「旅行会社の大手は、上場企業の有価証券報告書で比べられる」。上場企業なら売上高や平均年収を同じ形式で確かめられるため、そう考える人は少なくありません。ところが観光庁が公表する主要旅行業者の2025年度の取扱額で1位のJTBは、1兆3,784億円と2位の約3.6倍の規模がありながら、東証に上場していません。
2位から5位には、エイチ・アイ・エスの3,819億円、阪急交通社の3,709億円、日本旅行の3,632億円、KNT-CTホールディングスの3,515億円が並びます。上位10社のうち上場しているのは、エイチ・アイ・エス、KNT-CTホールディングス、エアトリの3社だけです。残り7社のうちJTBを除く6社は、鉄道や航空のグループの子会社です。
本記事では、観光庁の取扱額で上位10社を並べ、上場している旅行会社の売上高と年収、数字の読み方、自分で確かめる手順まで、就活キャリア研究所の視点でお伝えします。
旅行業界の大手企業ランキング上位10社
旅行業界の大手企業を、観光庁が公表した2025年度の旅行取扱額の大きい順に並べると、上位10社は次のとおりです。億円未満は切り捨てています。
- JTB(7社計):1兆3,784億円
- エイチ・アイ・エス(6社計):3,819億円
- 阪急交通社(2社計):3,709億円
- 日本旅行(4社計):3,632億円
- KNT-CTホールディングス(4社計):3,515億円
- 東武トップツアーズ:1,421億円
- ジャルパック:1,112億円
- エアトリ(5社計):1,070億円
- ジェイアール東海ツアーズ:774億円
- 名鉄観光サービス:763億円
数字は、観光庁「主要旅行業者の旅行取扱状況」の2025年度(2025年4月〜2026年3月)の各社別内訳で、44の会社・グループが対象です。楽天トラベルを運営する楽天グループや、じゃらんnetを運営するリクルートは、この44に入っていません。「◯社計」はグループ内の取引を相殺した合計で、取扱額は海外旅行・外国人旅行・国内旅行を足した額です(観光庁)。
取扱額が1兆円を超えるJTB
1位のJTBは、グループ7社の合計で1兆3,784億円あります。内訳は国内旅行が8,842億円、海外旅行が3,709億円、外国人旅行が1,232億円です(観光庁)。
JTBは上場しておらず、有価証券報告書も提出していません。そのため、売上高や平均年収を有価証券報告書で確かめることはできません(金融庁)。
取扱額3,500億〜3,800億円台の4社
2位から5位の4社は、取扱額が3,515億円から3,819億円の間に並んでいます。このうちエイチ・アイ・エスとKNT-CTホールディングスは東証に上場しています(日本取引所グループ)。KNT-CTホールディングスはクラブツーリズムや近畿日本ツーリストなどを子会社に持つ純粋持株会社で、親会社の近鉄グループホールディングスが間接所有を含めて議決権の67.0%を持っています。2027年4月1日には、クラブツーリズム、近畿日本ツーリスト、近畿日本ツーリストブループラネットの3社を吸収合併する予定です(KNT-CTホールディングス有価証券報告書)。
3位の阪急交通社は、阪急阪神ホールディングスが議決権の100%を持つ子会社です(阪急阪神ホールディングス有価証券報告書)。4位の日本旅行は、西日本旅客鉄道(JR西日本)が議決権の79.8%を持つ子会社です(西日本旅客鉄道有価証券報告書)。
取扱額700億〜1,400億円台の5社
6位から10位の5社は、取扱額が763億円から1,421億円の間に並びます。このうち上場しているのは8位のエアトリだけで、航空券などを扱うオンライン旅行事業が売上収益のほとんどを占めます(エアトリ有価証券報告書)。
残る4社は、いずれも鉄道会社か航空会社の子会社です。親会社と、親会社が持つ議決権の割合は次のとおりです。
- 東武トップツアーズ:東武鉄道が100%
- ジャルパック:日本航空が間接所有を含めて97.9%
- ジェイアール東海ツアーズ:東海旅客鉄道(JR東海)が99.0%
- 名鉄観光サービス:名古屋鉄道が間接所有を含めて100%
割合は、各親会社の2026年3月期の有価証券報告書の「関係会社の状況」に載っています(東武鉄道有価証券報告書)(日本航空有価証券報告書)(東海旅客鉄道有価証券報告書)(名古屋鉄道有価証券報告書)。
旅行業界のランキングが分かりにくい3つの理由
旅行業界のランキングが一覧ごとに違って見えるのは、取扱額と売上高が別の数字で、大手の多くが上場しておらず、平均年収の対象が会社ごとにそろっていないからです。
取扱額と売上高が別の数字だから
旅行会社の売上高は、取扱額より小さく出ることがあります。KNT-CTホールディングスは、旅行者の委託で運送や宿泊などを手配する手配旅行などを代理人の取引とし、純額で収益に計上しています。2026年3月期の連結売上高は2,970億円で、同じ期間の観光庁のグループ4社の取扱額3,515億円を下回ります(KNT-CTホールディングス有価証券報告書)。
差がさらに大きいのがエアトリです。2025年9月期のオンライン旅行事業は、取扱高が1,009億円あるのに対し、売上収益は277億円です。航空券などを代理人として手配し、販売手数料などを純額で収益に計上しているためです(エアトリ有価証券報告書)。取扱額の順位と売上高の順位は、同じ物差しで並べたものではありません。
大手の多くが上場していないから
取扱額の上位10社のうち7社は上場しておらず、有価証券報告書で売上高や平均年収を確かめられません。ただ、子会社の数字の一部は、親会社の有価証券報告書に載ることがあります。
親会社の報告書には、連結営業収益に占める割合が10%を超える子会社の営業収益などが「主要な損益情報等」として載ります。2026年3月期の報告書では、阪急阪神ホールディングスに阪急交通社の営業収益2,920億円が、東武鉄道に東武トップツアーズの営業収益1,240億円が載っています(阪急阪神ホールディングス有価証券報告書)(東武鉄道有価証券報告書)。
平均年収が持株会社の数字だから
有価証券報告書の平均年間給与は、報告書を出した会社自身の従業員の平均です。KNT-CTホールディングスの平均年間給与は654万8,000円ですが、対象は持株会社で働く92人で、連結の従業員3,305人のごく一部です(KNT-CTホールディングス有価証券報告書)。
同じ報告書には、最大人員会社として近畿日本ツーリストの1,443人の平均547万5,000円と、クラブツーリズムの1,006人の平均546万6,000円も載っています。旅行の仕事を担う2社の平均は、持株会社の数字より100万円あまり低くなります。
上場している旅行会社9社の売上高
東証に上場している旅行会社を売上高の大きい順に並べると、9社は次のとおりです。数字は各社の最新の有価証券報告書にある「主要な経営指標等の推移」の連結の数字です。100億円以上は億円未満を、100億円未満は百万円未満を切り捨てています。
- エイチ・アイ・エス:3,731億円(2025年10月期)
- KNT-CTホールディングス:2,970億円(2026年3月期)
- エアトリ:281億円(2025年9月期・売上収益)
- アドベンチャー:256億円(2026年6月期・収益)
- ユーラシア旅行社:47億8,700万円(2025年9月期・営業収益)
- 旅工房:47億6,600万円(2026年6月期)
- ベルトラ:45億8,100万円(2025年12月期・営業収益)
- IACEトラベル:30億1,500万円(2026年3月期)
- ベストワンドットコム:25億4,300万円(2025年7月期)
エアトリとアドベンチャーは国際会計基準を使うため、それぞれ売上収益と収益の数字です。ほかの7社は日本の会計基準で、ユーラシア旅行社とベルトラは報告書の科目名が営業収益です。
対象は、2026年9月末時点の東証上場銘柄一覧でプライム・スタンダード・グロースのいずれかに載る会社のうち、旅行の手配や販売の事業の売上が全体の半分を超える会社です(日本取引所グループ)。数字は、2026年10月27日時点で最新の有価証券報告書のものです。
訪日旅行の手配などを営むHANATOUR JAPANは、旅行事業の売上が29億円で、全体の71億円の4割ほどにとどまるため外しています(HANATOUR JAPAN有価証券報告書)。旅行比較サイト「トラベルコ」を運営するオープンドアも外しています。報告書には、収入の大部分が、掲載する旅行会社などから予約やクリックの実績に応じて受け取る手数料だと書かれています(オープンドア有価証券報告書)。
エイチ・アイ・エスはホテル事業や九州産交グループも持ちますが、売上高の約8割は旅行事業です(エイチ・アイ・エス有価証券報告書)。IACEトラベルは法人の出張の手配が中心で、2026年3月期の取扱高は266億円あります(IACEトラベル有価証券報告書)。
旅行大手の違いが表れる4つの視点

旅行大手の違いは、取扱額の順位よりも、次の4つを見比べると見えてきます。
- 海外旅行:取扱額のうち海外旅行の割合を見る
- 訪日旅行:外国人旅行の取扱額と増え方を見る
- 国内旅行:国内旅行の取扱額と割合を見る
- 年齢と年収:上場会社の平均年齢・勤続年数・年収を並べる
海外旅行の割合
取扱額のうち海外旅行が占める割合は、会社によって大きく違います。上位5社で計算すると、割合の高い順に次のとおりです(観光庁)。
- エイチ・アイ・エス:約80%
- 阪急交通社:約51%
- KNT-CTホールディングス:約30%
- JTB:約27%
- 日本旅行:約22%
海外旅行の取扱額そのものが最も大きいのはJTBの3,709億円で、エイチ・アイ・エスの3,049億円が続きます。44の会社・グループの中には、海外旅行が取扱額の9割を超える会社が10社あり、日新航空サービスは取扱額400億円のうち370億円が海外旅行です。海外に関わる仕事を望む人は、海外旅行の割合が高い会社から調べると絞り込みやすくなります。
訪日旅行の取扱額
観光庁の統計では、日本の旅行会社によるインバウンド旅行の取扱いを「外国人旅行」と呼びます。2025年度の外国人旅行の取扱額は、JTBの1,232億円が最も大きく、日本旅行の403億円、KNT-CTホールディングスの259億円が続きます(観光庁)。
2024年度と比べると、JTBの外国人旅行は122.1%に増えた一方、日本旅行は85.5%に減りました。訪日旅行の仕事を望む人は、取扱額の大きさと、前の年度からの増え方を両方見ておきましょう。
国内旅行の取扱額
国内旅行の取扱額は、JTBの8,842億円が最も大きく、日本旅行の2,418億円、KNT-CTホールディングスの2,188億円が続きます。割合で見ると、ジェイアール東海ツアーズは取扱額の97.4%、ジャルパックは85.6%が国内旅行です(観光庁)。
反対に、エイチ・アイ・エスの国内旅行は取扱額の15.9%にとどまります。同じ大手でも、扱う旅行の中心は会社ごとに違います。
上場会社の年齢と年収
上場9社のうち持株会社のKNT-CTホールディングスを最大人員会社の2社に置き換え、平均年間給与の高い順に並べると次のとおりです。
- エアトリ:36.9歳・4.0年・609万7,000円
- ベルトラ:38.4歳・5.6年・586万612円
- アドベンチャー:34.7歳・3年11か月・584万円
- エイチ・アイ・エス:37.0歳・12.5年・549万2,354円
- 近畿日本ツーリスト:41.4歳・17.9年・547万5,000円
- クラブツーリズム:37.8歳・12.7年・546万6,000円
- ユーラシア旅行社:39.3歳・14.0年・538万9,666円
- IACEトラベル:40.0歳・16.0年・532万2,000円
- 旅工房:34.9歳・6.0年・389万2,000円
- ベストワンドットコム:32.5歳・3.9年・382万6,000円
時点は各社の決算期の末日で、近畿日本ツーリストとクラブツーリズムは2026年3月31日時点です。この2社は、2027年4月1日にKNT-CTホールディングスへ吸収合併される予定です。平均の対象になった人数は、ベストワンドットコムの19人からエイチ・アイ・エスの4,447人まで開きがあります(エイチ・アイ・エス有価証券報告書)(ベストワンドットコム有価証券報告書)。
平均年間給与が約584万〜610万円と高いエアトリ、ベルトラ、アドベンチャーは、平均勤続年数が3年11か月から5.6年と短い会社です。一方、平均勤続年数が12年を超える会社も5社あります。年収だけで比べず、平均年齢と平均勤続年数を並べてから比べましょう。
公開資料で旅行大手を確かめる手順

次の3つの手順で、この記事と同じ数字にたどり着けます。
観光庁のウェブサイトの「旅行業者取扱額」で年度を選び、年度総計の「各社別内訳」のExcelを開きます(観光庁)。海外旅行・外国人旅行・国内旅行の列で、その会社が得意な旅行を確かめます。
金融庁のEDINETで会社名を入れて書類を検索し、最も新しい有価証券報告書を開きます(金融庁)。「主要な経営指標等の推移」で売上高と決算年月を確かめます。「事業の内容」か「経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」に取扱高が載っていれば、その数字も確かめます。
「従業員の状況」で平均年齢・平均勤続年数・平均年間給与を確かめます。上場していない子会社は、親会社の報告書の「関係会社の状況」で、議決権の所有割合と主要な損益情報等を探します。
2026年3月31日以後に終わる事業年度の報告書では、持株会社の報告書に「最大人員会社」の平均年間給与なども載ります。最大人員会社は、外国の会社を除く連結子会社のうち従業員数が最も多い会社で、その従業員数が連結の過半数を超えないときは次に多い会社も含みます(金融庁)。KNT-CTホールディングスの報告書に2社が載っているのは、近畿日本ツーリストの1,443人が連結の3,305人の過半数に届かないためです。
旅行業界の大手企業でよくある質問
- 2025年度の旅行の取扱額は増えましたか
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増えました。主要旅行業者44社・グループの2025年度の総取扱額は3兆9,750億円で、2024年度の105.3%です。海外旅行は107.1%、外国人旅行は112.9%、国内旅行は103.5%でした(観光庁)。
- 旅行会社で働くのに資格は要りますか
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旅行業法は、旅行業者などに、営業所ごとに1人以上の旅行業務取扱管理者を選ぶよう定めています。近くにある複数の営業所は、国土交通省令で定める条件に当たれば、1人の管理者が兼ねられる場合があります(e-Gov法令検索)。旅行業務取扱管理者になれるのは、総合・国内・地域限定の旅行業務取扱管理者試験のうち、営業所が扱う旅行に応じた試験に合格した人です。法律が資格を求めるのはこの管理者で、営業所で働く全員ではありません。
- 上場していない旅行会社の働き方はどう調べますか
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厚生労働省の職場情報総合サイト「しょくばらぼ」で社名を検索します。勤務実態などの働き方や採用状況に関する企業の職場情報を検索・比較できるサイトで、2026年10月1日時点の掲載企業数は15万2,380件です(厚生労働省)。
- 取扱額の数字はいつ公表されますか
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観光庁は、主要旅行業者の取扱額を毎月速報で公表しています。2025年度の年度総計は、2026年6月15日に公表されました(観光庁)。
取扱額と売上高を分けて旅行会社を比べよう
旅行業界の大手企業は、観光庁の2025年度の取扱額で見るとJTBが1兆3,784億円で首位に立ち、3,500億〜3,800億円台に4社が並びます。ただし、上位10社のうち上場しているのは3社だけです。KNT-CTホールディングスやエアトリのように、代理人として手配した取引を純額で計上する会社の売上高は、取扱額より小さく出ます。
年収も、持株会社の数字ではなく、旅行の仕事を担う会社の数字で比べる必要があります。気になる会社が見つかったら、観光庁の各社別内訳で得意な旅行を、有価証券報告書の「従業員の状況」で年齢と年収を確かめてみてください。

