「阪急阪神ホールディングスの子会社で、いちばん大きいのは阪急電鉄だろう」。グループの名前に鉄道会社の社名が入っているので、そう考える人は多いはずです。ところが、2026年3月期の各社単体の営業収益で並べると、首位は旅行事業の阪急交通社です。阪急交通社の2,920億5,800万円は、阪急電鉄の2,218億4,100万円を上回ります。
年収で比べようとしても、阪急阪神ホールディングスの有価証券報告書に平均年間給与が載る子会社は、阪急電鉄、阪急交通社、阪神電気鉄道の3社だけです。阪急電鉄は794万3,736円、阪神電気鉄道は659万1,588円、阪急交通社は611万8,594円で、同じ鉄道会社でも阪急電鉄と阪神電気鉄道で約135万円の差があります。阪急百貨店と阪神百貨店を核にするエイチ・ツー・オー リテイリングや、映画の東宝は、子会社ではなく持分法適用関連会社です。
本記事では、営業収益が分かる6社の顔ぶれから、子会社の年収が分かりにくい理由、子会社を比べる4つのポイント、公開資料で確かめる手順まで、阪急阪神ホールディングスの2026年3月期の有価証券報告書をもとに、就活キャリア研究所の視点で順にお伝えします。
営業収益が分かる阪急阪神ホールディングスの子会社6社のランキング
阪急阪神ホールディングスの子会社のうち、2026年3月期の有価証券報告書で単体の営業収益が分かる6社を並べると、次のとおりです。事業は、同じ報告書の「関係会社の状況」に載る主要な事業の内容です。
- 阪急交通社:2,920億5,800万円、旅行事業
- 阪急電鉄:2,218億4,100万円、鉄道事業、賃貸事業等、住宅事業、ステージ事業
- 阪急阪神不動産:1,823億3,200万円、賃貸事業等、住宅事業、海外不動産事業
- 阪神電気鉄道:930億2,700万円、鉄道事業、賃貸事業等、住宅事業、スポーツ事業
- アイテック阪急阪神:402億9,700万円、情報・通信事業
- 阪神タイガース:322億7,400万円、スポーツ事業
(参考:阪急阪神ホールディングス 第188期 有価証券報告書(EDINET))
阪急交通社、阪急電鉄、阪急阪神不動産の3社は、阪急阪神ホールディングスの連結営業収益に占める割合が10%を超えるため、主要な損益の数字が報告書に載っています。アイテック阪急阪神と阪神タイガースの2社は、阪神電気鉄道の連結営業収益に占める割合が10%を超えるため、阪神電気鉄道の情報の中に数字が載っています。阪神電気鉄道の数字は、阪急阪神ホールディングスの社債を保証する会社として報告書に載る経営指標です。阪急阪神エクスプレスや阪急阪神ホテルズなど、ほかの子会社の単体の営業収益は報告書に載っていないため、この6社が子会社全体の上位6社とは限りません。
営業収益の順位は、利益の順位とは一致しません。経常利益で比べると、阪急電鉄が369億8,100万円で最も大きく、阪神電気鉄道の213億6,100万円、阪急阪神不動産の175億4,200万円が続き、阪急交通社は58億5,000万円です。売上の大きさで選ぶのか、利益や働く人の数で選ぶのかで、上位の顔ぶれが変わります。
阪急交通社
当時の阪急交通社は、1960年10月に阪急電鉄の航空代理店部門の営業を譲り受けました。2008年4月には旅行部門を会社分割で新しい会社に移し、新しい会社が阪急交通社の商号を引き継いでいます。阪急阪神ホールディングスが議決権の100.0%を持ち、グループの5つの中核会社の1つです。
阪急電鉄
阪急電鉄は、1989年12月に㈱アクトシステムズとして設立され、2004年3月に阪急電鉄分割準備に商号を変えた会社です。2005年4月に会社分割で鉄道事業その他のすべての営業を引き継ぎ、阪急電鉄に商号を変えました。同時に、それまでの阪急電鉄は阪急ホールディングスに商号を変え、純粋持株会社になりました。資本金は1億円で、鉄道の車両は1,297両あります。
阪急阪神不動産
阪急阪神不動産の前身の阪急不動産は、1961年10月に大阪証券取引所に上場し、2002年3月に上場を廃止しました。2002年4月には株式交換で、阪急阪神ホールディングスの前身の阪急電鉄の完全子会社になっています。2018年4月に阪急電鉄と阪神電気鉄道の不動産事業を会社分割などで引き継ぎ、阪急阪神不動産に商号を変えました。
阪神電気鉄道
阪神電気鉄道は、1899年6月に摂津電気鉄道として設立された会社です。1949年5月に東京と大阪の証券取引所に上場し、2006年9月に上場を廃止しました。2006年10月に株式交換で阪急ホールディングスの完全子会社になり、阪急ホールディングスは阪急阪神ホールディングスに商号を変えました。2026年3月期末の単体の従業員は1,353人で、資本金は293億8,400万円です。
アイテック阪急阪神
アイテック阪急阪神は、1987年7月に阪神エンジニアリングの電子計算機事業部門を分離・独立して設立されたアイテック阪神が前身です。阪急阪神ホールディングスの議決権の所有割合は70.0%で、そのうち55.7%は阪神電気鉄道を通じた間接所有です。東京証券取引所グロース市場に上場するユミルリンクの議決権の51.8%を持つ親会社でもあります。
阪神タイガース
阪神タイガースは、1935年12月に阪神電気鉄道が設立した㈱大阪野球倶楽部が前身です。阪神電気鉄道が議決権の100.0%を持ち、阪神電気鉄道とは野球場の賃貸などの取引があります。球団創設90周年を迎えた2025年のシーズンには、2年ぶりのリーグ優勝を果たし、日本シリーズに進出しました。
阪急阪神ホールディングスの子会社の年収が分かりにくい3つの理由
阪急阪神ホールディングスの子会社の年収が外から分かりにくいのは、報告書に平均年間給与が載る子会社が3社しかなく、親会社の数字は持株会社の241人の平均で、グループ会社の一覧に子会社ではない会社も並ぶからです。
平均年間給与が載る子会社が3社だけだから
2026年3月期の報告書には、子会社のうち従業員数が最も多い阪急電鉄と、その次に多い阪急交通社について、平均年間給与などが載っています。社債を保証する会社として載る阪神電気鉄道にも、同じ項目があります。数字はどれも2026年3月31日時点で、賞与と基準外賃金を含みます。
- 阪急電鉄:794万3,736円、3,118人、平均42.8歳、平均勤続20.4年
- 阪急交通社:611万8,594円、1,945人、平均41.8歳、平均勤続14.9年
- 阪神電気鉄道:659万1,588円、1,353人、平均42.2歳、平均勤続20.0年
同じ日の連結の従業員は23,867人です。阪急電鉄、阪急交通社、阪神電気鉄道、阪急阪神ホールディングス単体の4社を合わせた6,657人を除くと、17,210人が残ります。グループで働く人の7割余りは、この報告書では平均年収が分からない会社にいます。
持株会社の919万円は241人の平均だから
阪急阪神ホールディングス単体の平均年間給与は、2026年3月31日時点で919万8,043円です。従業員は241人、平均年齢は42.4歳、平均勤続年数は17.5年です。
阪急阪神ホールディングスは純粋持株会社で、従業員数には関係会社などへの出向者が入らず、受け入れた出向者が入ります。他社からの出向者の勤続年数は、出向元での年数を通算しています。鉄道や旅行の会社に応募するときの年収の目安として、この数字を当てはめることはできません。
百貨店や東宝は子会社ではないから
阪急阪神ホールディングスのグループ会社一覧には、阪急阪神東宝グループとして、阪急百貨店と阪神百貨店を核にするエイチ・ツー・オー リテイリングのグループと、東宝のグループが並んでいます。ところが報告書では、エイチ・ツー・オー リテイリングの議決権の所有割合は20.1%、東宝は22.6%で、どちらも持分法適用関連会社です。
グループ会社一覧の「その他の事業」に載る神戸電鉄も、議決権の所有割合が29.0%の持分法適用関連会社です。3社は自社で有価証券報告書を出していますが、阪急阪神ホールディングスの子会社の年収として比べることはできません。
阪急阪神ホールディングスの子会社を比べる4つのポイント

阪急阪神ホールディングスの子会社は、年収の代わりに、親会社の有価証券報告書で確かめられる次の4つのポイントで比べられます。3つ目と4つ目の数字は、連結子会社のうち32社について載っており、会社によっては数字のない項目もあります。
- 議決権の所有割合
- 車両の数
- 女性管理職の割合
- 男女の賃金の差異
議決権の所有割合
議決権の所有割合を見ると、阪急阪神ホールディングスがその会社をどこまで持っているかが分かります。報告書の「関係会社の状況」に社名が載る連結子会社40社のうち、所有割合が100%に満たないのは12社です。表で括弧に入った数字は、ほかの子会社を通じた間接所有の割合で、合計の内数です。
中核会社の阪急阪神エクスプレスは66.0%で、2018年4月にセイノーホールディングスを引受先とする第三者割当増資を行っています。鉄道では、北大阪急行電鉄が54.0%、神戸高速鉄道が51.7%です。情報・通信事業のベイ・コミュニケーションズは45.3%ですが、阪急阪神ホールディングスが実質的に支配しているため子会社です。
車両の数
報告書の「主要な設備の状況」には、鉄道、バス、タクシーの子会社ごとの車両の数が載っています。鉄道は阪急電鉄が1,297両、阪神電気鉄道が354両、北大阪急行電鉄が100両、能勢電鉄が52両です。
バスは阪急バスが650両、阪神バスが329両で、阪急バスはほかにリース契約で使う車両が188両あります。タクシーは阪急タクシーが443両、阪神タクシーが204両です。
女性管理職の割合
管理職に占める女性の割合は、阪急阪神ホールディングス単体が7.6%です。主要な連結子会社6社では、阪急阪神ホテルズの11.3%が最も高く、阪急交通社の7.8%、阪急阪神不動産の6.8%、阪急阪神エクスプレスの4.8%が続き、阪急電鉄と阪神電気鉄道は0.0%です。
そのほかの子会社では、阪神ステーションネットの66.7%、宝塚歌劇団の64.0%、阪急阪神ビジネストラベルの50.0%が高くなっています。女性管理職の割合の欄が「−」の会社は、その項目を公表する予定がありません。
男女の賃金の差異
男女の賃金の差異は、男性の賃金を100としたときの女性の賃金の割合です。全労働者で比べると、主要な連結子会社6社では、阪神電気鉄道の72.0%が最も高く、阪急交通社の48.2%が最も低くなっています。阪急阪神ホールディングス単体は73.0%です。
主要な連結子会社6社は、制度上、性別による賃金の差を設けていません。差異は勤続年数や年齢などの構成の偏りによるもので、賃金の水準が高い管理職層で女性の割合が低くなっています。この割合は男女の賃金の比率で、賃金の水準そのものではないため、割合が高い子会社でも年収が高いことにはなりません。
公開資料で阪急阪神ホールディングスの子会社を確かめる手順

阪急阪神ホールディングスの子会社を自分で調べるときは、親会社の有価証券報告書、志望する会社の資料や公式サイト、親会社のIRニュースの順に開きます。
金融庁のEDINETの書類簡易検索で「阪急阪神ホールディングス」の有価証券報告書を開きます。「関係会社の状況」で議決権の所有割合と主要な損益を、「従業員の状況等」で平均年間給与を、「主要な設備の状況」で車両の数を確かめます。
志望する会社がユミルリンクなら、同じ書類簡易検索で同社の有価証券報告書を開きます。それ以外の会社は、阪急阪神ホールディングスのグループ会社一覧から各社の公式サイトを開き、会社概要を確かめます。
阪急阪神ホールディングスのIRニュース一覧で、報告書の提出後に発表された子会社の再編などのお知らせがないかを確かめます。
STEP1の報告書は、主要な連結子会社6社の女性管理職の割合などを「従業員の状況等」に、そのほかの子会社26社の分を「提出会社の参考情報」に分けて載せています。阪急電鉄と阪神電気鉄道の経営指標や沿革、阪神電気鉄道の平均年間給与は、「提出会社の保証会社等の情報」にあります。
グループ会社一覧と子会社の数
2026年3月期の報告書では、連結子会社は111社、持分法を適用した関連会社は15社です。このうち宝塚歌劇団は、2025年7月に株式会社になり、この期から連結子会社に加わりました。連結の範囲から除かれている子会社もあり、主なものは阪急メディアックスです。
グループ会社一覧には、子会社のほかに、持分法適用関連会社の西大阪高速鉄道や神戸電鉄、公益財団法人や学校法人も並んでいます。志望する会社が子会社かどうかは、STEP1の「関係会社の状況」か「事業の内容」で確かめましょう。
阪急阪神ホールディングスの子会社に関するよくある質問
阪急阪神ホールディングスの子会社について、会社の数や上場の有無など、4つの疑問に答えます。
- 阪急阪神ホールディングスの子会社は何社ありますか
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2026年3月期の有価証券報告書では、連結子会社が111社です。このほかに、連結の範囲から除かれている非連結子会社があります。関連会社のうち持分法を適用している会社は15社で、エイチ・ツー・オー リテイリング、西大阪高速鉄道、神戸電鉄、東宝などが含まれます。
- 上場している子会社はありますか
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報告書の「関係会社の状況」で、有価証券報告書を提出している会社の印が付いた子会社は、ユミルリンクだけです。ユミルリンクは2021年9月に東京証券取引所マザーズに上場し、2022年4月からグロース市場の会社です。同社単体の平均年間給与は、2025年12月31日時点で652万8,520円、従業員は141人です。上場しているエイチ・ツー・オー リテイリング、神戸電鉄、東宝は、子会社ではなく持分法適用関連会社です。
- 宝塚歌劇団は阪急阪神ホールディングスの子会社ですか
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子会社です。宝塚歌劇団は2025年7月に株式会社になり、2026年3月期から連結子会社に加わりました。2026年3月期の女性管理職の割合は64.0%、全労働者の男女の賃金の差異は78.2%です。
- 阪神タイガースはどの会社の子会社ですか
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阪神電気鉄道が議決権の100.0%を持つ子会社です。阪急阪神ホールディングスから見ると、議決権の100.0%がすべて間接所有の子会社にあたります。阪急阪神ホールディングスは、2006年10月の経営統合で阪神電気鉄道を完全子会社にしています。
子会社は営業収益と人の指標で見比べよう
阪急阪神ホールディングスの子会社のうち営業収益が分かる6社を、2026年3月期の単体の営業収益で並べると、阪急交通社の2,920億5,800万円、阪急電鉄の2,218億4,100万円、阪急阪神不動産の1,823億3,200万円が上位に並びます。子会社のうち平均年収が親会社の報告書で分かるのは阪急電鉄、阪急交通社、阪神電気鉄道の3社で、上場するユミルリンクを加えると4社です。百貨店のエイチ・ツー・オー リテイリングと映画の東宝は子会社ではありません。
年収の代わりに比べられるのが、議決権の所有割合と車両の数、32社が載る女性管理職の割合や男女の賃金の差異です。志望する子会社が決まったら、阪急阪神ホールディングスの報告書と会社の公式サイトを開き、同じ時点・同じ数え方の数字どうしを並べてみてください。

