「作業療法士の職場選びは、理学療法士と同じリハビリ職の物差しで比べればよい」。介護老人保健施設の配置の決まりでも、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士はまとめて数えられているため、そう考える人もいるかもしれません。ところが、作業療法士は身体だけでなく精神や発達の領域でも働き、職場の届出の中には作業療法士1人で基準を満たせるものもあります。
働きやすさを見分ける手がかりは、その職場に作業療法士が何人いて、1日に何人を受け持つかです。作業療法士の人数と届出の種類は、医療情報ネットや地方厚生局の届出の名簿など、誰でも開ける公開情報で確かめられます。1日に受け持つ人数は、制度が定める標準と上限を知ったうえで、面接で尋ねて確かめます。
本記事では、作業療法士の職場が比べにくい理由から、働きやすい職場に共通する特徴、医療と介護で違う配置の決まり、自分で確かめる手順まで、就活キャリア研究所の視点で順を追ってお伝えします。
作業療法士の職場が比べにくい3つの理由
作業療法士の職場が比べにくいのは、働く領域が広いこと、仕事の範囲が法律の文言から読み取りにくいこと、医療と介護で配置の決まりが別々なことが重なるからです。
働く領域が身体・精神・発達・高齢期に分かれるから
日本作業療法士協会は、作業療法の対象を、身体、精神、発達、高齢期の障害や環境への不適応によって日々の作業に困難が生じている人などとし、作業療法は医療、保健、福祉、教育、職業などの領域で行われると定義しています(日本作業療法士協会)。
厚生労働省の令和5年医療施設調査では、2023年10月1日時点で病院で働く作業療法士は常勤換算で50,304.4人、このうち精神科病院が7,176.5人でした。精神科病院の理学療法士は431.1人で、精神科病院では、作業療法士の人数が理学療法士の16倍以上です。一般診療所の作業療法士は3,300.4人です(厚生労働省)。同じ作業療法士の求人でも、配属される領域で一日の仕事は大きく変わります。
仕事の範囲が法律の文言から読み取りにくいから
理学療法士及び作業療法士法は、作業療法を「身体又は精神に障害のある者に対し、主としてその応用的動作能力又は社会的適応能力の回復を図るため、手芸、工作その他の作業を行なわせること」と定めています(e-Gov法令検索)。
2010年4月30日の厚生労働省医政局長の通知は、この「手芸、工作」という文言から作業療法を手工芸と受け取る認識が広がっているとしたうえで、次の6つの業務が作業療法に含まれると示しました(日本作業療法士協会)。
- 移動、食事、排泄、入浴などの日常生活活動の訓練
- 家事や外出などの訓練
- 作業耐久性の向上や就労環境への適応などの職業関連活動の訓練
- 福祉用具の使用などに関する訓練
- 退院後の住環境への適応訓練
- 発達障害や高次脳機能障害などに対するリハビリテーション
これらの業務のどれを中心に担うかは職場によって違い、求人票の「作業療法士」という職種名だけでは分かりません。
医療と介護で配置の決まりが別々だから
病院や診療所のリハビリは診療報酬の施設基準で、介護老人保健施設や通所リハビリテーションは介護保険の人員の基準で、置く人数が決まります。介護老人保健施設と通所リハビリテーションの基準は理学療法士、作業療法士、言語聴覚士をまとめて数えるため、基準を満たしていても作業療法士がいるとは限りません。
診療報酬の施設基準は改定のたびに見直されます。この記事で取り上げる病院の基準は、2026年6月1日から適用された令和8年度改定の通知によるものです(厚生労働省)。
ホワイトな作業療法士の職場に共通する4つの特徴

働きやすい作業療法士の職場は、次の4つを面接で具体的に答えられます。どれも、公開情報か面接の質問で確かめられる点です。
- 担当する領域と配属先を説明できる
- 作業療法士が2人以上いる
- 1日に受け持つ人数の目安がある
- 研修と資格の取得を支えている
担当する領域と配属先を説明できる
担当する領域と配属先は、入職後の一日の流れを決めます。たとえば精神科作業療法は、精神疾患を持つ人の社会生活機能の回復を目的とし、患者1人当たり1日2時間を標準として行います。治療上の必要があれば、病棟や屋外など専用の施設以外で行うこともできます(厚生労働省)。
病院なら、どの病棟や外来を受け持つのか、併設の介護サービスに回ることがあるのかを尋ねてください。配属先の決め方と、別の領域へ移る機会があるかも聞いておくと、数年先の働き方まで見通せます。
作業療法士が2人以上いる
作業療法士が2人以上いるかどうかは、届出の基準を満たしていることだけでは分かりません。精神科作業療法の施設基準は「作業療法士は、専従者として最低1人が必要」としています。認知症患者リハビリテーション料の施設基準は、専従の常勤の理学療法士、作業療法士、言語聴覚士のいずれかが1名以上勤務していることを求めています(厚生労働省)。
作業療法士が1人だけの職場には、休んだ日の代わりを務める作業療法士も、同じ職種の相談相手もいません。求人票で人数が分からないときは、作業療法士の在籍人数と、同じ領域の経験が長い先輩がいるかを尋ねてください。
1日に受け持つ人数の目安がある
精神科作業療法では、1人の作業療法士が1日に取り扱う患者数は、概ね25人を1単位として2単位50人以内が標準です。施設基準でも、作業療法士1人に対して患者数は1日50人を標準とし、専用の施設の広さは作業療法士1人に対して50平方メートルを基準としています(厚生労働省)。
精神科デイ・ケアの大規模なものは、精神科医師と専従の3人の計4人で行う場合、患者数は1日50人が限度です。専従の3人には、作業療法士か、精神科ショート・ケアや精神科デイ・ケアの経験がある看護師のいずれか1人が含まれます。小規模なものは、精神科医師と専従の2人の計3人で1日30人が限度で、専従の2人は看護師1人と、作業療法士、精神保健福祉士、公認心理師などのいずれか1人です(厚生労働省)。
身体障害の領域の疾患別リハビリテーションでは、20分以上の個別療法を1単位とし、従事者1人の実施単位数は1日18単位を標準、1日24単位を上限としています。計画書の作成や記録、移動の時間は訓練時間に含まれません(厚生労働省)。面接で「1日に何人、何単位を担当していますか」と尋ねると、制度に沿った答えが返ってくるかが分かります。
研修と資格の取得を支えている
日本作業療法士協会は、認定作業療法士と専門作業療法士の制度を設けています。2026年10月1日時点で、認定作業療法士は2,149名、専門作業療法士は延べ180名です。専門作業療法士の分野は、手外科、がん、就労支援、精神科急性期、特別支援教育など12あります(日本作業療法士協会)。
日本作業療法士協会が認定する臨床実習指導施設は、同じ時点で236施設です(日本作業療法士協会)。実習生を受け入れている職場かどうかは、新人を指導する体制を尋ねるきっかけになります。
研修会や学会の参加費を誰が払い、参加した日を勤務として扱うかは、面接で尋ねておきたい点です。費用と勤務の扱いを文書で示せる職場は、作業療法士が学び続けることを前提にしています。
医療と介護で違う作業療法士の配置の決まり
作業療法士を何人置くかの決まりは届出や施設の種類ごとに違い、作業療法士として人数を決めているものと、理学療法士などとまとめて数えるものがあります。
回復期リハビリテーション病棟
回復期リハビリテーション病棟入院料1と2の施設基準は、病棟に専従の理学療法士3名以上、作業療法士2名以上、言語聴覚士1名以上などを常勤で配置することとしています。入院料3、4、5では、専従の理学療法士2名以上と作業療法士1名以上の常勤配置です。複数の病棟で届け出る場合は、病棟ごとに配置します(厚生労働省)。
障害児(者)リハビリテーション料
障害児(者)リハビリテーション料の施設基準は、専従の常勤の理学療法士か作業療法士が合わせて2名以上勤務していることを求めています。このほか、どちらか1名以上と、障害児(者)リハビリテーションの経験がある専従の常勤看護師1名以上を合わせて2名以上とする形でも満たせます。届け出られるのは、主に肢体不自由のある子どもや重症心身障害児が入所する医療型障害児入所施設、指定発達支援医療機関、リハビリの外来患者の概ね8割以上が対象の患者である医療機関のいずれかです(厚生労働省)。
この基準は、作業療法士だけで2名とは決めていません。届出の名前から分かるのはリハビリの専門職がいることまでで、作業療法士の人数は別に確かめる必要があります。
介護老人保健施設
介護老人保健施設には、理学療法士、作業療法士または言語聴覚士を、常勤換算方法で入所者の数を100で除して得た数以上置くことになっています。入所者の数は前年度の平均値です(e-Gov法令検索)。入所者が100人の施設なら、3つの職種を合わせて常勤換算1人で基準を満たします。令和6年10月1日時点で介護老人保健施設で働く作業療法士は9,313人で、理学療法士の15,035人を下回ります(厚生労働省)。定員29人以下の小規模な施設のうち、介護老人保健施設を本体とするサテライト型と、医療機関併設型には、本体の施設や併設の医療機関の職員で入所者の処遇が適切に行われるときは、3つの職種を置かなくてよいとする定めがあります。
通所リハビリテーション
通所リハビリテーションでは、専らリハビリテーションの提供に当たる理学療法士、作業療法士または言語聴覚士を、利用者が100またはその端数を増すごとに1以上置きます。事業所が診療所の場合は、通所リハビリテーションなどに1年以上従事した看護師を含めて常勤換算0.1以上とする別の定めがあります(e-Gov法令検索)。
訪問看護ステーション
訪問看護ステーションは、看護職員を常勤換算2.5以上置く一方で、理学療法士、作業療法士または言語聴覚士は「指定訪問看護ステーションの実情に応じた適当数」としています(e-Gov法令検索)。令和6年10月1日時点で訪問看護ステーションで働く作業療法士は12,308人で、介護老人保健施設の9,313人より多い人数です(厚生労働省)。利用者の自宅で作業療法を行う働き方なので、入職後に先輩と同行して訪問する期間があるか、相談できる作業療法士がいるかを確かめておきたいところです。
公開されている情報で作業療法士の職場を確かめる手順

作業療法士の人数と届出の種類は、厚生労働省と地方厚生局の公開情報で確かめられます。気になる職場が見つかったら、次の3つの手順で調べてみてください。
医療情報ネットで病院名を検索し、詳しい情報の画面にある「医療機関の人員配置」で、作業療法士と理学療法士の人数を確かめます。非常勤の人は常勤換算した人数で載っています(厚生労働省)。病院の報告の状況によっては、最新の内容が反映されていないこともあります。
病院の所在地を受け持つ地方厚生局のサイトで、施設基準の届出受理医療機関名簿を開きます。令和8年9月1日時点の関東信越厚生局の名簿では、精神科作業療法は「(精)」、認知症患者リハビリテーション料は「(認リハ)」、障害児(者)リハビリテーション料は「(障)」、脳血管疾患等リハビリテーション料(Ⅰ)は「(脳Ⅰ)」という略称で載っています(関東信越厚生局)。
介護老人保健施設、通所リハビリテーション、訪問看護ステーションは、介護サービス情報公表システムで事業所を探します(厚生労働省)。公表される事項には、職種別の従業者の数と、従業者1人当たりの利用者や入所者の数が含まれます(e-Gov法令検索)。
子どもの発達支援など障害福祉の事業所は、福祉医療機構の障害福祉サービス事業所検索で、名称や所在地から事業所の情報を探せます(福祉医療機構)。法人として厚生労働省の職場情報総合サイト「しょくばらぼ」に載っていれば、正社員の平均継続勤務年数や年次有給休暇取得率も確かめられます(厚生労働省)。
作業療法士の職場選びでよくある質問
- 作業療法士と理学療法士の違いは何ですか
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理学療法士及び作業療法士法では、理学療法は身体に障害のある人の主に基本的動作能力の回復を図るもの、作業療法は身体または精神に障害のある人の主に応用的動作能力または社会的適応能力の回復を図るものとされています。どちらの資格も、医師の指示の下に行うことを業とします(e-Gov法令検索)。
- 作業療法士は毎年何人が資格を取っていますか
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2026年2月23日に実施された第61回作業療法士国家試験では、受験者5,426人のうち4,947人が合格し、合格率は91.2%でした。新卒者の合格率は96.6%です(厚生労働省)。
- 資格がない人が作業療法士と名乗れますか
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名乗れません。理学療法士及び作業療法士法は、作業療法士でない人が、作業療法士という名称や、職能療法士など紛らわしい名称を使うことを禁じています(e-Gov法令検索)。
- 介護老人保健施設には作業療法士が必ずいますか
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必ずいるとは限りません。人員の基準は、理学療法士、作業療法士または言語聴覚士を合わせて、常勤換算で入所者の数を100で除して得た数以上とするものです(e-Gov法令検索)。作業療法士の人数は、介護サービス情報公表システムで事業所ごとに確かめてください(厚生労働省)。
リハビリ職ではなく作業療法士の人数で選ぼう
作業療法士の職場は、身体・精神・発達・高齢期と領域が広く、配置の決まりも医療と介護で別々です。しかも介護老人保健施設や通所リハビリテーションの決まりは理学療法士などとまとめて数えるため、基準を満たしている職場に作業療法士が何人いるかは、自分で確かめないと分かりません。
医療情報ネットで作業療法士の人数を見て、地方厚生局の名簿で届出の種類を確かめ、介護の事業所は介護サービス情報公表システムで調べる。そのうえで、配属先、1日に受け持つ人数、研修の費用と勤務の扱いを面接で尋ね、自分が続けられる職場を選んでいきましょう。

