「総合商社でいちばん稼いでいるのは、売上がいちばん大きい三菱商事のはず」。三菱商事の2026年3月期の連結の収益は18兆9,159億円で、総合商社の大手7社の中で最も大きいため、そう考える人もいるでしょう。ところが、同じ年度の当期利益で並べると、首位は伊藤忠商事の9,002億円で、三菱商事は三井物産に次ぐ3位です。
日本貿易会が商社の統計で集計する7社を2026年3月期の連結の収益で並べると、1位は三菱商事、2位は伊藤忠商事の14兆8,230億円、3位は三井物産の13兆9,952億円です。収益で4位の豊田通商は、当期利益では6位になります。
本記事では、7社の収益の順位から、ランキングが分かりにくい理由、大手を見比べる4つの視点、有価証券報告書で確かめる手順まで、就活キャリア研究所の視点で順にお伝えします。
総合商社業界の大手企業ランキングと7社の収益
日本貿易会が商社の統計で集計している7社を、2026年3月期の連結の収益の大きい順に並べると、次のとおりです。億円未満は切り捨てています。
- 三菱商事:18兆9,159億円
- 伊藤忠商事:14兆8,230億円
- 三井物産:13兆9,952億円
- 豊田通商:11兆5,619億円
- 丸紅:8兆2,658億円
- 住友商事:7兆3,372億円
- 双日:2兆7,573億円
数字は、各社が2026年6月に提出した有価証券報告書の「主要な経営指標等の推移」に載る連結の収益です。7社とも決算期は3月で、2025年4月1日から2026年3月31日までの1年間の数字です。7社とも国際会計基準(IFRS)で連結財務諸表を作っていて、「売上高」ではなく「収益」の金額を載せています。
(参考:商社の強み(日本貿易会)、2025年度 有価証券報告書(三菱商事)、第102期 有価証券報告書(伊藤忠商事)、第107期 有価証券報告書(三井物産)、第105期 有価証券報告書(豊田通商)、第102期 有価証券報告書(丸紅)、第158期 有価証券報告書(住友商事)、第23期 有価証券報告書(双日))
収益が10兆円を超える4社
三菱商事は、2026年3月期は金属資源や地球環境エネルギー、食品産業など8つの事業セグメントに分かれ、連結の従業員は63,037名です。2026年4月からの事業年度は、地球環境エネルギーと電力ソリューションを統合したエネルギー&パワーソリューショングループを含む7グループ体制です。伊藤忠商事は、繊維や食料、情報・金融など8つのディビジョンカンパニーで事業を行い、連結の従業員114,570人は7社で最も多い人数です。
三井物産は、2026年3月期は金属資源や生活産業、次世代・機能推進など7つの事業別セグメントに分かれ、連結の従業員は55,463名です。2026年4月1日付で、生活産業はウェルネスエコシステムに、次世代・機能推進はイノベーション&コーポレートディベロップメントに名前を変えるなど、セグメントを組み替えています。豊田通商は、メタル+(Plus)からアフリカまで8つの営業本部を持ち、連結の従業員は74,927人です。
収益が10兆円に届かない3社
丸紅は、2026年3月期から、16あったセグメントをライフスタイルや食料・アグリ、金属など10に組み直しました。連結の従業員は52,658人です。住友商事は、2026年3月期は鉄鋼や自動車、メディア・デジタルなど9つのグループで事業を行い、連結の従業員82,488人は伊藤忠商事に次ぐ多さです。2026年4月1日付で、メディア・デジタルグループはコミュニケーションサービスグループに名前を変え、全社組織だったDX・ITグループがデジタル・AIグループとして営業グループに加わりました。
双日は、自動車やリテール・コンシューマーサービスなど7つの報告セグメントを持ち、連結の従業員は26,789名です。
総合商社のランキングが分かりにくい3つの理由
総合商社のランキングが分かりにくいのは、どこまでを総合商社と呼ぶかに決まりがなく、収益の額が取引の形で変わり、利益の一部を連結していない投資先から得ているからです。
総合商社の範囲に決まりがないから
東証の33業種区分には総合商社の区分がなく、7社はどれも「卸売業」に入ります。医療用医薬品の卸売事業を営むメディパルホールディングスも、同じ「卸売業」です。
(参考:東証上場銘柄一覧(日本取引所グループ))
7社に入らない兼松も、有価証券報告書で、総合商社として多角的な事業を行う会社と自社を説明しています。兼松の2026年3月期の連結の収益は1兆676億円、当期利益は325億円で、7社に加えると収益は双日に次ぐ8位です。順位表に入れる会社の選び方が違えば、同じ年度でも顔ぶれが変わります。
収益の額が取引の形で変わるから
7社の有価証券報告書に載る「収益」は、取引で総合商社が果たす役割によって、計上する額が変わります。自ら商品を仕入れて売る本人の取引は対価の総額を、売り手と買い手の取引を手配する代理人の取引は手数料や純額だけを収益に入れます。
収益は本人として売る取引が多いほど大きくなるため、利益の大きさとは一致しません。収益から原価を引いた売上総利益で並べると、伊藤忠商事の2兆4,805億円が最も大きく、収益で6位の住友商事は1兆5,096億円で、三菱商事に次ぐ3位です。
収益に対する売上総利益の割合は、住友商事の20.6%から三菱商事の8.7%まで開きがあります。収益の額だけでは、その会社がどれだけ稼いでいるかは分かりません。
利益に持分法適用会社の稼ぎが入るから
総合商社の当期利益には、連結していない投資先の利益の一部が「持分法による投資損益」として入ります。持分法を適用するのは、議決権の20%以上50%以下を持つ会社のように、経営の方針に重要な影響力を持つものの支配はしていない関連会社などです。持分法を適用する会社の売上は連結の収益に入らず、純損益のうち持ち分に当たる額だけが利益に入ります。
2026年3月期の持分法による投資損益が、税引前利益に占める割合は次のとおりです。
- 丸紅:50.9%(3,383億円)
- 三菱商事:42.7%(4,679億円)
- 三井物産:41.2%(4,474億円)
- 双日:38.1%(440億円)
- 住友商事:38.0%(2,666億円)
- 伊藤忠商事:27.0%(3,235億円)
- 豊田通商:3.1%(177億円)
豊田通商は持分法による投資損益が177億円と小さく、利益を生む事業の売上がそのまま収益に入るため、収益の順位が当期利益の順位より高く出ます。丸紅は税引前利益の半分を持分法による投資損益が占め、収益は5位でも当期利益は豊田通商を上回ります。
総合商社の大手を見比べる4つの視点

総合商社の大手の違いは、収益の順位よりも、次の4つを見比べると見えてきます。
- 当期利益
- 稼ぎ頭の事業
- 単体の社員数
- 平均年間給与
当期利益
当期利益は、子会社のほかの株主の取り分を除いた、親会社の株主に帰属する利益です。2026年3月期の7社を当期利益の大きい順に並べると、次のとおりです。
- 伊藤忠商事:9,002億円
- 三井物産:8,339億円
- 三菱商事:8,004億円
- 住友商事:6,003億円
- 丸紅:5,438億円
- 豊田通商:3,705億円
- 双日:1,036億円
伊藤忠商事は「当社株主に帰属する当期純利益」、ほかの6社は「当期利益(親会社の所有者に帰属)」などの名前で、同じ範囲の利益を載せています。前の事業年度の2025年3月期は、三菱商事の9,507億円が最も大きく、三井物産の9,003億円、伊藤忠商事の8,802億円が続きました。当期利益の首位は、1年で入れ替わることがあります。
稼ぎ頭の事業
当期利益が最も大きい事業セグメントは、三井物産と三菱商事が金属資源で、ほかの5社はそれぞれ違います。2026年3月期のセグメント情報で、各社の最も大きい事業とその当期利益は次のとおりです。
- 三井物産:金属資源(2,536億円)
- 三菱商事:金属資源(2,045億円)
- 丸紅:金融・リース・不動産(1,620億円)
- 伊藤忠商事:機械(1,556億円)
- 住友商事:エネルギートランスフォーメーション(1,023億円)
- 豊田通商:アフリカ(940億円)
- 双日:エネルギー・ヘルスケア(319億円)
最も大きい事業は、年度で入れ替わることがあります。同じ報告書に載る2025年3月期の数字では、伊藤忠商事と丸紅は金属、住友商事は輸送機・建機、双日は金属・資源・リサイクルが最も大きい事業でした。丸紅の金融・リース・不動産の1,620億円(前の年度は591億円)には、国内不動産事業の統合に伴う評価益と、北米の貨車リース事業の売却益が入っています。
伊藤忠商事で収益が最も大きいのは食料の5兆1,341億円で、当期利益が最も大きい事業とは別です。伊藤忠商事には、どの事業セグメントにも入らない「その他及び修正消去」の当期利益が1,976億円あり、CITIC LimitedとC.P. Pokphand Co. Ltd.への投資の損益がここに入ります。
豊田通商のアフリカは、新車販売やアフターサービスなどのモビリティ事業と、医薬品の生産・卸売・小売などのヘルスケア事業で収益の多くを得ています。
単体の社員数
有価証券報告書を出した会社自身(単体)の従業員は、連結の従業員のごく一部です。2026年3月31日時点の単体と連結の従業員数は、次のとおりです。
- 三井物産:5,333名(連結55,463名)
- 三菱商事:5,328名(連結63,037名)
- 住友商事:4,938人(連結82,488人)
- 丸紅:4,225人(連結52,658人)
- 伊藤忠商事:4,125人(連結114,570人)
- 双日:2,519名(連結26,789名)
- 豊田通商:2,466人(連結74,927人)
豊田通商を除く6社の単体の従業員数には、子会社などへ出向している社員も入っています。他社への出向者は、三菱商事が1,644名、住友商事が1,639人、丸紅が1,349人です。三井物産の5,333名にも、出向者1,127名が入っています。三菱商事では、出向者を除き、海外店の現地社員などを加えた就業人員数が4,456名になります。
豊田通商の2,466人は、社外への出向者を除いた人数です。単体の従業員の数え方は会社ごとに違うため、人数を比べるときは報告書の注記もあわせて読みます。
平均年間給与
7社の単体の平均年間給与を高い順に並べ、平均年齢と平均勤続年数を添えると、2026年3月31日時点で次のとおりです。
- 三菱商事:2,112万5,472円(42.3歳・17年7か月)
- 三井物産:2,058万9千円(42.0歳・17.4年)
- 伊藤忠商事:1,991万1,534円(42.0歳・17年9か月)
- 住友商事:1,840万2,971円(43.3歳・18年3か月)
- 丸紅:1,784万3,699円(42.5歳・17.8年)
- 豊田通商:1,421万3,845円(43.0歳・16.7年)
- 双日:1,257万1,801円(40.5歳・14.7年)
7社とも賞与を含みますが、含める手当と対象の範囲は会社ごとに違います。伊藤忠商事は従業員持株会制度の特別奨励金を含め、休職者と定年後再雇用などの有期雇用の従業員を除いて計算しています。住友商事は在宅勤務手当も含み、嘱託を除いた平均は1,890万6,975円です。豊田通商の平均は、海外の現地社員92人を含まない数字です。
前の事業年度からの増減率は、伊藤忠商事がプラス10.3%で最も大きく、双日はマイナス1.3%でした。双日は平均年齢が40.5歳、平均勤続年数が14.7年で、7社の中で最も若く、勤続も短い会社です。
有価証券報告書で総合商社の大手を確かめる手順

この記事の数字は、7社が金融庁のEDINETに提出した有価証券報告書で、誰でも同じものを開いて確かめられます。次の3つの手順でたどってください。
金融庁のEDINETで会社名を入れて書類を検索し、事業年度が最も新しい有価証券報告書を開きます。同じ年度の訂正報告書が出ていれば、どの項目を訂正したかもあわせて開きます。
「第1 企業の概況」の「主要な経営指標等の推移」で、連結の収益と当期利益を確かめます。「第5 経理の状況」の連結財務諸表で持分法による投資損益を、その注記のセグメント情報で事業ごとの当期利益を見ます。
「第4 提出会社の状況」の「従業員の状況等」で、単体の従業員数と平均年齢、平均勤続年数、平均年間給与を見ます。表の下の注記で、給与に含める手当と、従業員数に出向者を含むかどうかを確かめます。
総合商社業界の大手企業でよくある質問
- 総合商社で売上が一番大きい会社はどこですか
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三菱商事です。2026年3月期の連結の収益は18兆9,159億円で、2位の伊藤忠商事の14兆8,230億円を上回ります。7社とも売上高の代わりに国際会計基準の「収益」を載せていて、この記事の順位は収益で並べたものです。
- 総合商社で利益が一番大きい会社はどこですか
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2026年3月期は伊藤忠商事です。当社株主に帰属する当期純利益は9,002億円で、三井物産の8,339億円、三菱商事の8,004億円が続きます。2025年3月期は、三菱商事の9,507億円が首位でした。
- 総合商社で平均年収が最も高いのはどこですか
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2026年3月31日時点では三菱商事です。単体の平均年間給与は2,112万5,472円で、超過勤務手当と賞与を含みます。三井物産は2,058万9千円、伊藤忠商事は1,991万1,534円です。
- 豊田通商はトヨタ自動車の子会社ですか
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子会社ではありません。豊田通商の有価証券報告書では、トヨタ自動車は豊田通商の議決権の21.8%を持つ「その他の関係会社」です。豊田通商の連結の収益のうち、トヨタ自動車グループへの収益は20.0%を占めます。
収益の順位の次は当期利益と稼ぎ頭を確かめよう
総合商社の大手7社を2026年3月期の連結の収益で並べると、三菱商事、伊藤忠商事、三井物産、豊田通商の4社が10兆円を超えます。当期利益では伊藤忠商事が首位で、収益4位の豊田通商は6位、収益6位の住友商事は4位と、順位が入れ替わります。
順位の次に見たいのは、その会社の稼ぎ頭の事業、単体の社員数と出向者の数、そして入社する会社自身の平均年間給与です。気になる会社の有価証券報告書を開き、セグメント情報と従業員の状況を、同じ年度の数字どうしで比べてください。

