「どの求人票にも『未経験歓迎』『研修あり』と書いてあって、避けるべき会社が分からない」。山形でドライバーの仕事を探す人が「入ってはいけない運送会社一覧」と検索するのは、比べる材料が求人票の言葉しか見当たらないからです。
ところが、国が公開している処分の記録には、求人票にはない手がかりが載っています。東北運輸局の集計では、令和7年度に山形運輸支局の管内で一般貨物の事業者が受けた処分と警告は7件で、個表を読むと、そのうち6件に「運転者の指導監督義務違反」が含まれていました。山形労働局が令和6年に監督したトラックの事業場でも、約3割で拘束時間や休息期間などを定めた基準への違反が見つかっています。
この記事では、特定の会社名は挙げません。処分の個表のどこを読めばよいのか、「研修あり」の中身を面接でどう確かめればよいのかを、国と山形労働局、山形県トラック協会が公開している情報をもとに、就活キャリア研究所の視点で順にお伝えします。
山形の運送会社が外から見分けにくい3つの理由
山形の運送会社が外から見分けにくいのは、処分の表の読み方、処分が記録される単位、冬の運行の扱いという3つの事情が、求人票にはほとんど現れないからです。
一般貨物と軽貨物で処分の表が分かれているから
トラックの運送事業は、一般貨物自動車運送事業、特定貨物自動車運送事業、貨物軽自動車運送事業の3つに分かれます。一般貨物と特定貨物は国土交通大臣の許可を受けて始め、三輪以上の軽自動車や二輪の自動車を使う貨物軽自動車運送事業は届出で始めます(e-Gov法令検索)。
東北運輸局が公開している令和7年度の処分の集計も、一般貨物と軽貨物で表が分かれています(東北運輸局)。山形運輸支局の欄は、一般貨物が7件で、内訳は車両使用停止6件と警告1件です。軽貨物は36件ですが、軽貨物の個表と照らすと、36件はどれも同じ1つの事業者が県内の営業所ごとに受けたもので、違反の中身はいずれも点呼の実施や記録に関するものでした(東北運輸局)。
軽貨物の表の数字は、処分を受けた会社の数ではなく、営業所ごとの件数として読みましょう。求人に「配送ドライバー」とだけ書かれていたら、応募先がどちらの区分の事業者なのかを先に確かめ、見る表を決めます。
処分が営業所ごとに記録されるから
東北運輸局の個表は、処分を受けた営業所ごとに記載されています。令和7年度の山形の一般貨物の7件にも、同じ会社の2つの営業所がそれぞれ別の違反で処分や警告を受けた例が含まれています(東北運輸局)。
違反点数も営業所に付き、同じ事業者の点数は地方運輸局の管轄区域ごとに合計されます(国土交通省)。山形県の営業所なら、東北6県を受け持つ東北運輸局の区域での合計です(東北運輸局)。点数は処分の日車数10日車までごとに1点で、原則として3年で消えます。管轄区域の累計が51点以上80点以下になると区域内の全ての営業所が事業停止の対象になり、81点以上になると原則として許可の取消しの対象になります(国土交通省)。
応募するときは、会社名だけでなく、配属される営業所の名前と所在地も確かめておきましょう。
県の全域が豪雪地帯に指定されているから
国土交通省の資料によると、令和8年4月1日時点で県の全域が豪雪地帯に指定されているのは10道県で、山形県はその1つです(国土交通省)。雪の季節は、同じ配送先へ向かう場合でも、かかる時間が読みにくくなります。
厚生労働省の通達は、警報が出ている異常気象に遭遇し、運転中に正常な運行が難しくなった場合などを「予期し得ない事象」としています。その対応にかかった時間は、1日の拘束時間、2日平均の運転時間、連続運転時間の計算から除くことができます。ただし除けるのは、運転日報の記録に加えて、気象庁のホームページなどに載った気象情報の写しのような客観的な資料で確かめられる場合に限られます(厚生労働省)。
この扱いは1か月の拘束時間の計算には使えず、除いた時間も休憩に当たらない限り労働時間として扱われます。平常時の交通の状況から前もって予測できる渋滞も、予期し得ない事象には当たりません。雪の多い月の1か月の拘束時間の実績を示してもらえるかを、面接で尋ねてみましょう。
入ってはいけない運送会社に共通する4つの特徴

入ってはいけない運送会社に共通するのは、運転者の教育や車両の点検整備のように、法令で決まった仕事が十分にできていないことです。山形で出た処分と監督の結果から、確かめておきたい4つを整理します。
- 運転者への毎年の指導が足りない
- 新人への特別な指導を省いている
- 車両の点検整備が行き届いていない
- 拘束時間と休息期間を守れていない
運転者への毎年の指導が足りない
貨物自動車運送事業輸送安全規則は、事業者に、運転者への適切な指導と監督を求めています。指導をしたときは、日時、場所、内容、指導した人と受けた人を記録し、その記録を営業所で3年間保存します(e-Gov法令検索)。国土交通省の指針は、この指導を毎年行うよう定めています(国土交通省)。
山形運輸支局の管内で令和7年度に一般貨物の事業者が受けた7件のうち6件に、この指導監督の義務への違反が含まれていました。令和8年4月から9月までの個表に載った山形県内の営業所の4件も、すべてに同じ違反が含まれています(東北運輸局)。
面接では「運転者への指導は年に何回、どんな内容で行い、記録はどう残していますか」と尋ねてみてください。実施した日と中身を具体的に答えられるかどうかで、教育が仕組みになっているかの見当がつきます。
新人への特別な指導を省いている
求人票の「研修あり」には、法律で決まった中身があります。一般貨物の事業者は、国の告示に従って、運転者として新たに雇い入れた人に特別な指導を行い、国土交通大臣が認定した適性診断を受けさせなければなりません(e-Gov法令検索)。新たに雇われた運転者が受ける適性診断は、初任診断と呼ばれます(国土交通省)。
国土交通省の指針は、一般貨物の初任運転者への特別な指導を2つに分けて時間を定めています。法令や運行の安全についての指導は15時間以上で、実際に事業用自動車を運転させて添乗などで教える安全運転の実技は20時間以上です。どちらも初めて乗務する前に行い、やむを得ない事情があるときは乗務を始めてから1か月以内に行います(国土交通省)。
乗務を始める前の3年間に、ほかの一般貨物の事業者などで運転者として常時選任されていた人は、この特別な指導の対象から外れます。初任診断は、乗務を始める前の3年間に受けていない人が、初めて乗務する前に受けます。やむを得ない事情があるときは、乗務を始めてから1か月以内です(国土交通省)。
令和7年度の山形の7件には、初任運転者に対する特別な指導監督の義務への違反も1件ありました(東北運輸局)。「研修あり」と書かれていたら、座学と添乗の時間数と、初任診断をいつ受けるのかを尋ねましょう。指針の時間数を知っていれば、答えが法律の求める水準に届いているかを自分で比べられます。
車両の点検整備が行き届いていない
安全規則は、車両の構造や走る道路の状況、走行距離などを考えて定期点検の基準を作り、それに基づいて点検と整備をし、記録簿に記載して保存することを事業者に求めています(e-Gov法令検索)。
令和7年度の山形の7件のうち5件には、個表で「整備不良車両等」と書かれた違反が含まれていました。安全規則の点検整備の規定と、道路運送車両法の規定への違反として扱われたものです(東北運輸局)。
点呼では、運転者に道路運送車両法が定める日常点検の実施か、その確認について報告を求めることになっています(e-Gov法令検索)。出発前の日常点検を誰がどう確かめ、定期点検の記録簿をどこで管理しているのかを尋ねてみましょう。
拘束時間と休息期間を守れていない
山形労働局によると、令和6年の1年間に県内の労働基準監督署がトラックの事業場67か所に監督指導を行い、45事業場(67.2%)で労働基準関係法令の違反が見つかりました。改善基準告示の違反は20事業場(29.9%)で、違反の中身で多かったのは最大拘束時間の13事業場と休息期間の11事業場です(山形労働局)。山形労働局は法令違反の疑いがある事業場に監督指導を行うとしており、この割合は県内のすべての会社の違反率を表す数字ではありません(山形労働局)。
同じ資料には、一時的な業務の繁忙を理由に、協定で定めた1か月80時間を超えて107時間の時間外・休日労働をさせ、1か月の総拘束時間が改正前の基準の上限293時間を超えて325時間に達していた事例が載っています。この会社は荷主と交渉して長距離便の一部を取りやめるなどし、時間外・休日労働は約70時間、総拘束時間は260時間まで減りました(山形労働局)。
トラック運転者の1日の拘束時間は13時間以内が基本で、延長しても15時間が限度です。休息期間は勤務の後に継続11時間以上を基本とし、継続9時間を下回ってはなりません。1週間の運行がすべて走行距離450キロ以上の長距離貨物運送で、休息を住所地以外でとる場合は、週2回まで拘束時間を16時間に、休息期間を継続8時間にできます。その場合、会社は一つの運行が終わった後に、継続12時間以上の休息期間を与えるものとされています(厚生労働省)。
1か月の拘束時間は原則284時間以内で、労使協定を結べば年6か月まで310時間まで延ばせますが、284時間を超える月は連続3か月までです(厚生労働省)。山形労働局は令和4年12月から「荷主特別対策チーム」を置き、長時間の恒常的な荷待ちを発生させないことなどを発着荷主に要請しています(山形労働局)。荷待ちがどの配送先で起きていて、会社が荷主とどう話し合っているのかも尋ねてみてください。
山形の公的な情報で会社を確かめる手順

応募先の会社は、国と労働局が公開している情報を使って、次の3つの手順で確かめられます。
応募先が一般貨物の許可を受けた事業者か、軽貨物の届出をした事業者かと、配属される営業所の名前と所在地を、面接や会社の案内で確かめます。
厚生労働省が掲載している労働基準関係法令違反に係る公表事案で、山形労働局の欄を確認します。厚生労働省は全国の労働局の公表事案を毎月まとめて載せており、掲載期間は公表日からおおむね1年です(厚生労働省)。
東北運輸局の累積点数が20点を超えている事業者の概要には、令和8年9月末時点で東北運輸局の管内の12事業者が載っていますが、山形運輸支局の欄の事業者はありません(東北運輸局)。一覧に名前がないことは、処分や違反がなかったことの証明にはなりません。この一覧に載るのは累積点数が20点を超えた事業者だけで、令和7年度に山形で処分や警告を受けた7件では、その時点で事業者に付いていた点数がどれも2点以下でした(東北運輸局)。個表や公表事案で名前を見つけたときは、いつ、どの違反で処分を受け、その後に何を改めたのかを面接で尋ねる材料にしてください。
県トラック協会の巡回指導の結果
山形県トラック協会は、貨物自動車運送事業法が定める地方の適正化事業の実施機関として、県内の運送事業者の事業所を巡回して指導しています。協会の令和7年度の事業報告書によると、令和7年4月から令和8年3月までの巡回指導の結果は、Aが103件、Bが77件、Cが12件、Dが2件、Eが1件、特別巡回と個別指導が35件でした(山形県トラック協会)。
地方の実施機関が行う巡回指導について、国土交通省近畿運輸局の資料は、令和5年4月から、評価がDかEの営業所には半年後に再び巡回指導を行うと説明しています。DかEになった営業所のうち、3か月以内に改善の報告を出さない営業所と、3回続けてDかEになった営業所は運輸支局などへ報告され、監査や処分の対象になります。Eは、調べた項目のうち「適」の割合が60%未満の判定です(国土交通省近畿運輸局)。面接では、直近の巡回指導で何を指摘されたかを尋ねてみましょう。
安全性優良事業所(Gマーク)の一覧
Gマーク制度は、全日本トラック協会が、運送事業者の安全への取り組みを事業所単位で評価し、基準を満たした事業所を安全性優良事業所に認定する制度です。令和7年12月16日時点の認定は全国で29,210事業所で、全事業所数の34.4%です(全日本トラック協会)。
山形県トラック協会の令和7年度の事業報告書には、県内の認定は231事業所で、県内の全事業所の39.2%にあたると書かれています(山形県トラック協会)。認定は会社ではなく事業所ごとなので、全日本トラック協会が公開している都道府県別の一覧で、配属される営業所の名前を確かめてください。
山形で働く前に確かめたい賃金の計算
提示された賃金が法律の下限を満たしているかどうかは、山形県最低賃金と照らせば自分で確かめられます。
10月30日からの最低賃金
山形県最低賃金は、令和8年10月30日から時間額1,092円になります(山形労働局)。改正前の額は、令和7年12月23日に効力が発生した時間額1,032円です(山形労働局)。厚生労働省の全国一覧でも、山形の額と発効日は同じです(厚生労働省)。
山形県最低賃金は、県内で事業を営む使用者と、その事業場で働くすべての労働者に適用され、臨時、パートタイマー、アルバイトも含まれます(山形労働局)。最低賃金に届かない賃金を定めた労働契約は、その部分が無効になり、最低賃金と同じ定めをしたものとみなされます。地域別最低賃金を下回る賃金しか払わなかった使用者には、50万円以下の罰金が定められています(e-Gov法令検索)。
月給を時給に直して比べるときは、月給から次の6つを除き(厚生労働省)、残った額を1か月の平均所定労働時間で割ります(厚生労働省)。
- 結婚手当のように臨時に支払われる賃金
- 賞与のように1か月を超える期間ごとに支払われる賃金
- 所定労働時間を超える労働に対する賃金
- 所定労働日以外の日の労働に対する賃金
- 午後10時から午前5時までの労働に対する賃金のうち、通常の労働時間の賃金を超える部分
- 精皆勤手当、通勤手当、家族手当
求人票の固定残業代は、所定労働時間を超える労働への支払いなので、比べる額に含めません。含めたまま割ると、時給が実際より高く出ます。
歩合給の時給への換算
歩合給のように出来高払制で決まる賃金は、その計算期間の歩合給の総額を、その期間に歩合の仕事で働いた総労働時間で割って時間額に直し、最低賃金と比べます。基本給が日給で手当が月給というように組み合わさっている場合は、それぞれを時間額に直してから合計します(厚生労働省)。
労働基準法は、出来高払制その他の請負制で賃金が決まる労働者について、労働時間に応じた一定額の賃金を保障するよう使用者に求めています(e-Gov法令検索)。歩合の割合が高い求人では、保障給の額と、歩合を何の数字から計算するのかを書面で確かめてください。雪で走れる距離や件数が落ちる月の収入も、この2つが分かれば見通せます。
山形の運送会社選びでよくある質問
- 山形で処分を受けた運送会社はどこで調べられますか
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東北運輸局のトラック事業者の行政処分等の状況に、年度の集計と一般貨物・軽貨物の個表、累積点数が20点を超えている事業者の概要が置かれています(東北運輸局)。全国分は国土交通省のネガティブ情報等検索サイトで調べられます(国土交通省)。
- 未経験で入社しても研修は受けられますか
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一般貨物の事業者か、四輪以上の軽自動車で運ぶ軽貨物の事業者に運転者として入るなら、法律で決まった特別な指導を受けることになります(e-Gov法令検索)。一般貨物では法令などの指導が15時間以上、安全運転の実技が20時間以上です。軽貨物では法令などの指導が5時間以上で、実技は可能な限り行うとされています(国土交通省)。乗務を始める前の3年間に、ほかの一般貨物の事業者などで運転者として常時選任されていた人は、どちらの指導の対象からも外れます。軽貨物では、乗務を始める前の3年間にほかの軽貨物の事業者で運転者として乗務した人も外れます。乗務を始める前の3年以内に貨物軽自動車安全管理者講習を受けた人については、会社が特別な指導をしたものとみなすことができます(国土交通省)。
- 雪で遅れた時間は拘束時間から除かれますか
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除かれるのは、限られた場合だけです。警報が出ている異常気象で運転中に正常な運行が難しくなった場合などは、運転日報と気象情報の写しのような客観的な資料で確かめられる時間に限り、1日の拘束時間、2日平均の運転時間、連続運転時間の計算から除けます。1か月の拘束時間からは除けません(厚生労働省)。
「研修あり」の中身を記録で確かめよう
山形の運送会社を見分ける材料は、国と山形労働局、山形県トラック協会がすでに公開しています。処分の表は一般貨物と軽貨物で分け、営業所の単位で読みます。山形で出た処分の多くには運転者への指導監督の義務への違反が含まれ、労働局の監督では拘束時間と休息期間の違反が見つかっています。
事業の区分と配属先の営業所を確かめ、処分の個表と公表事案に目を通したうえで、指導の記録、新人の座学と添乗の時間数、点検の記録簿、雪の多い月の拘束時間の実績を尋ねてみてください。求人票の「研修あり」の一言で決めるのではなく、記録を示して説明できる会社を選んでいきましょう。

