製薬業界のホワイト企業の見分け方|MRと研究職の働き方の調べ方

「製薬会社なら、どこも待遇がよくて安定している」。新薬の研究や医療への貢献という印象が強いため、業界全体をそう見る学生や転職者は少なくありません。ところが、MR(医薬情報担当者)の認定を行うMR認定センターの調査では、管理職を除くMRの数は2014年度の64,657人から2024年度の43,646人まで減っています(MR認定センター)。業界の印象だけでは、入社後の働き方は見通せません。

一方で、製薬会社には外から働き方を確かめる手がかりが多くあります。医薬品を製造販売する会社や製造する会社は医薬品医療機器等法の許可を受けて事業を行い、株式を上場している会社は有価証券報告書に社員の平均年間給与や平均勤続年数を載せています。常時雇用する労働者が101人以上の会社には、女性管理職比率などを公表する義務もあります。

この記事では、研究職とMRを中心に、国と業界団体が公開している情報のどこを見ればよいのかを順にお伝えします。

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目次

製薬会社の働き方が外から見えにくい3つの理由

製薬会社の働き方が外から見えにくいのは、会社ごとに受けている許可が違い、職種によって労働時間の数え方が違うことがあり、MRの人数の動きも会社ごとに違うからです。

医薬品を世に出す許可と作る許可が分かれている

医薬品医療機器等法は、医薬品を市場に出す「製造販売」と、工場で作る「製造」を別々の許可にしています。製造販売業の許可は、厚生労働大臣が指定する処方箋医薬品を扱う第一種と、それ以外の医薬品を扱う第二種に分かれます。製造業の許可は製造所ごとに与えられ、どちらの許可も政令で定める期間ごとに更新を受けなければ効力を失います(e-Gov法令検索)。

医療機関への情報提供の仕事を請け負う会社もあります。MR認定センターは、MRの派遣やMR業務の受託を行う会社をCSOと呼んでいます。同センターの2025年3月31日時点の調査では、回答した登録企業のうちCSOは12社で、4,249人のMRが所属していました(MR認定センター)。同じ製薬業界の会社でも、どの許可で何を担っているかによって、社員の仕事の中身は変わります。

研究職とMRで労働時間の数え方が違うことがある

研究職は、専門業務型裁量労働制の対象になりうる職種です。この制度の対象として定められた20の業務の1つに、新商品や新技術の研究開発、自然科学に関する研究の業務があります。労使協定で決めた時間を働いたものとみなす制度で、みなす時間は実際に働いた時間と一致させなければならないものではありません(厚生労働省)。

MRは、医療関係者を訪問して医薬品の情報を集め、提供する仕事です(MR認定センター)。事業場の外で働く時間について、労働基準法は、労働時間を算定し難いときに限り、所定労働時間を働いたものとみなす仕組みを置いています。業務に通常は所定労働時間を超える時間が必要なときは、その業務に通常必要とされる時間を働いたものとみなします(e-Gov法令検索)。

つまり、求人票に「9時から17時30分」と書かれていても、その時間をどの仕組みで数えているのかは分かりません。研究職かMRかによって、確かめるべき点が変わります。

MRの人数が10年で約3分の2に減った

MR認定センターのMR白書によると、管理職を除くMRの数は2025年3月31日時点で43,646人でした。前の年より3,073人、率にして6.6%の減少です。2014年度の64,657人と比べると、約3分の2の水準になっています(MR認定センター)。

同センターは、この年に減り方が大きかった理由を、MRを多く雇ってきた企業での早期希望退職の影響が大きかったとみています。前の年と比べたMRの数は、内資系製薬企業で90.3%、外資系製薬企業で97.1%と、減り方にも差がありました(MR認定センター)。MRとして入社を考えるなら、その会社がMRの人数をここ数年でどう変えてきたかを尋ねておくと、配属後の見通しを立てやすくなります。

ホワイトな製薬会社に共通する4つの特徴

製薬会社を見極める4つの視点を示した図(数字の公表・裁量労働制・MRの評価・品質の体制)

ここでいうホワイトな製薬会社とは、働く時間と評価と処遇の決まりを、公表された数字と面接での説明で確かめられる会社のことです。製薬会社で確かめたい特徴は次の4つです。

  1. 従業員の数字を進んで公表している
  2. 研究職の裁量労働制を説明できる
  3. MRの評価のしかたを説明できる
  4. 品質を守る責任者と部門を説明できる

従業員の数字を進んで公表している

有価証券報告書の「従業員の状況」には、提出会社の従業員数、平均年齢、平均勤続年数、賞与を含む平均年間給与が載ります。2026年3月31日以後に終わる事業年度の報告書からは、平均年間給与の前の事業年度からの増減率も加わりました(金融庁)。

同じ欄には、提出会社と連結子会社それぞれの女性管理職比率、男性の育児休業取得率、男女の賃金の差異も載ります。2023年3月31日以後に終わる事業年度の報告書から求められている項目です。ただし、女性活躍推進法などにもとづいて公表していない数字は、有価証券報告書でも記載を省略できます(金融庁)。

平均年間給与は提出会社の社員だけの数字で、子会社の社員は含みません。子会社の経営管理を主な業務とする持株会社の報告書には、2026年3月31日以後に終わる事業年度の分から、従業員数が最も多い子会社などの同じ数字も載ります(金融庁)。研究所や工場が別の会社になっている場合は、配属先の社員がどの数字に含まれるかを確かめてから比べてください。

女性活躍推進法にもとづく公表では、常時雇用する労働者が101人以上の企業は、必須の項目に加えて、法令が定める一覧から選んだ項目も決められた数以上を公表しなければなりません。選べる一覧には、労働者の1か月あたりの平均残業時間や有給休暇取得率も含まれます。厚生労働省は、公表の範囲そのものが女性活躍への姿勢を表し、求職者が企業を選ぶ要素になるとして、必須の数より多くの項目を公表するよう企業に呼びかけています(厚生労働省)。平均残業時間と有給休暇取得率をどちらも出している会社は、選ぶ数の下限を超えて働き方の数字を出しており、働き方を外から比べられることを受け入れている会社だといえます。

研究職の裁量労働制を説明できる

専門業務型裁量労働制は、2024年4月1日から、適用する労働者本人の同意を得ることが必要になりました。労使協定には、同意しなかった人を不利に扱わないことと、同意を撤回する手続も定めます。会社は同意を得る前に、同意した場合の賃金・評価制度と、同意しなかった場合の配置と処遇を示して説明することが適切とされています(厚生労働省)。

対象になるのは、仕事の進め方と時間配分を本人に委ねる業務だけです。会社から始業か終業の時刻のどちらか一方でも指示される業務は、対象業務に当たりません。業務量が多すぎたり期限の設定が不適切だったりして時間配分の裁量が失われたと認められる場合は、みなしの効果が生じません(厚生労働省)。

厚生労働省の解説は、みなす時間を適切な水準に設定し、手当の支給や基本給の引上げなどで相応の処遇を確保することを求めています(厚生労働省)。研究職の求人に「裁量労働制」とあったら、みなす時間が何時間で、そのための手当がいくらかを尋ねてみてください。同意しなかった場合の扱いまで書面で示せる会社は、手続を整えていると判断する手がかりになります。

MRの評価のしかたを説明できる

厚生労働省は2018年9月25日に「医療用医薬品の販売情報提供活動に関するガイドライン」を定めました。2019年4月1日から適用され、経営陣の責務などを定めた部分は同じ年の10月1日から適用されています。経営陣は、役員や従業員が適切な販売情報提供活動を行ったかどうかを確かめ、評価に反映することとされています(厚生労働省)。

同じガイドラインは、活動を監督する部門を、情報提供を担当する部門から独立させて置くことと、口頭で説明した内容も含めて業務記録を作り、保管することを求めています。対象はMRに限らず、メディカル・サイエンス・リエゾンなど、名称や所属にかかわらず会社が雇うすべての人です(厚生労働省)。

面接では、MRの評価が売上の数字だけで決まるのか、情報提供の内容や記録も評価に入るのかを尋ねてみましょう。評価の項目を具体的に答えられる会社は、ガイドラインの求めを評価制度に反映させていると考えられます。

品質を守る責任者と部門を説明できる

医薬品の製造販売業者は、品質管理と製造販売後の安全管理を行わせるため、原則として薬剤師を医薬品等総括製造販売責任者として置かなければなりません。製造販売業者と製造業者には、責任者の権限を明らかにし、法令を守るための体制を整える義務もあります(e-Gov法令検索)。

品質管理の基準を定めた省令は、製造販売業者に品質保証部門を置くよう求めています。この部門は総括製造販売責任者の監督の下にあり、医薬品の販売に関わる部門から独立していなければなりません(e-Gov法令検索)。品質や安全の仕事を志望するなら、品質保証部門の人数と、販売部門との指示系統の分け方を尋ねてみてください。

法令に違反する行為があると、許可の取消しや、期間を定めた業務の全部または一部の停止が命じられることがあります(e-Gov法令検索)。停止を命じられた業務は、その期間中は行えません。品質を守る体制は、製品の安全のためだけでなく、社員が安定して働き続けるための条件でもあります。

公開されている情報で製薬会社を確かめる手順

製薬業界のホワイト企業の見分け方について公開されている情報を確かめている場面のイラスト

気になる製薬会社が見つかったら、応募する前に公開されている情報をたどっておくと、面接で尋ねることが具体的になります。次の3つの手順で確認してみてください。

STEP1

金融庁のEDINETで社名を検索し、有価証券報告書を開きます(金融庁)。「従業員の状況」は、2026年3月31日以後に終わる事業年度の報告書では「提出会社の状況」の中に、それより前の報告書では「企業の概況」の中にあります。2026年2月20日以後に提出された報告書は、それより前の事業年度の分でも新しい様式で書くことが認められているので、見当たらなければ「提出会社の状況」も見てください(金融庁)。

STEP2

厚生労働省の女性の活躍推進企業データベースで社名を検索し、男女間賃金差異や女性管理職比率を確かめます(厚生労働省)。続けて職場情報総合サイト(しょくばらぼ)で、正社員の月平均所定外労働時間や有給休暇の取得日数、新卒者の採用者数と離職者数が載っているかを見ます(厚生労働省)。

STEP3

医薬品医療機器総合機構(PMDA)の医療用医薬品の情報検索で、その会社が扱う医薬品を調べます。検索画面では添付文書の記載項目を選んで語句を探すことができ、項目の1つに「製造販売業者等」があります(PMDA)。あわせてPMDAの回収情報で、2024年度以降の医薬品の回収の記録を確かめます(PMDA)。

STEP2で数字が見当たらなくても、それだけで公表の義務に反しているとは限りません。公表は自社のホームページで行ってもよいとされているので、会社のサイトも確かめてください。女性管理職比率は2026年4月1日から常時雇用する労働者が101人以上の企業の義務になり、101人以上300人以下の企業では男女間賃金差異も同じ日から義務になりました。新たに義務になった項目を3月決算の企業が初めて公表する期限は、おおむね2027年6月末です(厚生労働省)。

男性の育児休業取得率などの公表は、2025年4月1日から、常時雇用する労働者が300人を超える企業に年1回の義務として広がりました(厚生労働省)。公表する割合は、配偶者が出産した男性のうち育児休業等を取った人の割合か、育児目的の休暇を取った人も含めた割合のどちらかです。どちらの計算で出した数字なのかを確かめてから、会社どうしを比べてください。

STEP3の回収情報は、回収される製品による健康への危険性の程度で、クラスIからクラスIIIに分けて載っています。クラスIは、その製品の使用などが重篤な健康被害または死亡の原因となりうる状況を指します。2023年度以前の回収は、厚生労働省の「令和5年度(2023年度)以前の自主回収の状況」のページに載っています(PMDA)。

上場していない会社を調べるとき

有価証券報告書を出すのは、金融商品取引所に株式などを上場している会社のほか、届出をして有価証券を募集・売出しした会社や、株主などの数が一定以上の会社などです(e-Gov法令検索)。上場していない外資系の日本法人などでは、報告書が見つからないことがあります。

その場合も、女性活躍推進法と育児・介護休業法による公表の義務は、上場しているかどうかではなく、常時雇用する労働者の数で決まります。日本製薬工業協会は、国内で活動する研究開発志向型の加盟会社について、各社が開示している非財務情報のページへのリンクを一覧にしています(日本製薬工業協会)。ジェネリック医薬品の会社なら、日本ジェネリック製薬協会の会員メーカー一覧から各社をたどれます(日本ジェネリック製薬協会)。

面接と応募の段階で確かめたいこと

公開情報で分かるのは会社全体の数字です。配属される職場の働き方は、面接と応募の段階で次の3つを尋ねて確かめます。

労働時間の記録のしかた

会社には、医師による面接指導を行うため、労働者の労働時間の状況を把握する義務があります(e-Gov法令検索)。裁量労働制や事業場外のみなし労働時間制で働く人もこの対象に含まれ、除かれるのは高度プロフェッショナル制度で働く人です。把握の方法はタイムカードやパソコンの使用時間の記録などの客観的な方法その他の適切な方法とされ、記録は3年間保存します(e-Gov法令検索)。

MRが医療機関に直行して直帰する日や、研究職が夜に実験の様子を見に行く日の時間を、どの記録で把握しているのか。記録の方法を具体的に答えられる会社は、時間の数え方がみなしであっても、働いた時間そのものを見ていると考えられます。

MRの学習にかける時間

MRの認定制度は2026年4月1日に新しくなり、認定の更新などの申請は、会社に所属しているかどうかにかかわらず本人がMRポータルから行う形に変わりました。新しい制度は、MRが自ら取り組む生涯学習に重きを置いています(MR認定センター)。

MR白書の2025年3月31日時点の調査では、基礎教育の受講について、199社のうち113社(56.8%)が「MR個人の自主性に委ねている」と答えました。「業務時間内に受講するよう指示している」は74社(37.2%)、「会議等で受講時間を確保している」は9社(4.5%)です(MR認定センター)。学習の時間を勤務時間として扱うのか、費用を会社が負担するのかは、会社ごとに尋ねておきたい点です。

新卒が請求できる職場情報

新卒者を募集する会社は、応募者などから求められれば、職場の情報を提供しなければなりません(e-Gov法令検索)。提供する情報は、募集・採用の状況、職業能力の開発・向上の取組、職場への定着を促す取組の3つの区分ごとに1つ以上とされ、2016年3月1日から義務になっています(厚生労働省)。

区分ごとの項目には、直近3事業年度の新卒者等の採用者数と離職者数、研修の有無と内容、前の事業年度の月平均所定外労働時間などがあります(厚生労働省)。各区分のどの項目を出すかは会社が選べるため、求めた数字がそのまま出てくるとは限りません。知りたい項目を名指しして求め、出てこなかった項目は面接で尋ねましょう。

製薬会社選びでよくある質問

外資系の製薬会社はどう調べればよいですか

上場していない外資系の日本法人は、有価証券報告書を出していないことがあります。その場合は、女性の活躍推進企業データベースで社名を調べます(厚生労働省)。2026年4月1日以降は、常時雇用する労働者が101人以上の企業に、男女間賃金差異と女性管理職比率の公表が義務づけられています(厚生労働省)。

平均年間給与が高い会社はホワイトと考えてよいですか

それだけでは判断できません。有価証券報告書の平均年間給与は提出会社の社員の平均で、子会社の社員を含みません(金融庁)。同じ欄の平均年齢や平均勤続年数と並べて読みましょう。しょくばらぼで、月平均所定外労働時間や有給休暇の取得状況もあわせて確かめてください(厚生労働省)。

MRの新卒採用は少ないのですか

MR認定センターの調査では、2025年4月にMRの新卒者を採用した企業は、回答した198社のうち68社でした。外資系製薬企業に限ると、55社のうち9社です(MR認定センター)。直近3事業年度の新卒者等の採用者数と離職者数は、新卒の応募者が会社に求めることのできる情報の項目の1つです(厚生労働省)。

CSOに所属するMRは何が違いますか

CSOに所属するMRはコントラクトMRと呼ばれます。派遣先の製薬会社のMRと一緒に働く派遣型と、製薬会社から仕事を請け負ってCSOの監督の下で働く請負型の2つの形があります(MR認定センター)。厚生労働省の販売情報提供活動のガイドラインは、こうした委託先や提携先の会社も対象にしています(厚生労働省)。

業界の印象より会社ごとの数字を見よう

製薬会社の働き方は、受けている許可、研究職とMRそれぞれの時間の数え方、MRの人数の見直し方によって、会社ごとに大きく違います。一方で、有価証券報告書の従業員の状況、女性活躍推進法と育児・介護休業法にもとづく公表、PMDAの回収情報のように、外から確かめる手段は制度として用意されています。

応募の前にこれらの数字に目を通し、面接では裁量労働制の手続、MRの評価の項目、労働時間の記録のしかたを尋ねてみてください。「製薬だから安心」という業界の印象ではなく、会社ごとの公表と説明を判断の材料にして、自分が働き続けられる会社を見極めていきましょう。

この記事の調査・執筆

就活キャリア研究所編集部

就活キャリア研究所編集部

就活キャリア研究所編集部は、就職・転職活動に役立つ企業情報やキャリアに関する情報を調査・発信する編集チームです。
企業の公式サイトや採用ページ、公開資料などをもとに、事業内容・年収・福利厚生・働く環境・口コミ・評判などを幅広く調査しています。
また、自己分析や面接対策、キャリア形成に関する情報も発信し、就活生や転職希望者が自分に合った企業・仕事を見つけられるよう、正確性と客観性を重視した記事制作に取り組んでいます。

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