就活や転職活動で企業研究を進めていると、「電通」という社名に何度も行き当たります。広告業界の代名詞として語られる一方で、「やばい」「ブラック」といった検索ワードとセットで目にすることも少なくありません。名前は知っていても、実際に何を手がけている会社で、どんな職種があり、なぜ良くも悪くも注目され続けているのかを正確に説明できる人は意外と多くないでしょう。
この記事では、電通の会社概要や事業内容、電通グループとの関係、実際の仕事内容、そして就活生の間で話題になりやすい労働環境の論点までを、企業研究の材料として整理していきます。表面的な評判だけで判断するのではなく、事実関係を押さえたうえで自分なりの志望動機や質問を組み立てる助けになれば幸いです。
電通とは日本最大手の広告代理店
電通は、テレビCMや新聞広告、Web広告といったあらゆる媒体を通じて企業のマーケティング活動を支援する広告代理店です。国内の広告業界では長年にわたり最大手の地位にあり、博報堂DYホールディングスと並んで「電博」と呼ばれるほど、業界の代表格として扱われています。
単なる広告制作会社ではなく、企業の課題を発見し解決策を設計する側面が強い点が電通の特徴です。テレビCMのような目に見える成果物の裏側には、市場調査やブランド戦略の立案といった、地味だが根幹を支える業務があります。
会社の基本情報
就活情報として押さえておきたいのは、電通という社名が指す会社が現在では2つに分かれているという点です。株式会社電通は国内の広告事業を担う事業会社で、本社は東京都港区東新橋に置かれています。英語表記は「Dentsu Inc.」です。
会社概要の詳細は電通の公式サイトでも公開されており、資本金や代表者、事業内容などを確認できます(電通ウェブサイト「会社概要」)。企業研究の一次情報として、選考前に一度は目を通しておくとよいでしょう。
電通グループとの関係
もう一つ知っておきたいのが株式会社電通グループの存在です。こちらは国内外のグループ会社を統括する持株会社で、電通はこの電通グループの傘下にある事業会社という位置づけになります。求人票や採用サイトによって「電通」表記と「電通グループ」表記が混在しているのは、この組織構造が背景にあるためです。
採用情報を調べる際は、応募先が事業会社の電通なのか、電通デジタルなどのグループ会社なのかによって職種や配属の傾向が変わってきます。募集要項に記載された法人名を確認する癖をつけておくと、入社後のミスマッチを防ぎやすくなります。
電通の沿革と持株会社体制への移行
電通の歴史をたどると、現在の事業構造がなぜこうなっているのかが見えてきます。長い歴史を持つ会社ほど、組織が複雑になりやすいものですが、電通も例外ではありません。
1901年創業からの歩み
電通の起源は1901年、広告取次業を営む会社と通信社が合流したところまでさかのぼります。当初は広告業と通信社業を兼ねる珍しい会社でしたが、時代の変化とともに広告専業の会社へと姿を変え、社名も現在の「電通」へと統一されていきました(電通ウェブサイト「歴史」)。
100年を超える歴史の中で、電通はテレビの普及期にはテレビCM市場を、インターネットの普及期にはデジタル広告市場を、それぞれ早い段階から手がけてきました。時代ごとに主要なメディアが変わっても、その都度主導的な立場を維持してきた点は、就活生が企業研究をする上でも押さえておく価値があるでしょう。
2020年、持株会社体制への移行
大きな転機となったのが2020年1月です。電通は純粋持株会社体制へ移行し、グローバル本社として株式会社電通グループが新設されました。これにより、国内事業を担う電通、デジタル領域に強みを持つ電通デジタル、海外事業を担う各国の現地法人などが、電通グループという傘の下に並ぶ形になっています(株式会社電通グループ「ビジネスヒストリー2020」)。
組織再編の背景には、国内広告事業に加えて、海外M&Aで獲得した事業を一体で経営していく必要があったという事情があります。単純に「電通=国内の広告代理店」という理解だけでは、グループ全体の事業規模を捉えきれない点に注意しておきたいところです。
電通の事業内容

電通の事業は「広告を作る会社」というイメージだけでは説明しきれないほど幅広くなっています。ここでは、就活生や転職者が仕事内容をイメージしやすいよう、代表的な事業領域を5つに整理して紹介します。
- マーケティング事業
- クリエイティブ事業
- メディア事業
- デジタルマーケティング事業
- プロモーション事業
マーケティング事業
クライアント企業が抱える経営課題やブランド課題を分析し、解決に向けた戦略を組み立てる仕事です。世の中の消費者行動や価値観の変化を読み取り、どんな商品やサービスをどう打ち出せば売れる仕組みが作れるかを設計します。派手なCM制作の裏側にある、地道な戦略設計の部分がここに当たります。
クリエイティブ事業
いわゆる「電通らしい仕事」として真っ先にイメージされやすいのがこの領域です。CMのコンセプトを考えるプランナー、言葉で価値を伝えるコピーライター、映像やデザインを手がけるアートディレクターなど、複数の専門職がチームを組んでひとつの広告を作り上げます。
メディア事業
テレビ、新聞、雑誌、デジタル広告など、どのメディアにどのくらいの予算をかけて広告を出すかを計画する仕事です。メディアの特性と広告効果を突き合わせて最適な出稿プランを組む、いわば広告の「投資配分」を担う領域といえます。
デジタルマーケティング事業
Web広告の運用やデータ分析、SNSを活用したキャンペーン設計などを担う領域です。この分野は主に電通デジタルという子会社が中心的に担っており、電通本体とは異なる専門組織で対応している点が特徴です。
プロモーション事業
店頭イベントやスポーツ・エンターテインメントに関連したプロモーション企画など、広告以外の手法で消費者との接点を作る仕事です。オリンピックや大型スポーツイベントに関連する企画で電通の名前を耳にすることがあるかもしれませんが、こうした案件の多くはこの領域の延長線上にあります。
電通グループの主なグループ会社
電通グループは、電通本体だけでなく多数のグループ会社によって構成されています。就活生にとっては、それぞれの会社がどんな役割を担っているのかを知っておくと、志望動機を組み立てる際の解像度が上がるはずです。
電通デジタル
デジタルマーケティングに特化した子会社で、戦略コンサルティングからシステム開発・運用まで一気通貫で手がけています。広告の企画だけでなく、データ活用や事業のDX支援に関わりたい人にとっては、電通本体よりもイメージに近い会社かもしれません。
電通総研
ITシステムの開発やコンサルティングを手がける会社で、広告というよりも情報システム分野に軸足を置いています。電通グループの中でも、広告色の薄いキャリアを描きたい人が選択肢に入れやすい会社です(電通総研「グループ会社一覧」)。
電通PRコンサルティングなど他のグループ会社
このほかにも、広報・PR領域を専門とする電通PRコンサルティングや、イベント制作を手がける会社、地方拠点を担う電通東日本のような会社まで、事業領域と地域の両面でグループ会社が広がっています。就活の際は、募集要項に記載された会社名を確認し、自分がやりたい仕事に近い法人を見極めることが欠かせません。
電通の仕事内容と職種

事業内容が幅広い分、電通で働く社員の職種も一様ではありません。ここでは、就活生の応募区分として代表的な職種を紹介します。
総合職(ビジネスプロデュース・営業)
クライアント企業の窓口となり、課題整理から提案、社内の各専門部署との調整、進行管理までを担う職種です。いわゆる営業職に近いポジションですが、単に広告枠を売る仕事ではなく、クライアントの経営課題そのものに向き合う場面が多いのが特徴です。社内外の関係者を巻き込みながらプロジェクトを前に進める力が求められます。
クリエイティブ職
コピーライター、CMプランナー、アートディレクターなど、広告表現そのものを作る専門職です。新卒採用でもクリエイティブ職として別枠の選考が設けられることが多く、ポートフォリオの提出やクリエイティブテストが課される点で、総合職とは選考プロセスが異なります。
デジタル・データ関連職
データ分析やデジタル広告運用、システム開発などを担う職種です。電通本体でもデジタル人材の採用は進んでいますが、より専門性の高いキャリアを目指す場合は、前述の電通デジタルや電通総研といったグループ会社が選考の対象になることもあります。志望する仕事内容によって、応募先の会社そのものを変える発想も持っておくとよいでしょう。
電通が「やばい」「ブラック」と言われる理由
「電通」と一緒に「やばい」「ブラック」といった言葉が検索される背景には、明確な出来事があります。ここは企業研究として避けて通れない論点なので、正確に押さえておきましょう。
2015年の労働問題とその後の対応
2015年12月、電通の新入社員が長時間労働を背景に自ら命を絶つという事件が起き、労働災害として認定されました。その後、2017年10月には東京簡易裁判所が労働基準法違反の罪で電通に罰金刑を言い渡し、この判決が確定しています(Wikipedia「電通社員過労自殺事件」)。
この事件は電通一社の問題にとどまらず、日本社会全体で長時間労働のあり方が問い直されるきっかけになりました。2018年に成立した働き方改革関連法によって、残業時間の上限に罰則付きの規制が設けられた背景にも、この一件が大きく関係しています。就活で「電通=ブラック」というイメージを目にしたら、その根拠がどの時期のどんな出来事に基づくものかを自分で確認しておくと、面接でも説得力のある受け答えができます。
働き方改革以降の変化
事件を受けて、電通は労働時間の管理体制やコンプライアンス体制の見直しを進めてきました。もっとも、こうした取り組みが十分かどうかは、口コミサイトや在籍者の発信によって評価が分かれているのが実情です。過去の評判だけで判断するのではなく、選考段階でOB・OG訪問や社員との対話を通じて、現在の働き方を自分の目で確かめる姿勢が欠かせません。
電通への就職・転職で押さえておきたい視点
ここまで見てきたように、電通は事業領域が広く、労働環境をめぐる論点も抱える会社です。志望動機を作る際は、以下のようなステップで情報を整理しておくと、企業研究に一貫性が生まれます。
電通本体と電通デジタルなどのグループ会社で、それぞれどんな仕事内容・職種があるかを整理し、自分がやりたい仕事に近いのはどの法人かを絞り込みます。
「電通=大手広告代理店」という漠然としたイメージだけでなく、自分が携わりたい事業領域(マーケティング・クリエイティブ・デジタルなど)を言語化し、志望動機に落とし込みます。
労働環境に関する報道や口コミは鵜呑みにせず、OB・OG訪問や説明会での質問を通じて、現在の働き方について自分なりに裏取りをします。
電通は選考倍率が高く、いわゆる「就職難易度」が高い企業として語られがちですが、倍率の高さだけを見て志望を決めたり諦めたりするのは早計です。事業内容や職種ごとに求められる資質は異なるため、まずは自分がどの領域で力を発揮したいのかを固めることが、遠回りに見えて一番の近道になります。
電通に関するよくある質問
- 電通と博報堂の違いは何ですか。
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どちらも日本を代表する広告代理店で、業界では「電博」とまとめて呼ばれることもあります。得意とする業界やクライアントとの関係の築き方に違いがあるとされますが、いずれも独立した別会社であり、資本関係はありません。
- 電通の英語表記や社名の由来は何ですか。
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電通の英語表記は「Dentsu Inc.」です。社名の「電通」は、前身にあたる通信社の事業に由来し、長い歴史の中で広告専業の会社として現在の名称に統一されてきました。
- 電通グループと電通は同じ会社ですか。
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同じではありません。株式会社電通グループは国内外のグループ会社を統括する持株会社で、株式会社電通はその傘下で国内の広告事業を担う事業会社です。求人票を確認する際は、応募先がどちらの法人かを見分けることが大切です。
電通は、広告制作という分かりやすいイメージの奥に、マーケティング戦略の設計からデジタル領域まで幅広い事業を抱える会社です。同時に、過去の労働問題という無視できない事実も抱えています。どちらか一方の情報だけで判断するのではなく、事業内容・グループ構造・働き方という複数の切り口から企業研究を進めることが、納得感のある就職活動や転職活動につながっていくはずです。

