各社の有価証券報告書にある「主要な経営指標等の推移」の連結の売上高で、億円未満を切り捨てています。
- 王子ホールディングス:1兆8,617億円
- 日本製紙:1兆1,926億円
- レンゴー:1兆83億円
- 大王製紙:6,667億円
- 北越コーポレーション:2,877億円
- 三菱製紙:1,574億円
- 中越パルプ工業:1,103億円
- 特種東海製紙:954億円
対象には、日本製紙連合会の正会員30社(2025年7月現在)のうち上場している会社で、有価証券報告書の「事業の内容」に紙・板紙・パルプの製造を主な事業として挙げている会社を選びました(日本製紙連合会)。決算期は8社とも2026年3月期です。
同じ正会員のリンテックは、2026年3月期の売上高が3,193億円です。ただし事業の内容で最初に挙げているのはシール・ラベル用粘着製品などの印刷材・産業工材関連で、洋紙・加工材関連の売上高は360億円にとどまるため、8社には入れていません(リンテック有価証券報告書)。段ボールを主な事業とするトーモクも、同じ期の売上高は2,240億円ですが、事業の内容に挙げているのは段ボール、住宅、運輸倉庫で、紙・板紙の製造ではないため外しました(トーモク有価証券報告書)。
売上高1兆円を超える3社
王子ホールディングス、日本製紙、レンゴーの3社は、連結売上高が1兆円を超えています。
王子ホールディングスは、2012年10月に事業を会社分割で子会社に引き継ぎ、王子製紙株式会社から商号を変えて持株会社へ移った会社です。グループは同社と子会社312社、関連会社58社で構成され、事業を生活産業資材、機能材、資源環境ビジネス、印刷情報メディアの4つのセグメントとその他に分けています。連結の従業員数は38,757人です(王子ホールディングス有価証券報告書)。
日本製紙は、同社と子会社120社、関連会社29社で構成され、紙・板紙事業、生活関連事業、エネルギー事業、木材・建材・土木建設関連事業を持っています。2013年4月に株式会社日本製紙グループ本社と合併しており、同社自身も各地に工場を持っています。連結の従業員数は15,042人です(日本製紙有価証券報告書)。
レンゴーは、板紙と段ボール、段ボール箱の製造・販売を中心に、軟包装、重包装、海外の事業を持ち、同社と子会社257社、関連会社39社でグループを構成しています。連結の従業員数は25,573人で、売上高では上回る日本製紙の15,042人より多くなっています(レンゴー有価証券報告書)。
売上高2,000億〜6,000億円台の2社
4位の大王製紙と5位の北越コーポレーションは、連結売上高がそれぞれ6,667億円と2,877億円です。
大王製紙は、同社と連結子会社31社、関連会社1社で構成されています。事業は、新聞用紙・印刷用紙・包装用紙・板紙などの紙・板紙事業と、衛生用紙や紙おむつなどのホーム&パーソナルケア事業の2つが柱で、連結の従業員数は11,639人です(大王製紙有価証券報告書)。
北越コーポレーションは、2018年7月に北越紀州製紙株式会社から商号を変えた会社です。同社と子会社22社、関連会社6社で構成され、紙パルプ事業とパッケージング・紙加工事業を持っています。カナダのアルバータ州でパルプなどを製造するAlberta-Pacific Forest Industries Inc.を連結子会社にしており、連結の従業員数は3,728人です(北越コーポレーション有価証券報告書)。
売上高900億〜1,500億円台の3社
6位から8位の三菱製紙、中越パルプ工業、特種東海製紙は、連結売上高が900億円台から1,500億円台に並んでいます。
三菱製紙は、情報・特殊紙や機能性材料を扱う機能商品事業と、印刷用紙・衛生用紙やパルプを扱う紙素材事業を中心に、連結子会社11社、関連会社8社とグループを組んでいます。連結の従業員数は2,513人です(三菱製紙有価証券報告書)。
中越パルプ工業は、新聞用紙、印刷用紙、包装用紙、特殊紙、板紙などの紙パルプ製品の製造販売と発電事業を主な事業とし、連結の従業員数は1,273人です(中越パルプ工業有価証券報告書)。特種東海製紙は、産業素材、特殊素材、生活商品、環境関連の4つの事業を持ち、子会社16社、関連会社5社で構成されています。連結の従業員数は1,873人です(特種東海製紙有価証券報告書)。
製紙業界のランキングが分かりにくい3つの理由
製紙業界のランキングが一覧ごとに食い違うのは、数える会社の範囲、平均年収の対象、売上高に含まれる事業が、一覧ごとにそろっていないからです。
紙の商社や子会社を1社として数える一覧があるから
製紙会社の紙は、代理店や卸売の会社を通して販売されることがあります。北越コーポレーションは、紙パルプ事業の販売を主として自社と子会社、その他の代理店を通じて行っていると説明しています(北越コーポレーション有価証券報告書)。中越パルプ工業の報告書には、売上高の大きい顧客として新生紙パルプ商事、日本紙パルプ商事、国際紙パルプ商事の3社が挙がっています(中越パルプ工業有価証券報告書)。日本紙パルプ商事やKPPグループホールディングスは、EDINETでは業種が「卸売業」の会社として登録されています(金融庁)。
子会社の数え方も一覧ごとに違います。王子ホールディングスのグループでは、段ボール原紙や白板紙を王子マテリア、新聞用紙や印刷・出版・情報用紙を王子製紙が製造・販売しており、2社とも議決権の100%を王子ホールディングスが持つ子会社です(王子ホールディングス有価証券報告書)。子会社を1社ずつ並べた一覧と、グループの連結売上高で並べた一覧は、同じ物差しではありません。
平均年収が提出会社の従業員だけの数字だから
有価証券報告書の「平均年間給与」は、報告書を出した会社自身の従業員の平均です。2026年3月31日現在、王子ホールディングスの平均年間給与は849万6,000円ですが、対象は同社の従業員464人で、連結の38,757人のうちの一部です。同じ報告書には、外国の会社を除く連結子会社で従業員数が最も多い王子製紙の1,941人で739万7,000円、次に多い王子コンテナーの1,846人で645万9,000円も載っています(王子ホールディングス有価証券報告書)。
工場を子会社に移した会社でも、同じことが起きます。特種東海製紙は2016年10月に島田工場を吸収分割で子会社の新東海製紙に引き継いでおり、提出会社の従業員429人のうち、特殊素材事業が370人、全社(共通)が51人で、産業素材事業は1人です(特種東海製紙有価証券報告書)。平均年間給与の715万5,768円は、主に特殊素材事業で働く人の数字として読む必要があります。
売上高に紙以外の事業が含まれるから
製紙会社の売上高には、紙のほかに植林や木材、電力の事業も含まれます。2026年3月期の外部顧客への売上高で見ると、王子ホールディングスの資源環境ビジネス(植林・木材加工、パルプ、エネルギーの事業)は3,463億円です(王子ホールディングス有価証券報告書)。日本製紙はエネルギー事業が431億円、木材・建材・土木建設関連事業が765億円で(日本製紙有価証券報告書)、中越パルプ工業も発電事業で56億円を売り上げています(中越パルプ工業有価証券報告書)。
売上高の大きさは、紙を売った金額の大きさと同じではありません。志望する仕事が紙の製造なのか、電力や木材の事業なのかによって、見るべき会社の順番は変わります。
製紙大手を見比べる4つの視点

製紙大手の違いは、売上高の順位よりも、次の4つを有価証券報告書と業界団体の統計で見比べると見えてきます。
- 紙の種類:どの紙で売上を立てているかを見る
- 海外の比率:日本の顧客への売上高の割合を見る
- 工場の場所:従業員がどの工場にいるかを見る
- 年齢と勤続:年収と平均年齢・勤続年数を並べて見る
紙の種類ごとの売上高
紙の需要の動きは、種類ごとに大きく違います。日本製紙連合会が2026年1月20日に公表した見込みでは、2025年の紙・板紙の国内需要は約2,054万トンで、前年より2.6%減りました。2019年と比べると、新聞用紙は約241万トンから約139万トンに、印刷・情報用紙は約772万トンから約497万トンに減った一方、衛生用紙は約205万トンから約210万トンとほぼ横ばいです(日本製紙連合会)。
各社の売上高の内訳にも、この違いが表れます。王子ホールディングスの外部顧客への売上高は、段ボール原紙や家庭紙などの生活産業資材が8,741億円で、新聞用紙や印刷用紙の印刷情報メディアの2,131億円の4倍を超えます(王子ホールディングス有価証券報告書)。大王製紙は紙・板紙事業が3,502億円、衛生用紙や紙おむつのホーム&パーソナルケア事業が2,988億円で、ホーム&パーソナルケア事業が売上高の4割強を占めています(大王製紙有価証券報告書)。
同じ会社の中で、設備を印刷用から包装用へ移す例もあります。北越コーポレーションは2020年4月に、新潟工場の上・中質微塗工抄紙機(6号機)を段ボール原紙の抄紙機に改造しました(北越コーポレーション有価証券報告書)。入社後にどの紙を担当するかは、面接で尋ねておきたい点です。
海外の顧客への売上高の比率
有価証券報告書の「地域ごとの情報」を見ると、売上高のうち日本の顧客への分がどれだけかが分かります。2026年3月期の日本の顧客への売上高の割合は、王子ホールディングスが約58%、北越コーポレーションが約66%、三菱製紙が約71%、日本製紙が約72%、レンゴーが約79%、大王製紙が約82%です。区分の基準は、王子ホールディングスが最終顧客の所在地、ほかの5社が顧客の所在地です。中越パルプ工業と特種東海製紙は、日本の顧客への売上高が90%を超えるとして、地域ごとの内訳を省いています。
海外の売上高の中身も会社ごとに違います。日本製紙はオセアニアが1,473億円で、そのうちオーストラリアが1,139億円です(日本製紙有価証券報告書)。大王製紙はブラジルが639億円です(大王製紙有価証券報告書)。海外の比率は、入社後に海外の拠点と関わる仕事がどのくらいあるかを考える材料になります。
工場ごとの従業員数
有価証券報告書の「設備の状況」には、工場ごとの所在地と従業員数が載っています。大王製紙は、提出会社の従業員2,356人のうち1,001人が愛媛県四国中央市の三島工場、349人が岐阜県可児市の可児工場にいます(大王製紙有価証券報告書)。
北越コーポレーションは、1,479人のうち520人が新潟県新潟市東区の新潟工場、266人が三重県南牟婁郡紀宝町の紀州工場、215人が新潟県長岡市の長岡工場にいます(北越コーポレーション有価証券報告書)。中越パルプ工業は、778人のうち273人が富山県高岡市の高岡工場、272人が鹿児島県薩摩川内市の川内工場にいます(中越パルプ工業有価証券報告書)。
3社とも、提出会社の従業員の半数以上が、ここに挙げた工場で働いています。配属される可能性のある工場の場所は、応募の前に見ておきたい情報です。
平均年齢と平均勤続年数
平均年間給与は、平均年齢や平均勤続年数と並べて読むと意味が変わります。王子ホールディングスと特種東海製紙を除く6社の提出会社の数字は、2026年3月31日現在で次のとおりです。
- レンゴー:42.1歳・16.8年・818万1,928円
- 日本製紙:43歳10か月・21年0か月・692万699円
- 三菱製紙:47.52歳・24.18年・679万9,154円
- 中越パルプ工業:46.9歳・24.7年・648万9,988円
- 大王製紙:44.2歳・19.6年・637万2,617円
- 北越コーポレーション:45歳8か月・22年5か月・633万1,000円
6社の中で平均年齢が最も低いレンゴーが、平均年間給与は最も高くなっています。一方で、三菱製紙と中越パルプ工業は平均勤続年数が24年を超えています。年収の差は年齢の差だけでは説明できないので、3つの数字を並べてから比べてください。
有価証券報告書で製紙大手を確かめる手順

この記事に載せた会社ごとの数字は、金融庁のEDINETで公開されている有価証券報告書から取っています。次の3つの手順で、同じ数字にたどり着けます。
金融庁のEDINETで会社名を入れて書類を検索し、書類の種類が「有価証券報告書」で、事業年度が最も新しいものを開きます(金融庁)。同じ事業年度の訂正報告書が出ていれば、訂正された箇所もあわせて確かめます。
「経理の状況」の注記にある「セグメント情報等」で、事業ごとの外部顧客への売上高と、「関連情報」の地域ごとの売上高を確かめます。
「設備の状況」の「主要な設備の状況」で工場ごとの所在地と従業員数を、「従業員の状況」で提出会社の平均年齢、平均勤続年数、平均年間給与を確かめます。子会社の経営管理を主な業務とする持株会社の報告書には、2026年3月31日以後に終わる事業年度の分から、外国の会社を除く連結子会社のうち従業員数が最も多い会社の同じ数字も「最大人員会社」として載ります。その会社の従業員数が連結の従業員数の過半数に満たないときは、次に多い会社の数字も載ります(金融庁)。
紙の種類ごとの需要は、日本製紙連合会の「製紙産業の現状」で、国内需要や生産量の推移として公開されています(日本製紙連合会)。同じページでは、グラフィック用紙が減り続ける一方、板紙はeコマースの広がりなどを背景に比較的堅調に推移してきたものの、2025年は包装資材の削減や軽量化などでパッケージング用紙も減ったと説明されています。会社の報告書と業界の統計を並べると、需要が大きく減っている紙と、そうでない紙のどちらに会社の売上が寄っているかが分かります。
製紙業界の大手企業でよくある質問
製紙業界の大手企業について、就職活動で出やすい4つの疑問に、有価証券報告書と業界団体の数字で答えます。
- 製紙業界で売上高が一番大きい会社はどこですか
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王子ホールディングスです。2026年3月期の連結売上高は1兆8,617億円で、2位の日本製紙の1兆1,926億円を6,000億円以上上回っています(王子ホールディングス有価証券報告書)。
- 王子ホールディングスと王子製紙は別の会社ですか
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別の会社です。王子ホールディングスは2012年10月1日付で各事業を会社分割により100%子会社に引き継ぎ、持株会社へ移りました。王子製紙株式会社は、議決権の100%を王子ホールディングスが持つ子会社で、新聞用紙や印刷・出版・情報用紙などの製造・販売を行っています(王子ホールディングス有価証券報告書)。
- レンゴーは段ボールの会社ではないのですか
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段ボールの会社であり、段ボールの原料になる板紙を作る会社でもあります。板紙の製造・販売は同社や丸三製紙などが行い、段ボールの主原料としてグループ内にも供給されています(レンゴー有価証券報告書)。レンゴーは日本製紙連合会の正会員でもあります(日本製紙連合会)。
- 紙の需要はこれからも減るのですか
-
日本製紙連合会の見通しでは、2026年も減ります。2026年の紙・板紙の国内需要は約1,999万トンで、2025年の見込みより2.7%少なく、2019年と比べると21.2%少ない水準です。用途別では、グラフィック用紙とパッケージング用紙が減る一方、衛生用紙は2025年の見込みより0.1%増える見通しです(日本製紙連合会)。
何の紙で稼ぐ会社かを確かめて選ぼう
製紙業界の大手企業は、連結売上高で見ると王子ホールディングス、日本製紙、レンゴーの3社が1兆円を超え、大王製紙から特種東海製紙までの5社が900億円台から6,000億円台に並びます。順位は、どの会社を製紙会社として数えるかを決めてから有価証券報告書の連結売上高を並べれば、誰でも同じ結果を得られます。
会社ごとの違いが表れるのは、順位よりも中身です。新聞・印刷用の紙、段ボール原紙、家庭紙のどれで稼いでいるか、海外の比率はどれくらいか、工場はどこにあるか。気になる会社の有価証券報告書でセグメントと工場の一覧を開き、自分が扱う紙と働く場所を確かめてみてください。

