「電子部品の大手といえば、積層セラミックコンデンサの村田製作所」。業界研究を始めると、まずこう考える人は多いはずです。村田製作所はコンデンサだけで年に9,000億円以上を売る会社なので、この印象は間違いではありません。ところが会社全体の売上高で並べると1位はTDKで、そのTDKの売上の半分以上は、二次電池と電源の事業です。
電子情報技術産業協会(JEITA)の電子部品部会が加盟企業として紹介している上場会社のうち、電子部品を主な事業の1つにしている会社を、連結の売上高で並べました。2026年10月27日時点で最新の有価証券報告書では、1位はTDKの2兆5,048億円、2位は京セラの2兆702億円、3位は村田製作所の1兆8,308億円です。4位のアルプスアルパインまでが1兆円を超えます。
本記事では、電子部品業界の上位10社の売上高と主力の製品、4つのタイプ、平均年収の読み方、自分で確かめる手順を順に整理します。
電子部品業界の大手企業ランキング上位10社
電子部品業界の大手企業を連結の売上高が大きい順に並べると、上位10社は次のとおりです。数字は各社の有価証券報告書の「主要な経営指標等の推移」にある連結の数字で、マブチモーターは2025年12月期、ほかの9社は2026年3月期です。億円未満は切り捨てています。
- TDK:2兆5,048億円
- 京セラ:2兆702億円
- 村田製作所:1兆8,308億円
- アルプスアルパイン:1兆194億円
- ローム:4,811億円
- ホシデン:4,482億円
- 太陽誘電:3,553億円
- 日本航空電子工業:2,278億円
- ヒロセ電機:2,112億円
- マブチモーター:2,004億円
対象は、JEITAの電子部品部会が学生向けページで加盟企業として紹介している会社のうち、東証のプライム市場かスタンダード市場に上場し、業種区分が電気機器の会社です(JEITA電子部品部会)。そのうえで、有価証券報告書で電子部品の製造・販売を主な事業と書いているか、コンデンサやコネクタ、小型モーターなど、JEITAが電子部品に分類する製品を主な事業の1つにしている会社に絞りました。上場や業種の区分は、日本取引所グループの東証上場銘柄一覧(2026年9月末)で確かめています(日本取引所グループ)。11位はニチコンの1,697億円です(ニチコン有価証券報告書)。
売上高1兆円を超える4社
TDK、京セラ、村田製作所、アルプスアルパインの4社は、連結の売上高が1兆円を超えています。TDKは受動部品、センサ応用製品、磁気応用製品、エナジー応用製品の4つの報告セグメントを持ち、連結の従業員数は106,545人です。顧客の所在地で分けた売上高は中国が1兆3,780億円で、全体の55.0%を占めます(TDK有価証券報告書)。
京セラの報告セグメントは、コアコンポーネント、電子部品、ソリューションの3つです。コアコンポーネントはファインセラミック部品や半導体関連部品、電子部品はコンデンサや水晶部品、コネクタ、ソリューションは機械工具やプリンター・複合機、通信端末を扱います。連結の従業員数は73,856人です(京セラ有価証券報告書)。
村田製作所の事業は、主にコンデンサやインダクタなどのコンポーネントと、高周波モジュールやリチウムイオン二次電池などのデバイス・モジュールに分かれます。連結の従業員数は74,302人です。顧客の所在地で見ると中華圏が8,650億円で47.2%を占め、日本は1,327億円で7.3%です(村田製作所有価証券報告書)。JEITAも、電子部品は出荷の8割が海外向けだと紹介しています(JEITA電子部品部会)。
アルプスアルパインは、スイッチ類などのコンポーネント事業、センサーや通信デバイスのセンサー・コミュニケーション事業、車載モジュールなどのモビリティ事業を持っています。連結の従業員数は25,924人です(アルプスアルパイン有価証券報告書)。
売上高4,000億円台の2社
5位のロームと6位のホシデンは、売上高が4,000億円台で並びます。ロームはLSI、トランジスタやダイオードなどの半導体素子、プリントヘッドなどのモジュール、抵抗器の4つの区分で事業をしており、連結の従業員数は21,756人です(ローム有価証券報告書)。
ホシデンは機構部品、音響部品、複合部品その他の3つを報告セグメントにしています。2026年3月期の売上高はアミューズメント関連向けと自動車関連向けが増えたことで前の年度より81.1%増えました。連結の従業員数は8,465人です(ホシデン有価証券報告書)。
売上高2,000億〜3,000億円台の4社
7位から10位の4社は、売上高が2,000億円台から3,000億円台です。太陽誘電はコンデンサやインダクタなどを作る電子部品事業だけの単一セグメントで、連結の従業員数は20,604人です(太陽誘電有価証券報告書)。日本航空電子工業はコネクタ、インターフェース・ソリューション、航機の3事業で、連結の従業員数は11,908人です(日本航空電子工業有価証券報告書)。
ヒロセ電機は多極コネクタと同軸コネクタが主な製品で、連結の従業員数は5,110人です(ヒロセ電機有価証券報告書)。マブチモーターは小型モーターの製造・販売を主な事業とし、連結の従業員数は2025年12月31日現在で17,408人です(マブチモーター有価証券報告書)。
電子部品業界のランキングが分かりにくい3つの理由
電子部品業界のランキングが分かりにくいのは、業種の区分、電子部品という言葉の範囲、決算期と会計基準の3つが、会社や一覧によってそろっていないからです。
東証の業種区分に電子部品がないから
東証の33業種の区分には、電子部品という区分がありません。村田製作所、TDK、京セラは、日立製作所やソニーグループと同じ「電気機器」に入っています(日本取引所グループ)。
電子部品部会の加盟企業でも、電気機器以外に入る会社があります。東証上場銘柄一覧では、フジクラと三菱マテリアルは非鉄金属、長瀬産業は卸売業です。業種の区分で絞り込むだけでは、電子部品の会社の一覧は作れません。
半導体を電子部品に含めるかが分かれるから
JEITAの電子部品グローバル出荷統計の品目分類表は、電子部品を受動部品、接続部品、変換部品、その他の電子部品の4つに分けています。受動部品はコンデンサや抵抗器、インダクタ、接続部品はスイッチやコネクタ、変換部品はセンサや小型モータです。その他の電子部品には、電源と高周波部品が入ります(JEITA)。この分類表には、LSIやトランジスタ、ダイオードといった半導体の品目は挙がっていません。
一方でロームは、有価証券報告書で自社を「電子部品の総合メーカー」と書いています。売上高の内訳はLSIが45.4%、半導体素子が42.7%で、JEITAの分類に入る抵抗器は5.4%です(ローム有価証券報告書)。この記事では、電子部品部会の加盟企業で、自ら電子部品を主な事業としているロームをランキングに含めています。
決算期と会計基準がそろわないから
同じ「最新の有価証券報告書」でも、数字を締めた時期は会社ごとに違います。上位10社のうちマブチモーターは2025年1月から12月まで、ほかの9社は2025年4月から2026年3月までの1年間の数字です。
会計基準も違います。TDK、京セラ、村田製作所、ヒロセ電機の4社は国際会計基準(IFRS)で、ほかの6社は日本の基準で連結財務諸表を作っています。IFRSの4社のうち村田製作所とヒロセ電機は、売上の数字を「売上収益」という名前で載せています。報告書に「売上高」の行が見当たらないときは、「売上収益」の行を探してください。
電子部品大手を稼ぎ頭で分ける4つのタイプ

上位10社は、売上の柱になっている製品や事業で分けると、次の4つのタイプに分かれます。割合は、各社の有価証券報告書のセグメント情報か販売実績にある金額が、連結の売上高に占める比率です。
- コンデンサ:村田製作所、太陽誘電
- コネクタ:ヒロセ電機、日本航空電子工業、ホシデン
- モーター:マブチモーター
- 複数の柱:TDK、京セラ、アルプスアルパイン、ローム
コンデンサが柱の会社
村田製作所と太陽誘電は、積層セラミックコンデンサなどのコンデンサが売上の半分以上を占めます。村田製作所のコンデンサの売上収益は9,364億円で全体の51.1%を占め、サーバー向けを中心に前の年度より12.6%増えました。同社の推計による用途別の内訳は、通信が35.7%、モビリティが25.9%、コンピュータが16.9%です(村田製作所有価証券報告書)。
太陽誘電はコンデンサの売上高が2,517億円で全体の約71%、インダクタが643億円で約18%です(太陽誘電有価証券報告書)。
コネクタが柱の会社
ヒロセ電機、日本航空電子工業、ホシデンの3社は、コネクタなどの部品が売上の9割前後を占めます。ヒロセ電機は丸形や角形、プリント配線板用の多極コネクタが約88%です(ヒロセ電機有価証券報告書)。日本航空電子工業はコネクタ事業が約87%で、会社全体の売上高の約51%は自動車向けです(日本航空電子工業有価証券報告書)。
ホシデンは、コネクタ、ジャック、スイッチなどの機構部品が約92%です。売上高の78.0%は任天堂向けで、同社の受注やゲーム機の需要が業績に影響しうると、ホシデン自身が事業等のリスクに書いています(ホシデン有価証券報告書)。同じコネクタの会社でも、主な納め先は会社ごとに違います。
モーターが柱の会社
マブチモーターの小型モーターの販売実績は、パワーウインドウやドアミラー、ドアロックなどに使う自動車電装機器向けが77.1%、歯ブラシや血圧計などに使うライフ・インダストリー機器向けが22.9%です。グループの従業員の大半はアジアのセグメントに属し、17,408人のうち15,439人が生産部門です(マブチモーター有価証券報告書)。
柱が複数ある会社
TDK、京セラ、アルプスアルパイン、ロームの4社は、コンデンサやコネクタ、モーターの売上が全体の半分に届かず、売上の2割以上を占める事業を2つ以上持っています。TDKは二次電池と電源のエナジー応用製品が約55%、コンデンサなどの受動部品が約24%です(TDK有価証券報告書)。京セラは機械工具やプリンター・複合機などのソリューションが51.7%、コアコンポーネントが31.6%で、電子部品は17.5%です(京セラ有価証券報告書)。
アルプスアルパインは車載モジュールなどのモビリティ事業が約54%、スイッチ類などのコンポーネント事業が約35%です(アルプスアルパイン有価証券報告書)。ロームは、LSIと半導体素子の2つが柱です。
ただし、グループ全体で売上が大きい事業と、提出会社で働く人が多い事業は一致しません。TDKの連結の従業員のうちエナジー応用製品は49,507人ですが、提出会社のTDK株式会社では236人で、受動部品の2,473人のほうが多くなっています(TDK有価証券報告書)。京セラの提出会社の従業員19,667人も、10,689人がコアコンポーネントです(京セラ有価証券報告書)。
社名の印象ではなく、応募する会社でどの事業に人がいるかを確かめてください。
電子部品大手10社の平均年間給与
上位10社の提出会社の平均年間給与を高い順に並べると、次のとおりです。括弧の中は提出会社の従業員数と平均年齢で、マブチモーターは2025年12月31日現在、ほかの9社は2026年3月31日現在の数字です。
- TDK:921万1,552円(6,573人・43.0歳)
- ヒロセ電機:847万4,000円(1,039人・40.7歳)
- 村田製作所:838万2,000円(11,174人・40.5歳)
- ローム:803万5,000円(4,199人・42.4歳)
- マブチモーター:764万1,630円(760人・43.3歳)
- 京セラ:739万7,108円(19,667人・40.1歳)
- 日本航空電子工業:727万円(1,539人・41.3歳)
- アルプスアルパイン:691万4,318円(6,305人・41.7歳)
- ホシデン:682万6,486円(569人・48.6歳)
- 太陽誘電:661万6,000円(2,803人・41.5歳)
有価証券報告書の平均年間給与は、報告書を出した会社自身の従業員の平均で、子会社の従業員は入りません。賞与と基準外賃金を含んだ金額です。ホシデンは提出会社の従業員が569人と少なく、平均勤続年数は24.4年と10社の中で最も長くなっています(ホシデン有価証券報告書)。
平均は、どの職種の人を含むかでも変わります。アルプスアルパインは全従業員の平均とは別に、総合職相当と管理職相当の3,814人の平均年間給与を819万5,693円と開示しています(アルプスアルパイン有価証券報告書)。
年ごとの増減もあります。TDKは前の事業年度より10.95%増え、理由として定期昇給とベースアップに加え、業績を踏まえた賞与水準の見直しなどを挙げています(TDK有価証券報告書)。太陽誘電は前の年度より2.1%減りました(太陽誘電有価証券報告書)。1年分の数字だけで順位を決めず、前の年の報告書の数字とも並べてみてください。
有価証券報告書で電子部品大手を確かめる手順

次の3つの手順で、この記事と同じ数字にたどり着けます。
JEITA電子部品部会の学生向けページで、電子部品メーカーのリンク集から加盟企業を確かめます(JEITA電子部品部会)。上場しているかと業種の区分は、日本取引所グループの「東証上場銘柄一覧」のExcelファイルで確かめます(日本取引所グループ)。
金融庁のEDINETで会社名を入れて書類を検索し、最新の有価証券報告書を開きます(金融庁)。「主要な経営指標等の推移」で連結の売上高を、「経理の状況」のセグメント情報と「生産、受注及び販売の実績」で、製品や事業ごとの売上を確かめます。
「従業員の状況」で、提出会社の平均年齢、平均勤続年数、平均年間給与と、事業ごとの従業員数を確かめます。ロームや太陽誘電のように、事業ごとの人数を載せていない会社もあります。あわせて「事業等のリスク」で、売上の多くを特定の取引先に頼っていないかを読みます。
同じ報告書の「事業の内容」には、グループの中で誰が何を作っているかが書かれています。たとえば村田製作所は、提出会社が電子部品の中間製品である半製品を作り、国内外の生産会社が完成品に加工しています(村田製作所有価証券報告書)。応募する会社がその仕事を担っているかを判断する材料になります。
電子部品業界の大手企業でよくある質問
- 電子部品業界で売上高が一番大きい会社はどこですか
-
会社全体の売上高ではTDKで、2026年3月期の連結の売上高は2兆5,048億円です。ただしTDKの受動部品の売上高は5,932億円で(TDK有価証券報告書)、村田製作所のコンデンサだけの売上収益9,364億円を下回ります(村田製作所有価証券報告書)。
- ニデックやミネベアミツミが入っていないのはなぜですか
-
2社とも、JEITA電子部品部会の学生向けページの加盟企業の一覧に社名がないためです(JEITA電子部品部会)。ニデックは精密小型モータ、車載用製品、家電・商業・産業用製品、機器装置などの製造・販売を主な事業としています(ニデック有価証券報告書)。ミネベアミツミはボールベアリングなどのプレシジョンテクノロジーズ事業、モーターなどの事業を持っています(ミネベアミツミ有価証券報告書)。
- オムロンとセイコーエプソンが入っていないのはなぜですか
-
2社とも加盟企業の一覧に載っていますが、電子部品を主な事業の1つにしていないためです。オムロンは2026年3月期から電子部品事業を非継続事業に分け、子会社のオムロンデバイスに承継させてその株式を譲渡すると決めました。2026年6月に提出された有価証券報告書では、譲渡の実行日を2026年10月1日の予定としていました(オムロン有価証券報告書)。セイコーエプソンの報告セグメントは、プリンティングソリューションズ、ビジュアルコミュニケーション、マニュファクチャリング関連・ウエアラブルの3つで、水晶デバイスや半導体はマニュファクチャリング関連・ウエアラブルに含まれます(セイコーエプソン有価証券報告書)。
- 文系でも電子部品メーカーで働けますか
-
働けます。JEITA電子部品部会は学生向けページで、法学・経済系なら企画、経理、法務、知財、マーケティング、営業、購買、SCM、国際・外語系なら海外営業や貿易、海外駐在などの職種を挙げています(JEITA電子部品部会)。
売上高の順位より主力の部品で会社を選ぼう
電子部品業界の大手企業は、連結の売上高で見るとTDK、京セラ、村田製作所、アルプスアルパインの4社が1兆円を超え、ローム、ホシデン、太陽誘電が3,000億円台から4,000億円台で続きます。ただし上位4社のうちTDK、京セラ、アルプスアルパインの3社は、売上の半分以上を二次電池と電源、機械工具やプリンター、車載機器などの事業で得ています。
同じ電子部品の会社でも、コンデンサ、コネクタ、モーターと主力の製品は違い、主な用途や納め先も自動車、通信、ゲーム機と分かれます。気になる会社の有価証券報告書で、製品ごとの売上と提出会社の事業ごとの従業員数を開き、自分が関わりたい部品の仕事がその会社にあるかを確かめてみてください。

