「処分を受けた会社の名前を集めれば、山梨で入ってはいけない運送会社の一覧ができるはず」。関東運輸局は、トラックの事業者が受けた行政処分を、事業者の名前と違反の中身を付けて月ごとに公開しているので、そう考えるのは自然なことです。
ところが、令和7年4月分から令和8年8月分までの一覧で営業所の所在地が山梨県の行は18件あり、そのうち8件は同じ1つの事業者が県内の8つの営業所ごとに受けたものでした。18件のうち17件で点呼の実施か記録の違反が挙がり、その8件を除く10件では、10件すべてで運転者への指導と監督の違反が挙がっています。一覧に名前があるかを探すより、応募先が出発前の点呼と運転者への指導をどう行っているかを確かめるほうが、見分ける近道になります。
この記事では、特定の会社名を挙げることはしません。処分の一覧の読み方から、面接で点呼・指導・点検・勤務時間をどう尋ねるか、令和8年11月1日改定の山梨県最低賃金での賃金の確かめ方まで、関東運輸局と山梨労働局などが公開している情報をもとに、就活キャリア研究所の視点で順にお伝えします。
山梨の運送会社が外から見分けにくい3つの理由
山梨の運送会社が外から見分けにくいのは、処分の一覧の作り方、件数の数え方、監査に入るきっかけという3つの事情が、求人票にはほとんど現れないからです。
処分の一覧に関東の1都7県の分が並ぶから
山梨県は、東京・神奈川・埼玉・千葉・茨城・栃木・群馬とともに関東運輸局の管内にあります(関東運輸局)。県内の手続きを受け持つのは、笛吹市石和町にある山梨運輸支局です(関東運輸局)。
トラック事業者の行政処分等は、1都7県の分が1つの表になって月ごとに公開されています(関東運輸局)。表には「主たる事務所の所在地」と「営業所の所在地」が別の欄で並ぶので、山梨の行は「営業所の所在地」の欄で拾います。主たる事務所が県外にある事業者が県内の営業所で受けた処分も、県内の事業者が県外の営業所で受けた処分も、同じ表に並ぶためです。
令和7年3月31日時点で、山梨県内に主たる事務所を置く一般貨物の事業者は483者で、ほかに霊柩の専業の事業者が46者ありました。関東の他の都県に主たる事務所を置き、山梨県内に営業所を置く一般貨物の事業者も59者あります(関東運輸局)。
1つの事業者が営業所ごとに数えられるから
処分の一覧は、事業者ごとではなく、処分を受けた営業所ごとに1行ずつ並びます。
令和7年4月分から令和8年8月分までの一覧で、営業所の所在地が山梨県の18件のうち8件は、同じ1つの事業者が県内の8つの営業所ごとに受けたものでした。残る10件は10の事業者が1件ずつ受けたもので、18件の処分を受けた事業者は11です(関東運輸局)。件数は、処分を受けた会社の数ではなく、営業所の数として読みましょう。
トラックの運送事業のうち、一般貨物自動車運送事業は国土交通大臣の許可が必要で、三輪以上の軽自動車や二輪の自動車を使う貨物軽自動車運送事業は届出で始められます(e-Gov法令検索)。令和7年3月31日時点で、山梨運輸支局の管内の貨物軽自動車運送事業者は、バイク便の15者と軽霊柩自動車を持つ4者を含めて1,384者でした(関東運輸局)。求人票に「ドライバー」とだけ書かれていたら、応募先がどちらの区分の事業者で、どの営業所に配属されるのかを先に確かめましょう。
監査に入るきっかけが限られているから
処分の一覧には、監査に入ったきっかけも書かれています。令和7年4月分から令和8年8月分までの山梨県内の18件のうち、同じ事業者の8件を除く10件のきっかけは、次の4つに分かれます(関東運輸局)。
- 法令違反の疑いがあるという情報:5件
- 死亡事故:3件
- 公安委員会からの通知:1件
- 法令で定められた報告書に関する違反の疑い:1件
関東運輸局が令和6年度に管内のトラック事業者に行った監査は444件で、行政処分等は207件でした。監査先を選んだ理由には、適正化事業実施機関の巡回指導の評価などを踏まえたものが66件、重大事故が53件、労働局からの通報が52件、苦情や法令違反の疑いが54件と並びます(関東運輸局)。一覧に名前がないことは、違反がなかったことの証明にはなりません。監査は、こうした事故や通報、巡回指導の結果などをきっかけに選ばれた事業者に入るためです。
山梨で避けたい運送会社に共通する4つの特徴

山梨で避けたい運送会社に共通するのは、法律で決められた点呼、運転者への指導、車両の定期点検、勤務時間の管理が行われていないことです。山梨県内の営業所が受けた処分で違反に挙がった項目をもとに、確かめたい4つを整理します。
- 点呼の実施と記録が欠けている
- 運転者への指導と監督が足りない
- 定期点検整備を実施していない
- 勤務時間と乗務時間の基準を守らせていない
点呼の実施と記録が欠けている
事業者は、運転者が運行の業務を始める前と終えた後に、対面か、それと同等の効果があると国が定めた方法で点呼を行います。業務の前の点呼で確かめるのは、酒気帯びの有無、疾病や疲労、睡眠不足などで安全に運転できないおそれの有無、日常点検の実施です。点呼の記録は1年間保存します(e-Gov法令検索)。
電話などで点呼を済ませてよいのは、遠隔地で業務を始めたり終えたりするため、営業所で対面の点呼ができない場合などに限られます。車庫と営業所が離れていることや、早朝・深夜に点呼を行う人が営業所にいないことは、この理由に当たりません(国土交通省)。
令和7年4月分から令和8年8月分までの山梨県内の18件のうち17件で、点呼を行っていない違反か点呼の記録の違反が挙がりました。同じ事業者の8件を除く10件のうち3件では、疾病や疲労、睡眠不足などで安全に運転できないおそれのある運転者を乗務させてはならないという決まりの違反も挙がっています(関東運輸局)。
面接では「出発前の点呼で体調や睡眠不足を申し出たら、その日の乗務はどうなりますか」と尋ねてみてください。交代の運転者の手配や乗務の取りやめを具体的に答えられるかどうかで、点呼が形だけになっていないかの見当がつきます。
運転者への指導と監督が足りない
トラックの運送事業者は、国の指針に沿って運転者への指導と監督を毎年行い、その日時、場所、内容と、指導した人・受けた人を記録して、営業所で3年間保存します(e-Gov法令検索)。指針は指導の内容として、事業用自動車を運転する心構え、守るべき基本的な事項、車両の構造上の特性、貨物の正しい積載方法、過積載の危険性などを挙げています(国土交通省)。
同じ事業者の8件を除く10件では、10件すべてで運転者に対する指導監督の違反が挙がりました。新たに雇い入れた運転者への特別な指導の違反は3件、初任診断と呼ばれる適性診断を受けさせていない違反は4件ありました(関東運輸局)。
一般貨物の事業者が新たに雇い入れた運転者には、その会社で初めて乗務する前に、法令や安全な運転に関する事項を15時間以上、実際にトラックを運転させる安全運転の実技を20時間以上指導します。やむを得ない事情がある場合に限り、乗務を始めてから1か月以内に行います。その会社で初めて乗務する前の3年間に、他の一般貨物の事業者などで運転者として常時選任されたことがある人は、この指導の対象外です(国土交通省)。
軽貨物の事業者で初めて乗務する人への指導は別の定めで、法令などの事項を5時間以上行い、実技はできる限り行うものとされています。前の3年間にほかの軽貨物の事業者で運転者として乗務したことがある人などは対象外です。初任診断は、乗務を始める前の3年間に受けたことがない人が、その会社で初めて乗務する前に受けます。やむを得ない事情がある場合は、乗務を始めてから1か月以内に受けます(国土交通省)。
未経験で入る人は「一人で乗務するまでに、座学と実技で何時間の指導があり、初任診断はいつ受けますか」と尋ねてください。指導の時間と時期を具体的に答えられない会社では、入社後の指導が後回しにされるおそれがあります。
定期点検整備を実施していない
道路運送車両法は、運送事業に使う自動車の使用者に、3か月ごとの定期点検を求めています。運行を始める前には、1日1回、灯火の点灯や制動装置の作動などを確かめる日常点検も行います(e-Gov法令検索)。運送事業者は、車両の使い方を考えて定期点検の基準を作り、点検と必要な整備をして、その内容を記録簿に記載して保存することも求められています(e-Gov法令検索)。
同じ事業者の8件を除く10件のうち5件で、定期点検整備の実施違反が挙がりました(関東運輸局)。整備が行き届かない車両で事故が起きれば、最初に危険にさらされるのは運転する本人です。
面接では「3か月ごとの定期点検はどこで行い、日常点検で不具合を見つけたら誰に報告しますか」と尋ねてみましょう。点検の場所と報告の流れをすぐに答えられるかどうかで、点検が日々の業務に組み込まれているかを判断できます。
勤務時間と乗務時間の基準を守らせていない
貨物自動車運送事業輸送安全規則は、国土交通大臣が告示で定める基準に従って運転者の勤務時間と乗務時間を定め、守らせることを事業者に求めています(e-Gov法令検索)。国土交通省の告示は、その基準を厚生労働省の改善基準告示としています(国土交通省)。同じ事業者の8件を除く10件のうち4件で、この基準を守らせていない違反が挙がりました(関東運輸局)。
改善基準告示では、トラック運転者の1日の拘束時間は13時間以内が基本で、延長しても15時間が限度です。休息期間は、勤務の終了後に継続11時間以上を与えるよう努めることを基本とし、継続9時間を下回ってはなりません(厚生労働省)。
ただし、1週間の運行がすべて1回の走行距離450km以上の長距離貨物運送で、休息期間を住所地以外の場所で取る場合は、週2回に限り、1日の拘束時間を16時間まで延ばし、休息期間を継続8時間以上にできます。休息期間のいずれかが9時間を下回るときは、1回の運行が終わった後に継続12時間以上の休息期間が必要です。2人で乗務する場合、隔日勤務の場合、休息期間を分けて取る場合にも、それぞれ別の決まりがあります(厚生労働省)。
1か月の拘束時間は284時間以内、1年は3,300時間以内が原則です。労使協定を結べば、年6か月まで1か月310時間、1年3,400時間まで延ばせますが、284時間を超える月は連続3か月までです。時間外労働の上限は、臨時的な特別の事情がある場合でも年960時間です(厚生労働省)。
面接では「直近3か月の拘束時間の実績を、運転者ごとの記録で見せてもらえますか」と尋ねてみてください。記録をもとに答えられるかどうかで、勤務時間の管理の整い方の見当がつきます。
関東運輸局と山梨労働局の情報で確かめる手順

応募先の会社は、関東運輸局と山梨労働局が公開している情報を使って、次の3つの手順で確かめられます。
同じページにある「累積違反点数が20点を超える事業者の概要」で、応募先の名前と点数を確かめます。この一覧は四半期ごとに更新されます(関東運輸局)。
累積点数の一覧の見方
関東運輸局の処分の基準では、車両の使用停止の処分日車数10日車までごとに1点の違反点数が付き、点数は事業者ごとに地方運輸局の管轄区域単位で累計されます。累計期間は原則3年です。1つの管轄区域の累積点数が51点以上80点以下になると区域内の全ての営業所が事業停止の対象になり、81点以上になると原則として許可の取消しの対象になります(関東運輸局)。
月ごとの一覧の右端にも、その処分で付いた点数と事業者の点数が載っています。山梨県内の営業所の処分でも、事業者の点数は関東運輸局の管轄区域全体での累計です。応募先に処分歴があれば、処分を受けた理由と、その後に改めた点呼や指導の中身を尋ねてください。
Gマークの認定一覧の見方
処分の一覧とは逆に、安全への取り組みが評価された事業所の一覧もあります。全日本トラック協会は、トラック運送事業者の安全対策への取り組みを事業所単位で評価し、基準を満たした事業所を安全性優良事業所(Gマーク)に認定しています。2025年12月16日時点の認定は29,210事業所で、全事業所数の34.4%にあたります(全日本トラック協会)。
山梨県トラック協会の令和7年度の事業報告によると、県内では新規10事業所、更新64事業所の計74事業所が認定を受け、県内の認定は合計247事業所になりました(山梨県トラック協会)。協会のサイトでは、県内の認定事業所を市町村別の一覧で見られます(山梨県トラック協会)。認定は会社単位ではなく事業所単位なので、配属される営業所の名前で確かめてください。
山梨県トラック協会は、平成2年12月に関東運輸局から山梨県の貨物自動車運送適正化事業実施機関の指定を受けています(山梨県トラック協会)。令和7年度は、通常の巡回指導と、改善基準告示の違反に対する特別巡回指導を行いました(山梨県トラック協会)。
山梨県最低賃金で確かめる賃金の計算
提示された賃金が法律の下限を満たしているかどうかは、山梨県最低賃金と照らせば自分で確かめられます。
令和8年11月1日改定の山梨県最低賃金
山梨県最低賃金は、令和8年11月1日から時間額1,113円になります。改定前の1,052円から61円の引上げで、令和8年10月31日までは1,052円が適用されます(厚生労働省)(山梨労働局)。パートやアルバイトなどの雇用形態にかかわらず、山梨県内で働くすべての労働者に適用されます(山梨労働局)。
月給で比べるときは、実際に支払われる賃金から次の6つを除きます(e-Gov法令検索)(山梨労働局)。
- 臨時に支払われる賃金(結婚手当など)
- 1か月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など)
- 所定労働時間を超える労働に対する賃金(時間外手当など)
- 所定労働日以外の日の労働に対する賃金(休日手当など)
- 午後10時から午前5時までの労働に対する賃金のうち、通常の賃金を超える部分
- 精皆勤手当、通勤手当、家族手当
除いた後の額を1か月の平均所定労働時間で割り、最低賃金と比べます(山梨労働局)。たとえば1か月の平均所定労働時間が168時間の会社なら、除いた後の月給は、11月1日からは1,113円×168時間で186,984円以上、10月31日までは1,052円×168時間で176,736円以上あることが必要です。求人票の固定残業代は時間外労働への支払いにあたるので、比べる額に含めません。
出来高払の賃金と保障給
歩合給のように出来高払制で決まる賃金は、その総額を、その賃金算定期間に出来高払制で働いた総労働時間で割って時間額に直し、最低賃金と比べます。基本給が日給で手当が月給のように組み合わさっている場合は、それぞれを時間額に直して合計します(山梨労働局)。
労働基準法は、出来高払制その他の請負制で使用する労働者について、労働時間に応じた一定額の賃金を保障するよう使用者に求めています(e-Gov法令検索)。歩合の割合が高い求人では、保障給の額と、歩合を運賃や走行距離など何の数字から計算するのかを書面で確かめてください。荷待ちが長く走れる距離が短い月の収入も、この2つが分かれば見積もれます。
山梨の運送会社選びでよくある質問
山梨県で運送会社を選ぶときに出てくる4つの疑問に答えます。
- 処分を受けた運送会社はどこで調べられますか
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関東運輸局が、山梨県を含む1都7県の行政処分等を月ごとの一覧で公開しています。累積違反点数が20点を超える事業者の概要も同じページにあります(関東運輸局)。全国分は、国土交通省のネガティブ情報等検索サイトで調べられます(国土交通省)。
- 長距離の運行で拘束時間が16時間の日があるのは違反ですか
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条件を満たしていれば違反ではありません。1週間の運行がすべて1回の走行距離450km以上の長距離貨物運送で、休息期間を住所地以外の場所で取る場合に限り、週2回まで1日の拘束時間を16時間にできます。2人乗務や隔日勤務などの特例に当たらない運行で、この条件も満たさない日の上限は15時間です。拘束時間は始業から終業までの時間で、労働時間と休憩時間を合わせたものです(厚生労働省)。
- 山梨の運送業で労働災害はどのくらい起きていますか
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山梨労働局の集計では、令和7年に県内で休業4日以上の労働災害に遭った道路貨物運送業(その他の運輸交通業を含む)の労働者は96人で、このうち1人が亡くなっています。令和6年は83人で、このうち3人が亡くなっていました。数字は、労働基準監督署に提出された労働者死傷病報告を集計したものです(山梨労働局)。
社名を探すより点呼と指導の中身を尋ねよう
山梨の運送会社を見分ける材料は、関東運輸局と山梨労働局、山梨県トラック協会がすでに公開しています。処分の一覧は1都7県分が月ごとにまとまり、件数は営業所ごとに並びます。令和7年4月分から令和8年8月分までの山梨県内の18件では、17件で点呼の違反が挙がり、同じ事業者の8件を除く10件では、すべてで運転者への指導と監督の違反が挙がりました。
処分の一覧と累積点数、Gマークの認定、公表事案に目を通したうえで、点呼で体調を申し出たときの扱い、入社後の指導の時間、定期点検の場所、拘束時間の実績を尋ねてみてください。一覧に名前がないことを安心の材料にするのではなく、点呼と指導の記録を見せながら説明できる会社を選んでいきましょう。

