「ビールの大手はアサヒ、キリン、サントリー、サッポロの4社」。業界研究を始めると、まずこの4社の名前が浮かぶという人は多いはずです。ところがビール・飲料業界の大手企業を売上で並べると、サッポロは6位で、4位と5位には清涼飲料が中心の2社が入ります。しかも売上から酒税を除いて比べると、サッポロの順位はさらに下がります。
各社が金融庁のEDINETに提出した、2026年10月27日時点で最新の有価証券報告書の売上収益で比べると、1位はサントリーホールディングスの3兆4,324億円です。2位はアサヒグループホールディングスの2兆8,946億円、3位はキリンホールディングスの2兆4,333億円です。3社とも、この数字には酒税が含まれています。6位のサッポロホールディングスは5,068億円ですが、酒税を除いた3,911億円で比べると、伊藤園とヤクルト本社を下回ります。
本記事では、酒類か飲料を主な事業とする9社の売上・従業員数・平均年間給与を有価証券報告書の原文から並べ、酒類の比率、海外の比率、売り方の違いと、自分で確かめる手順まで、就活キャリア研究所の視点で順を追ってお伝えします。
ビール・飲料業界の大手企業ランキング上位9社
ビール・飲料業界の大手企業を売上の大きい順に並べると、上位9社は次のとおりです。数字は各社の有価証券報告書にある「主要な経営指標等の推移」の連結の売上収益で、伊藤園、ヤクルト本社、ダイドーグループホールディングスの3社は日本の会計基準の売上高です。億円未満は切り捨てています。
- サントリーホールディングス:3兆4,324億円
- アサヒグループホールディングス:2兆8,946億円
- キリンホールディングス:2兆4,333億円
- サントリー食品インターナショナル(2026年4月からサントリービバレッジ&フード):1兆7,154億円
- コカ・コーラ ボトラーズジャパンホールディングス:8,938億円
- サッポロホールディングス(2026年7月からサッポロビール):5,068億円
- 伊藤園:4,978億円
- ヤクルト本社:4,864億円
- ダイドーグループホールディングス:2,412億円
対象には、東京証券取引所に上場している会社と、上場していないものの有価証券報告書を出しているサントリーホールディングスのうち、セグメント情報などで酒類と飲料の売上が全体の半分を超える会社を選びました。サントリーホールディングスは、酒税込みと酒税控除後の2つの売上収益のうち、酒税込みの数字です。決算期は伊藤園が2026年4月期、ヤクルト本社が2026年3月期、ダイドーグループホールディングスが2026年1月期で、ほかの6社は2025年12月期です。
宝ホールディングスは、2026年3月期の売上高が3,943億円です。ただし国内・海外酒類の売上高は1,510億円で全体の約38%にとどまり、海外日本食材卸の1,959億円より小さいため、9社には入れていません(宝ホールディングス有価証券報告書)。ビール酒造組合の会員名簿に載る5社の1つであるオリオンビールは、2025年9月25日に東証プライム市場に上場しましたが、2026年3月期の売上高は297億円です(オリオンビール有価証券報告書)(ビール酒造組合)。
売上が2兆円を超える3社
サントリーホールディングス、アサヒグループホールディングス、キリンホールディングスの3社は、売上収益が2兆円を超えています。
サントリーホールディングスは上場していない会社で、議決権の89.5%を寿不動産が持っています。連結の従業員数は41,628人です(サントリーホールディングス有価証券報告書)。
アサヒグループホールディングスは、事業を日本・東アジア、欧州、アジアパシフィックの3つの地域に分けています。連結の従業員数は28,560人です(アサヒグループホールディングス有価証券報告書)。
キリンホールディングスは、酒類、飲料、医薬、ヘルスサイエンスの4つの事業を持っています。連結の従業員数は31,144人です(キリンホールディングス有価証券報告書)。
売上が8,000億〜1兆円台の2社
4位のサントリー食品インターナショナルと5位のコカ・コーラ ボトラーズジャパンホールディングスは、清涼飲料を中心とする会社です。
サントリー食品インターナショナルは、議決権の59.4%をサントリーホールディングスが持つ上場子会社です。連結の従業員数は22,700人です(サントリー食品インターナショナル有価証券報告書)。
コカ・コーラ ボトラーズジャパンホールディングスは、子会社11社などでコカ・コーラなどの飲料の製造・販売を行っています。議決権の30.18%は、米国のザ コカ・コーラ カンパニーが間接的に持っています。連結の従業員数は12,667人です(コカ・コーラ ボトラーズジャパンホールディングス有価証券報告書)。
売上が2,000億〜5,000億円台の4社
6位から9位のサッポロホールディングス、伊藤園、ヤクルト本社、ダイドーグループホールディングスは、売上が2,000億円台から5,000億円台に並んでいます。
サッポロホールディングスは、2025年12月期に不動産事業を非継続事業に分け、事業を酒類と食品飲料の2つにまとめ直しました。5,068億円は、不動産事業を除いた売上収益です。連結の従業員数は、不動産事業の138人を含めて6,102人です(サッポロホールディングス有価証券報告書)。
伊藤園は、茶葉と飲料の製造販売を主な事業とし、リーフ・ドリンク関連事業が売上高の約89%を占めます。連結の従業員数は7,945人です(伊藤園有価証券報告書)。ヤクルト本社は、飲料および食品製造販売事業が売上高の約95%を占め、連結の従業員数は29,618人です(ヤクルト本社有価証券報告書)。
ダイドーグループホールディングスは、国内と海外の飲料事業が売上高の約86%を占めます。連結の従業員数は5,375人です(ダイドーグループホールディングス有価証券報告書)。
6位から8位の3社は、売上の差が204億円しかありません。1つ前の期の売上高はヤクルト本社が4,996億円、伊藤園が4,727億円で、2社の順位は逆でした。
ビール・飲料業界のランキングが分かりにくい3つの理由
ビール・飲料業界の大手企業の順位は、売上に含まれる税、数える会社の範囲、売上に含まれる事業をどうそろえるかで変わります。
酒類の売上に酒税が含まれるから
酒類の会社の売上収益には、国に納める酒税が含まれています。サントリーホールディングスは、2025年12月期の売上収益を酒税込みの3兆4,324億円と酒税控除後の3兆701億円の2つで載せており、差は3,623億円です(サントリーホールディングス有価証券報告書)。
上場しているキリンホールディングスとアサヒグループホールディングスも、決算短信や決算補足資料で、酒税を除いた売上収益をあわせて出しています。キリンホールディングスの決算短信では、2025年12月期の酒税抜きの売上収益は2兆1,547億円です(キリンホールディングス決算短信)。アサヒグループホールディングスの2025年12月期の決算補足資料では、酒税抜きの売上収益は2兆2,911億円です(アサヒグループホールディングス決算補足資料)。
売上の差が小さい会社どうしでは、酒税の扱いで順位が入れ替わります。サッポロホールディングスの決算短信にある2025年12月期の酒税抜きの売上収益は3,911億円で、伊藤園の4,978億円とヤクルト本社の4,864億円を下回ります(サッポロホールディングス決算短信)。酒類の会社と清涼飲料の会社を比べるときは、酒税を除いた数字で並べてください。
親会社と上場子会社が別々に並ぶから
同じグループの会社が、親会社と上場子会社の両方で一覧に載ることがあります。サントリー食品インターナショナルはサントリーホールディングスの連結子会社なので、1兆7,154億円の売上収益は、サントリーホールディングスの3兆4,324億円の中に含まれています(サントリーホールディングス有価証券報告書)。
キリンホールディングスも、東証プライム市場に上場している協和キリンの議決権の55.2%を持ち、連結子会社にしています(キリンホールディングス有価証券報告書)。9社の売上を足しても、業界全体の売上にはなりません。
酒類と飲料以外の事業も含まれるから
酒類・飲料の会社の売上には、医薬品や健康食品などの事業も含まれます。キリンホールディングスの2025年12月期の外部顧客からの売上収益は、協和キリンを中心とする医薬事業が4,965億円、ファンケルなどのヘルスサイエンス事業が2,513億円で、合わせて全体の約3割です(キリンホールディングス有価証券報告書)。志望する仕事が飲み物の開発や営業なら、会社全体の売上よりも、酒類と飲料の事業の売上を比べたほうが実態に近づきます。
ビール・飲料大手を見比べる4つの視点

ビール・飲料大手の違いは、売上の順位よりも、次の4つを有価証券報告書で見比べると見えてきます。
- 酒類の比率:売上のうち酒類がどれだけかを見る
- 海外の比率:日本の顧客への売上の割合を見る
- 売り方:自動販売機と店頭のどちらで売り、工場を持つかを見る
- 年収の対象:平均年間給与が何人の平均かを見る
売上に占める酒類の比率
売上に占める酒類の比率で、9社は大きく分かれます。2025年12月期の売上収益に占める酒類の割合は、サッポロホールディングスが約79%、アサヒグループホールディングスが約73%です(サッポロホールディングス有価証券報告書)(アサヒグループホールディングス有価証券報告書)。
サントリーホールディングスは、酒税込みの売上収益で飲料・食品が約50%、酒類が約40%です。キリンホールディングスは、酒類が約44%、飲料が約24%です。サントリー食品インターナショナル、コカ・コーラ ボトラーズジャパンホールディングス、伊藤園、ヤクルト本社、ダイドーグループホールディングスの5社は、セグメントに酒類の事業がありません。
日本の顧客への売上の割合
有価証券報告書のセグメント情報にある地域ごとの売上を見ると、売上のうち日本の顧客への分がどれだけかが分かります。日本の顧客への売上の割合は、サントリー食品インターナショナルが約43%、アサヒグループホールディングスが約44%、ヤクルト本社が約50%、サントリーホールディングスが酒税込みで約51%、キリンホールディングスが約53%です。この5社は、売上のおよそ半分かそれ以上を海外の顧客から得ています。
一方で、ダイドーグループホールディングスは約73%、サッポロホールディングスは約76%、伊藤園は約86%が日本の顧客への売上です。コカ・コーラ ボトラーズジャパンホールディングスは、国内の売上収益が大部分を占めるとして、地域別の記載を省いています。
アサヒグループホールディングスは、海外の売上収益1兆6,202億円のうち、オーストラリアが6,664億円です(アサヒグループホールディングス有価証券報告書)。海外の比率は、入社後に海外の拠点と関わる仕事がどのくらいあるかを考える手がかりになります。
自動販売機と店頭の売り方
清涼飲料の会社は、どの売り場で売るかと、工場を自社で持つかで仕事の中身が変わります。コカ・コーラ ボトラーズジャパンホールディングスは、2025年12月期から事業を売り場ごとに分けています。自動販売機のベンディング事業が3,998億円、スーパーやコンビニエンスストアなどのOTC事業が4,179億円です(コカ・コーラ ボトラーズジャパンホールディングス有価証券報告書)。
ダイドーグループホールディングスの国内飲料事業は、売上高の約90%が自動販売機を通じた販売です。自社工場を持たず、生産と物流を全国の協力業者に委託しています(ダイドーグループホールディングス有価証券報告書)。伊藤園も、飲料の生産をグループ外のメーカーに委託し、完成品として仕入れて販売しています(伊藤園有価証券報告書)。
ヤクルト本社は、乳製品を自社で製造し、全国のヤクルト販売会社106社が販売しています(ヤクルト本社有価証券報告書)。生産の仕事を志望するなら、工場を自社で持つ会社かどうかを先に確かめてください。
平均年間給与の対象の人数
有価証券報告書の「平均年間給与」は報告書を出した会社自身の従業員の平均で、持株会社では、対象がグループのごく一部になります。アサヒグループホールディングスの平均年間給与は1,335万1,606円ですが、対象は同社の従業員328人で、連結の28,560人の約1%です。328人のうち189人は他社からの出向者で、平均勤続年数の13.6年も出向元での勤続を通算した数字です(アサヒグループホールディングス有価証券報告書)。
報告書を出した会社自身の従業員数、平均年齢、平均年間給与は次のとおりです。伊藤園は2026年4月30日、ヤクルト本社は2026年3月31日、ダイドーグループホールディングスは2026年1月20日、ほかの5社は2025年12月31日現在の数字です。
- アサヒグループホールディングス:328人・44.9歳・1,335万1,606円
- サントリーホールディングス:1,557人・43.7歳・1,176万2,284円
- サントリー食品インターナショナル:534人・40.1歳・1,170万8,279円
- サッポロホールディングス:144人・44.8歳・1,013万9,000円
- キリンホールディングス:1,124人・41.6歳・998万5,539円
- ヤクルト本社:2,912人・41.7歳・854万9,009円
- ダイドーグループホールディングス:52人・40.8歳・848万2,299円
- 伊藤園:4,879人・43.1歳・687万4,812円
コカ・コーラ ボトラーズジャパンホールディングスは、純粋持株会社であるとして、報告書を出した会社自身の従業員の状況の記載を省いています。伊藤園は報告書を出した会社自身の従業員が連結の約6割を占める一方、ヤクルト本社は約1割です。年収を比べる前に、その数字が何人の平均かを連結の従業員数と並べて確かめてください。
有価証券報告書でビール・飲料大手を確かめる手順

この記事に載せた会社ごとの数字は、金融庁のEDINETで公開されている有価証券報告書と、各社の決算短信と決算補足資料から取っています。次の3つの手順で、同じ数字にたどり着けます。
金融庁のEDINETで会社名を入れて書類を検索し、書類の種類が「有価証券報告書」で、事業年度が最も新しいものを開きます(金融庁)。提出の時期は会社ごとに違い、アサヒグループホールディングスの2025年12月期の報告書は2026年7月27日に提出されています。
「主要な経営指標等の推移」で連結の売上収益を確かめます。酒類の会社は、決算短信や決算補足資料で、酒税を除いた売上収益もあわせて確かめます。
「経理の状況」の注記にある「セグメント情報」で事業ごとと地域ごとの売上を、「従業員の状況」で報告書を出した会社自身の平均年齢、平均勤続年数、平均年間給与を確かめます。
ビール・飲料業界の大手企業でよくある質問
- ビール・飲料業界で売上が一番大きい会社はどこですか
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サントリーホールディングスです。2025年12月期の売上収益は酒税込みで3兆4,324億円で、2位のアサヒグループホールディングスの2兆8,946億円を上回ります。酒税を除いた数字どうしでも、サントリーホールディングスの3兆701億円がアサヒグループホールディングスの2兆2,911億円を上回ります(サントリーホールディングス有価証券報告書)(アサヒグループホールディングス決算補足資料)。上場している会社に限ると、アサヒグループホールディングスが1位です。
- サントリーは上場していないのですか
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グループの持株会社のサントリーホールディングスは上場していませんが、有価証券報告書を提出しています。ビールやスピリッツの製造・販売は、サントリーホールディングスが議決権の100%を持つサントリー株式会社が行っています(サントリーホールディングス有価証券報告書)。上場しているのは清涼飲料を扱うサントリー食品インターナショナルで、2026年4月1日に商号をサントリービバレッジ&フード株式会社に変えています(サントリービバレッジ&フード半期報告書)。
- サッポロホールディングスとサッポロビールは別の会社ですか
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2026年10月27日時点で上場しているサッポロビール株式会社は、2025年12月期の有価証券報告書を出したサッポロホールディングスが商号を変えた会社です。報告書には、2026年7月1日を効力発生日として子会社のサッポロビールを吸収合併し、商号をサッポロビール株式会社に変える予定と書かれています(サッポロホールディングス有価証券報告書)。公式サイトの会社概要でも、商号はサッポロビール株式会社で、事業持株会社と書かれています(サッポロビール)。
- 2026年10月の酒税改正で何が変わったのですか
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ビール系飲料の税率が、1キロリットル当たり155,000円、350ミリリットル換算で54.25円にそろいました。2020年10月から3段階で進めてきた改正の最後の段階で、同じ月にチューハイなどの税率も、1キロリットル当たり100,000円、350ミリリットル換算で35円に上がっています(財務省)。サッポロホールディングスは、この改正を踏まえて「黒ラベル」と「ヱビス」に集中して投資する方針を有価証券報告書に書いています(サッポロホールディングス有価証券報告書)。
酒類か清涼飲料か、どこで売る会社かを確かめて選ぼう
ビール・飲料業界の大手企業は、酒税込みの売上で見ると、サントリーホールディングス、アサヒグループホールディングス、キリンホールディングスの3社が2兆円を超えます。ただし酒税を除いて比べると、サッポロホールディングスは伊藤園とヤクルト本社を下回り、順位は物差しによって変わります。
会社ごとの違いが表れるのは、順位よりも中身です。酒類でどれだけ稼いでいるか、海外の比率はどれくらいか、自動販売機と店頭のどちらで売るか。気になる会社の有価証券報告書でセグメント情報を開き、扱う商品と売り場、働く人の数を確かめてから選んでみてください。

