「医療機器の大手はテルモとオリンパス」。この見方は売上高で確かめても正しく、2社はどちらも売上高が1兆円を超えます。ところが3位から下は、どこまでを医療機器の会社と数えるかで顔ぶれが変わります。東証の業種区分に「医療機器」という区分がなく、富士フイルムホールディングスやキヤノンのように、医療の事業を持つ総合メーカーもあるためです。
医療機器を主な事業とする東証上場企業を、2026年10月27日時点で最新の有価証券報告書の売上高で並べると、1位はテルモの1兆1,318億円、2位はオリンパスの1兆106億円、3位はニプロの6,605億円です。総合メーカーでは、富士フイルムホールディングスのメディカルシステム事業が7,015億円で、3位のニプロの売上高を上回ります。
上位10社の提出会社の平均年間給与は、488万円から1,005万円まで2倍を超える開きがあります。
医療機器業界の大手企業ランキング上位10社
医療機器業界の大手企業を売上高の大きい順に並べると、上位10社は次のとおりです。数字は各社の最新の有価証券報告書にある「主要な経営指標等の推移」の連結の数字で、億円未満を切り捨てています。
- テルモ:1兆1,318億円(2026年3月期)
- オリンパス:1兆106億円(2026年3月期)
- ニプロ:6,605億円(2026年3月期)
- シスメックス:5,000億円(2026年3月期)
- 日本光電工業:2,350億円(2026年3月期)
- 朝日インテック:1,454億円(2026年6月期)
- フクダ電子:1,396億円(2026年3月期)
- メニコン:1,256億円(2026年3月期)
- ナカニシ:811億円(2025年12月期)
- ジェイ・エム・エス:658億円(2026年3月期)
対象にしたのは、東証に上場する会社のうち、有価証券報告書の「事業の内容」とセグメント情報から、医療機器の開発・製造・販売が事業の中心だと確かめられる会社です。検体検査の機器と試薬を作る会社も含めました。医療機器の卸売を主な事業とする会社と、海外の医療機器メーカーの日本法人は含みません。テルモは国際会計基準で「売上収益」と表示しており、ここでは売上高と呼びます。
PHCホールディングスは売上収益3,644億円ですが、対象から外しました。血糖測定システムの事業は売上収益の27.9%で、臨床検査サービスや電子カルテなどの医療IT製品を扱う事業が35.2%、ライフサイエンス研究向けの保存機器や培養機器も扱う事業が35.2%を占め、医療機器が中心だと確かめられないためです(PHCホールディングス有価証券報告書)。11位は、心臓血管領域を中心に医療機器を製造・販売する日本ライフラインの591億円です(日本ライフライン有価証券報告書)。
売上高1兆円を超える2社
テルモは、心臓血管カンパニー、メディカルケアソリューションズカンパニー、血液・細胞テクノロジーカンパニー、オーガンテクノロジーズ事業の4つを報告セグメントにしています。最も大きい心臓血管カンパニーは、血管造影用のカテーテルや冠動脈ステント、人工肺、人工血管などを扱い、外部顧客への売上収益は6,764億円です。連結の従業員数は31,185人です(テルモ有価証券報告書)。
オリンパスは、消化器内視鏡ソリューションとサージカルインターベンションの2つを報告セグメントにしています。消化器内視鏡と消化器科処置具などを扱う消化器内視鏡ソリューションの外部顧客への売上高は6,973億円で、全体の69.0%です。外科内視鏡やエネルギー・デバイスなどを扱うサージカルインターベンションは3,131億円です。連結の従業員数は28,138人です(オリンパス有価証券報告書)。
売上高2,000億〜7,000億円の3社
ニプロは、医療関連、医薬関連、ファーマパッケージングの3事業を持つ会社です。2026年3月期の売上高6,605億円を製品で分けると、医療機器が3,975億円、医薬品が2,128億円、ファーマパッケージング製品が488億円、その他が12億円です。連結の従業員数は38,593人です(ニプロ有価証券報告書)。
シスメックスは、医療分野の検体検査機器と検体検査試薬の開発・製造・販売を主な事業としています。売上高5,000億円のうち、試薬が3,079億円、機器が1,032億円、保守サービスが692億円です。連結の従業員数は10,861人です(シスメックス有価証券報告書)。
日本光電工業は、医用電子機器の研究開発・製造・販売と、修理・保守を手がける会社です。売上高2,350億円を商品群で分けると、生体情報モニタが842億円、治療機器が562億円、脳波計や心電計などの生体計測機器が536億円、血球計数器や超音波診断装置などのその他が409億円です。連結の従業員数は6,116人です(日本光電工業有価証券報告書)。
売上高600億〜1,500億円の5社
朝日インテックの主体はメディカル事業で、血管内治療に使う治療用のガイドワイヤーやカテーテルを作っています。2026年6月期の外部顧客への売上高はメディカル事業が1,267億円、医療機器と産業機器の部材を作るデバイス事業が186億円です。連結の従業員数は10,177人です(朝日インテック有価証券報告書)。
フクダ電子は、心電計や生体情報モニタ、除細動器、在宅酸素療法の機器などの医用電子機器を作り、販売やレンタルをしています。部門別の売上高では治療装置部門が636億円で全体の45.6%を占め、次に大きい消耗品等部門が397億円です。連結の従業員数は3,497人です(フクダ電子有価証券報告書)。
メニコンは、コンタクトレンズとケア用品のビジョンケア事業が中心で、その外部顧客への売上高1,165億円は全体の92.8%です。連結の従業員数は4,493人です(メニコン有価証券報告書)。
ナカニシは、歯科の治療用ハンドピースなどの歯科事業、歯科チェアのDCI事業、骨切削機器などの外科事業、産業用のスピンドルなどの機工事業を持ちます。2025年12月期の外部顧客への売上高は、歯科事業が481億円、DCI事業が205億円で、連結の従業員数は2,204人です(ナカニシ有価証券報告書)。
ジェイ・エム・エスは、医療機器・医薬品の製造・販売を主な事業としています。領域別の売上高で大きいのは、輸液・栄養領域の240億円、透析領域の213億円、血液・細胞領域の133億円です。連結の従業員数は4,887人です(ジェイ・エム・エス有価証券報告書)。
医療機器業界のランキングが分かりにくい3つの理由
医療機器業界のランキングが分かりにくいのは、東証の業種に医療機器の区分がないうえ、医療の事業を持つ総合メーカーと、医薬品も売る会社の扱いが一覧ごとに違うからです。
東証の業種に医療機器がないから
日本取引所グループが公開している東証上場銘柄一覧の33業種区分には、「医療機器」という区分がありません。上位10社は、2026年9月末の一覧で次の2つの業種に分かれます(日本取引所グループ)。
- 精密機器:テルモ、オリンパス、ニプロ、朝日インテック、メニコン、ナカニシ、ジェイ・エム・エス
- 電気機器:シスメックス、日本光電工業、フクダ電子
11位の日本ライフラインは卸売業、富士フイルムホールディングスは化学に分類されています。「精密機器」の業種だけで一覧を作ると、シスメックスや日本光電工業が抜け落ち、反対にシチズン時計のような時計の会社が入ります。業種名で作った一覧を見たら、その会社の「事業の内容」を有価証券報告書で確かめてください。
医療部門を持つ総合メーカーがあるから
医療機器の事業を持ちながら、会社全体では別の事業の売上が大きい総合メーカーがあります。主な3社の医療の事業の外部顧客への売上高は次のとおりです。
- 富士フイルムホールディングス:メディカルシステム事業7,015億円(2026年3月期)
- キヤノン:メディカル事業5,797億円(2025年12月期)
- オムロン:ヘルスケア事業1,452億円(2026年3月期)
富士フイルムホールディングスのメディカルシステム事業は、内視鏡や医療IT、体外診断などを扱い、売上高1兆989億円のヘルスケア部門の一部です。2021年3月には、日立製作所の画像診断関連事業を買収しています(富士フイルムホールディングス有価証券報告書)。
キヤノンのメディカル事業は、CT装置や超音波診断装置、MRI装置などを扱います。キヤノンは2016年12月に、東芝メディカルシステムズ(現キヤノンメディカルシステムズ)の株式を取得しています(キヤノン有価証券報告書)。オムロンのヘルスケア事業は血圧計や体温計などを扱い、2003年7月にヘルスケア事業を分社してオムロンヘルスケアを設立しています(オムロン有価証券報告書)。
キヤノンメディカルシステムズとオムロンヘルスケアは、どちらも親会社が議決権の100%を持つ子会社です。キヤノンは2026年4月1日に、キヤノンメディカルシステムズの事業のうち、日本国内の販売・修理・保守を除く全ての事業を引き継ぎました(キヤノン有価証券報告書)(キヤノン)。親会社の有価証券報告書に載る平均年間給与は、子会社の従業員の数字ではありません。総合メーカーで医療機器の仕事を志望するなら、採用している会社が親会社か、医療の事業を担う子会社かを確かめてください。
医薬品も売る会社があるから
医療機器メーカーの売上高には、医薬品の売上が含まれていることがあります。3位のニプロでは、売上高6,605億円のうち医薬品が2,128億円で、医療関連事業の5,236億円の中にも医薬品が1,306億円含まれます(ニプロ有価証券報告書)。
テルモも富士宮工場に医薬品の生産設備を持ち、メディカルケアソリューションズカンパニーの主要製品には輸液剤や腹膜透析液、鎮痛剤が挙がっています(テルモ有価証券報告書)。売上高を医療機器だけの規模と読み違えないよう、製品別の売上の内訳もあわせて見てください。
医療機器大手を見比べる4つの視点

医療機器大手の違いは、売上高の順位よりも、次の4つを見比べると見えてきます。
- 治療と診断:主力の製品が治療に使うものか、検査や診断に使うものかを見る
- 機器と消耗品:機器の販売と、試薬や消耗品・保守の売上の割合を見る
- 海外の比重:売上高のうち日本の割合を見る
- 年収の幅:提出会社にどんな人が含まれるかとあわせて見る
治療と診断
医薬品医療機器法は、医療機器を、人や動物の疾病の診断・治療・予防に使うことなどを目的とする機械器具等で、政令で定めるものとしています(e-Gov法令検索)。上位10社にも、治療に使う製品が主力の会社と、検査や診断に使う製品が主力の会社があります。
治療に使う製品では、カテーテルやステントなどを含むテルモの心臓血管カンパニーが売上収益の59.8%を占め、血管内治療用のガイドワイヤーやカテーテルを作る朝日インテックのメディカル事業は売上高の87.2%です。検査や診断に使う製品では、シスメックスが検体検査の機器と試薬を扱い、日本光電工業は体の状態を測る生体計測機器と生体情報モニタで売上高の58.7%を占めます。
志望動機では、その会社の製品がどの病気のどの場面で使われるかまで言えると、会社ごとの違いを踏まえた話になります。
機器と消耗品
機器を作る会社でも、売上の多くを試薬や消耗品、保守で上げている会社があります。シスメックスでは、売上高5,000億円のうち試薬が61.6%、保守サービスが13.9%で、機器は20.6%です(シスメックス有価証券報告書)。
日本光電工業では、消耗品・サービスの売上高1,191億円が、機器の1,159億円を上回ります。有価証券報告書は2026年3月期の日本について、病院経営の悪化に伴って設備投資に慎重な動きがあり、自社の医療機器の売上は微減だった一方、自社の消耗品・サービスは堅調だったと説明しています(日本光電工業有価証券報告書)。
メニコンの売上高1,256億円のうち506億円は、定額制会員システム「メルスプラン」によるものです(メニコン有価証券報告書)。志望する会社が機器を売った後に何で売上を立てているかは、製品別の売上の表で確かめられます。
海外の比重
医療機器大手には、売上高の大半を海外で上げる会社があります。シスメックスの海外売上高比率は88.3%です(シスメックス有価証券報告書)。オリンパスは日本の売上高が1,039億円と全体の10.3%にとどまり、米国が3,796億円で37.6%を占めます(オリンパス有価証券報告書)。
朝日インテックは、顧客の所在地で分けた売上高1,454億円のうち日本が208億円で、最も大きいのは中国の379億円です(朝日インテック有価証券報告書)。一方、フクダ電子は、日本の顧客への売上高が連結売上高の90%を超えるため、地域ごとの情報の記載を省いています(フクダ電子有価証券報告書)。
年収の幅
医療機器大手10社の提出会社の平均年間給与は、488万円から1,005万円まで2倍を超える開きがあります。高い順に並べ、平均年齢と平均勤続年数を添えると次のとおりです。朝日インテックは2026年6月30日現在、ナカニシは2025年12月31日現在、ほかの8社は2026年3月31日現在の数字です。
- オリンパス:1,005万6,995円(44.10歳・15.74年)
- 日本光電工業:943万148円(42.6歳・15.8年)
- フクダ電子:929万565円(44.4歳・15.1年)
- シスメックス:883万5,000円(42.4歳・12.8年)
- テルモ:821万6,621円(40.3歳・15.6年)
- 朝日インテック:733万5,009円(37.5歳・7.5年)
- ニプロ:681万4,000円(40.8歳・13.3年)
- メニコン:631万4,000円(38.37歳・12.0年)
- ナカニシ:568万2,289円(41.0歳・11.8年)
- ジェイ・エム・エス:488万円(40.7歳・16.3年)
平均年間給与は、報告書を出した会社自身の従業員の平均で、グループ全体の平均ではありません。オリンパスの提出会社の従業員2,469人のうち1,904人は東京都八王子市のグローバル本社で働いており、会津オリンパスなど国内の製造子会社の従業員は含まれません(オリンパス有価証券報告書)。
一方、ジェイ・エム・エスの提出会社の従業員1,477人のうち970人は、広島県の三次工場と千代田工場、島根県の出雲工場で働く人です(ジェイ・エム・エス有価証券報告書)。年収を比べるときは、提出会社に工場で働く人が含まれているかを「主要な設備の状況」で確かめてください。
公開資料で医療機器大手を確かめる手順

この記事の会社ごとの数字と製品は、金融庁と医薬品医療機器総合機構(PMDA)が公開している資料で、誰でも同じものを開いて確かめられます。次の3つの手順でたどってください。
金融庁のEDINETで会社名を入れて書類を検索し、最も新しい有価証券報告書を開きます(金融庁)。「事業の内容」で何を作る会社かを確かめ、「主要な経営指標等の推移」で決算月と連結の売上高を見ます。
同じ報告書の経理の状況にあるセグメント情報で、製品別の売上と地域別の売上を読みます。表の名前は「製品及びサービスごとの情報」と「地域ごとの情報」で、国際会計基準の会社では名前が少し変わります。
PMDAの医療機器 添付文書等情報検索を開き、企業名の欄に会社名を入れて「製造販売業者」を選んで検索します(PMDA)。その会社が製造販売業者になっている医療機器の添付文書などが一覧で表示され、具体的な製品の名前が分かります。
医療機器業界の大手企業でよくある質問
医療機器業界の大手企業について、就職活動で出やすい4つの疑問に答えます。
- 医療機器業界で売上高が一番大きい会社は?
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テルモです。2026年3月期の連結の売上収益は1兆1,318億円で、2位のオリンパスの1兆106億円を上回ります(テルモ有価証券報告書)。総合メーカーの医療の事業も、富士フイルムホールディングスのメディカルシステム事業が7,015億円、キヤノンのメディカル事業が5,797億円で、テルモの規模には届きません。
- 医療機器メーカーで年収が一番高いのは?
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上位10社では、オリンパスの提出会社の平均年間給与1,005万6,995円が最も高い数字です。この額は前の事業年度より3.8%少なく、オリンパスは主に業績に連動して算定される賞与の支給額が前の事業年度を下回ったためと注記しています(オリンパス有価証券報告書)。
- コンタクトレンズの会社も医療機器業界?
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医療機器業界に入ります。PMDAは、コンタクトレンズを視力を補正するための高度管理医療機器と説明しています(PMDA)。高度管理医療機器は、副作用や機能の障害が生じた場合に人の生命と健康に重大な影響を与えるおそれがあるとして、厚生労働大臣が指定する医療機器です(e-Gov法令検索)。
- 日本では医療機器がどれくらい作られている?
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厚生労働省の薬事工業生産動態統計によると、令和6年の医療機器の国内の生産金額は2兆6,642億円でした。一般的名称別で最も大きいのは、全身用X線CT診断装置の881億円です。この統計で輸入金額と呼ばれる、海外の製造所で主な組み立てを行った製品の金額は、国内の生産金額を上回ります(厚生労働省)。
売上の順位より、何を作り何で稼ぐかで選ぼう
医療機器を主な事業とする上場企業では、テルモとオリンパスが売上高1兆円を超えます。富士フイルムホールディングスとキヤノンの医療の事業も、それぞれ5,000億円を超える規模です。
順位の次に見たいのは、その会社の製品が治療と診断のどちらに使われ、機器と消耗品のどちらで売上を立て、どの国で売れているかです。一覧の数字を比べるときは、医薬品の売上が含まれていないか、提出会社に誰が含まれているかも確かめてください。気になる会社の有価証券報告書を開き、「事業の内容」とセグメント情報から読み始めてみてください。

