「大日本印刷の子会社で、年収が高いのはどこか」。グループの会社を比べ始めると、まず知りたくなるのがこの順位です。ところが、大日本印刷の子会社145社のうち、有価証券報告書で平均年間給与を確かめられるのは、自社でも報告書を出している上場子会社の3社だけです。
3社を平均年間給与で並べると、インテリジェント ウェイブが741万7,000円で最も高く、丸善CHIホールディングスの601万9,935円、北海道コカ・コーラボトリングの579万円が続きます。1位のインテリジェント ウェイブでも、大日本印刷単体の861万246円を約119万円下回ります。
本記事では、上場3社の年収ランキングと、数字を比べるときの注意点、上場していない子会社の比べ方、公開資料で確かめる手順を、就活キャリア研究所の視点で順にお伝えします。
大日本印刷の上場子会社3社の年収ランキング
大日本印刷の上場子会社3社を平均年間給与で並べると、1位はインテリジェント ウェイブで、3社とも大日本印刷単体の平均を下回ります。大日本印刷の2026年3月期の有価証券報告書は、連結子会社のうち3社を、有価証券報告書を提出している会社として挙げています(EDINET)。3社の報告書に載る平均年間給与を高い順に並べると、次のとおりです。
- インテリジェント ウェイブ 741万7,000円 2026年6月30日時点の従業員534人の平均で、平均年齢は38.9歳です。
- 丸善CHIホールディングス 601万9,935円 2026年1月31日時点の従業員38人の平均で、平均年齢は51.6歳です。
- 北海道コカ・コーラボトリング 579万円 2025年12月31日時点の従業員240人の平均で、平均年齢は40.2歳です。
3社の数字は、各社の有価証券報告書の「従業員の状況」に載る、その会社単体の社員の平均です。3社とも賞与と基準外賃金を含みます。
大日本印刷単体の平均年間給与は、2026年3月31日時点で861万246円です。単体の従業員8,911人の平均で、平均年齢は44.8歳、平均勤続年数は20.7年です。前の事業年度からの増加率は3.76%でした。
インテリジェント ウェイブ
インテリジェント ウェイブは、クレジットカード会社や銀行、証券会社などの金融機関に向けて業務システムを開発・保守する会社で、東証プライム市場に上場しています。主力の決済の分野では、カード不正利用検知システムなどを、自社開発のパッケージソフトウェアをもとに提供しています。
インテリジェント ウェイブは、企業の内部情報の漏えいを防ぐ自社製品などを扱う情報セキュリティ対策事業も持っています。大日本印刷は2010年4月の公開買付けで同社を子会社にしました。2026年6月期の売上高は172億4,700万円で、平均年間給与は前の事業年度から2.3%増えています。
丸善CHIホールディングス
丸善CHIホールディングスは、2010年2月1日に丸善と図書館流通センターが共同で設立した持株会社で、東証スタンダード市場に上場しています。2社は、2008年12月に経営統合の基本合意を結んだ時点で、どちらも大日本印刷の連結子会社でした。
グループは同社と子会社36社、関連会社4社で構成され、事業は文教市場販売や店舗・ネット販売、図書館サポートなど5つに分かれています。大学や図書館への書籍販売と図書館運営の受託を丸善雄松堂と図書館流通センターが、書店を丸善ジュンク堂書店が、学術専門書の出版を丸善出版が担っています。2026年1月期の連結売上高は1,850億5,300万円です。
北海道コカ・コーラボトリング
北海道コカ・コーラボトリングは、札幌市に本店を置き、飲料の製造と販売を行う会社です。東証スタンダード市場と札幌証券取引所に上場しています。大日本印刷の沿革によると、1963年1月に大日本印刷が設立した会社です。
グループは同社と連結子会社5社で構成され、飲料の製造は北海道コカ・コーラプロダクツが、商品の運送は幸楽輸送が担っています。2025年12月期の連結売上高は590億8,600万円です。
上場3社の年収を比べるときの3つの注意点
上場3社の年収は、単体の社員に含まれる仕事の範囲と、数字の時点が会社ごとに違います。比べる前に押さえておきたい違いは、次の3つです。
持株会社の社員だけの丸善CHIの数字
丸善CHIホールディングスの601万9,935円は、持株会社で働く38人の平均です。報告書では、38人の全員が、特定の事業に区分できない管理部門に属しています。
グループの連結の従業員は1,574人で、ほかに臨時雇用者が年間平均で1万3,497人います。臨時雇用者は、図書館サポート事業だけで9,240人です。書店や図書館で働く人の給与は、601万9,935円には入っていません。
工場の社員を含まない北海道コカ・コーラの数字
北海道コカ・コーラボトリングの579万円は、同社単体の240人の平均です。グループの連結の従業員は1,173人なので、900人あまりは子会社5社の社員です。
飲料の製造は、同社からの業務委託で北海道コカ・コーラプロダクツが行っています。大日本印刷の報告書も、札幌工場の従業員はすべて北海道コカ・コーラボトリングの連結子会社の従業員だとしています。579万円には、札幌工場で働く人は入っていません。
最大で半年ずれる4社の決算期
4社の平均年間給与は、それぞれの決算期の末日時点の数字で、末日は会社ごとに次のように違います。
- 北海道コカ・コーラボトリング:2025年12月31日
- 丸善CHIホールディングス:2026年1月31日
- 大日本印刷:2026年3月31日
- インテリジェント ウェイブ:2026年6月30日
最も早い北海道コカ・コーラボトリングと、最も遅いインテリジェント ウェイブでは、時点が半年ずれています。インテリジェント ウェイブの741万7,000円は、2025年7月から2026年6月までの事業年度の数字です。比べるときは、各社の報告書の表紙で事業年度を確かめてから並べてください。
大日本印刷の子会社を比べる4つのポイント

上場していない大日本印刷の子会社は、年収の代わりに、大日本印刷の有価証券報告書で確かめられる次の4つのポイントで比べます。
- 資本金
- 議決権の所有割合
- 主要な工場の従業員数
- 女性管理職と男性の育休
資本金
資本金は、大日本印刷の報告書の「関係会社の状況」で、社名が載る連結子会社ごとに確かめられます。2026年3月期の報告書に社名が載る国内の連結子会社65社を資本金で並べると、上位6社は次のとおりです。
- 丸善CHIホールディングス:30億円
- 北海道コカ・コーラボトリング:29億3,515万4,000円
- DNPファインケミカル:20億円
- DNP高機能マテリアル彦根:17億円
- インテリジェント ウェイブ:8億4,375万円
- DNPロジスティクス:6億2,633万円
上場していない会社で資本金が最も大きいDNPファインケミカルは、1931年12月に大日本印刷(当時の秀英舎)が設立した会社で、横浜市で化成品などの製造・販売を行っています。DNP高機能マテリアル彦根は、大日本印刷が2025年2月にレゾナック・パッケージングの株式を取得して子会社にした会社で、滋賀県彦根市で機能性フィルムを製造・販売しています。
資本金が大きい会社ほど働く人が多いとは限りません。資本金が2番目に大きい北海道コカ・コーラボトリングは単体の従業員が240人ですが、資本金1億円のDNPデータテクノでは、主要な3つの工場だけで2,003人が働いています。
議決権の所有割合
議決権の所有割合を見ると、大日本印刷がその会社を直接持っているのか、ほかの子会社を通じて持っているのかが分かります。報告書の表で括弧に入った数字は、子会社を通じた間接所有の割合で、合計の内数です。
たとえば丸善ジュンク堂書店や丸善出版、図書館流通センターは55.0%で、そのすべてが丸善CHIホールディングスを通じた間接所有です。DNPエリオとDNP・SIG Combiblocは50.0%、丸善リサーチサービスは49.5%で、持分は半分以下ですが、大日本印刷が実質的に支配しているため子会社とされています。
大日本印刷が議決権の一部を持つ、子会社ではない持分法適用の関連会社もあります。東証に上場するBIPROGYは21.3%、新光電気工業は15.0%、教育出版は48.3%です。3社とも、報告書の「事業の内容」では主な関係会社として子会社と並んで載っています。大日本印刷のグループとして名前が挙がる会社でも、子会社とは限りません。
主要な工場の従業員数
主要な工場の従業員数は、大日本印刷の報告書の「主要な設備の状況」で確かめられます。大日本印刷が自社の設備として載せる13の工場のうち12の工場は、連結子会社に貸している設備とされ、従業員数の欄は「−」です。
大日本印刷は、本社に企画や営業、研究・開発の機能を集め、製造部門や個別の技術開発部門をグループ会社に置いていると説明しています(大日本印刷)。報告書の国内子会社の欄には、2026年3月31日時点の工場ごとの従業員数が次のように載っています。
- DNPデータテクノ:蕨・牛久・奈良の3工場で2,003人
- シミックCMO:足利・静岡・富山・西根の4工場で1,246人
- ディー・ティー・ファインエレクトロニクス:川崎・北上の2工場で249人
DNPデータテクノは各種帳票やセキュリティ事業の関連製品の製造を、シミックCMOは医薬品などの製剤開発と製造の受託を、ディー・ティー・ファインエレクトロニクスは電子精密部品の製造・販売を担っています。国内子会社の欄に工場ごとの人数が載るのは、この3社だけです。3社の人数は、どれも工場ごとの人数を足した数で、本社や営業所の社員を含めた会社全体の人数ではありません。
女性管理職と男性の育休
女性管理職の割合と男性の育児休業取得率は、大日本印刷単体と連結子会社57社の数字が報告書に載っています。大日本印刷単体と、上場していない主要な連結子会社4社の数字は次のとおりです。
- 大日本印刷:女性管理職12.3%、男性の育児休業取得率106.8%
- シミックCMO:女性管理職18.4%、男性の育児休業取得率94.1%
- DNPファインケミカル:女性管理職13.4%、男性の育児休業取得率83.3%
- DNPロジスティクス:女性管理職2.1%、男性の育児休業取得率100.0%
- DNP高機能マテリアル彦根:女性管理職0.0%、男性の育児休業取得率100.0%
男性の育児休業取得率は、その年度に育児休業などを始めた男性の数を、配偶者が出産した男性の数で割って計算するため、100%を超えることがあります。57社のうち女性管理職の割合が最も高いのはDNPアートコミュニケーションズの50.0%で、16社は0.0%です。
公開資料で大日本印刷の子会社を確かめる手順

大日本印刷の子会社を自分で調べるときは、大日本印刷の有価証券報告書、子会社自身の公開情報、大日本印刷のニュースの順に開きます。
金融庁のEDINETで「大日本印刷」の有価証券報告書を開きます(EDINET)。「関係会社の状況」で資本金と議決権の所有割合を、「主要な設備の状況」で工場ごとの従業員数を、「従業員の状況等」で大日本印刷単体の平均年間給与を確かめます。
志望する会社が上場3社のどれかなら、EDINETでその会社の有価証券報告書を開き、「従業員の状況」で平均年間給与と平均年齢を確かめます。上場していない会社は、厚生労働省の職場情報総合サイト「しょくばらぼ」で社名を検索し、働き方や採用状況の情報が載っているかを見ます(厚生労働省)。掲載されていない会社もあります。
大日本印刷のニュースのページで、報告書の提出後に発表された、子会社の合併や株式取得のお知らせを確かめます(大日本印刷)。
2026年6月23日に2026年3月期の報告書が提出された後も、子会社の顔ぶれは変わっています。大日本印刷は、原薬の製造などを手がける協和ファーマケミカルの全株式を取得し、2026年10月1日付で子会社にしました(大日本印刷)。協和ファーマケミカルは2027年2月に、社名を「DNPファーマケミカル」に変える予定です。
大日本印刷は2026年10月9日に、2027年4月1日を予定日とする2つの再編も発表しています。1つは、大日本印刷によるDNPデジタルソリューションズの吸収合併です(大日本印刷)。DNPデジタルソリューションズはICTサービスの企画開発と運用を担う会社で、2026年3月31日時点の従業員は679人です。合併により解散します。
もう1つは、旅行・観光分野の販促支援を行うDNPプランニングネットワークの再編です。営業部門の事業を大日本印刷が引き継ぎ、同じ日にDNPコミュニケーションデザインがDNPプランニングネットワークを吸収合併します(大日本印刷)。
海外では、大日本印刷が2026年8月26日に、オーストリアの上場企業AUSTRIACARD HOLDINGS AGの株式の公開買付けで、成立の前提となる75%以上の応募があったと発表しました(大日本印刷)。AUSTRIACARDは欧州などで決済ICカードなどの事業を行う会社で、オーストリアの外資規制の許可が得られれば、大日本印刷の連結子会社になる予定です。
大日本印刷の子会社に関するよくある質問
大日本印刷の子会社について、会社の数や上場の有無など、4つの疑問に答えます。
- 大日本印刷の子会社は何社ありますか
-
2026年3月期の有価証券報告書では、子会社が145社、関連会社が27社です(EDINET)。このうち連結子会社は116社、持分法適用の関連会社は21社です。「関係会社の状況」に社名が載る連結子会社は国内65社と海外34社で、残りの17社は「その他」とまとめて書かれています。
- 上場している子会社はどこですか
-
大日本印刷の2026年3月期の有価証券報告書で、上場していると書かれている子会社は3社です。丸善CHIホールディングスと北海道コカ・コーラボトリングは東証スタンダード市場に、インテリジェント ウェイブは東証プライム市場に上場しています。北海道コカ・コーラボトリングは札幌証券取引所にも上場しています。東証に上場するBIPROGYは、大日本印刷が議決権の21.3%を持つ関連会社で、子会社ではありません。
- 大日本印刷から子会社に移った事業はありますか
-
あります。大日本印刷は2025年4月1日に、出版印刷事業を吸収分割で連結子会社に引き継がせました。引き継いだ会社は同じ日に社名を変え、DNP出版プロダクツになりました。大日本印刷単体の従業員が前の年度末より874人減ったのは、主にこの吸収分割によるものです。
- 大日本印刷グループで働く人は何人ですか
-
2026年3月31日時点で、連結の従業員は36,360人です。大日本印刷単体の従業員は8,911人で、連結の4分の1ほどです。残りの2万7,000人あまりは、連結子会社で働いています。
年収の順位は数字の範囲とあわせて確かめよう
大日本印刷の子会社で、有価証券報告書から平均年間給与が分かるのは上場3社だけです。インテリジェント ウェイブの741万7,000円、丸善CHIホールディングスの601万9,935円、北海道コカ・コーラボトリングの579万円の順で、3社とも大日本印刷単体の861万246円を下回ります。
ただし丸善CHIの数字は持株会社の38人の平均で、北海道コカ・コーラの数字には札幌工場で働く人が入っていません。上場していない子会社は、資本金や議決権の所有割合、工場の従業員数などを大日本印刷の報告書で確かめ、志望する会社がグループの中で何を担っているのかを見比べてみてください。年収の順位は、その数字が誰の平均なのかとあわせて読みましょう。

