「ドラッグストアはどの会社も同じに見える」。店に並ぶ商品もレジの様子も似ていて、求人票の言葉も似通っているため、会社ごとの違いをつかみにくいと感じる人は多いはずです。
ところが、ドラッグストアが医薬品を売るには、店ごとに医薬品医療機器等法(薬機法)の許可が要ります。店で一般用医薬品を売れるのは、「店舗販売業」の許可か、調剤も行う「薬局」の開設許可を受けた店です。第二類・第三類医薬品を売る時間には、薬剤師か登録販売者が必ず店にいなければなりません。店舗管理者の氏名や、勤務する資格者の氏名を店内に掲示する決まりもあります。働きやすさを分けるのは、この資格者を何人置き、どう育てているかで、その手がかりの多くは外から確かめられます。
本記事では、ドラッグストアの働き方を左右する決まりから、働きやすい会社に共通する4つの特徴、公開されている情報で確かめる手順まで、就活キャリア研究所の視点で順を追ってお伝えします。
ドラッグストアの働き方が外から見えにくい3つの理由
ドラッグストアの働き方が外から見えにくいのは、医薬品を売る決まりが店の人員とシフトを左右していることも、会社が出す数字の範囲が店で働く人と一致しないことも、求人票からは読み取れないからです。理由は次の3つです。
医薬品を売る時間に資格者が欠かせない
店舗販売業の許可は、店舗ごとに、所在地の都道府県知事が与えます。保健所を設置する市や特別区にある店では、市長や区長が与えます。医薬品の販売業の許可は、6年ごとに更新を受けなければ効力を失います(e-Gov法令検索)。
店の体制は厚生労働省令で決まっています。第二類医薬品か第三類医薬品を売る営業時間内は、常に薬剤師か登録販売者が店で勤務していなければなりません。要指導医薬品か第一類医薬品を売る店では、それらを売る営業時間内は常に薬剤師が勤務している必要があります(e-Gov法令検索)。
さらに、医薬品の販売に従事する薬剤師と登録販売者の週当たり勤務時間の合計を、店内で情報を提供する場所の数で割った値が、医薬品を売る開店時間の1週間の合計以上でなければなりません。医薬品を売る時間が長い店ほど、資格者の勤務時間を多く確保しなければならないということです。
同じ売り場で資格の違う人が働く
薬機法は、医薬品の区分ごとに売る人を決めています。要指導医薬品と第一類医薬品は薬剤師が、第二類医薬品と第三類医薬品は薬剤師か登録販売者が売ります(e-Gov法令検索)。資格のない人に一般用医薬品を売らせることはできません。
店は、薬剤師・登録販売者・資格のない一般従事者を名札などで見分けられるようにしなければなりません。登録販売者のうち、店舗管理者になる要件をまだ満たしていない人は「研修中の登録販売者」とされ、名札にその旨を表示します。研修中の登録販売者は、薬剤師か、研修中でない登録販売者の管理と指導の下で働く決まりです(e-Gov法令検索)。
厚生労働省の通知は、管理と指導をするのはその店で勤務中の薬剤師か研修中でない登録販売者だとし、研修中の登録販売者は店舗管理者の代わりを務めることもできないとしています(厚生労働省)。同じ「登録販売者」の求人でも、研修中の人は、研修中でない資格者と同じ時間帯に働くことが前提になります。
会社の数字が店で働く人の数字とは限らない
上場している会社は、有価証券報告書の「従業員の状況」に、提出会社の従業員数、平均年齢、平均勤続年数、賞与を含む平均年間給与を書きます。臨時従業員が相当数いる場合は、報告書の基準日までの1年間の平均雇用人員を、従業員数とは別に外書きで示します。臨時従業員が従業員数の10%未満なら、この記載は省略できます(金融庁)。
平均年間給与は従業員数に数えた人の平均で、外書きの臨時従業員はその数に入りません。また、提出会社が子会社の経営管理を主な仕事とする持株会社なら、提出会社の数字は持株会社で働く人のもので、店を運営する子会社の社員は含まれません。
2026年3月31日以後に終わる事業年度の報告書からは、持株会社は従業員数が最も多い子会社などについても、平均年間給与などを会社ごとに書くことになりました(金融庁)。決算の時期によっては、まだこの書き方になっていない報告書もあります。
ホワイトなドラッグストアに共通する4つの特徴

働きやすいドラッグストアに共通するのは、資格者を育てる仕組みと、店への配置の余裕、待遇の数字の出し方です。特徴は次の4つです。
- 店舗管理者になるまでの道筋を示している
- 外部研修の時間と費用の扱いを決めている
- 医薬品を売る時間に見合う資格者がいる
- 男女の賃金の差を雇用形態別に公表している
店舗管理者になるまでの道筋を示している
第二類・第三類医薬品を売る店の店舗管理者には、薬剤師のほか、次の3つのいずれかに当てはまる登録販売者がなれます(e-Gov法令検索)。
- 過去5年間に、従事期間が通算2年以上ある
- 過去5年間に、従事期間が通算1年以上あり、決められた研修を修了している
- 従事期間が通算1年以上あり、店舗管理者などを務めた経験がある
2つ目の研修は、毎年度の継続的な研修と、店舗の管理と法令遵守についての研修の両方です。従事期間には、登録販売者として働いた期間に加え、資格を取る前に一般従事者として薬剤師や登録販売者の管理と指導の下で実務に就いた期間も入ります。
厚生労働省の通知では、従事期間は月単位で数え、通算2年以上の要件では1か月に80時間以上働いた月を数えます。月80時間に届かない月があっても、過去5年間で月単位の通算が2年以上あり、合計1,920時間以上働いていれば、2年以上の人とみなしてよいとされています(厚生労働省)。
店は、働いた人から過去5年間の実務や業務の証明を求められたら、すみやかに証明しなければならず、そのための記録を残す義務があります(e-Gov法令検索)。勤務時間の記録の取り方と、研修中の表示が外れる時期の見込みを面接で具体的に答えられる会社は、資格者を育てる前提で人を採っていると考えてよいでしょう。
第一類医薬品を売る店の店舗管理者は、原則として薬剤師です。薬剤師を店舗管理者にできない場合に限り、過去5年間に通算3年以上の経験がある登録販売者を充てられます。数えられるのは、要指導医薬品か第一類医薬品を扱う薬局や、そうした医薬品を扱い薬剤師が店舗管理者を務める店で登録販売者として働いた期間と、第一類医薬品を扱う店の店舗管理者だった期間などです。登録販売者を店舗管理者にした店は、店舗管理者を補佐する薬剤師を置かなければなりません(e-Gov法令検索)。
外部研修の時間と費用の扱いを決めている
店舗販売業者は、店で働く登録販売者に、研修を毎年度受けさせなければなりません。この研修は厚生労働大臣に届け出た研修実施機関が行い、講義の総時間数は12時間以上とされています。内容は医薬品の基本的な知識、薬事に関する法規と制度、リスク区分などが変わった医薬品、店舗の管理に関する事項などです(e-Gov法令検索)。
届け出た研修実施機関の一覧は、厚生労働省が公表しています(厚生労働省)。受講料を誰が払うのか、受講する時間を勤務として扱うのかは、研修を義務づける規定には書かれていません。業務上義務づけられた研修の受講時間を労働時間として扱うよう、厚生労働省のガイドラインは求めています(厚生労働省)。勤務の時間に受講できるか、受講料を会社が払うかを、面接で確かめましょう。
医薬品を売る時間に見合う資格者がいる
店に必要な資格者の人数は、医薬品を売る開店時間から計算できます。たとえば医薬品を売る時間が毎日9時から22時までの店は、1週間で91時間です。情報を提供する場所が1か所なら、薬剤師と登録販売者の週当たり勤務時間の合計が91時間以上必要で、週40時間働く人なら少なくとも3人が要ります(e-Gov法令検索)。
この人数は下限です。下限に近い人数の店では、1人が長く休むと、残りの人の勤務を延ばさなければ基準を満たせなくなります。研修中の登録販売者が多い店では、研修中でない資格者が同じ時間帯にいるようにシフトを組む必要もあります。
2026年5月1日からは、乱用のおそれがあるとして厚生労働大臣が指定した指定濫用防止医薬品の売り方に決まりが加わりました(厚生労働省)。売るときは、薬剤師か登録販売者が書面などを使って情報を伝え、ほかの薬の使用状況などを確かめなければなりません(e-Gov法令検索)。決められた数量を超える販売と18歳未満の人への販売は、薬剤師か登録販売者が対面などで情報を伝える場合などに限られます。18歳未満の人には、その場合も決められた数量までしか売れません(e-Gov法令検索)。
店は、この医薬品の販売の手順書も作らなければなりません(e-Gov法令検索)。レジや相談の場で、こうした確認を誰がどの時間帯に担うのかを、面接で尋ねておきましょう。
男女の賃金の差を雇用形態別に公表している
女性活躍推進法の改正で、2026年4月1日から、従業員数が101人以上の企業は男女間賃金差異と女性管理職比率の公表が義務になりました(厚生労働省)。301人以上の企業の男女間賃金差異は、2022年7月8日から義務になっています(厚生労働省)。
男女間賃金差異は、男性の賃金の平均に対する女性の賃金の平均の割合です。「全労働者」「正規雇用労働者」「非正規雇用労働者」の3つの区分で公表します(厚生労働省)。パートやアルバイトで働く人が多い職場では、3つの区分を並べると、男女の差が正規雇用と非正規雇用のどちらで大きいかが見えてきます。
新たに義務になった項目は、改正法の施行後に最初に終わる事業年度の実績を、次の事業年度が始まってからおおむね3か月以内に公表するとされています(厚生労働省)。決算の時期によっては、2026年10月時点でまだ載っていない会社もあります。
公開されている情報でドラッグストアを確かめる手順

ドラッグストアの会社は、有価証券報告書、国のデータベース、店の掲示の3か所で確かめられます。次の3つの手順で進めてください。
金融庁のEDINETで社名を検索し、有価証券報告書の「従業員の状況」を開きます(金融庁)。提出会社が持株会社かどうか、平均年間給与と平均勤続年数、外書きの臨時従業員の人数を書き出します。
気になる会社の店を訪ね、店内の掲示を読みます。掲示には店舗管理者の氏名、勤務する薬剤師と登録販売者の区別と氏名、担当業務、営業時間が載ります。医薬品を売る開店時間は、店の外側にも掲示されます(e-Gov法令検索)。
STEP3の掲示では、登録販売者が研修中かどうかも分けて書かれるため、資格者の人数と、そのうち研修中の人が何人いるかが分かります。店を訪ねにくい場合、インターネットで医薬品を売っている会社なら、厚生労働省の一般用医薬品の販売サイト一覧で通信販売のページを探せます(厚生労働省)。インターネットで医薬品を売る店は、店内の掲示と同じ項目をホームページに表示する決まりです(e-Gov法令検索)。
厚生労働省が一般の消費者に店を訪ねてもらった令和6年度の医薬品販売制度実態把握調査では、店舗販売業の店1,673件のうち、名札などで専門家を見分けられた割合は93.9%でした(厚生労働省)。訪ねた店で名札から資格の違いが分からなければ、店の決まりをどう守っているかを面接で尋ねてみてください。
新卒で応募するときに求められる情報
新卒者などを対象に人を募集する会社は、応募者などから求められれば、青少年雇用情報を提供しなければなりません(e-Gov法令検索)。募集・採用の状況、職業能力の開発・向上の取組、職場への定着の取組の3つの類型ごとに、1つ以上の情報を出す義務で、2016年3月1日から始まっています(厚生労働省)。研修の受け方や定着の状況を尋ねるときに使えます。
面接で確かめたい配属と勤務の条件
面接で確かめたいのは、異動の範囲、深夜の勤務、調剤のある店での働き方の3つです。
転勤と担当業務が変わる範囲
2024年4月から、会社は労働契約を結ぶときに、雇い入れ直後の就業場所と業務に加えて、その「変更の範囲」も明示しなければならなくなりました。有期労働契約を更新するときも同じです(厚生労働省)。店を多く持つ会社では、どの地域の店まで異動がありうるか、店から本部の仕事に移ることがあるかが、この「変更の範囲」に書かれます。
深夜の勤務と割増賃金
午後10時から午前5時までの間に働いた時間には、通常の賃金の2割5分以上の割増賃金を支払わなければなりません。厚生労働大臣が必要と認めた地域や期間では、午後11時から午前6時までとされます(e-Gov法令検索)。
夜遅くまで医薬品を売る店では、この時間帯にも資格者の勤務が要ります。資格者が月に何回ほど深夜の時間帯に入るのか、深夜の勤務の後の休みをどう取るのかを尋ねておきましょう。
調剤のある店での薬剤師の働き方
薬剤師が処方箋で調剤できるのは、原則として薬局の中です(e-Gov法令検索)。そのため、調剤を行うドラッグストアの店は、薬局の開設許可を受けています。薬局では、調剤に従事する薬剤師の数が、一日平均の取扱処方箋数を40で割った数以上でなければなりません(e-Gov法令検索)。
薬局の情報は都道府県に報告され、医療情報ネット(ナビイ)で調べられます(厚生労働省)。調剤と医薬品売り場のどちらを主に担当するのか、配属をどう決めるのかを尋ねておくと、入社後の仕事の思い違いを防げます。
ドラッグストア選びでよくある質問
ドラッグストアの会社を選ぶときに出てきやすい疑問に、4つ答えます。
- 登録販売者の資格がなくても働けますか
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働けます。ただし、一般用医薬品は薬剤師か登録販売者に売らせなければならないため、資格のない一般従事者が医薬品を売ることはできません(e-Gov法令検索)。資格を取る前に、薬剤師や登録販売者の管理と指導の下で実務に就いた期間は、店舗管理者になる要件の従事期間に数えられます(e-Gov法令検索)。
- 登録販売者試験の合格率はどのくらいですか
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厚生労働省のまとめでは、令和7年度の登録販売者試験は受験者58,996人、合格者24,004人で、合格率は40.7%でした。令和8年3月31日時点の数値で、同じ人が複数の試験を受けることがあるため延べ人数です。試験を行う都道府県などごとの合格率は、23.2%から54.8%まで差があります(厚生労働省)。
- 研修中の表示はいつ外れますか
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店舗管理者になる要件を満たしたときです。研修中の登録販売者は、店舗管理者の要件に当てはまらない登録販売者を指すためです(e-Gov法令検索)。店舗管理者の経験がない人が追加の研修を受けずに要件を満たすのは、過去5年間の従事期間が通算2年以上になったときで、1か月に80時間以上働いた月を数えます(厚生労働省)。
- 深夜まで営業する店は避けたほうがよいですか
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一概には言えません。開店時間のうち医薬品を売る時間は、店の内側と外側に掲示する決まりがあります(e-Gov法令検索)。まず掲示で医薬品を売る時間を確かめ、その長さと、掲示に載る資格者の人数を並べて見てください。医薬品を売る時間が長いほど、資格者の勤務時間を多く確保しなければならないためです。
資格者の配置と育て方から会社を選ぼう
ドラッグストアの店は、医薬品を売る時間に薬剤師か登録販売者を置き、その時間に見合う資格者の勤務時間を確保するという決まりの上で動いています。研修中の登録販売者は研修中でない資格者の下で働き、登録販売者は毎年12時間以上の研修を受けます。外から同じに見える店でも、この決まりをどれだけ余裕を持って満たしているかで、働く人の毎日は変わります。
店の掲示で資格者の人数と医薬品を売る時間を確かめ、有価証券報告書と国のデータベースで会社の数字に目を通してください。そのうえで、研修中の期間の働き方、外部研修の扱い、異動の範囲を面接で尋ねてみましょう。求人票の言葉ではなく、資格者の配置と育て方を物差しにして、自分が続けられる会社を選んでいきましょう。

