利益率が高い業界の実態|数字の裏側と業界研究に生かす視点

企業研究を進めていると、「利益率が高い業界は狙い目」という話をよく耳にします。ただ、実際にどの業界がどのくらいの利益率なのか、根拠を持って説明できる就活生は意外と多くありません。ランキングサイトによって顔ぶれが微妙に違ったり、同じ業界なのに数字が大きく食い違っていたりすることに、戸惑った経験がある人もいるはずです。

この記事では、就活キャリア研究所が上場企業の財務データをもとに、利益率が高い業界・低い業界の実際の顔ぶれを整理します。あわせて、業界平均という数字の裏側にある落とし穴と、その数字を企業研究にどう生かせばよいのかという実践的な視点も紹介していきます。

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目次

「利益率が高い業界」という言葉が指しているもの

就活で語られる「利益率が高い業界」は、多くの場合「売上高営業利益率が高い業種」を指しています。売上高営業利益率は、本業でどれだけ効率よく稼げているかを示す代表的な指標で、企業の稼ぐ力を測る目安として広く使われています。

売上高営業利益率の考え方

売上高営業利益率は「営業利益 ÷ 売上高 × 100」で計算されます。営業利益とは、売上高から売上原価と販売費・一般管理費を差し引いた、本業のもうけそのものを指す数字です。同じ売上規模の企業を比べたとき、この比率が高いほど、価格競争に巻き込まれにくいビジネスモデルを持っているか、コスト構造をうまく管理できていると読み取れます。

就活生が業界研究で利益率を見る意味は、単に「もうかっているかどうか」を知ることだけではありません。利益率の高さは、企業が研究開発や人材投資に回せる余力の大きさとも関係しており、給与水準や事業の持続性を推し量る一つの手がかりになります。ただし、それはあくまで手がかりの一つであり、後述するとおり利益率だけで企業の良し悪しを決めつけるのは早計です。

「業界平均」を見るときの注意点

ここで気をつけたいのが、「業界平均」がどの企業群をもとに算出されているかという点です。上場企業だけを集計したデータと、中小企業まで含めた全法人を対象にした統計とでは、同じ業界名でも数字がかなり異なって見えます。ランキングサイトによって顔ぶれが食い違って見える背景には、こうした集計対象の違いが隠れていることが多いのです。

もう一つ注意したいのが、平均値と中央値の違いです。財務データベース「ザイマニ」が公開している業種別データでは、医薬品業界の売上高営業利益率について、平均値で見ると大幅な赤字になる年がある一方、中央値で見ると6%台と他業種と大差ない水準に収まっています。これは、大規模な研究開発費を投じて一時的に大きな損失を計上する企業が平均値を大きく押し下げているためで、極端な数値を持つ一部の企業に平均値が引っ張られやすいことを示す好例といえます。業界の実態を知りたいときは、平均値だけでなく中央値もあわせて確認する姿勢が欠かせません。

データで見る、利益率が高い業界の顔ぶれ

利益率が高い業界(不動産業・精密機器・情報通信業)と利益率が低い業界(小売業・卸売業・繊維製品)を対比した図解

それでは実際に、上場企業の財務データから利益率が高い業界を確認していきましょう。財務データベース「ザイマニ」が公開している2025年版のデータでは、東証上場企業(金融業を除く)約3,648社をもとに、業種別の売上高営業利益率の中央値が算出されています。

このデータによると、全業種の中央値は6.1%です。これに対し、不動産業は9.4%、精密機器は9.2%、機械は8.7%、情報・通信業は8.2%と、全業種平均を上回る水準が並んでいます。海運業も9.1%と高い水準ですが、対象企業数がわずか11社と少なく、年によって数字の振れ幅が大きい点には留意が必要です。

不動産業・精密機器・機械が上位に来る理由

不動産業の利益率が高くなりやすいのは、保有する物件からの賃料収入が景気変動の影響を受けにくく、一度収益が安定すれば大きな追加コストをかけずに利益を積み上げやすい収益構造を持っているためだと考えられます。精密機器や機械は、他社が簡単には真似できない高付加価値な製品を扱う企業が多く、価格競争に巻き込まれにくいという特徴が利益率の高さに表れやすい業種です。

ただし、これらの業種の中でも企業ごとの差は決して小さくありません。次の章で紹介するとおり、業種の平均値だけを見て「この業界なら安心」と判断するのは危険だという点は、あらかじめ押さえておいてください。

情報・通信業とサービス業の位置づけ

情報・通信業は中央値8.2%と全業種平均を上回っていますが、この区分には通信インフラを持つ企業からソフトウェア開発企業まで幅広い事業が含まれています。一般に、一度開発したソフトウェアやサービスを複数の顧客に提供できる事業は、追加コストを抑えながら売上を伸ばしやすく、利益率が高くなりやすい傾向があるとされています。

サービス業も中央値7.1%と全業種平均をやや上回る水準です。人材サービスやコンサルティングのように、大きな設備投資を必要としない業態が含まれる一方で、店舗運営や人手を多く要する業態も同じ区分に含まれるため、業種名だけで一括りにせず、志望する事業内容まで踏み込んで確認することが大切です。

利益率が低い業界に共通する構造

逆に、同じ「ザイマニ」の2025年版データで利益率が低い側に位置しているのが、小売業(中央値3.5%)や卸売業(中央値3.2%)です。繊維製品や輸送用機器も4.5%前後にとどまっており、全業種平均の6.1%を下回っています。

小売業・卸売業が薄利多売になりやすい理由

小売業や卸売業は、メーカーが作った商品を消費者や企業に届ける役割を担っており、商品そのものの価格は他社と比較されやすい構造にあります。同じ商品を扱う競合が多いほど値下げ圧力がかかりやすく、売上規模を伸ばすことで利益を確保する「薄利多売」のビジネスモデルになりやすいのです。

だからといって、これらの業界が魅力に乏しいというわけではありません。小売業・卸売業は取扱高そのものが大きく、雇用の受け皿としての規模も大きい業界です。利益率という一つの指標だけで業界の優劣を判断せず、成長性や事業の安定性といった別の視点もあわせて見ていく姿勢が求められます。

価格競争にさらされやすい業界の特徴

繊維製品や輸送用機器のように、世界規模で調達・製造が行われている業種も、利益率が上がりにくい傾向があります。原材料や部品を世界中から調達できる分、代わりの調達先も見つかりやすく、価格交渉力を発揮しづらいという事情が背景にあると考えられます。こうした業種で高い利益率を出している企業があれば、それは独自の技術力やブランド力によって価格競争から一歩抜け出せているサインとして注目する価値があります。

業界平均だけで判断してはいけない理由

ここまで業種ごとの平均的な水準を見てきましたが、就活生が本当に確認すべきなのは、志望する個別企業の実際の数字です。業種の平均値と個社の実力がどれだけ違うのか、具体的な例で見てみましょう。

キーエンスが示す、個社差という現実

センサーや計測機器を手がけるキーエンスは、東証33業種の分類上「電気機器」に属しています。しかし前章で紹介した「ザイマニ」のデータで見ると、電気機器業種全体の中央値は7.1%であるのに対し、キーエンスの直近本決算における売上高営業利益率は51.0%(売上高1兆1693億円、営業利益5958億円)にのぼります。

同じ「電気機器」という業種区分に属していても、業種全体の中央値と個別企業の数字には7倍以上の開きがあるということです。「電気機器業界は利益率がそこまで高くないから優良企業は少ないだろう」といった思い込みは、この一例だけでも成り立たなくなります。

業界内での立ち位置を確認する視点

この事例が示しているのは、業種平均はあくまで全体の傾向を把握するための出発点にすぎず、個別企業の実力を保証するものではないという当たり前の事実です。ファブレス経営や独自製品の開発力など、その企業ならではの強みが利益率の差となって表れているケースは、電気機器業種に限らずどの業種にも存在すると考えられます。

企業研究では、まず志望する業種の平均的な水準を把握したうえで、「その業種の中で志望企業がどのあたりに位置しているのか」まで踏み込んで確認する二段構えの見方を持つとよいでしょう。

利益率が高い業界を志望するメリットと注意点

利益率が高い業界を志望することには、どのようなメリットと注意点があるのでしょうか。一般的な経営の考え方に沿って整理してみます。

  1. 研究開発や人材への再投資に回せる余力が大きくなりやすい
  2. 価格決定力を持つ企業が多く、景気変動の影響を受けにくい傾向がある
  3. 給与や福利厚生の水準に利益率の高さが反映されやすい

利益率の高さは、企業が事業に再投資できる余力の大きさと結びつきやすく、その結果として給与水準や研究開発への投資に反映されやすいと一般的に考えられています。ただし、これはあくまで傾向であり、同じ業界・同じ利益率の企業であっても、実際にどこへ利益を配分するかは経営方針によって大きく異なります。

一方で、注意しておきたい点もあります。利益率の高い業種ほど、その収益性の高さに惹かれて新規参入や競合の追い上げが起こりやすく、数年単位で業界の勢力図が変わる可能性があるという点です。今の時点で利益率が高いという事実だけでなく、その利益率がどのような競争優位性に支えられているのかまで確認しておくと、より納得感のある企業選びにつながります。

企業研究で利益率をどう調べるか

大学図書館で決算資料や業界研究ノートを広げてメモを取る就活生のイラスト

ここまでの内容を踏まえ、実際に志望企業の利益率を調べる具体的な手順を紹介します。難しい専門知識がなくても、公開されている資料から確認できる範囲です。

有価証券報告書とIR資料の見るべき場所

上場企業であれば、決算短信や有価証券報告書に売上高と営業利益が必ず記載されています。多くの企業は自社サイトの「投資家情報」や「IR情報」といったページに、経営指標をまとめて掲載していることもあります。専門的な会計知識がなくても、売上高と営業利益の数字さえ見つけられれば、電卓一つで売上高営業利益率を計算できます。

非上場企業の場合は同様の資料が公開されていないことも多いため、会社説明会やOB・OG訪問の場で、業界内での立ち位置や収益性について直接質問してみるのも一つの方法です。

業界平均と個別企業を両方見る手順

企業研究で利益率を活用する際は、次の手順を意識してみてください。まず、志望企業の直近3期分の売上高営業利益率を自分で計算し、年による変動がないかを確認します。次に、同じ業種の平均値や中央値と比較し、志望企業が業種内でどのあたりに位置しているのかを把握します。

最後に、決算資料の注記部分を確認し、特別損失や一時的な要因によって数字が大きくぶれていないかをチェックしておきましょう。単年度だけの数字で判断すると、たまたま良かった年や悪かった年の数字に引っ張られてしまう恐れがあります。複数年のデータを並べて確認する習慣をつけておくと安心です。

よくある質問

利益率が高い業界を一言でいうとどんな業界ですか

売上高に対する営業利益の割合が高い業種のことを指します。上場企業を対象にした最新データでは、不動産業や精密機器、機械、情報・通信業などが全業種平均を上回る水準に位置しています。ただし対象企業や算出方法によって数値は変わるため、一つの統計だけで判断せず複数の情報源を照らし合わせることをおすすめします。

利益率が高い業界に入れば必ず高年収になりますか

利益率の高さは、給与や研究開発に回せる余力の目安にはなりますが、必ず高年収に直結すると言い切ることはできません。同じ業界の中でも企業ごとに利益の配分方針は大きく異なるため、業界全体の数字だけでなく、志望企業ごとの決算情報まで確認することが欠かせません。

利益率が低い業界は避けたほうがいいですか

一概にそうとは言えません。小売業や卸売業のように利益率が相対的に低くても、取扱高の規模が大きく、雇用の受け皿としての役割も大きい業界は数多く存在します。利益率はあくまで数ある指標の一つと捉え、事業内容や成長性、働き方まで含めて総合的に見ていく姿勢が実践的です。

業種平均は出発点、志望企業の実数まで確認しよう

上場企業のデータで見ると、不動産業や精密機器、機械、情報・通信業といった業種が利益率の高い側に位置し、小売業や卸売業は相対的に低い水準にとどまっていました。ただし、キーエンスの例が示すとおり、同じ業種区分の中でも個別企業の数字には何倍もの開きが生まれます。

業界平均という数字は、企業研究を始める際の出発点としては役立ちますが、それだけで志望企業の良し悪しを決めつけるのは早計です。決算資料や説明会を通じて、志望企業自身の実際の数字とその背景まで確認し、業界の看板だけでなく個社の実力を見極める視点を持って企業研究を進めていきましょう。

この記事の監修者

株式会社ネット風評被害対策 代表取締役 内村淳

大学卒業後、サッカー選手を経て、大手風評対策会社に入社。
3年半にわたりナショナルクライアントを含む数々の炎上事案・ブランドイメージ毀損対策に従事。
その後、ネット誹謗中傷対策に特化した法律事務所に1年間従事し、法的観点からの対応知見を習得。
IT技術と法的アプローチの双方に携わってきた経験を持つ。
現在は15年以上の経験とノウハウをもとにネット風評被害対策専門会社を設立。あらゆるネット風評被害対策支援に加え、企業向けコンサルティングや同業他社へのサービス提供も行う。
日々進化するAI検索エンジンのアルゴリズムを徹底解析し、AI検索時代に適応した次世代の風評対策に注力している。

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