「第一三共の名前が付く子会社なら、第一三共グループの一員として長く働けそう」。社名に「第一三共」が付く子会社が国内に5社あるため、そう考える人もいるでしょう。ところが、第一三共ヘルスケアの株式は2026年7月からサントリーホールディングスへの譲渡が始まり、第一三共ビジネスアソシエは2028年7月に第一三共へ吸収合併される予定です。予定どおり進めば、第一三共ビジネスアソシエ、第一三共ヘルスケア、その子会社の第一三共ヘルスケアダイレクトの3社が、2028年7月までに第一三共の子会社ではなくなります。
2026年3月期の有価証券報告書に従業員数が載る子会社は4社です。多い順に、米国の第一三共Inc.が2,667人、ドイツの第一三共ヨーロッパが1,639人、米国のアメリカン・リージェントが795人、埼玉県の第一三共バイオテックが484人です。どの数字も、主な設備のある事業所で働く人の数です。
本記事では、従業員数で並べた子会社のランキングから、国内の子会社5社の資本関係の変化、年収が分かる範囲、公開資料で確かめる手順まで、就活キャリア研究所の視点で順にお伝えします。
第一三共の子会社の従業員数ランキング
第一三共の子会社を従業員数で並べると、1位は米国の第一三共Inc.で、国内の会社で表に載るのは4位の第一三共バイオテックだけです。数字は、2026年3月期の有価証券報告書の「主要な設備の状況」に載る2026年3月31日時点の事業所の従業員数を、会社ごとに足したものです(EDINET)。
この表には主な設備のある事業所だけが載るため、会社全体の従業員数とは限りません。順位は次のとおりです。
- 第一三共Inc. 2,667人 米国ニュージャージー州の本社
- 第一三共ヨーロッパGmbH 1,639人 ドイツの本社と工場
- アメリカン・リージェントInc. 795人 米国オハイオ州とニューヨーク州の3工場
- 第一三共バイオテック株式会社 484人 埼玉県北本市の本社
同じ日の第一三共単体の従業員は8,009人、連結の従業員は20,171人です。子会社の会社全体の従業員数は、報告書には載っていません。
米国とドイツの上位3社
第一三共Inc.は、米国で医薬品の研究開発・販売を行う会社です。アメリカン・リージェントは第一三共Inc.の子会社で、第一三共の公式サイトのグループ会社一覧は、事業内容を「医薬品および動物薬の製造・販売」としています(第一三共)。
アメリカン・リージェントの795人は、オハイオ州のニューオルバニー工場の299人とヒリヤード工場の110人、ニューヨーク州のシャーリー工場の386人を合わせた数です。
第一三共ヨーロッパは、ミュンヘンに本社を置き、グループ会社18社とともに欧州各国で医薬品の研究開発・製造・販売を行っています。1,639人の内訳は、本社が671人、バイエルン州のパッフェンホーフェン工場が968人です。
2025年3月期の表に載っていた製造子会社2社
2025年3月期の報告書では、国内子会社の欄に3社が載っていました。第一三共ケミカルファーマが小名浜・小田原・館林の3工場で755人、第一三共プロファーマが平塚工場で725人、第一三共バイオテックが459人です。
第一三共ケミカルファーマと第一三共プロファーマは、2025年4月1日付で第一三共に吸収合併されました。第一三共は合併の目的を、3社に分かれていた生産などの機能を本体に集め、開発から商用生産までの流れをつなぐためと説明しています(第一三共)。
2026年3月期の報告書では、4つの工場は第一三共本体の設備として載り、従業員数は平塚工場が914人、小名浜工場が358人、小田原工場が222人、館林工場が203人です。2025年3月期の表で国内子会社の上位2社だった製造子会社は、合併で第一三共本体の一部になりました。
国内の子会社5社の資本関係の変化
第一三共の国内の子会社は5社で、このうち3社は譲渡か合併で第一三共の子会社ではなくなる予定です。2026年3月期の報告書は第一三共を含む国内のグループ会社を7社としており、第一三共と関連会社の第一三共エスファを除く5社が子会社にあたります(EDINET)。
第一三共の公式サイトの「国内外の主なグループ会社」には、国内グループ会社として次の5社が載っています(第一三共)。
- 第一三共ヘルスケア:医薬品・化粧品・食品などの製造と売買
- 第一三共ヘルスケアダイレクト:医薬品・化粧品・食品などの通信販売
- 第一三共バイオテック:ワクチンやバイオ関連医薬品などの受託製造
- 第一三共ビジネスアソシエ:グループのビジネスサポート業務
- 第一三共ハピネス:障害者雇用促進法に定める特例子会社
株式の譲渡で第一三共を離れる2社
第一三共ヘルスケアは、2005年12月に設立された一般用医薬品などの会社で、2026年3月期の売上高は907億円です(第一三共ヘルスケア)。第一三共は2026年4月15日、同社の株式のすべてをサントリーホールディングスに譲渡する契約を結びました。
譲渡は3回に分けて行われます。2026年7月1日に発行済株式の30%が譲渡され、2027年6月1日に40%、2029年6月1日に残りの30%が譲渡される予定です。第一三共は、2027年6月1日の譲渡で第一三共ヘルスケアの支配を失うと見込んでいます(第一三共)。
第一三共ヘルスケアダイレクトは、第一三共ヘルスケアが株式の100%を持つ通信販売の会社で、従業員は192人です。この人数はパート・アルバイトを含む2026年3月末日時点の数です(第一三共ヘルスケアダイレクト)。第一三共ヘルスケアが第一三共の子会社でなくなれば、その子会社である第一三共ヘルスケアダイレクトも第一三共の子会社ではなくなります。
2028年7月に合併予定の第一三共ビジネスアソシエ
第一三共ビジネスアソシエは、国内グループ会社の人事・経理などの業務を受託するシェアードサービス会社として、2006年に設立されました。社員数は267名(2025年4月時点)です(第一三共ビジネスアソシエ)。第一三共は合併の目的を、会社の間で業務を委託する形をやめ、業務の集約や移管を柔軟に進めるためと説明しています。
第一三共は2026年1月30日に同社を吸収合併する基本方針を決め、2026年8月28日に効力発生日を2027年10月1日から2028年7月1日に変えました(第一三共)。システムの改修と移行の準備に、当初の見込みより長い期間がかかるためです。2026年3月期の報告書には変更前の2027年10月1日が書かれているため、日付は第一三共のお知らせで確かめてください。
譲渡や合併の予定が公表されていない2社
第一三共バイオテックは、ワクチンの研究開発・製造を行う会社で、2018年8月に設立されました。公式サイトに載る従業員数は486名(2026年4月時点)です(第一三共バイオテック)。
第一三共ハピネスは、神奈川県平塚市にある特例子会社です。特例子会社は障害者の雇用に特別の配慮をした子会社で、一定の要件を満たすと、その子会社の従業員を親会社に雇用されているものとみなして障害者の実雇用率を計算できます。民間企業の法定雇用率は2.7%です(厚生労働省)。厚生労働省の特例子会社一覧(2025年6月1日時点)にも、親会社を第一三共とする第一三共ハピネスが載っています。
第一三共で年収が分かる範囲
第一三共の有価証券報告書で平均年間給与が分かるのは、第一三共単体だけです。子会社の平均年間給与は報告書に載っていません。2026年10月時点で、国内の子会社5社はどこも有価証券報告書を出していないため、EDINETでも調べられません(EDINET)。
第一三共単体の平均年間給与
第一三共の平均年間給与は、2026年3月31日時点で1,097万6,771円です。単体の従業員8,009人の平均で、平均年齢は45.0歳、平均勤続年数は19.9年です。賞与と基準外賃金を含み、前の事業年度から1.5%減っています。
2025年3月31日時点の単体の従業員は6,252人で、平均年間給与は1,114万2,879円でした。2026年3月期の8,009人には、合併で第一三共の工場になった平塚・小名浜・小田原・館林の4工場の1,697人が含まれます。2つの年の平均は、計算に入る人の範囲が違う数字です。
国内の子会社3社の女性管理職と男性の育休
報告書には、第一三共ヘルスケア、第一三共バイオテック、第一三共ビジネスアソシエの3社の数字も載っています。管理職に占める女性の割合は、第一三共単体が15.3%で、第一三共バイオテックが15.2%、第一三共ビジネスアソシエが10.7%、第一三共ヘルスケアが10.4%です。
男性の育児休業取得率は、第一三共バイオテックが108.3%、第一三共単体が103.7%で、第一三共ヘルスケアと第一三共ビジネスアソシエはともに100.0%です。この取得率は、育児休業と育児目的休暇を合わせて数えた割合です。
男性の平均賃金に対する女性の平均賃金の割合は、全従業員で見ると第一三共バイオテックが80.7%、第一三共単体が78.2%、第一三共ビジネスアソシエが77.5%、第一三共ヘルスケアが75.0%です。報告書は差の背景を、年齢の高い層ほど男性の割合が高いことと、住宅手当などの諸手当を受け取る女性の割合が低いことと説明しています。
海外のグループ会社を含むグローバル全体の女性管理職の割合は、38.1%です。単体の15.3%とは対象の範囲が違うため、2つの数字は並べて比べられません。
第一三共の子会社を比べる4つのポイント

年収で比べられない第一三共の子会社は、有価証券報告書と公式サイトで確かめられる次の4つのポイントで比べます。
- 議決権の持ち方
- グループの中で担う機能
- 拠点のある地域
- 事業の規模
議決権の持ち方
報告書に社名が載る連結子会社17社の議決権の所有割合は、2026年3月31日時点ですべて100%です。括弧の中の数字は、ほかの子会社を通じて持つ間接所有の割合を示しています(EDINET)。第一三共ヘルスケアの100%は2026年3月31日時点の数字で、2026年7月1日の譲渡の後は70%です。
第一三共Inc.は、持株会社の第一三共U.S.ホールディングスを通じて第一三共が持つ会社で、アメリカン・リージェントはさらにその下にあります。括弧の数字を見ると、志望する会社が第一三共から直接つながっているか、ほかの子会社の下にあるかが分かります。
グループの中で担う機能
子会社の仕事の中身は、「関係会社の状況」の関係内容から読み取れます。関係内容に出てくる「当社」は、第一三共のことです。
第一三共は、第一三共Inc.や台湾・韓国・ブラジルなどの子会社に製品を供給し、第一三共Inc.と第一三共ヨーロッパには販促と研究開発の業務も委託しています。第一三共ヨーロッパには製造も委託し、第一三共バイオテックからは製品を購入して研究開発業務を委託しています。
営業や販売の仕事を志望するなら製品を受け取って売る会社が、製造や研究の仕事を志望するなら製造や研究開発を委託される会社が候補になります。
拠点のある地域
第一三共グループを構成する45社のうち、38社は海外の会社です(EDINET)。2026年3月期の売上収益は約2兆1,230億円で、地域別では米国が約7,494億円、日本が約5,801億円、欧州が約4,974億円、残りがその他の地域です。日本の売上収益は、全体の3割に届きません。
第一三共グループには国をまたぐ出向のプログラムがあり、2025年度末時点で、国内から海外へ231名、海外から国内へ22名の社員が出向しています。
事業の規模
報告書の「関係会社の状況」に損益が載る子会社は、連結売上収益に占める割合が10%を超える第一三共Inc.だけで、2026年3月期の売上収益は約7,413億円です。
報告書の「設備の新設、除却等の計画」には、子会社5社の設備の計画が載っています。投資予定総額は、第一三共ヨーロッパのパッフェンホーフェン工場が3件で合わせて約1,678億円、アメリカン・リージェントのニューオルバニー工場が約597億円、第一三共バイオテックの北本工場が2件で合わせて約500億円です。第一三共製薬(上海)の上海工場が約272億円、第一三共ブラジルのアルファビレ工場が約105億円で続きます。
完了の予定は2026年11月から2030年5月にかけてです。志望する会社の新しい設備がいつ完成するかも、この表で分かります。
公開資料で第一三共の子会社を確かめる手順

第一三共の子会社を自分で調べるときは、有価証券報告書、公式サイトのグループ会社一覧、第一三共のお知らせを次の順に開きます。
金融庁のEDINETで「第一三共」の有価証券報告書を開きます(EDINET)。「関係会社の状況」で議決権の所有割合と関係内容を、「主要な設備の状況」で子会社の事業所の従業員数を確かめます。平均年間給与は、「提出会社の状況」の中の「従業員の状況等」に載っています。訂正報告書が出ているときは、提出日の新しいものを開きます。
第一三共の公式サイトの「国内外の主なグループ会社」で、国内5社と海外の会社の事業内容と所在地を確かめます(第一三共)。各社の公式サイトの会社概要には、従業員数や株主が載っている会社もあります。
厚生労働省の職場情報総合サイト「しょくばらぼ」で社名を検索し、働き方や採用状況の情報が載っているかも見ておきましょう(厚生労働省)。掲載されていない会社もあります。
この記事の有価証券報告書の数字のうち、2026年3月期の分は、第一三共が2026年6月19日に提出した第21期の報告書と、2026年8月28日に提出した訂正報告書によるものです。2025年3月期の分は、2025年6月20日に提出した第20期の報告書によるものです。翌年の報告書が出たら、同じ欄を開いて数字を見比べてください。
第一三共の子会社に関するよくある質問
- 第一三共の子会社は何社ありますか
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2026年3月期の有価証券報告書では、第一三共グループは第一三共と子会社43社、関連会社1社の計45社です(EDINET)。子会社43社のうち、国内の会社は5社で、残る38社は海外の会社です。
- 第一三共ヘルスケアは第一三共の子会社のままですか
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2026年10月時点では、第一三共が議決権の70%を持つ子会社です。2026年7月1日に株式の30%がサントリーホールディングスへ譲渡され、第一三共は2027年6月1日の譲渡で支配を失う見込みとしています(第一三共)。
- 第一三共エスファは第一三共の子会社ですか
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子会社ではありません。第一三共は2023年10月から第一三共エスファの株式をクオールホールディングスに段階的に譲渡し、2024年4月に支配を失いました。2026年3月31日時点の議決権の所有割合は20.0%で、持分法適用関連会社です(EDINET)。残る20%も、第一三共グループからの役務提供の終了に応じて譲渡することで、2025年1月に合意しています。
- 第一三共の子会社の平均年収は分かりますか
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有価証券報告書では分かりません。第一三共の報告書に載る平均年間給与1,097万6,771円は、第一三共単体の従業員8,009人の平均です。子会社の給与の水準は、会社説明会や面接で、給与の決め方とあわせて尋ねてください。
子会社の順位より先に資本関係の予定を確かめよう
第一三共の子会社を従業員数で並べると、上位は米国とドイツの会社で、国内の子会社で表に載るのは第一三共バイオテックだけです。国内の子会社5社のうち、第一三共ヘルスケアはサントリーホールディングスへの株式の譲渡が進み、その子会社の第一三共ヘルスケアダイレクトも一緒に第一三共を離れる見込みです。第一三共ビジネスアソシエは2028年7月に第一三共へ合併される予定です。2025年3月期の報告書で国内子会社の上位2社だった製造子会社2社は、2025年4月1日付で第一三共に吸収合併されています。
志望する会社がこの先も第一三共の子会社であり続けるかは、報告書の「関係会社の状況」の注記と、第一三共のお知らせで確かめられます。第一三共グループで働く会社を選ぶときは、子会社の順位より先に、その会社の資本関係がこの先どう変わるかを見ておきましょう。

