「日本郵船の子会社は、船で荷物を運ぶ海運会社がほとんど」。日本郵船は日本を代表する海運会社なので、子会社も船を動かす会社が中心だと考える人もいるでしょう。ところが、2026年3月期の有価証券報告書に社名が載る国内の連結子会社を資本金で並べると、上位2社はどちらも物流事業の会社です。1位は郵船ロジスティクスグローバルマネジメントの541億円、2位は郵船ロジスティクスの43億100万円です。
働く人の数でも、物流事業が大きな割合を占めます。2026年3月31日時点の連結の従業員39,830人のうち、物流事業で働く人は30,395人です。一方で、報告書で平均年間給与が分かるのは日本郵船本体の1,554万5,044円だけで、子会社の年収は載っていません。
本記事では、資本金で並べた子会社の顔ぶれから、年収が分かりにくい理由、女性管理職の割合などで子会社を比べる方法、公開資料で確かめる手順まで、就活キャリア研究所の視点で順にお伝えします。
日本郵船の国内子会社を資本金で並べたランキング
報告書に社名が載る日本郵船の国内子会社を資本金で並べると、1位と2位が物流事業の会社で、3位以下にはばら積み船やタンカー、港の仕事を担う会社が続きます。2026年4月の統合を反映した上位10社は、次のとおりです。
- 郵船ロジスティクスグローバルマネジメント:541億円、物流事業
- 郵船ロジスティクス:43億100万円、物流事業
- NYKバルク・プロジェクト:21億円、ドライバルク事業
- ユニエツクスNCT:9億3,400万円、定期船事業
- NYK ENERGY OCEAN:5億円、エネルギー事業
- NYKバルクシップパートナーズ(旧八馬汽船):5億円、ドライバルク事業
- 郵船商事:5億円、その他事業
- 北条総合開発:4億9,800万円、定期船事業
- 新日本海洋社:4億9,000万円、定期船事業
- 近海郵船:4億6,500万円、物流事業
並べたのは、2026年3月期の報告書の「関係会社の状況」に社名が載る国内の連結子会社です。資本金と事業の区分は、2026年3月31日時点のこの表の数字です(EDINET)。5位から7位の3社は、資本金がいずれも5億円で同じです。
表の八馬汽船は、2026年4月1日に旭海運と三菱鉱石輸送を合併し、NYKバルクシップパートナーズとして発足しました(NYKバルクシップパートナーズ)。合併でなくなった三菱鉱石輸送(資本金15億円)と旭海運(4億9,500万円)は、表には載っていますが、上の10社には入れていません。
物流事業を担う郵船ロジスティクスの2社
2位の郵船ロジスティクスは、1996年11月に株式を店頭公開した郵船航空サービスが、2010年10月に社名を変えた会社です。2005年2月に東京証券取引所の市場第一部に上場しましたが、2018年1月に上場を廃止し、同年2月に日本郵船の完全子会社になりました(EDINET)。
1位の郵船ロジスティクスグローバルマネジメントは、2025年1月に日本郵船から郵船ロジスティクスの全株式を引き継いだ会社です。そのため報告書では、日本郵船が持つ郵船ロジスティクスの議決権100%は、すべて間接所有として書かれています。郵船ロジスティクスグローバルマネジメントは特定子会社に当たり、日本郵船から融資などの資金援助を受けています(EDINET)。
2026年3月期の事業の区分ごとの売上高では、物流事業の8,047億円が最も大きくなっています。この金額には、事業の区分の間の取引も含まれます(EDINET)。
NYKバルク・プロジェクトとNYKバルクシップパートナーズ
3位のNYKバルク・プロジェクトは、2013年10月に日之出郵船とNYKグローバルバルクが合併してできた会社で、2016年10月に今の社名になりました。資本金は21億円で、日本郵船が議決権の100%を持ちます(EDINET)。会社概要の従業員数は190名で、いつ時点の数字かは書かれていません(NYKバルク・プロジェクト)。
旭海運、八馬汽船、三菱鉱石輸送の3社は、2025年10月28日に事業統合を目的とした合併契約を結びました(日本郵船)。NYKバルクシップパートナーズは3社の人材を集めた会社で、日本郵船が100%を持ち、2026年4月1日時点の保有隻数は21隻、船舶管理隻数は87隻です(日本郵船)。日本郵船の2026年3月期の報告書は、この会社をグループのドライバルク船事業の中核会社と紹介しています(EDINET)。
NYK ENERGY OCEAN
5位のNYK ENERGY OCEANは、ENEOSオーシャンの原油タンカー以外の海運事業を引き継ぐ会社です。日本郵船は2025年4月にこの会社の株式の80%を取得しました(EDINET)。LPG船やケミカルタンカー、プロダクトタンカーで海上輸送を行っています(NYK ENERGY OCEAN)。
会社概要では、残りの20%をENEOSオーシャンが持ち、2026年4月1日時点の従業員は陸上95名と海上27名の計122名です(NYK ENERGY OCEAN)。
荷役や燃料、ゴルフ場などを営む子会社
4位のユニエツクスNCTは日本郵船の船の荷役を請け負い、9位の新日本海洋社は日本郵船が運航する船の曳船の作業を受け持ちます。7位の郵船商事は、日本郵船に船用品や燃料油などを納めています(EDINET)。郵船商事の会社概要には、2026年3月31日時点の従業員が112名、2026年3月期の売上高が1,169億円と書かれています(郵船商事)。
10位の近海郵船は、常陸那珂と苫小牧などを結ぶRORO船の定期航路を持つ会社で、従業員は2025年4月時点で61名です(近海郵船)。
8位の北条総合開発は、報告書では定期船事業に区分されていますが、愛媛県松山市のゴルフ場、北条カントリー倶楽部を運営する会社です(北条カントリー倶楽部)。事業の区分の名前だけで、その会社の仕事を決めつけないようにしましょう。
日本郵船の子会社の年収が分かりにくい3つの理由
日本郵船の子会社の年収が外から分かりにくいのは、有価証券報告書を出す子会社がなく、報告書の年収は日本郵船本体の社員だけの平均で、子会社の人数も「従業員の状況」では事業の区分ごとにしか載らないからです。
有価証券報告書を出す子会社がないから
有価証券報告書の「従業員の状況」に載る平均年間給与は、報告書を出した会社自身の従業員の平均です。日本郵船の2026年3月期の報告書の「関係会社の状況」では、有価証券報告書を提出している会社に印が付いています。印が付いているのは持分法適用会社のNSユナイテッド海運と共栄タンカーで、連結子会社には1社もありません(EDINET)。
郵船ロジスティクスも、2018年1月に上場を廃止しています。日本郵船の子会社の平均年収を、有価証券報告書の数字で並べることはできません。
日本郵船の年収は本体の社員だけの平均だから
日本郵船単体の平均年間給与は、2026年3月31日時点で1,554万5,044円です。従業員数は1,370人で、平均年齢は37.8歳、平均勤続年数は13.9年、前の事業年度からの増減率はプラス8.3%です。この金額は、基本給、賞与、基準外賃金などを含みます(EDINET)。
従業員数の1,370人は、日本郵船から他社への出向者を除き、他社から日本郵船への出向者を含む人数です。平均年齢、平均勤続年数、平均年間給与の計算には、他社からの出向者を含めていません。1,554万5,044円は、子会社に入社した人の給与の目安にはなりません。
子会社の人数が事業の区分でまとめて載るから
報告書の「従業員の状況」は、連結の従業員数を会社ごとではなく、事業の区分ごとに載せています。2026年3月31日時点では、連結の39,830人のうち物流事業が30,395人で、4分の3を超えます。臨時の従業員(年間の平均人員で19,237人)は、この人数に含まれていません(EDINET)。
同じ報告書で日本郵船単体の人数を見ると、物流事業の従業員は1人です。物流事業で働く3万人あまりは、ほぼ全員が子会社の社員で、その多くは海外の子会社で働いています。報告書の「主要な設備の状況」に載る従業員数は、北米・欧州・アジアの主な物流子会社で合わせて2万人を超え、国内の郵船ロジスティクスは1,490人です(EDINET)。ほかの子会社1社ずつの人数は、各社の会社概要で確かめることになります。
日本郵船の子会社を比べる4つのポイント

日本郵船の子会社は、年収の代わりに、報告書で確かめられる次の4つのポイントで比べられます。2つ目から4つ目は、報告書にある子会社13社と日本郵船単体の表で確かめられます。
- 議決権の所有割合
- 女性管理職の割合
- 男性の育休取得率
- 男女の賃金の差異
議決権の所有割合
報告書に社名が載る国内の連結子会社48社のうち39社は、日本郵船が議決権の100%を持っています。この割合には、ほかの子会社を通じて持つ間接所有の分も含まれます(EDINET)。
残りの9社は、日本郵船とその子会社のほかにも、議決権を持つ株主がいる会社です。たとえばエム・ワイ・ターミナルズ・ホールディングス、カメリアライン、日本コンテナ輸送の3社は51%、NYK ENERGY OCEANは80%です。100%でない会社では、残りの株主がどこかを会社概要で確かめておきましょう。
女性管理職の割合
管理職に占める女性の割合は、日本郵船単体が15.4%です。日本郵船は2030年に30%にする目標を掲げています。子会社13社ではトランスコンテナの36.8%が最も高く、NYK BUSINESS SYSTEMSの35.0%、郵船アカウンティングの30.8%が続きます(EDINET)。
低いほうは旭運輸の5.0%、三洋商事の5.3%、郵船港運の5.9%です。郵船ロジスティクスとNYKバルク・プロジェクトは14.6%、郵船ロジスティクスグローバルマネジメントは13.9%、ユニエツクスNCTは13.7%でした。
男性の育休取得率
男性の育児休業取得率は、日本郵船単体が85.9%です。子会社13社のうち数字が載っているのは6社です。NYK BUSINESS SYSTEMSと郵船アカウンティングは100.0%です。ほかの4社は、NYKバルク・プロジェクトが33.3%、ユニエツクスNCTが30.8%、郵船ロジスティクスが30.0%、郵船ロジスティクスグローバルマネジメントが25.0%です(EDINET)。
単体と子会社では、計算のしかたが違います。単体は育児・介護休業法の施行規則の第71条の6第1号による育児休業等の取得割合で、子会社は同じ条の第2号による、育児休業等と育児目的休暇を合わせた取得割合です。単体と子会社の数字を、そのまま並べて比べないようにしましょう。
男女の賃金の差異
男女の賃金の差異は、男性の賃金に対する女性の賃金の割合です。全労働者で比べると、日本郵船単体は74.8%です。子会社で数字が載っているのは6社で、最も高いのはNYKバルク・プロジェクトの88.4%です。三洋商事の88.3%、トランスコンテナと郵船ロジスティクスの78.4%、ユニエツクスNCTの74.4%、郵船ロジスティクスグローバルマネジメントの71.3%が続きます(EDINET)。
日本郵船単体の正規雇用労働者を職位ごとに見ると、部長級は94.2%、課長級は98.2%、非管理職等は92.1%です。報告書は、全体の差異は役職ごとの男女の比率から生じていると説明しています。
公開資料で日本郵船の子会社を確かめる手順

日本郵船の子会社を自分で調べるときは、日本郵船の有価証券報告書、グループ会社一覧から開く子会社の会社概要、日本郵船のニュースリリースの順に開きます。
金融庁のEDINETで「日本郵船」の有価証券報告書を開きます(EDINET)。「関係会社の状況」で資本金と議決権の所有割合を、「従業員の状況」で事業の区分ごとの従業員数と日本郵船単体の平均年間給与を、その後ろの表で子会社13社の女性管理職の割合などを確かめます。
日本郵船のニュースリリースで、報告書の後に発表された子会社の統合や新設を確かめます(日本郵船)。
STEP2のグループ会社一覧には、連結子会社でない会社も載っています。たとえば郵船クルーズや郵船コーディアルサービスは一覧に載っていますが、報告書では持分法適用会社の表に入っています(EDINET)。一覧で見つけた会社が子会社かどうかは、報告書の「関係会社の状況」と照らし合わせて確かめましょう。
STEP3が要るのは、報告書の表が決算日の時点の社名で書かれているからです。2026年3月期の報告書は2026年6月16日に提出されましたが、表には2026年4月に統合された旭海運、八馬汽船、三菱鉱石輸送がそれぞれ載っています。
日本郵船の子会社に関するよくある質問
日本郵船の子会社について、会社の数や上場の有無など、4つの疑問に答えます。
- 日本郵船の子会社は何社ありますか
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2026年3月期の有価証券報告書では、連結子会社は575社です。「関係会社の状況」には社名が載る会社のほかに、船舶保有・貸渡会社311社と、その他40社がまとめて書かれています。持分法を適用している会社は、非連結子会社3社と関連会社243社です(EDINET)。
- 上場している子会社はありますか
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2026年3月期の報告書の「関係会社の状況」を見る限り、ありません。金融商品取引所に株式を上場している会社は、原則として有価証券報告書を提出しなければなりません(e-Gov法令検索)。2018年1月に上場を廃止した郵船ロジスティクスも含め、日本郵船の連結子会社には提出している会社がありません。提出しているのは持分法適用会社のNSユナイテッド海運と共栄タンカーで、日本郵船の議決権の所有割合は18.59%と30.05%です(EDINET)。ただし日本郵船は2026年7月31日に、NSユナイテッド海運を連結子会社にし、株主を日本郵船と日本製鉄だけにする計画を発表しました。国内外の競争法の手続きを終えたうえで、2026年11月下旬から12月下旬ごろに公開買付けを始める予定としており、計画どおり進めば同社の株式は上場廃止となる見込みです(日本郵船)。
- 郵船クルーズは日本郵船の子会社ですか
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2026年3月期の報告書では、郵船クルーズは連結子会社ではなく、持分法適用会社の表に載っています。日本郵船の議決権の所有割合は50.00%です。定期コンテナ船事業のOCEAN NETWORK EXPRESSも持分法適用会社です。同社を100%子会社とするオーシャンネットワークエクスプレスホールディングスについて、日本郵船の議決権の所有割合は38.00%です(EDINET)。
- 日本貨物航空は日本郵船の子会社ですか
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子会社ではありません。日本郵船は2025年8月1日に、日本貨物航空とANAホールディングスの株式交換によって、日本貨物航空の全株式をANAホールディングスに譲渡しました。そのため、2026年3月期の第2四半期以降の業績に日本貨物航空は含まれていません(EDINET)。
子会社は出資の割合と報告書の数字で確かめよう
2026年3月期の報告書に社名が載る日本郵船の国内子会社を資本金で並べると、上位は郵船ロジスティクスグローバルマネジメントの541億円と郵船ロジスティクスの43億100万円です。連結の従業員の4分の3を超える30,395人も、物流事業で働いています。連結子会社には有価証券報告書を出している会社がないため、子会社の平均年収を有価証券報告書の数字で並べることはできません。日本郵船単体の1,554万5,044円も、他社から受け入れた出向者を除いた、日本郵船で働く社員の平均です。
年収の代わりに比べられるのが、議決権の所有割合と、報告書の子会社13社の表で確かめられる女性管理職の割合、男性の育休取得率、男女の賃金の差異です。志望する子会社が決まったら、日本郵船の報告書とその会社の会社概要を開き、子会社かどうかと、同じ時点の数字どうしを確かめてみてください。

